異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
カスミ達はファミリアにおいて最大の危機?に直面している
あれから一日――。
朝食を終え、子どもたちが元気に外で遊ぶ中。
孤児院の食堂では、重苦しい空気が漂っていた。
テーブルを囲むのは、カスミ、ロメロ、そしてワタル。
「……なんてことだい。まさか、ここまでとはね……」
カスミが頭を抱える。
「ボクもここまでとは思ってませんでしたよ……」
ワタルも同じく沈んだ声。
「まさに忌々しき事態です……」
ロメロがトドメを刺すように言った。
――空気が重い。とにかく重い。
「個人経営の孤児院がこんなに厳しいなんて……」
「王都からの支援も少なく、今もギリギリです」
「そこに私たちが増えた。……食費が跳ね上がる一方ってわけかい」
カスミはため息をついた。
「これはもう、私も働きに出るしかないかね。パートでも――」
「いや“アルバイト”はいいんですけど、この人数だと効率悪いですよ!子ども五人に大人三人、それに一匹って、もはやパーティー編成おかしいですから!」
「確かにねぇ……前衛・後衛・ペット枠は揃ってるけど、肝心の収入がない」
「ゲームじゃないんですよ!?」
ツッコミ担当ワタル、即座に仕事。
そんな中、ロメロが咳払いを一つ。
「――それなら、“冒険者”になるのはどうでしょう?」
空気が変わる。
「冒険者?」
「はい。魔物討伐、護衛、配達、人探し……依頼を選んで報酬を得る職業です」
「なるほどねぇ、クエスト受注型の生活ってわけか」
「ゲーム脳やめてください」
「で、その“クエスト”ってやつはどうやって受けるんだい?」
「まずギルドで登録します。ランクはF〜S。最初はFで、採取や配達など簡単な依頼からですね」
「日雇いだけど、今の状況なら普通に働くより効率がいい、と」
「そういうことです」
説明を聞き終えたカスミは、ニヤリと笑った。
「いいじゃないか」
勢いよく立ち上がる。
「――決まりだね!今からギルドに行くよ、ワタル!」
「えぇ!?ボクもですか!?」
「当たり前だろ!ここに住む以上、労働は義務だよ!」
「急に現実的ぃ!?」
「働かざる者食うべからずだ!」
「昭和の母親みたいな圧やめてください!」
逆らえない。
ワタルは観念して立ち上がった。
◆
道中。
「そういえば、この先の教会に転生者がいるんですよね?」
「へぇ、この街にもいるのかい」
「せっかくだし寄っていきましょうよ!」
「いいね、同業者チェックといこうじゃないか」
「転生者を同業者って言うのやめてください」
◆
――グレイスフル教会。
「ちょいと邪魔するよ!」
「だから言い方ァ!?」
中から現れたのは、穏やかな女性。
「まあまあ、元気なお客さまですね」
「すみません、転生者の女の子に会いに来まして」
「まあ……あなた方も?」
女性は微笑んだ。
「ご案内しますね」
◆
案内された部屋。
そこには――
ベッドで爆睡する少女。
「……アスナさん」
深呼吸。
そして――
「起きなさい!!!」
「どひゃああああ!?」
飛び起きるアスナ。
「もう昼前ですよ!」
「えっ!?朝ごはんは!?」
「知りません!!」
完璧な流れだった。
そして。
アスナはボサボサの頭のまま、カスミを見る。
数秒の沈黙。
そして――
「でっっか!?峰不二子かよ!!」
空気が凍る。
「ボン!キュッ!ボン!の完成形じゃん!!」
「ちょっとキミィ!!」
ワタルが即ツッコミ。
「初対面だよ!?」
「なにメガネ。彼氏?」
「違うわ!!」
「だよねぇ」
「なんで即否定に同意するの!?」
そのまま部屋を出ようとするアスナ――
ガシッ。
「待ちな」
カスミの手が、頭を掴んでいた。
「態度が悪いねぇ……」
声が低い。
「……転生者って聞いて来たけど、外れだったかい?」
「ちょ!?転生者!?それ早く言いなさいよ!!」
態度、急変。
「とりあえずご飯!話はそれから!」
「自由人すぎる……」
◆
――食堂。
「ふぅ〜食べた♪」
満足げなアスナ。
「じゃ自己紹介ね。アスナ・タナハシ。よろしく」
「私はカスミ・ババだよ」
「……ババ、カスミ?」
何か引っかかる顔。
その横で。
「じゃあボクは――」
「メガネでいいわ」
「雑ゥ!!」
「あんたさぁ、その声……完全に声優の阪口大助でしょ」
「やめろォ!!」
机バン!!
「なんで皆ボクをあのキャラ扱いするんだ!!」
「え、だってその見た目でその声はもう確定演出でしょ」
「言うなぁぁぁ!!」
「メガネ=新八じゃないんだよ!!」
「ごめんごめん、似てない似てない」
「慰めが雑!!」
「じゃあ言い返すけどね!」
ワタル反撃開始。
「アスナちゃんだって声、完全に釘宮理恵系じゃないか!」
「はぁ!?」
「ツンデレテンプレボイス!!」
「誰がテンプレよ!!」
「しかも顔が神楽とナギ足して2で割った感じ!!」
「それ言う!?」
ヒートアップ。
その時――
「……いい加減にしな」
静かな声。
二人が固まる。
「アンタたち、うるさいよ」
カスミの一言。
「だってこの人が――」
「あとさ」
ワタルがふと呟く。
「カスミさんの声……」
空気が変わる。
「……完全に早見沙織ですよね」
沈黙。
アスナも頷く。
「わかる。あの透明感。包み込むような声質……なのに圧が強い」
「癒しと威圧のハイブリッドだ……」
「はやみんボイスで“ぶつよ?”は反則でしょ」
次の瞬間。
ガンッ!!
ガンッ!!
「アンタたち」
笑顔。
でも目が笑ってない。
「いい加減にしろって言ってるだろ?」
(もう殴ってるよ!!)
ワタル&アスナ、心のハモり。
――こうして。
ツッコミ役(確定)とツンデレ(確定)と、
はやみん系最強母が揃ったのであった。
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NEXT
「カスミ冒険者になる 後編」