添い寝がメインの艦これSS   作:うわぐつ24号

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人物概要その1



倉田伸二

身長174センチ、体重67キロ
 
階級 海軍少尉

呉鎮守府艦娘部隊の司令長官。艦娘を運営する方針がやっと決まって、呉に赴任した新人将校。防衛大学校では珍しい文系の学生であった。その後に入校する海軍兵学校(旧海上自衛隊幹部候補生学校)も含めて成績は中の下。顔立ちは中の上ほどと彼は考えている。
性格はごく普通の青年といった感じ。誰にでも優しく接して、思いやりがあり、素直に物事を受け止められる長所を兼ね備えている。

防大から合わせて5年間で護身術を独学で勉強している。着任早々金剛と2人で買い出しに出かけた際に不良に囲まれるトラブルが発生したが、護身術の駆使して撃退。完璧な護身術で不良達に怪我をさせずに撃退したことから、警察からは正当防衛とみなされた。

※それまで金剛はもとよりスキンシップの多い性格だったが、彼が護身術で彼女を守った事をきっかけに提督LOVEが一気に進行。今では鈍感な倉田でも分かるほどに「好き」という気持ちを全面に出して彼を振り向かせようと努力している。 








めちゃくちゃ遅くなってしまいました。そして、なるべく細かく書きすぎて、とてつもない文字数になってしまった……どうか穏やかな気持ちで読んでいただけるとありがたいです。


では、どうぞ。


2話 加賀&瑞鶴と添い寝

7月某日、決して穏やかとは言えない猛暑の中、呉鎮守府の提督執務室ではとても平和な光景が広がっていた。

 

外の灼熱地獄とは打って変わって冷房の効いた涼しいこの部屋は、エアコンの稼働音のみが響き渡り、静寂に包まれている。その空間に2人の男女が肩を寄せ合って少々広めのベッドで規則正しい寝息を立てている。

 

1人はこの鎮守府の長である海軍少尉、倉田伸二(23歳)。もう1人は金剛型戦艦のネームシップである艦娘の金剛だ。この日の業務を早々と終わらせた2人は、金剛の提案で一緒にお昼寝をしている。

 

そんなスヤスヤと童心に返ったような寝息を立てる2人を、唖然とした顔で見つめる1人の艦娘がいた。

 

彼女の名は、正規空母「加賀」。前世では大日本帝国海軍の第一機動艦隊、第一航空戦隊の主力空母として活躍。空前の搭載機数で帝国海軍機動部隊の躍進を支えた立役者だ。艦娘となってからは、クールな性格で冷静に状況を判断して最適な答えを導き出して艦隊を勝利に導く、実に指揮官の技量を持ち合わせた優秀な側面を持っている。この鎮守府に配属されてからは、鎮守府のNo.2である副官の秘書艦を務めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼下がりの眠くなる時間帯。提督の確認が必要な書類があった為、隣の提督執務室まで足を運んでみれば、お目当ての提督の姿が見当たらない。

 

工廠の整備兵達のところに顔でも見せに行ったのだろうか。うちの提督はまだ海兵を卒業して間もない新人だからか、年の近い若手の整備兵達とよく話しているのを見かける。

流行りのアニメの話とか、漫画の話なんかをしているのを何度か小耳に挟んだ記憶はある。今日も息抜きに彼等の所へ出掛けているのだろうか。

 

この執務室も隣の副官室も、冷房の効いた快適な空間になっている。とはいえ、外は猛暑の真っ只中。こんな中でよく工廠で働けるものだ。艤装をつけていないこの身では、とてもこの暑さには耐えられない。

 

外を見てみれば、中庭のグラウンドで時雨と夕立がキャッチボールをしているのが見える。

提督と副官、どちらも元高校球児の為、よくキャッチボールをしているのを見てから、2人とも野球にハマったらしい。といっても、この猛暑の中でやる事ではない気がする。

 

仕方がない。提督がいないなら、机の上に置いておこうか。とはいえ、彼がいないならまだしも、なぜ秘書艦の金剛まで不在なのかはわからない。全く不用心なことだ。

 

そんなことを考えながら提督の執務机の左側になんとなく目をやる。そこには驚きの光景が広がっていた。

 

 

 

 

加賀「え…?」

 

備え付けられたベッドの中で幸せそうな顔を浮かべて抱き合って寝ている金剛と提督の姿。どういう訳?まさか、2人はそういう関係だったの??だとしても、それらしいことは全く…

 

加賀「一体、どういう……」

 

 

金剛「えへへ〜…テートクゥ…バーニングラブゥ…….」ムニャムニャ

倉田「んん……スゥ…スゥ…」ナデナデ

 

加賀「なっ!」

金剛の寝言に応えるように提督が優しく金剛の頭を撫でる。金剛は微笑を浮かべながらまた眠りにつく。お互いにハグをしあって眠る2人はまるでカップルのようにも見えてくる。

 

この様子には、流石に平静を保てない。目の前で砂糖を振り撒かれてはたまらない。

 

 

加賀「み、見てるこちらが恥ずかしいです……!///」ボソッ

加賀「しっかり確認お願いしますよ!///」パタパタ

 

いたたまれなくなり、そそくさと書類を置いて部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加賀「た、ただいま戻りました…」ガチャ

「おう、おかえり」ニコッ

 

 

加賀が部屋に戻ると、まだ火照りの消えない彼女を迎えた1人の男性がいた。この男こそ、この鎮守府の副官である中田大河(なかたたいが)だ。

 

身長は178センチでスラリとした体型。とは言っても、その中身は筋肉質な細マッチョといった所だ。顔もそれなりに整っており、倉田と同じく海兵を卒業したての新人将校。倉田とは防大時代からの仲良しで、学生時代は野球に情熱を燃やしていたスポーツマンである。性格としては、根っからの根性タイプ。身体能力はかなり高く、防大時代には海上要員ながら陸軍のレンジャー教育を完遂しきった驚きのエピソードも持っている。

 

 

 

 

中田「向こうの様子はどうだったか?」

加賀「…!えっと…それは…」モゴモゴ

中田「?なんだよ加賀、顔を赤らめて」クビカシゲ

加賀「いや、それは…」

中田「珍しいな。お前が動揺してるなんてよ」ハハ

加賀「…いえ、まぁ、少々お取り込み中といった感じでした…」ドウヨウ

中田「まさか、あの野郎サボってんのか?」

加賀(サボっているといえばそうね…)

中田「仕方ねぇ奴だな…いっちょ喝でも入れてやるかぁ」ガタ

加賀「あ、それは大丈夫よ!」ギクッ

中田「ん?そ、そうか?」

加賀「え、ええ。さっき、私の方から注意しておいたわ」

中田「…そうか、じゃ、いっか」

加賀(あ、危なかった…)フゥ

 

この人には絶対に2人が添い寝しているのを見せるわけにはいかない。

この人は、男女間のスキンシップにはかなり気を配るからだ。金剛は毎日のように倉田提督に絡んでいるが、それを見た中田少尉は、『けしからーーーん!!!』と昭和の漫画のような勢いで迫っている。倉田提督からしたら、もう防大の時からずっとこれらしいから慣れているんだとか。

 

彼がそこまでになった理由は、シンプルに彼自身が女性に弱いから。ただそれだけ。倉田提督も女性には弱い方だが、その比ではない。女性と指先が触れただけで飛び上がるように驚くほどのもので、何故それで艦娘部隊に配属されたのか不思議になってしまう。

 

私や瑞鶴など、空母の連中と特に親交があるが、その仲間内でも彼の女性に対する敬遠ぶりには頭を抱えている。

そんな彼が添い寝している2人なんて見たらどうなるか、想像に難くない。

彼自身、私を秘書艦に置いている理由もシンプル。『加賀は金剛のようにさほどスキンシップも取らないから』。

確かに、金剛のようにベタベタと異性にくっつくような趣味はない。毎日あそこまでしてよく疲れないものだと感心もしている。

 

 

ただ、艤装をつけていなければ私だって1人の女性。そういった欲がないと言えば嘘になってしまう。

 

 

中田「あぁ〜……疲れるなぁ……」クビマワシ

加賀「お茶でも淹れましょうか?」

中田「お、やったぜ!頼むよ!」カミカキアゲ

加賀「!」メソラシ

中田「ん?どしたの?」

加賀「い、いえ…特には…//」カオアカ

中田「本当か〜?なんか今日の加賀、顔が赤いぞ?もしかして熱か??」カオズイ

加賀「ええ!?い、いや大丈夫よ!//だ、大丈夫だから!//」アウアウ

中田「そう…まぁ、無理はすんなよ」

加賀「え、ええ…///」

 

 

元々私は男性に興味は毛頭なかった。ただ、この人に出会ってからはそうでもなくなってしまった。先ほどのように無意識に顔を近づけてきたり、この前は私がいるのに上半身裸になったりと、触れられたら散々驚くくせに、自分からはそんな恥ずかしい行動を躊躇なく取ってくる。まぁ、本人は気づいていないのだろうけど…

 

そんな事だから、この胸の高まりも、頬の紅みも、体が彼の事を覚えてしまった。だから、彼が髪をかきあげたり、無邪気に笑って見せたりする些細な仕草にも目がいってしまう。

 

初めはこれが何なのか分からなかった。これまで一航戦として戦いのことしか学ばなかったし、それ以外も覚える気はなかった。心配になりすぎて一時期は病気になってしまったのではないかと考えた事もある。だから、ある時思い切って赤城さんに相談した。すると彼女は、『それは恋ですね』と微笑混じりに答えたのだ。

 

まさかだった。戦いのことしか頭になかった私が、殿方に恋をするなんて。でも、言われてみれば確かに恋する人間の心情にあてはまる。鎮守府に勤める軍人に艦娘が恋をするというのはチラホラ聞いた事があるけれど、それの仲間入りをするなんて…

 

 

だから、正直なところ金剛が羨ましい。自分が想いを寄せている相手にストレートに気持ちを伝えられるんだから。倉田提督もかなり純情な心を持っているから、そのうち落ちるんじゃないかしら。

 

でも、私にはそんな気概はない。そこまで口数が多くないことは自負しているし、その私が金剛のように振る舞える勇気もない。それに、そんな事になったら周りにだって変な空気を生んでしまうかもしれない。だからこそ、こうして遠目から彼の姿や些細な動作を楽しむ事に結論はなった。

 

 

 

 

 

 

中田「加賀ぁ…少し休もーぜ…」

加賀「ダメよ。まだ業務は片付いてないわ」キリッ

中田「うぅ…体動かしてぇ……」グテェ~

加賀「…よくこの暑さの中動こうと思うわね…」

中田「ま、俺はそれが取り柄なんでね!」

加賀「それならなんで将校になったの?体を動かしたいなら、下士官の方が向いているでしょうに」

中田「いやぁ…防衛大ならたくさん体動かせると思ったからさ…高3の夏休みだけ勉強ガチったらこうなっちまった…」ハハ

加賀「その要領の良さは認めるわ」ハァ

加賀「…取り敢えず、あと1時間だけ頑張りましょう。そうすれば後は私がやっておくから」

中田「マジで!?よっしゃ、ならやりますかぁ!!」ニカ

加賀「…//」ドキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後ーーーー

 

中田「よし!1時間!加賀、ほな外行ってくる!」

加賀「お疲れ様でした。熱中症には気をつけるのよ」

中田「おう!後でクーラーガンガンにしといてくれ〜!」タッタッタ…

 

 

 

まさか、1時間の集中力で今日の執務が全部終わるなんて…元高校球児というのは恐ろしいわね…

 

現在時刻は1535。彼は元々要領が良い方だから、毎日1630前後にはどんなに忙しくても仕事は片付いている。今日は最短記録更新ね。1時間も早く終わったなら、やれることは沢山ある。今日は、溜めていた昼ドラの続きでも見ようかしら。

 

ここ1.2年は出撃の機会は週に1.2回ほどに落ち着いている。それも、近海の哨戒くらい。敵に遭遇することもあるけれど、一航戦の私たちにかかれば鎧袖一触。だから、ここ最近は鍛錬で主に汗をかいている。

 

でも、この異常な暑さのせいで訓練で抜錨できるのは早朝か夜のみ。夜は川内が夜戦夜戦うるさいから、私と赤城さんは主に朝の時間帯に訓練に出ている。

 

正直、この暑さの中昼間に走り回れるのは夕立くらいではないかしら。彼女のタフさには本当に感心する。何も食べたらあんなにアグレッシブに動けるのでしょうか。

 

 

 

 

夕立「あ!大河っぽい!!大河も一緒にキャッチボールするっぽい!」キャハキャハ

中田「おぉ!混ぜてくれんのか!よし、やるぞ夕立〜!」

時雨「大河、今日はショートバウンド?の取り方を教えてほしいな」

中田「お、時雨もいんのか!いいぜ!よし、夕立も集合〜!」ノシ

夕立「ぽ〜い!」

 

 

 

 

 

外から3人の元気な声が聞こえる。そして、その仲の良さそうなやりとりに、胸の奥がズキっと痛む感覚に襲われる。

 

普段、私と一緒に殆どの時間を過ごす彼が、他の艦娘と仲良さそうに話している。想像すると、心が少々痛い。これが、『嫉妬』というやつか。この感情にも最近は悩まされる事が多い。

 

勿論、いけない事だというのは分かっている。艦娘部隊にいる以上、艦娘と信頼関係を築くのは大切なことだ。それがいつ、誰が相手であろうとそれは中田さんの自由。本当に都合の悪い生き物だとつくづく思う。艦艇の魂を宿しているのに、こういう所だけは立派な女性なんだから。

 

仕方ない。ドラマでも見て気分を変えましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー1830ー

 

 

 

加賀「ん…今は…」ボケェ

 

溜まっていた昼ドラの消化もほぼ終わり、気が付いたら夕陽が山陰に沈んでいく最中の時間帯になっていた。どうやらテレビを見ているうちに寝落ちしてしまったらしく、テレビの向かいのソファで横になっていた。

 

そして、その横たわる体には1枚の薄い掛け布団。誰かが掛けてくれたのだろうか。

 

部屋のエアコンも睡眠にちょうどよい温度まで調整がなされていて、強風にしていたはずのエアコンの風量も落とされていた。

 

加賀「…一体誰でしょうか…」

 

ブー、ブー、…

 

スマホにメールが届いた。その送り主は中田さん。時間が時間だから、夕食のお誘いかしら。

 

 

メール『おーい!加賀ぁ〜!起きろ!飯だよ〜!』

メール『すまねぇけど、今日は他の艦娘達と飯食ってくれ!俺は伸二と飯食うわ!』

 

 

眉が垂れ下がる感覚を覚える。どうやら今日は別でご飯を食べる必要があるようだ。ここ最近は彼と一緒に食べる日が続いていてその時にする他愛もない会話が夕食の楽しみだったのだけれど、残念だ。

 

ただ、この掛け布団も、エアコンも、メールの内容からして彼がしてくれたのでしょう。こういうところは本当に気が効く人だ。普段の子供っぽい感じとのギャップに、また一つ胸が高鳴るのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

ー食堂ー

 

夕食のために食堂に来ると、先程まで倉田提督と添い寝していた金剛とバッタリ鉢合わせをした。

 

金剛「オウ!加賀じゃないデスカ〜、good afternoon〜」ヒラヒラ

加賀「あら、金剛じゃない。どうも」

金剛「ヘイ加賀!良かったらナンデスガー、一緒に食べませんカ??」

加賀「…そうね、私も1人だし、良いわよ。ご一緒します」

金剛「イェース!じゃあ早速行くネー!」キラキラ

 

…本当に明るい子ね…どうすればこんな風に振る舞えるのかしら……ん?そうよ、この機会に、男性とお近づきになる方法とかを彼女に聞けば良いのでは?よし、思い切って聞いてみましょう。

 

 

そして、カレーを食べながら金剛とお話しする事にした。

 

 

 

 

加賀「金剛、少し相談があるのだけれど」

金剛「ン〜?珍しいデスネー、oh!Delicious!」パクパク

 

…相変わらず、能天気な人ね…

 

金剛「それで、どんな相談なんデスカ?」

加賀「その、男の人とお近づきになるには…どうしたらいいのでしょうか…」ソワソワ

金剛「ワオ!加賀、好きな人がいるんでスカ!?」ガタッ

加賀「こ、声が大きいです!そ、そういうのではありません!」アセアセ

金剛「ン〜…そうなんですカ〜…」

加賀「えっと…いつも中田さんとお仕事をしているので、もっと親密になれればなと…」ゴモゴモ

金剛(顔、赤いネー…絶対好きデース…)ムフフ

加賀「どうしたの?そんなにニヤついて」ハテナ

金剛「あ!なんでもナイヨ!大丈夫デース!」アセアセ

加賀「…?」

金剛「そ、それでどんな事をしたいとかはあるんですカ?」

加賀「いえ…本当に何をしたらいいのかが全く分からなくて…あなたならいつも倉田さんと仲良くやっているから何か知っているかと思いまして…」

金剛「なるほど…それで私に相談なんですネ〜」

加賀「はい…何か、いい案はあるでしょうか」

金剛「ウーン……そうですネ〜…」ムムム

加賀「」コクコク

金剛「なら、彼と一緒に添い寝すればイイデース!!」ニカッ

加賀「…へ?」

 

加賀「わわ、私が、中田さんと、そ、そそ、添い寝…ですか…?」フルフル

金剛「」コクコク

加賀「むむ、無理です!恥ずかしいです!出来るわけないでしょう!///」ガタッ

金剛「まぁまぁ、最後まで聞いてクダサーイ」フフフ

加賀「は、はぁ…」スン…

 

金剛「私もさっきまで実はテートクと寝てたんデスヨ〜」フッフッフッ

加賀(…知っていますよ…)ハァ

金剛「最初は私も凄く緊張していたんデスガ…」

金剛「実際一緒に寝ると結構癒やされマース!」ニカッ

加賀「ほ、本当ですか…?あなただから緊張しなかったんじゃ…」

金剛「そ、そんな事ナイデース!」( ̄◇ ̄;)

加賀「…」ジー

金剛「お願いデース!信じてくだサーイ!」コンガン

加賀「…分かりました。せっかく提案していただいたので、やってみます…」

金剛「イエース!流石一航戦デース!」

加賀「…褒め言葉ではない気がします」ムスッ

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜2130〜〜

 

倉田との夕食も終わり、鎮守府に戻ってきた中田は副官室でのんびりと漫画を読んでいた。すでにシャワーも済ませ、防大生時代に着用していた大学のTシャツを着てくつろいでいた。

 

元気一杯の中田はさながら子どものような健康的な生活を送っている。夜は遅くとも2230には絶対に寝て、翌朝0500には起きてランニングに励んでいる。まさにスポーツマンである。

 

 

中田「ふぁぁあ〜…」アクビ

中田「そろそろ寝るかなぁ〜」ウトウト

 

副官室と提督執務室は、そこの部屋の主の私室と直結している。彼の部屋も副官室内のドアを開ければすぐのところにあるのだ。

 

 

そして、中田の独り言を廊下から盗み聞きしていた1人の艦娘がいた。加賀である。

 

彼女は半ズボンとシンプルな白色のTシャツ、いわば寝巻きに身を包んで金剛の助言に則って彼との添い寝をすべくここまでやってきた。

 

しかし、いざ部屋に突入するとなると話は別。やはり緊張してしまうのだ。枕を胸に抱えてきたため、今更引き返して自室で寝ることは出来ない。だが、ここで彼のいる副官室に突入する勇気も中途半端になっている。その狭間で彼女は揺れていた。

 

 

加賀(ど、どうしましょう…金剛の助言のままに来てしまったけれど、入る勇気が…)チラチラ

加賀(でも…このまま帰るわけにもいかないし….)オロオロ

 

 

「こんな所で何してるのよ、一航…加賀さん」ホッペツンツン

加賀「ひゃ!?って、五航戦……」ハァ

 

目を瞑って悶々としていた加賀の前にいたのは、同じ空母仲間である瑞鶴だった。2人は初めて会った時からしばらくは犬猿の仲だったが、瑞鶴が練度を着実に向上させていくにつれて次第に加賀も彼女を認めるようになり、今では休日に一緒に外出するほどの仲になっている。

 

瑞鶴「パジャマ姿で副官室の前をうろつくなんて、まるで不審者みたい、加賀さん」フフッ

加賀「大きな誤解よ。それに、貴方には関係ないでしょ」

瑞鶴「もしかして….大河さん襲うつもり?だったら確かに私はお邪魔だね〜」ニヤニヤ

加賀「…人が真剣に悩んでいるというのに、貴方って人は…」ムスッ

瑞鶴「まぁまぁ、そう言わないでよ。冗談冗談。それで、何があったの?私でよければ聞くけど」

加賀「……じゃあ聞いてくれるかしら」ハァ

 

 

ーカクカクシカジカあってー

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「なるほどね〜、加賀さん結構乙女じゃん」フフ

加賀「からかわないで。け、結構悩んでいるのだから//」メソラシ

瑞鶴「うーーん…どうするべきか…」

 

瑞鶴は腕を組み唸りながら悩む。辺りも寝静まった鎮守府の一角で、悩む2人の艦娘の間にしばし沈黙が流れる。

 

 

瑞鶴「そうだ!!私も一緒に添い寝すれば良いんじゃない!?」キラキラ

加賀「え、え?なんでそうなるの?」コンワク

瑞鶴「だって、加賀さんこのまま1人で突撃するってなったら絶対に行けないじゃん。私が加賀さん見つけるまでも結構行けてなさそうなんだし」

それもその通り。正論であるため、ぐうの音も出ない。

 

加賀「そ、それはそうだけど…」ウグッ

瑞鶴「だーかーら!今日は取り敢えず3人で寝て、まずは場数を踏もうよ!加賀さんが最初の方私にアドバイスしてたじゃない!『戦闘は場数を踏む事がとにかく大事だ』って!」エッヘン

 

瑞鶴は控えめな胸を張りながらそう言い切る。ここまで自信満々に言われてしまったのなら文句も言えない。それに瑞鶴の言っていることも一理ある。まずは男の人と近くで寝る事に慣れよう。

 

加賀は覚悟を決めて瑞鶴に言い切る。

 

加賀「分かったわ。あなたの言う通り、今日は3人で寝る事にしましょう。協力してくれるかしら?」

瑞鶴「オッケー!じゃあ、部屋から枕取ってくるから待ってて!」タタタ…

 

まさか彼と自分と瑞鶴の3人で寝る事になるとは、少々予想の斜め上を来てしまった。しかし、このままヘタレを出して引き下がるよりかは幾分マシではある。

業務がいつも以上に早く終わった日であるというのに、いつも以上に疲労の溜まる1日になった。思わずため息が溢れるが、むしろ疲れるのはこれからであるかもしれないという事実が、また彼女に疲労感を与える事になる。

 

加賀(どうしてこんな事になったんでしょうか…)ハァ

 

ため息もいい具合に、そこへ瑞鶴が枕を抱えて戻ってきた。

 

瑞鶴「加賀さん?何ため息ついてるのよ。結構疲れてるんじゃない?」

加賀「ええそうね…今日はなんだか、いつも以上に疲れを感じているわ」

瑞鶴「フフ、なら一層大河さんに癒してもらないとだね」ニシシ

加賀「…早く行くわよ」ハァ

 

そうして覚悟を決めて、一息ついてから、加賀は恐る恐る扉をノックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

中田「?、はーい、どうぞ〜」

ガチャ

加賀「こ、こんばんは…」

中田「あれ?加賀どうしたの?珍しいな」

加賀「え、ええと、その…」ソワソワ

瑞鶴「大河さーん、こんばんは!」

中田「お、瑞鶴も来たのか。まぁいいや取り敢えず座りな!」

瑞鶴「はーい!」

加賀「お、お邪魔します…」

 

ーーー

 

 

 

中田「それで、2人ともどうしたの?こんな遅くに」

瑞鶴「実は、私の部屋のエアコンが壊れちゃってさ〜、この暑さの中エアコンなしで寝るのは結構きついから…その、大河さんの部屋で寝かせてくれないかなーって…思いまして…」チラッ

中田「なんだそんなことか!いいぜ!泊まっていきな!」ニコッ

瑞鶴「やったー!!サーンキュ!」

中田「それで、加賀はどうした?お前の部屋もエアコン壊れたの?」

加賀「あ、いえ…その…」オロオロ

中田「…?違うのか?じゃあ…どうし「あぁー!加賀さんさっき、幽霊みたいなの見かけたらしくてさ!1人じゃ寝れないから、大河さんの部屋で寝ようと思って来たそうなの!そしたらたまたま私と被ったみたいで!」

中田「え!?幽霊!?マジ?!」ギョッ

加賀「あ、は、はい!そうなんです!ちょっと、見えてしまいまして…」

中田「それはきついなー…ぜんぜんおっけーよ!2人とも歓迎だぜ!」

加賀(た、助かった…ありがとう、瑞鶴)チラッ

瑞鶴「」グット!

中田「…まぁ、特に何もなくても全然俺は一緒に寝れるけどな〜…って、流石にそれはセクハラか、忘れてくれ」ハハ

加賀(…え?そうなの?なら、また一緒に…///)

中田「加賀、やっぱし顔赤いぞ?体調悪いんじゃ….」ズイ

加賀「うわ!?大丈夫です!大丈夫ですから!」

中田「…?まぁいいか、なんともないなら。よし!んじゃ部屋に案内するわ!ついてこ〜い!」

瑞鶴「はーい!」

加賀「///」パタパタ

 

 

 

それから2人は中田の私室に案内された。内装としては6畳ほどの部屋にベッドが1つ、部屋の角に寄せられてある。なんとサイズはダブルサイズだ。そしてその向かいにはベンチプレスの器具がある。体を鍛えている彼らしい。そして入口の隣には本棚が1つ。最上段には写真が飾られ、そこから下の4段ほどは漫画が並んでいた。

 

その隣には作業机が1つ。机上にはパソコンとゲーム機があった。まさに男の1人暮らしといった感じの雰囲気である。

 

 

瑞鶴「へ〜、これが大河さんの部屋かぁ〜」ウロウロ

中田「まぁ、特に何もねぇ部屋だぜ。おいてるもんもそこらの大学生と同じだし」

加賀(こ、これが…中田さんの…お部屋…)ソワソワ

 

加賀は思わず夢中になって部屋を見渡す。これまで男の人の部屋に入ったことのない彼女にとっては、彼の部屋の内装というのはとても新鮮であった。

ましてや、自分が思いを寄せている相手の部屋となれば、自ずと緊張もしてくる。

 

加賀(今から…あんなに大きなベッドで寝るってことよね…)

加賀(き、緊張する…とても寝られそうでは…)ドキドキ

 

加賀は中田の部屋のダブルサイズのベッドを、頬や耳を赤くしながら凝視していた。足のつま先で床をぐるぐる描きながら、なんとも普段の冷静沈着な一航戦のイメージに反している。その目は明らかに恋する1人の乙女の顔つきであった。

 

瑞鶴「ちょっと〜、加賀さん、目的忘れてなーい??」ノゾキ

加賀「だ、大丈夫よ…ちゃんとやるわ…」

瑞鶴「」ヤレヤレ

 

中田「そんじゃ、お前ら2人でこのベッドは自由に使ってくれ。俺の匂いがする事は勘弁な」ハハハ

加賀「あ、あの!その事なんですけど…」 

中田「?、どした?」

加賀「そ、そ、そ、その、良ければ…中田さんも…一緒の布団で…寝てほしいです…」

 

加賀は自身の枕に口元をうずめ、俯きながらそう答えた。

一方の中田は、かがの振り絞った言葉の意味が初め何なのか分からず、口をあんぐりと開けて頭が理解するのを待った。

 

中田「…へ??」

 

中田「えええええええええええええええ!!!?!??」クワッ

 

中田「おおおお俺も、いいい一緒に!??」

加賀「///」コクコク

中田「そ、そそそれは、そのなんというか、色々とまずい気が…すす、するのですが…」

瑞鶴「大河さーん、私も加賀さんの意見に賛成だよ??大河さんのその腕、抱きつきがいありそうだし」ニヒヒ

 

瑞鶴が鍛え上げられた中田の腕を指差して加賀に加担する。女性にめっぽう弱いのと同時に、女性からのお願いの断り方を知らない彼にとって、もはや添い寝は不可避に近かったのだ。

 

中田「………たよ」ボソッ

加・瑞「??」

中田「分かったよ…その、添い寝?すればいいのか…?」 

 

幽霊を見たと言って駆け込んできた加賀のお願いに、瑞鶴まで加担されたらその選択肢をしかあるまい。中田は顔を赤くしながらもそう答えた。

 

瑞鶴(なんだかんだで似た物同士なんだよな〜)ホホエマー

中田「なんだよ瑞鶴…文句あんのかよ…」ジト

瑞鶴「え!?いやいやいや!!なんでもないよ!!ささ、早く寝ようよ!」

加賀「ええ…そうね…」

中田「…はいよ、それじゃ、電気消すから2人とも布団に入ってくれ」

瑞鶴「はーい!」

加賀「//」コク

 

 

 

ーーーーーー

 

電気を消した暗い部屋。その一室のダブルベッドの上に、加賀、瑞鶴、そして中田の3人は寝そべる。配置はというと、壁側から瑞鶴、中田、加賀の順番。艦娘2人に中田がサンドされる形になる。

 

夏の暑い時期であるため、掛け布団は薄い。幸運な事にいつも大きめのサイズの掛け布団を中田が使っていた為に、3人でも全員が無理なく収まった。

 

普段ならこの布団には中田1人で寝ているため、スペースも有り余って、どことなく解放感の高い睡眠を取れるのだが、今日はこの麗しい女性2人にサンドされ、布団の中は3人の体温でポカポカと温かかった。

 

エアコンの乾いた音だけが部屋に響く。その中に、わずかに聞こえる3人の呼吸音。午後から酷暑の中で元気いっぱいの駆逐艦娘2人と野球を楽しんだ中田。執務終わりのポカポカとした眠気が未だ取れない加賀。いずれもすぐに眠れそうな状態ではあるのだが、状況が状況のために中々寝つけない。

 

 

 

そんな中、瑞鶴は瑞鶴でノリだけで起こしたこの突飛な行動に少しずつ後悔を覚え始めていた。

 

瑞鶴(ちちちちょっと待って!?添い寝って、ここ、こんなに緊張するものなの!?///)ドキドキドキ

 

お互いの体温が感じ取れる程の距離。そして、時より聴こえてくる中田の息を吐く音が、瑞鶴の耳をくすぐる。

 

瑞鶴(な、なんか…凄く生々しいというか…恥ずかしいような…)ドキドキ

 

異性との添い寝など未経験であった彼女にとって、楽観的に挑めるような所業ではなかったのだ。

 

瑞鶴(うぁああー!!///何やってんだよ20分前の私!!//)

 

そうして悶える瑞鶴の隣に、無意識に伸びてくる中田の左腕。その鍛え上げられた美しさすら感じる、まさに漢というべき二の腕に、瑞鶴の心は更に渦巻く。

 

瑞鶴(わわわ!?大河さん、腕近い!近いって!?///)ボッ

 

瑞鶴(…でも、凄くカッコいい……//)

瑞鶴(こんな人がいつも近くにいる加賀さんは…惚れちゃうのも無理はないよね…)ドキドキ

瑞鶴(加賀さんより私の方が寝られないよ〜……)ウガー

 

 

 

 

 

 

そんな瑞鶴を尻目に、加賀と中田の2人はこちらも同様の現象が起きていた。

 

 

中田(そそそそそ、添い寝ってどーすりゃぁいいんだよ!!あ、頭でも撫でてみるか……?いやだめだ!!恋人でもねぇのにそれはセクハラじゃねぇか!!)バクバクバク

加賀(あぁ〜…ついに添い寝が始まってしまったわ…ど、どうすれば…)ウズウズ

 

ソワソワして落ち着かない2人。心臓の鼓動が聞こえそうなほど近づいているので、落ち着こうにも落ち着かない。

 

 

 

中田(そ、そういえば……加賀は悪い夢を見ていたとか言っていたな……なら、少し雑談でもして気を紛らわすか…?それに、話してたら緊張も解けるかもしれねぇ…)

加賀(さ、流石に落ち着きません…ここは、中田さんとお話しして、気を紛らわせましょう…)

 

中・加「あの、」

 

中田「」

加賀「…どうぞ」

中田「さ、サンキュ」

中田「その…さっき悪い夢を見たって言ってたけど、どんな夢だったんだ?」

加賀「…え?」

 

加賀からして、そこは盲点だった。瑞鶴がついた咄嗟の嘘だったためにその後のカバーを考えていなかったのだ。

しばらく悩んだ後に、不謹慎ではあるが艦娘ならでは嘘を使う事にした。

 

加賀「その…沈む時のことを夢で見ました」ボソッ

中田「…そうか。そりゃ、確かに悪夢だな」

 

加賀は夢で見ていないとはいえ、その言葉を口にしただけで思い出す。昭和17年、6月5日のあの時を。

 

加賀「最初に赤城さんがやられて…その後、米軍機が私と蒼龍に向かって…黒い黒い爆弾を、落としていきました」

中田「…」

加賀「あの時の痛みは、本当に……忘れられません」

 

嘘は嘘だが、この言葉の意味は本当なのだろう。

中田がふと見た時の加賀のその顔は、恐怖と悔しさで満ちていた。

 

加賀「艦上から、沢山の悲鳴が聞こえたんです。その中には、『もうだめだ』と叫ぶ将校の声も混ざっていて、その時に私は感じたんです。『死ぬんだな』って」

 

嘘を誤魔化すために語られた過去は、筆舌に尽くし難く、重い空気を部屋にもたらす。

 

 

加賀「正直、今でも考え込む事があります。あそこで私たちが負けていなければ、空襲で亡くなった国民も、特攻隊として敵空母に突っ込んだ彼等も、そして…孤軍奮闘で沈んでしまった海軍艦艇も…助かったんじゃないかって」

 

瑞鶴「それは私も同じよ。加賀さん」

 

瑞鶴が中田の後ろから顔を出す。

 

瑞鶴「私も、翔鶴姉も、あの戦いには航空隊不足で参戦できなかった。本土から祈ることしか出来なかった。でも、いざ帰ってきたと思ったら、戦艦や重巡ばかり。空母は全滅したって聞いた時は、本当に悔しかった」

瑞鶴「でも、その時は艦艇だったから、その感情は表に出せない。そこから私と翔鶴姉が一航戦を継いだけど、私達は加賀さん達みたいな活躍は出来なかった…」

 

瑞鶴「ミッドウェーに、私たち五航戦も参加できてたら、空母6人、全員であの戦いを生き抜けたかもしれないって今になって考えると、私、時々泣きそうになっちゃうんだよね…」

 

加賀「…なんだが、雰囲気を暗くしてしまったわね。ごめんなさい…」

瑞鶴「いやいや…加賀さんのせいじゃないよ…」アハハ…

 

咄嗟に出てきた言葉は、人に同情されるような重たいものぱかり。

 

 

相変わらず、やはり私は人を笑顔にすることはできないのだろうか…加賀がそう思っていたその時、真ん中の中田が2人を勢い良く、そのまま自分の方に片腕ずつで抱き寄せた。

 

加・瑞「!?///」

 

 

中田「ま、まぁそんなに卑下しないでくれよ。ふ、2人のせいでまま、負けちゃったわけじゃないんだし」プルプル

加賀「」(・∀・)?

瑞鶴「……フフッ」

中田「…おい、瑞鶴、笑うんじゃねぇ」プルプル

瑞鶴「いや、ごめんなさい。笑うつもりは…フフッ」

加賀「??」

瑞鶴「だって大河さん、普段慣れないことして震えてるの…なんだか可愛くて…フフフッ」

加賀「」(゚∀゚)

中田「…加賀、口が開いてるぞ」

加賀「へ!?///」

瑞鶴「アハハハ!!もうだめ!!2人とも面白すぎるって!!」アハハハハ

 

ついに瑞鶴が声を上げて笑い出してしまった。どうやら中田の可愛い反応に加えて、これまた珍しい加賀すっとぼけた顔に瑞鶴は限界に達したらしい。

 

そんな瑞鶴を見た加賀と中田も思わず顔が綻ぶ。過程はどうあれ、なんとか加賀と瑞鶴の落ち込んだ心を紛らわす事には成功したようだ。かなり不器用な方法ではあるが、しっかりその考えは2人に伝わっている。

 

 

 

 

加賀「では、次は中田さんにお話ししていただきましょう。私たちが自分達のことを話したのですから、貴方も自分の事を話すべきではなくて?」フフッ

瑞鶴「確かに!聞きたいよ〜」ウリウリ

中田「ん〜、なに話しゃいいんだ?」

加賀「そうですね…では、中田さんが海軍に入った理由を聞かせてください」

瑞鶴「あ、それは私も聞きたいかも!」

加賀「では、決まりですね」

中田「たしかに、そーいや話してなかったな…いい機会だし、聞いてもらおうかな」ニシシ

 

 

中田「俺が海軍を志すようになったのは、確か…中2の時だったかな。その時、俺は石川県に住んでてな、ある時、爺ちゃんに広島の呉まで旅行に連れて行ってもらったことがあるんだよ」

  「そん時、じいちゃんがある船に乗せてくれたんだ。」

  「その船が、護衛艦かが」

加賀「!!」

中田「じいちゃんが、『この船はわしらの石川県と縁があるんだぞ〜』って言ってて、なんのことかわからなかったから調べたんだ」

加賀「石川県は、旧加賀国の一部…」ボソッ

中田「それを知って、なんか無性に嬉しくなったんだ。軍艦とか今まで興味なかったんだけど、自分の住んでる所の名前を持つ船が日本を守ってるって考えたらな」フフ

 

中田「そんで、その日が誕生日だった俺に、じいちゃんがサプライズでプラモを買ってくれたんだ」

中田「1つは護衛艦『加賀』、もう一つは…」

 

中田「空母『瑞鶴』だ」ニコッ

 

中田「かがに瑞鶴、2隻の船に、俺の胸はむちゃくちゃ高まったんだよ」

中田「そんで、その時に決めたんだ。「国を守る人間になろう」って」

 

 

この言葉に、2人は嬉しそうに微笑を浮かべる。

 

前世では自分達の不甲斐なさのせいで日本人に迷惑をかけてしまった。だから、艦娘となった今は、その償いをするべく頑張ろう。その思いで彼女達は海を駆けていた。その自らが課した重圧に、時には枕を濡らす夜だってあったのだ。

 

でも、こうして前世をカッコいいと言ってくれる人が、自分たちの身近にいる。そして、自分達の姿が、こうして彼を軍人へと導いた。その思いに、胸を熱くさせずにはいられなかったのだ。

 

 

瑞鶴「大河さんは…優しいね」

中田「?」

瑞鶴「私…前世に自信なんて…持っていいのかな?私達が負けちゃったせいで…」

中田「そうじゃないよ」

中田「中にはそう言う人もいる。でもさ…悪いのは戦争なんだ。そして、それを仕掛けた国の偉い奴らだ。君たちは…多くの人を守った。戦争という理不尽と戦い、生きることすら許されなかった時代を必死になって生き抜いた。その勇気ある姿勢に…俺は憧れたんだぜ?」ニコッ

 

加賀「…嬉しい事を言って下さいますね」ニコッ

その時、ここに来てようやく加賀が心から安堵したような笑みを浮かべる。嘘を取り繕うために咄嗟に出た自らの言葉に勝手に落ち込んだ自分に、ここまで優しく接してくれる。温かな感覚を彼女は覚える。

 

 

 

ナデ…ナデ…

 

加賀、瑞鶴が中田の温かな一面に心を癒されていたその時、2人の頭に中田の手が伸びる。彼は優しく彼女たちを撫で始めた。

 

 

中田「その…嫌…か?」オロオロ

 

中田は2人の顔色を伺うように問う。どこまで行っても純粋な彼に、2人は心のなかで笑みを浮かべる。

 

加賀「いえ…むしろ、これは気分が高揚します//」ニマニマ

瑞鶴(加賀さん…ニヤけを隠しきれていない…)ニガワライ

 

とはいえ、瑞鶴も彼に頭を撫でられることに不快感など全く持って覚えなかった。

 

むしろ、心地よい。心の隅々まで温かな気持ちがにじみわたる。

 

高校球児特有の、手のゴツゴツしたマメも、彼の人柄が滲んでいて2人には癒しになっていく。

 

 

中田も中田で、撫でている側であるが彼も心地よい気持ちだった。

 

寝るために髪を下ろした2人は、彼には新鮮な景色に映っていた。ただ、彼女たちのよく手入れされたスベスベでサラサラな、どこまでも手が溶け込んでしまいそうな感触に、撫でながら癒しを与えていた。

 

 

 

 

 

無言でしばらく彼の頭撫での感覚を味わっていた2人だったが、次第に眠気が襲ってくる。

 

 

中田(そろそろ、2人も寝落ちそうだな…)

中田(やべ、俺も眠たくなってきた)ウトウト…

 

その彼の腕に、突如両脇の2人が優しく抱きつく。

 

中田「ん…どうした?」ウトウト…

眠いため、彼もさほど驚くような感覚にはならない。

 

加賀と瑞鶴で胸の大きさには違いがあり、加賀のほうが大きく腕が埋まる感覚がある。とはいっても2人とも立派な女性のため、瑞鶴の胸も確かにその柔らかみを感じる。

 

また、胸以外にも、2人の柔らかな肌、シャンプーのいい香りが彼を大きく眠りにいざなう。

 

 

加賀(睡魔の勢いに任せて抱きついてみましたが……)

加賀(これは…とても良いものですね……)ウトウト…

 

瑞鶴(はぁぁ…大河さんの腕、抱きつくとすごく気持ち良い…ヤバ…これ、もう寝ちゃう…)ウトウト…

 

 

中田は2人の静かな呼吸音、体温、体の感覚をその身に直接感じながら、徐々に瞼を閉じていく。

 

 

 

その時、どこからともなく2人は穏やかな寝息を立てだす。とうやら眠ってしまったらしい。

 

最後に中田は2人の頭をもう一度撫でる。2人は気持ちよさそうな笑みを浮かべた。

 

この2人の表情を合図に、彼もまた、眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄れゆく意識の中、彼は心のなかで、もしくは声に出ていたかもしれないような、そんな寸前の状態で言葉を発す。

 

 

 

 

中田「2人共…おやすみ……」

 

 

 

  

 

スゥ…スゥ……

 

  

 

 

 

 

静かな3人の寝息が、小さな鎮守府の一角で響き渡る。

 

 

 

 




ゆっくりになってしまいますが、しっかり投稿は続けるので、気長に待っていただけるとありがたいです!

また、活動報告欄で次回のお話でどの娘を書くかのアンケートを実施しております。よろしければご協力お願いいたします!
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