異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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一難去って、また一難
カスミ達はファミリアにおいて最大の危機?に直面している


第9話 カスミ冒険者になる 前編

 

あれから一日――。

 

朝食を終え、子どもたちが元気に外で遊ぶ中。

孤児院の食堂では、重苦しい空気が漂っていた。

 

テーブルを囲むのは、カスミ、ロメロ、そしてワタル。

 

「……なんてことだい。まさか、ここまでとはね……」

 

カスミが頭を抱える。

 

「ボクもここまでとは思ってませんでしたよ……」

 

ワタルも同じく沈んだ声。

 

「まさに忌々しき事態です……」

 

ロメロがトドメを刺すように言った。

 

――空気が重い。とにかく重い。

 

「個人経営の孤児院がこんなに厳しいなんて……」

 

「王都からの支援も少なく、今もギリギリです」

 

「そこに私たちが増えた。……食費が跳ね上がる一方ってわけかい」

 

カスミはため息をついた。

 

「これはもう、私も働きに出るしかないかね。パートでも――」

 

「いや“アルバイト”はいいんですけど、この人数だと効率悪いですよ!子ども五人に大人三人、それに一匹って、もはやパーティー編成おかしいですから!」

 

「確かにねぇ……前衛・後衛・ペット枠は揃ってるけど、肝心の収入がない」

 

「ゲームじゃないんですよ!?」

 

ツッコミ担当ワタル、即座に仕事。

 

そんな中、ロメロが咳払いを一つ。

 

「――それなら、“冒険者”になるのはどうでしょう?」

 

空気が変わる。

 

「冒険者?」

 

「はい。魔物討伐、護衛、配達、人探し……依頼を選んで報酬を得る職業です」

 

「なるほどねぇ、クエスト受注型の生活ってわけか」

 

「ゲーム脳やめてください」

 

「で、その“クエスト”ってやつはどうやって受けるんだい?」

 

「まずギルドで登録します。ランクはF〜S。最初はFで、採取や配達など簡単な依頼からですね」

 

「日雇いだけど、今の状況なら普通に働くより効率がいい、と」

 

「そういうことです」

 

説明を聞き終えたカスミは、ニヤリと笑った。

 

「いいじゃないか」

 

勢いよく立ち上がる。

 

「――決まりだね!今からギルドに行くよ、ワタル!」

 

「えぇ!?ボクもですか!?」

 

「当たり前だろ!ここに住む以上、労働は義務だよ!」

 

「急に現実的ぃ!?」

 

「働かざる者食うべからずだ!」

 

「昭和の母親みたいな圧やめてください!」

 

逆らえない。

 

ワタルは観念して立ち上がった。

 

 

道中。

 

「そういえば、この先の教会に転生者がいるんですよね?」

 

「へぇ、この街にもいるのかい」

 

「せっかくだし寄っていきましょうよ!」

 

「いいね、同業者チェックといこうじゃないか」

 

「転生者を同業者って言うのやめてください」

 

 

――グレイスフル教会。

 

「ちょいと邪魔するよ!」

 

「だから言い方ァ!?」

 

中から現れたのは、穏やかな女性。

 

「まあまあ、元気なお客さまですね」

 

「すみません、転生者の女の子に会いに来まして」

 

「まあ……あなた方も?」

 

女性は微笑んだ。

 

「ご案内しますね」

 

 

案内された部屋。

 

そこには――

 

ベッドで爆睡する少女。

 

「……アスナさん」

 

深呼吸。

 

そして――

 

「起きなさい!!!」

 

「どひゃああああ!?」

 

飛び起きるアスナ。

 

「もう昼前ですよ!」

 

「えっ!?朝ごはんは!?」

 

「知りません!!」

 

完璧な流れだった。

 

そして。

 

アスナはボサボサの頭のまま、カスミを見る。

 

数秒の沈黙。

 

そして――

 

「でっっか!?峰不二子かよ!!」

 

空気が凍る。

 

「ボン!キュッ!ボン!の完成形じゃん!!」

 

「ちょっとキミィ!!」

 

ワタルが即ツッコミ。

 

「初対面だよ!?」

 

「なにメガネ。彼氏?」

 

「違うわ!!」

 

「だよねぇ」

 

「なんで即否定に同意するの!?」

 

そのまま部屋を出ようとするアスナ――

 

ガシッ。

 

「待ちな」

 

カスミの手が、頭を掴んでいた。

 

「態度が悪いねぇ……」

 

声が低い。

 

「……転生者って聞いて来たけど、外れだったかい?」

 

「ちょ!?転生者!?それ早く言いなさいよ!!」

 

態度、急変。

 

「とりあえずご飯!話はそれから!」

 

「自由人すぎる……」

 

 

――食堂。

 

「ふぅ〜食べた♪」

 

満足げなアスナ。

 

「じゃ自己紹介ね。アスナ・タナハシ。よろしく」

 

「私はカスミ・ババだよ」

 

「……ババ、カスミ?」

 

何か引っかかる顔。

 

その横で。

 

「じゃあボクは――」

 

「メガネでいいわ」

 

「雑ゥ!!」

 

「あんたさぁ、その声……完全に声優の阪口大助でしょ」

 

「やめろォ!!」

 

机バン!!

 

「なんで皆ボクをあのキャラ扱いするんだ!!」

 

「え、だってその見た目でその声はもう確定演出でしょ」

 

「言うなぁぁぁ!!」

 

「メガネ=新八じゃないんだよ!!」

 

「ごめんごめん、似てない似てない」

 

「慰めが雑!!」

 

「じゃあ言い返すけどね!」

 

ワタル反撃開始。

 

「アスナちゃんだって声、完全に釘宮理恵系じゃないか!」

 

「はぁ!?」

 

「ツンデレテンプレボイス!!」

 

「誰がテンプレよ!!」

 

「しかも顔が神楽とナギ足して2で割った感じ!!」

 

「それ言う!?」

 

ヒートアップ。

 

その時――

 

「……いい加減にしな」

 

静かな声。

 

二人が固まる。

 

「アンタたち、うるさいよ」

 

カスミの一言。

 

「だってこの人が――」

 

「あとさ」

 

ワタルがふと呟く。

 

「カスミさんの声……」

 

空気が変わる。

 

「……完全に早見沙織ですよね」

 

沈黙。

 

アスナも頷く。

 

「わかる。あの透明感。包み込むような声質……なのに圧が強い」

 

「癒しと威圧のハイブリッドだ……」

 

「はやみんボイスで“ぶつよ?”は反則でしょ」

 

次の瞬間。

 

ガンッ!!

ガンッ!!

 

「アンタたち」

 

笑顔。

 

でも目が笑ってない。

 

「いい加減にしろって言ってるだろ?」

 

(もう殴ってるよ!!)

 

ワタル&アスナ、心のハモり。

 

――こうして。

 

ツッコミ役(確定)とツンデレ(確定)と、

はやみん系最強母が揃ったのであった。

 

 

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「カスミ冒険者になる 後編」

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