異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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なんとなく逆ハーレムっぽく(笑)


第17話 領主の責務 前編

 

 

ロメロから孤児院を引き継いで――ひと月後。

 

静かに、しかし確実にその時は訪れた。

 

ロメロ・スペーシャルは息を引き取り、

ファミリアの関係者たちによって、葬儀が執り行われた。

 

空は曇天。

重く垂れ込めた雲が、まるで残された者たちの心を映しているようだった。

 

「……さあ、アンタたち」

 

カスミは子供たちの背をそっと押す。

 

「ロメロのおじさんに、お別れをしな」

 

小さな足音が、静かに墓前へと進む。

 

「ロメロのおじさん……ありがとう」

「天国でも元気でね……」

 

震える声。堪えきれない涙。

 

その光景を見つめながら、カスミは目を細めた。

 

――あの男は、最後までこの子たちのことを考えていた。

 

その想いは、確かにここに残っている。

 

 

参列者は多くはない。

だが、その一人一人がロメロと深く関わった者たちだった。

 

「カスミさん。この度は心よりお悔やみ申し上げます」

 

「……ラルフか」

 

騎士団長ラルフが、静かに頭を下げる。

 

「忙しい中、よく来てくれたね」

 

「いえ……俺にとっても、ロメロさんは恩人でした」

 

一度言葉を区切り、ラルフは続ける。

 

「俺も……ここで育った孤児の一人です」

 

「そうかい」

 

「だから……正直、怖かったんです。この場所がなくなるんじゃないかって」

 

その言葉に、カスミは小さく息を吐いた。

 

「大丈夫さ」

 

短く、だが強く。

 

「ロメロの意思は私が引き継いだ。あの子たちも、この場所も――全部守る」

 

迷いのない声だった。

 

ラルフは、その言葉に救われたように微笑む。

 

「……本当に、不思議な人だ」

 

「何がだい?」

 

「普通なら、この役目を迷わず引き受けたりはしない。でもあなたは違う」

 

カスミは肩をすくめる。

 

「覚悟なんてものは、とっくにできてるだけさ」

 

「……現世、ですか」

 

ラルフが問いかけようとした、その時――

 

「――でさぁ!オレ、そいつに言ってやったんだよ!」

 

場違いな笑い声が、静寂を切り裂いた。

 

振り返ると、そこにはクリフ・デルタ・ロックハートの姿。

 

派手な服装に、軽薄な笑み。

両脇には、同じような空気を纏った女たち。

 

「おっ、カスミちゃーん。久しぶりじゃん?」

 

「……ここがどういう場所か、理解してるのかい?」

 

カスミの声は低く、冷たい。

 

「遊びに来る場所じゃない。帰りな」

 

ラルフも一歩前に出る。

 

「クリフさん。これ以上の無礼は許されません」

 

だが、クリフは鼻で笑った。

 

「相変わらず堅いなぁ。ちょっと顔見に来ただけだって」

 

女たちがくすくすと笑う。

 

その軽薄さが、場の空気をさらに冷やした。

 

「いい加減にしな」

 

カスミの一言が、鋭く突き刺さる。

 

「これ以上騒ぐなら――叩き出すよ」

 

一瞬、空気が張り詰めた。

 

クリフは舌打ちし、踵を返す。

 

「……チッ。覚えとけよ」

 

その目には、わずかな苛立ちと――歪んだ興味が宿っていた。

 

 

その後、スコットが現れ、謝罪し、ロメロを悼む。

 

そしてカスミは、変わらぬ覚悟を告げる。

 

「ロメロの意思は、私が引き継ぐ」

 

その言葉に、スコットは深く頭を下げた。

 

 

葬儀が終わり、人が引いていく。

 

静けさが戻った墓地で――

 

ラルフは何かを言いかけ、しかし言葉にできず去っていった。

 

その背中を見送りながら、カスミはぽつりと呟く。

 

「……若いねぇ」

 

 

――同じ頃。

 

ロックハート邸。

 

豪奢な部屋の中で、クリフはワインを傾けていた。

 

周囲では女たちが騒いでいるが、その声は彼の耳には入っていない。

 

「……カスミ、か」

 

低く呟く。

 

脳裏に浮かぶのは、あの気の強い女。

 

「いいよなぁ……ああいうの」

 

グラスを傾ける。

 

「簡単に従わない女ほど、落とした時が面白ぇ」

 

その目は、完全に歪んでいた。

 

「……そうだな」

 

机の引き出しを開ける。

 

中から取り出したのは、小さな瓶。

 

透明な液体が揺れる。

 

「前に使った“アレ”……まだ残ってたか」

 

にやり、と笑う。

 

「ちょっと強めのやつも、用意しとくか」

 

女の一人が不安げに言う。

 

「それって……違法なんじゃないの?」

 

「大丈夫だって」

 

クリフは軽く笑う。

 

「多少ヤバくても、どうとでもなる。ウチには“力”があるからな」

 

その言葉には、根拠のない自信と――腐った特権意識が滲んでいた。

 

「……待ってろよ、カスミ」

 

瓶を指で転がしながら、低く呟く。

 

「次は絶対――落としてやる」

 

その笑みは、もはやただの遊びではなかった。

 

静かに、しかし確実に。

 

悪意が、動き出していた。

 

 

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『領主の責務 中編』

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