異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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第13話 親は子供の危機に駆けつける 後編

アスナはファミリアの近くにある木陰に身を潜め、息を殺して様子をうかがっていた。

 

(……まだ、帰ってきてない)

 

カスミたちの姿はない。

ほっと胸を撫で下ろす一方で、どこか落胆している自分に気づき、アスナは小さく唇を噛んだ。

 

――その背後に、気配が忍び寄る。

 

「おっす!アスナ!」

 

次の瞬間――

 

ぶわっ、と風が走った。

 

「ひゃっ――!?」

 

スカートがめくれ上がり、ピンク色の下着が無防備に晒される。

 

「ヒャッハー♪今日はピンクか♪」

 

下卑た笑い声。犯人はロジーだった。

 

「――っ!!」

 

アスナの顔が一瞬で真っ赤に染まる。

だが次の瞬間、その怒りは爆発した。

 

「何さらすんじゃあああッ!!この変態がッ!!」

 

ゴンッ――!!

 

容赦のない一撃がロジーの頭頂部に叩き込まれる。

 

「いってぇ!?いきなり殴ることねぇだろ!?」

 

「当たり前でしょ!乙女の尊厳を何だと思ってんのよ!!」

 

さらに追撃の“ぐりぐり”が炸裂し、ロジーは悲鳴を上げた。

 

そんな騒ぎに気づいたのか、子供たちが駆け寄ってくる。

 

「あっ!アスナお姉ちゃんだ!」

「ほんとだ、どうしたの?」

 

メリッサ、ノルン、キース、ニコル――次々と顔を見せる。

その様子を、ロメロが穏やかな笑みで見守っていた。

 

「こんにちは、アスナさん。今日も遊びに来てくれたんですね」

 

「い、いえ、その……カスミに用事があって……」

 

言い淀むアスナの前に、ニコルが不安げに近づく。

 

「あの……カスミお母さんと、知り合いなの?」

 

「……は?“お母さん”?」

 

思わず聞き返す。

 

「そうだよ。カスミさん、私たちのお母さんになってくれたんだ」

 

その言葉に、アスナは目を見開いた。

 

ロメロが静かにこれまでの経緯を語る。

それを聞き終えたアスナは、呆れたように息を吐いた。

 

「あのカスミがね……。今日会ったばかりなのに、相変わらず規格外ね」

 

「転生者というのは、皆そうなのですか?」

 

ロメロの問いに、アスナは首を振る。

 

「そんなわけないでしょ。私だってついさっき会ったばかりよ。……あいつが特別なのよ」

 

「……確かにな」

 

低い声が割り込む。

 

振り返ると、一匹の犬――いや、それ以上の存在感を持つ獣がいた。

 

「カスミの力は、常軌を逸している」

 

「……犬が喋ってる……?」

 

「こいつはポチだよ!」

キースが誇らしげに言う。

 

「カスミ母さんの飼い犬!」

 

「……いや、どう見ても普通の犬じゃないでしょ」

 

アスナはため息をつき、確信めいた目で問いかけた。

 

「……あんた、フェンリルでしょ?」

 

ポチ――元フェンリルは、一瞬で青ざめた。

 

「やめろ……あの女の話はするな……!」

 

震え出す巨体。

 

「カスミには逆らうな……あいつは……ヤバい……!」

 

「……何したのよ、あの人……」

 

呆れを通り越して、戦慄が走る。

 

――そんな中。

 

一人の女性が、ファミリアを訪れた。

 

「ごめんください。少し、お尋ねしたいのですが……」

 

整った身なり。柔らかな口調。

だが――その存在に、ニコルの顔色が一瞬で失われた。

 

「……ニコル?」

 

「た、たすけて……やめて……」

 

震える声。怯えきった瞳。

 

(……そういうこと)

 

アスナは察する。

 

窓から外を覗くと、少し離れた場所にガラの悪い連中が待機していた。

 

「……なるほどね」

 

低く呟く。

 

「“迎え”ってわけじゃない……“狩り”に来たのね」

 

ロメロが応対する中、アスナは子供たちを裏口から屋内へ避難させる。

 

外では、やり取りが続いていた。

 

「自分の子供を引き取りに来たんです!」

「お断りします」

 

やがて、ロメロが問いを突きつける。

 

「では、その子の名前を」

 

一瞬の沈黙。

 

「……クリフです」

 

「……ここにその名前の子はいません」

 

決定的だった。

 

「もう結構です。あなたにニコルを渡すことはできません」

 

その瞬間――女の顔が歪む。

 

「……チッ、めんどくせぇな」

 

豹変。

 

下卑た口調へと変わる。

 

背後から男たちが現れた。

 

「最初から力づくでいけばよかったんだよ♪」

 

ジノと呼ばれた男が笑う。

 

「どうせ身寄りのないガキどもだ。まとめて売り飛ばせばいい」

 

「決まりだな。全員攫え!」

 

ロメロが立ちはだかる。

 

「――通しません」

 

しかし、数の暴力には敵わない。

 

殴打。蹴り。嘲笑。

 

「子供たちは……守る……!」

 

それでも倒れない。

 

だが――

 

「くたばれ、ジジイ!」

 

鈍い音とともに、ロメロは崩れ落ちた。

 

「……っ!」

 

室内で見ていたアスナの拳が震える。

 

「どうすれば……!」

 

「アスナさん!」

 

ロメロの声が、かすかに届く。

 

「あなたが……守るんです……!」

 

その言葉で、アスナの目が変わった。

 

「……分かった」

 

子供たちを奥の部屋へと押し込み、扉を閉める。

 

「……時間の問題ね」

 

視線をポチへ向ける。

 

「巨大化して一掃できないの?」

 

「却下だ。街が消し飛ぶ。それにカスミに殺される」

 

「……それもそうね」

 

アスナはスマホを取り出した。

 

「――ワタル、出て!」

 

『アスナちゃん!?どこに――』

 

「いいからカスミに代わって!!」

 

数秒後。

 

『どうした、アスナ』

 

「ファミリアが襲われてる!ニコルの母親とチンピラが子供たちを攫おうとしてるの!ロメロさんもやられて――!」

 

一瞬の沈黙。

 

『……分かった』

 

声が変わる。

 

『すぐ行く。それまで持ちこたえな』

 

通話が切れる。

 

――その頃。

 

カスミはすでに走り出していた。

 

「先に行くよ、ワタル」

 

「は、速っ!?」

 

風を切り裂く速度。

 

まさに韋駄天の如く。

 

――そして、再びファミリア。

 

「見つけたぜ」

 

扉が破壊される。

 

アスナはモップを構えた。

 

「来るな!!」

 

振り下ろす。だが――

 

「甘いな」

 

あっさりと奪われる。

 

抵抗は無力だった。

 

「捕まえろ」

 

子供たちもろとも引きずり出される。

 

「放しなさいよ!!」

「いやだぁ!!」

 

泣き叫ぶ声。

 

嘲笑う男たち。

 

「いいねぇ、売れば大金だ」

 

デボラがニコルを見下ろす。

 

「親孝行しな。売られてさ」

 

その言葉に――

 

アスナの怒りが爆発した。

 

「ふざけるな!!」

 

全員の視線が集まる。

 

「自分の子供の名前も言えないくせに……よく母親面できるわね!!」

 

空気が凍る。

 

「……このガキ」

 

ジノが笑う。

 

「生意気だな。いい、教育してやれ」

 

取り巻きがアスナを引きずり出す。

 

「やめて!アスナお姉ちゃん!」

「離せ!!」

 

無力な叫び。

 

囲まれるアスナ。

 

――その時。

 

空気が、変わった。

 

NEXT

「親は子供の危機に駆けつける 完結編」a




カスミの声のイメージは、早見沙織以外は誰がいるでしょうか?
最近の母親を演じる声優って他に誰かいるかな?
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