異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
アスナはファミリアの近くにある木陰に身を潜め、息を殺して様子をうかがっていた。
(……まだ、帰ってきてない)
カスミたちの姿はない。
ほっと胸を撫で下ろす一方で、どこか落胆している自分に気づき、アスナは小さく唇を噛んだ。
――その背後に、気配が忍び寄る。
「おっす!アスナ!」
次の瞬間――
ぶわっ、と風が走った。
「ひゃっ――!?」
スカートがめくれ上がり、ピンク色の下着が無防備に晒される。
「ヒャッハー♪今日はピンクか♪」
下卑た笑い声。犯人はロジーだった。
「――っ!!」
アスナの顔が一瞬で真っ赤に染まる。
だが次の瞬間、その怒りは爆発した。
「何さらすんじゃあああッ!!この変態がッ!!」
ゴンッ――!!
容赦のない一撃がロジーの頭頂部に叩き込まれる。
「いってぇ!?いきなり殴ることねぇだろ!?」
「当たり前でしょ!乙女の尊厳を何だと思ってんのよ!!」
さらに追撃の“ぐりぐり”が炸裂し、ロジーは悲鳴を上げた。
そんな騒ぎに気づいたのか、子供たちが駆け寄ってくる。
「あっ!アスナお姉ちゃんだ!」
「ほんとだ、どうしたの?」
メリッサ、ノルン、キース、ニコル――次々と顔を見せる。
その様子を、ロメロが穏やかな笑みで見守っていた。
「こんにちは、アスナさん。今日も遊びに来てくれたんですね」
「い、いえ、その……カスミに用事があって……」
言い淀むアスナの前に、ニコルが不安げに近づく。
「あの……カスミお母さんと、知り合いなの?」
「……は?“お母さん”?」
思わず聞き返す。
「そうだよ。カスミさん、私たちのお母さんになってくれたんだ」
その言葉に、アスナは目を見開いた。
ロメロが静かにこれまでの経緯を語る。
それを聞き終えたアスナは、呆れたように息を吐いた。
「あのカスミがね……。今日会ったばかりなのに、相変わらず規格外ね」
「転生者というのは、皆そうなのですか?」
ロメロの問いに、アスナは首を振る。
「そんなわけないでしょ。私だってついさっき会ったばかりよ。……あいつが特別なのよ」
「……確かにな」
低い声が割り込む。
振り返ると、一匹の犬――いや、それ以上の存在感を持つ獣がいた。
「カスミの力は、常軌を逸している」
「……犬が喋ってる……?」
「こいつはポチだよ!」
キースが誇らしげに言う。
「カスミ母さんの飼い犬!」
「……いや、どう見ても普通の犬じゃないでしょ」
アスナはため息をつき、確信めいた目で問いかけた。
「……あんた、フェンリルでしょ?」
ポチ――元フェンリルは、一瞬で青ざめた。
「やめろ……あの女の話はするな……!」
震え出す巨体。
「カスミには逆らうな……あいつは……ヤバい……!」
「……何したのよ、あの人……」
呆れを通り越して、戦慄が走る。
――そんな中。
一人の女性が、ファミリアを訪れた。
「ごめんください。少し、お尋ねしたいのですが……」
整った身なり。柔らかな口調。
だが――その存在に、ニコルの顔色が一瞬で失われた。
「……ニコル?」
「た、たすけて……やめて……」
震える声。怯えきった瞳。
(……そういうこと)
アスナは察する。
窓から外を覗くと、少し離れた場所にガラの悪い連中が待機していた。
「……なるほどね」
低く呟く。
「“迎え”ってわけじゃない……“狩り”に来たのね」
ロメロが応対する中、アスナは子供たちを裏口から屋内へ避難させる。
外では、やり取りが続いていた。
「自分の子供を引き取りに来たんです!」
「お断りします」
やがて、ロメロが問いを突きつける。
「では、その子の名前を」
一瞬の沈黙。
「……クリフです」
「……ここにその名前の子はいません」
決定的だった。
「もう結構です。あなたにニコルを渡すことはできません」
その瞬間――女の顔が歪む。
「……チッ、めんどくせぇな」
豹変。
下卑た口調へと変わる。
背後から男たちが現れた。
「最初から力づくでいけばよかったんだよ♪」
ジノと呼ばれた男が笑う。
「どうせ身寄りのないガキどもだ。まとめて売り飛ばせばいい」
「決まりだな。全員攫え!」
ロメロが立ちはだかる。
「――通しません」
しかし、数の暴力には敵わない。
殴打。蹴り。嘲笑。
「子供たちは……守る……!」
それでも倒れない。
だが――
「くたばれ、ジジイ!」
鈍い音とともに、ロメロは崩れ落ちた。
「……っ!」
室内で見ていたアスナの拳が震える。
「どうすれば……!」
「アスナさん!」
ロメロの声が、かすかに届く。
「あなたが……守るんです……!」
その言葉で、アスナの目が変わった。
「……分かった」
子供たちを奥の部屋へと押し込み、扉を閉める。
「……時間の問題ね」
視線をポチへ向ける。
「巨大化して一掃できないの?」
「却下だ。街が消し飛ぶ。それにカスミに殺される」
「……それもそうね」
アスナはスマホを取り出した。
「――ワタル、出て!」
『アスナちゃん!?どこに――』
「いいからカスミに代わって!!」
数秒後。
『どうした、アスナ』
「ファミリアが襲われてる!ニコルの母親とチンピラが子供たちを攫おうとしてるの!ロメロさんもやられて――!」
一瞬の沈黙。
『……分かった』
声が変わる。
『すぐ行く。それまで持ちこたえな』
通話が切れる。
――その頃。
カスミはすでに走り出していた。
「先に行くよ、ワタル」
「は、速っ!?」
風を切り裂く速度。
まさに韋駄天の如く。
――そして、再びファミリア。
「見つけたぜ」
扉が破壊される。
アスナはモップを構えた。
「来るな!!」
振り下ろす。だが――
「甘いな」
あっさりと奪われる。
抵抗は無力だった。
「捕まえろ」
子供たちもろとも引きずり出される。
「放しなさいよ!!」
「いやだぁ!!」
泣き叫ぶ声。
嘲笑う男たち。
「いいねぇ、売れば大金だ」
デボラがニコルを見下ろす。
「親孝行しな。売られてさ」
その言葉に――
アスナの怒りが爆発した。
「ふざけるな!!」
全員の視線が集まる。
「自分の子供の名前も言えないくせに……よく母親面できるわね!!」
空気が凍る。
「……このガキ」
ジノが笑う。
「生意気だな。いい、教育してやれ」
取り巻きがアスナを引きずり出す。
「やめて!アスナお姉ちゃん!」
「離せ!!」
無力な叫び。
囲まれるアスナ。
――その時。
空気が、変わった。
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「親は子供の危機に駆けつける 完結編」a
カスミの声のイメージは、早見沙織以外は誰がいるでしょうか?
最近の母親を演じる声優って他に誰かいるかな?