読んどきゃよかった鬼滅の刃ァ! 作:焼肉パーリィ
天国にいらっしゃるお父様お母様。
俺を見守ってくれているだろうか?
出来るのならば目の前にいる鬼神のごとき男の枕元に立ち、もう少し優しさというもんを持つよう語りかけてはくれないだろうか。
「おらどうしたァ!受けてばかりじゃ鬼の頸は永遠に斬れねえぞォ!」
「攻めに…転じる隙が……無いん…ですよ!実弥さん!」
「その泣き言で鬼は止まっちゃくれねェんだよ!」
あの悲劇から1年。
俺は助けてくれた人……実弥さんに育手を紹介してもらい、鬼殺隊と呼ばれる組織に属する為の訓練に身を投じていた。
理由は様々であるが、一番の理由は俺が鬼に狙われやすい『稀血』と呼ばれる体質だと聞かされたからである。
曰く実弥さんもその体質であるそうで、鬼殺隊に入る前はそれを利用して鬼を誘き出したりして殺していたらしい。
全集中の呼吸も日輪刀も無しでですか…?こわ……
そしてもう一つの理由。
ここは前世にて人気漫画であった『鬼滅の刃』の世界である。
普通にタイムスリップして転生したのだろうと思っていたけど違ったらしい。
そして俺はこの世界の事を『最後までちゃんと知らない』のである。
だってアニメで遊郭編まで流し見した程度だもん。それ以降はノータッチなのだ。
仕方ないだろ大学受験生に漫画読む暇なんかねーよ。アニメもほぼ単語帳見る時のBGMだったわ。
ついでに言うなら転生して13年。つまり流し見したアニメかつ13年前の記憶なのだ。覚えている訳が無い。
ただ確か原作漫画ではハッピーエンドで終わったとは知っているので勝ち馬に乗ろうという訳だ。
もちろんただ勝ち馬に乗るわけでは無く、より犠牲は少なくなるよう努力はしようと思う。
一度は諦めようと思った命だ。賭けてやろうじゃ無いか。
……だがそれはそれとして!
「防御に全霊なのにあちこち打たれた…めちゃくちゃ痛い……」
「そもそも『風の呼吸』は攻撃とその範囲に秀でてんだぜェ?そんな技同士の使い手がやり合ったら終始攻め切れる方が優勢に決まってんだろォが」
それはもうすんごいボッコボコにされた。
無茶言わんで欲しい。貴方相手に反撃の隙なんか無えよ風柱。
忙しい柱の身で稽古をつけてくれるのはありがたいが、この人との稽古に型の動きの指導は存在しない。
ひたすら打ち込み稽古。休憩はどちらかの木刀が折れるまで。
こんな地獄みたいな稽古の癖に、終わった後の総評やアドバイスはすっごい参考になるのでタチが悪い。どうにかアドバイスだけの日とか無いんですか?
文句が言い難い理由はこれ以外にもある。
「……このまま格上相手に防御一辺倒じゃ死ぬぞ。今のお前なら選別は突破出来るだろうが、隊士として実戦になれば予想外の血鬼術にぶつかる事も多いんだからよォ」
「うっ……そうかもしれませんが…」
「実力が柱になれる程になろうが、十二鬼月に遭遇すりゃ危機に陥る事はある…生き残る為にも取れる手段は増やせよォ?」
実弥さんの兄弟子にして風柱になったきっかけの一件で犠牲になった人、匡近さん。
自分も何度か稽古をつけてもらった優秀な剣士だった。
彼が亡くなってから、柱となった実弥さんは一時期荒れに荒れた。
なんでもトップ…お館様に食ってかかったりもしたそうだ。
その過程でお館様に諭され、その頃からちょくちょく育手の道場に顔を出しては俺に稽古をつけてくれるようになったのだ。
そういう経緯で稽古に来てくれているので大変無碍にし難い。
俺に稽古をつけてくれるのはゴリゴリに善意なのだ。しかも荒れた時期からの跳ねっ返りという特大の善意だ。
でも貴方が本気で大暴れすると稽古場がすっごい荒れるのでたまには勘弁してください。整備するの1番稽古つけてもらってる俺なんです。新入りも怯えてるんです。
まあそんな生活ももう終わりを告げる頃だ。
そう!3日後の選別に参加する許可が出たのである!
突破して正隊員になってしまえば、もう育手や同門の人達の「大変だねお前…」みたいな生暖かい目とも、稽古場の地面をボロボロの身体で何往復もトンボがけする生活ともお別れだ!
いざ!最終選別!