異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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なんとなく逆ハーレムっぽく(笑)


第17話 領主の責務 前編

 

⸻

 

ロメロから孤児院を引き継いで――ひと月後。

 

静かに、しかし確実にその時は訪れた。

 

ロメロ・スペーシャルは息を引き取り、

ファミリアの関係者たちによって、葬儀が執り行われた。

 

空は曇天。

重く垂れ込めた雲が、まるで残された者たちの心を映しているようだった。

 

「……さあ、アンタたち」

 

カスミは子供たちの背をそっと押す。

 

「ロメロのおじさんに、お別れをしな」

 

小さな足音が、静かに墓前へと進む。

 

「ロメロのおじさん……ありがとう」

「天国でも元気でね……」

 

震える声。堪えきれない涙。

 

その光景を見つめながら、カスミは目を細めた。

 

――あの男は、最後までこの子たちのことを考えていた。

 

その想いは、確かにここに残っている。

 

*

 

参列者は多くはない。

だが、その一人一人がロメロと深く関わった者たちだった。

 

「カスミさん。この度は心よりお悔やみ申し上げます」

 

「……ラルフか」

 

騎士団長ラルフが、静かに頭を下げる。

 

「忙しい中、よく来てくれたね」

 

「いえ……俺にとっても、ロメロさんは恩人でした」

 

一度言葉を区切り、ラルフは続ける。

 

「俺も……ここで育った孤児の一人です」

 

「そうかい」

 

「だから……正直、怖かったんです。この場所がなくなるんじゃないかって」

 

その言葉に、カスミは小さく息を吐いた。

 

「大丈夫さ」

 

短く、だが強く。

 

「ロメロの意思は私が引き継いだ。あの子たちも、この場所も――全部守る」

 

迷いのない声だった。

 

ラルフは、その言葉に救われたように微笑む。

 

「……本当に、不思議な人だ」

 

「何がだい?」

 

「普通なら、この役目を迷わず引き受けたりはしない。でもあなたは違う」

 

カスミは肩をすくめる。

 

「覚悟なんてものは、とっくにできてるだけさ」

 

「……現世、ですか」

 

ラルフが問いかけようとした、その時――

 

「――でさぁ!オレ、そいつに言ってやったんだよ!」

 

場違いな笑い声が、静寂を切り裂いた。

 

振り返ると、そこにはクリフ・デルタ・ロックハートの姿。

 

派手な服装に、軽薄な笑み。

両脇には、同じような空気を纏った女たち。

 

「おっ、カスミちゃーん。久しぶりじゃん?」

 

「……ここがどういう場所か、理解してるのかい?」

 

カスミの声は低く、冷たい。

 

「遊びに来る場所じゃない。帰りな」

 

ラルフも一歩前に出る。

 

「クリフさん。これ以上の無礼は許されません」

 

だが、クリフは鼻で笑った。

 

「相変わらず堅いなぁ。ちょっと顔見に来ただけだって」

 

女たちがくすくすと笑う。

 

その軽薄さが、場の空気をさらに冷やした。

 

「いい加減にしな」

 

カスミの一言が、鋭く突き刺さる。

 

「これ以上騒ぐなら――叩き出すよ」

 

一瞬、空気が張り詰めた。

 

クリフは舌打ちし、踵を返す。

 

「……チッ。覚えとけよ」

 

その目には、わずかな苛立ちと――歪んだ興味が宿っていた。

 

*

 

その後、スコットが現れ、謝罪し、ロメロを悼む。

 

そしてカスミは、変わらぬ覚悟を告げる。

 

「ロメロの意思は、私が引き継ぐ」

 

その言葉に、スコットは深く頭を下げた。

 

*

 

葬儀が終わり、人が引いていく。

 

静けさが戻った墓地で――

 

ラルフは何かを言いかけ、しかし言葉にできず去っていった。

 

その背中を見送りながら、カスミはぽつりと呟く。

 

「……若いねぇ」

 

*

 

――同じ頃。

 

ロックハート邸。

 

豪奢な部屋の中で、クリフはワインを傾けていた。

 

周囲では女たちが騒いでいるが、その声は彼の耳には入っていない。

 

「……カスミ、か」

 

低く呟く。

 

脳裏に浮かぶのは、あの気の強い女。

 

「いいよなぁ……ああいうの」

 

グラスを傾ける。

 

「簡単に従わない女ほど、落とした時が面白ぇ」

 

その目は、完全に歪んでいた。

 

「……そうだな」

 

机の引き出しを開ける。

 

中から取り出したのは、小さな瓶。

 

透明な液体が揺れる。

 

「前に使った“アレ”……まだ残ってたか」

 

にやり、と笑う。

 

「ちょっと強めのやつも、用意しとくか」

 

女の一人が不安げに言う。

 

「それって……違法なんじゃないの?」

 

「大丈夫だって」

 

クリフは軽く笑う。

 

「多少ヤバくても、どうとでもなる。ウチには“力”があるからな」

 

その言葉には、根拠のない自信と――腐った特権意識が滲んでいた。

 

「……待ってろよ、カスミ」

 

瓶を指で転がしながら、低く呟く。

 

「次は絶対――落としてやる」

 

その笑みは、もはやただの遊びではなかった。

 

静かに、しかし確実に。

 

悪意が、動き出していた。

 

⸻

 

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『領主の責務 中編』

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