どうせ記憶を持ったまま生まれ変わるならよ●ばと!とかどうぶ●の森みたいな平穏な世界がよかったんだけど、どうやら転生したのはモンハンの世界らしかった。
前の人生を思い出した時は軽く絶望したものだ。ぬくぬくとした前世の世界とは違って、ここには冬眠し損ねたヒグマみたいなモンスターがウジャウジャいるし、なんなら人間同士の争いでも死ねる。人の命が紙切れより軽いそんな場所に転生したなんて聞いたら、どんなオタクでも同情してくれるに違いない。
とはいえ一度そんな世界に根を張ってしまったからには最期まで頑張るしかない。幸いにも俺にはモンハン用にチューンアップされたフィジカルがあるので、少なくとも野垂れ死ぬということはないだろう。どんな世の中でも結局は弱肉強食だからね。強ければよかろうなのだ。
そんな俺も長らくの勤労を認められて、生え抜きエリートの集いである調査団の一員に加えてもらえた。俺はその中でも屈指のエリート中エリート。そう、このゲームはワールド、
正直、島流し感は否めない。だってワールドはストーリーの骨子自体は壮大だが、キャラクターが非魅力的すぎてなぁ・・・ みんなしてありとあらゆるトラブルを主人公におっかぶせるスタンスがムカつくというか、モンスターに対しても調和(笑)というか・・・ そもそもモンスターを調べる「調査団」という題目がモンスターを狩るモンハンに合わなさすぎなんじゃないかってしみじみ
まあ物乞いにケチはつけられないものだから、しゃーない、あるもんで満足しようと考えていた時のこと。
「あの、となりいいですか?」
利発そうな、しかし聞くのもいやになってしまった声が聞こえた。
あー俺が一番嫌いなアイツね、適当に相手してビジネスライクに付き合おうと思いながら顔を向ければ───
「・・・?どうかしました?」
タ●ラントがそこにいた。
しまった、着せ替えしたまま戻してなかったやっべぇ。
わざわざ彼女用の汚い肌のシェーダーを用意しているという迫真のブスっぷり。
好奇心旺盛な食いしん坊というかわいらしいキャラ設定にあるまじき食への意地汚さ(なんせ本を読みながら肉を素手で食う)から始まり。
危機管理能力に欠けた無鉄砲な行動をたびたびやって主人公にその尻拭いをさせる、そういうやらかしをしておいてゴメンの一言もなく功績を自分“たち”のものにしようとする面の皮の厚さ。
あまつさえとあるモンスター絡みのクエストで社会人はおろか人間としてありえない行動を行うというマイナス要素の塊みたいなキャラで、プレイヤーからは非難轟々だった。
「んくっ・・・んくっ・・・んん~!このスープ、コクがあっていくらでも飲めます!」
対称的にとあるキャラが大変見目麗しく、受付嬢としても人間としても非常によくできており、だったらウチの受付嬢も彼女くらいちゃんとした性格にしろよという怒りの声があっちこっちから上がったのは言うまでもない。
当然、受付嬢──ウケツケジョーを美人にするMOD(何をトチ狂ったか余計ブスにするヤツもあった)が制作され、公式からも救済措置のためか着せ替え衣装を大量に準備された。その殆どが一番隠してほしい
「ほふ、ほふ・・・腸詰めも皮がパリッとしていて、とってもジューシー!」
殆ど、ということはいくつかは顔を完全に隠してくれる衣装もあったわけで。
俺が気に入ったのはタイ●ントだ。モンハンと同じゲーム会社で作られた某国民的ゾンビゲームに登場する生体兵器。そう、リメイク作品で多くのレ●ンを恐怖のどん底に叩き落としてきたアイツだ。
このスキンが導入されてからは彼女はずっとタイラ●トだった。タ●ラントにすればウケツケジョーのウザさもヘマも「頑張って人間のエミュをするけど時々失敗するドジっ子モンスター娘」として、優しい目で見ることができた。
・・・
今俺の目の前では●イラントが大変美味しそうに食事にいそしんでおられる。
スープを味わって飲み、程よく焼けた肉を頬張っては目尻をとろけさせ、時折窓の外を眺めて揺れる波を眺めている。ころころ変わる表情は将来への夢か希望かほのかに朱色を帯びており、もしもこれが美少女だったならいい年こいてときめいていたのは間違いないだろう。
・・・・・・・・・・・・・
えっぐい。超絶えっっっっぐい。
カ●コンの秀逸なモデリング力が大爆発してるからなおさらえぐい。
ブスに戻れとは言わないが、今からでもモブとかに変身してはくれないか?って頼みたいくらいえぎぃ。
「・・・・・・あの、ソーセージ食べます?」
視線に気づいたのか、気まずそうに肩をすぼめながらソーセージを取り箸でつまんで差し出すタイラ●ト。絵面が面白すぎるだろ。
「お、おォありがとう・・・・もらうよ」
これが転生特典なのだとしたらあまりにコロコロコミックすぎる。そう思いながらソーセージをいただいて、パキュッと齧り取った。
「あなた、推薦組でしょ」
自分の食事をもそもそ食していた俺は、不意に彼女に声をかけられた。
顔を上げると、笑みを浮かべてごっつい人指し指を立てたタイラン●がそこにいた。
「・・・まァな」
「ふふ、やっぱり」
「なんで、そう思うんだい?」
「女子の勘・・・だったら自慢できるんですけどね。あなたはちょっとした有名人ですよ?なんてったって、この船に乗る前からあなたのことは噂されてましたから!彗星の如く現れた女ハンター、その正体は・・・?って」
「へぇ、そいつはうれしいね」
女の子に話しかけられると好きになってしまうこの俺だが、バイオウェポンにときめくほど女日照りではない。・・・まあ彼女、俺の目から見てヤバすぎるだけで設定上では大変な美人なんだけども。伊達に男の娘属性を生やされかかっただけはあるぜ
「ところで、あなたのオトモはどこに行ったんです?直近までいたのは見てましたけど」
「甲板に。酔うとみんなそうなる」
あらら・・・とタイラ●トは苦笑いした。ほんと、慣れない酒を飲んでゲボを吐くんだから世話ねーな。
「あなたはどんな武器を使うんですか?熟練のハンターは武器にこだわるって聞きますが」
「ああ?・・・今は双剣かな」
「かっこい~!」
ていうか、あなたあなたってうっせぇわ。今からグチを垂れてもしょうがないが、俺はお前のダンナじゃねーんだと言いたくなってきた。
「あ、そういえば名前を聞いてなかった。あなたはなんていうんですか?」
心が読めんのかコイツ。まあ名乗らないのは実際スゴイ・シツレイだし名前くらいは明かしておくか。
「俺はアンバー・・・アンバー・アッシュグレイだ」
「かっこいい名前ですね!」
「あんま適当なこと言うなよ、好きになるだろ?」
「いえ、かっこいいですよ。モンスターをやっつけて、たくさんの人を守ってきた凄い人の名前なら、例えどっこいしょういちのすけだったりしてもすごくかっこいいとわたしは思います」
予想通りの人ですね、とタイラントは笑い、
「わたしはあなたの受付嬢です。アンバーさん、わたしの相棒になりませんか?」
そう、自信に満ちた表情で告げた。