異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
転スラのゴブリンだって美少女がいるんだし!
いい流れなので、テンポを整えつつ
ラノベ風+ちょいシリアス+ギャグ強化で仕上げました
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ギルドで“姐さん”と呼ばれるようになってから数時間後。
昼過ぎ――
カスミ、ワタル、アスナの三人は、負傷したロメロが入院している病院へと見舞いに訪れていた。
白い壁に囲まれた静かな病室。
ベッドの上で体を起こしたロメロが、申し訳なさそうに頭を下げる。
「わざわざお見舞いに来ていただき、ありがとうございます。それに……孤児院の方も任せてしまって、本当に申し訳ない」
「構いやしないよ」
カスミは軽く手を振る。
「アンタはまず、自分の体を治すことを考えな。話はそれからだ」
その言葉はぶっきらぼうだが、どこか優しい。
ロメロは小さく微笑んだ。
*
しばらくして、病室に穏やかな空気が流れ始めた頃。
ワタルがふと思い出したように口を開く。
「ねえ、アスナちゃん。この世界って魔法あるよね?」
「あるわよ。攻撃魔法に回復魔法、あと転移とかね。まあ、ゲームみたいなもんだと思えばいいわ」
「だったらさ、ロメロさんの怪我も回復魔法で一発じゃないの?」
その言葉に、アスナはため息をついた。
「ワタルくん……現実はそんなに甘くないのよ」
「え?」
「回復魔法ってね、“保険が効かない”の」
「……はい?」
「軽い怪我ならまだしも、大怪我や骨折レベルになるとかなり高額。で――」
アスナは指を一本立てる。
「蘇生レベルになると、とんでもない金額になるわ」
「夢、壊れるなぁ……!」
ワタルは肩を落とした。
「まあ、そりゃそうか……便利すぎるもんな……」
*
そんな雑談の最中。
コンコン、とノックの音が響く。
「ロメロ・スペーシャルさんのご関係者ですか?」
入ってきたのは、白衣を着た医師だった。
「ああ、そうだけど」
カスミが応じると、医師は少し表情を曇らせる。
「少々……お話がありまして」
「……わかった」
カスミは静かに頷いた。
「ワタル、アスナ。ちょっと席を外すよ」
そう言い残し、医師とともに談話室へと向かう。
その背中を見送りながら――
「……なんか、ちょっと空気重くない?」
ワタルが小声で呟いた。
「まあね。でも――」
アスナは言いかけて、ふと視線を巡らせる。
「それより、さっきから気になってたんだけど……」
「ん?」
「この病院、種族バラバラすぎない?」
ワタルも周囲を見回す。
そこには――
肌が緑の人物。
やたら小柄な人物。
そして明らかに人間の倍はある体格の人物。
「……え、なにここ。ファンタジーの見本市?」
そこへ、ロメロが説明する。
「ああ、あの方々はそれぞれ別種族ですよ。緑の肌はゴブリン族、大柄なのがオーク族、小さいのがドワーフ族です」
――ピーヒョロロロロロ。
ワタルの脳内に、なぜかFAXの着信音が鳴り響いた。
「ちょっと待って!?ゴブリンとオークって、あのゴブリンとオーク!?」
「くくっ……あはははは!」
アスナが腹を抱えて笑い出す。
「いいリアクション!最高!」
「笑い事じゃないって!ゴブリンってもっとこう……アレだろ!?醜くて凶暴な小鬼的な!」
「この世界では違うのよ」
アスナはニヤニヤしながら言う。
「ちなみに私も最初は同じ反応したけどね」
「やっぱりかよ!!」
*
その時――
「ロメロさん、検温ですよ」
病室に入ってきたのは、一人の看護師。
薄紫の長い髪。整った顔立ち。
そして――少し尖った耳と、淡い緑の肌。
「どうも、サヤカさん」
ロメロが挨拶する。
ワタルは固まった。
再び――
ピーヒョロロロロロ。
「……アスナさん?」
「なによ」
「あの人……誰?」
「ゴブリン」
「嘘でしょ!?」
ワタルは思わず立ち上がる。
「どう見ても清楚系美人じゃん!?ただ肌が緑なだけで!」
「いいじゃない、美少女ゴブリン。私はアリよ」
「さらっと性癖カミングアウトした!?」
*
その騒ぎの最中――
「アンタら、何騒いでるんだい」
低い声が響いた。
振り返ると、カスミが戻ってきていた。
「ここは病院だよ。少しは静かにしな」
その一言で、空気がピシッと締まる。
「す、すみません……」
ワタルとアスナは素直に頭を下げた。
*
そして――
空気が変わる。
「……話がある」
カスミの声は、先ほどまでとは違っていた。
「ロメロ」
真っ直ぐに見据える。
「アンタ……末期の癌なんだってね」
――沈黙。
「……なんで言ってくれなかったんですか!?」
ワタルが思わず声を上げる。
ロメロは、静かに笑った。
「……皆さんと出会う前からです。もう手の施しようがないと……」
その声には、諦めが滲んでいた。
「孤児院も、いずれ閉鎖するつもりでした。子供たちも、別々の施設へ……」
「そんな……!」
アスナが言葉を失う。
「でも、それだけは避けたいんです」
ロメロは拳を握る。
「せめて、あの子たちだけでも――一緒に……」
そして。
ゆっくりと顔を上げる。
視線の先には、カスミ。
「カスミさん」
深く頭を下げた。
「どうか……ファミリアの院長を、引き継いでいただけませんか」
――間。
ほんの一瞬の静寂。
そして。
《「ああ!いいよ!喜んで!」》
即答だった。
「はやっ!?」
ワタルが叫ぶ。
「ちょっとカスミ!?もうちょっと考えなさいよ!?」
「何を?」
カスミはきょとんとする。
「私はもう、あの子たちの“母親”だ」
真っ直ぐな目で言う。
「だったら院長だろうが何だろうが、まとめて面倒みるさ」
その言葉に――
ロメロの目から、大粒の涙が溢れた。
「……ありがとうございます……!」
震える手で、カスミの手を握る。
「この場所は……私の全てなんです……!」
「まかせな」
カスミは強く握り返す。
「アンタの想いごと、全部引き継いでやるよ」
その姿は――
まさに“姐さん”だった。
*
こうしてこの日。
カスミは正式に――
孤児院『ファミリア』の院長となった。
その帰り道。
(ねえ、ワタル……)
(なに?)
(カスミってさ……経営とかできると思う?)
(……いや、戦闘特化型だよね完全に)
二人は同時に、同じ結論に至る。
((絶対トラブル起きるやつだ))
――その予感は、見事に的中することになる。
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『領主の責務 前編』