異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
青年は、まるで死んだ魚のような目をして、無言で立っていた。
外見からでも分かるほどの無気力と脱力感──まさに“人生詰みかけモード”である。
「おかえり、ギンガの兄貴。その顔……またパチンコで負けたでしょ?」
若者の一人が、帰ってきた青年──ギンガに声をかける。
「クソがァ!!なんなんだよあの台!!全然かからなかったぞ!!二度とやるか!!」
「だからやめとけって言ったじゃんよ。今回はいくら使ったの?」
「……20000クロノス」
「に、2万!?何やってんのアンタ……」
呆れ返る仲間たち。だがギンガは開き直る。
「うっせぇ!リーチが来たんだよ!“これは来る!”って思うだろ普通!?なのにアイツときたら!!」
思い出して再び地団駄を踏むギンガ。完全に情緒ジェットコースターである。
「まあまあ……それより今月の生活どうすんの?カツアゲでもする?兄貴、喧嘩だけは無敗だし」
「だな。それ以外は壊滅的だけど。っていうかヘタレ?(笑)」
「あと童貞な!彼女いない歴=年齢!(笑)」
「んだとコラァ!!ビリー!バリー!さりげなくマウント取ってんじゃねぇ!!俺だって彼女欲しいわ!!でもな!俺好みの女と出会えねぇんだよ!!」
ギンガ、魂の叫び。
「出たよ(笑)兄貴の理想また始まった」
「黒髪ロングで年上、スタイル抜群、料理上手で包容力あるお姉様タイプとか……そんなSSRキャラ、ガチャでも出ねぇよ」
「いたら俺らが先に会ってるっつーの(笑)」
「てめぇらァァァ!!俺の理想をバカにしたな!!ぶん殴る!!」
拳を振り上げ、ビリーとバリーを追いかけ回すギンガ。
完全に日常コントである。
──その様子を、物陰から無言で見つめる一人の男がいた。
「……」
⸻
➖ミスティ 転送宮殿➖
この日はレガイア王都へ向かう日。
カスミ、ワタル、アスナの3人が出発し、フユキはファミリアで子供たちと留守番だ。
「フユキ、留守を頼んで悪いね」
「いいのよ。どうせロメロの私物整理もあるし。それに……あたし、この街に引っ越すことになったの」
「えっ、そうなんですか?」
「ファミリアも気になるけど、元々こっちでお店をやる予定だったの」
「お店?……まさか“オカマバー”とかじゃないでしょうね?」
「よく分かったわね。近々開店よ。店名は『マチコDX』♪」
(いやそれ絶対、某ビッグな人リスペクトだろ)
ワタル&アスナ、心のツッコミが完全一致。
⸻
3人は転送宮殿へ向かい、受付で冒険者カードを提示。
レガイア王都行きの転送装置の前に立つ──が。
「ねえ……これ、天国にあったやつじゃない?」
「うん……間違いない。この“けったいな電話ボックス”忘れる方が無理」
「なんで異世界にあるのよ……」
「けったいな電話ボックスって……《小声》それボクがデザインしたんだけど……」
ワタル、開発者なのに扱いが雑。
「ちょっとワタル!ボケっとしてないで入るわよ!」
「あっ、ごめん!」
3人が装置に入ると、内部にはモニターがあり、目的地選択画面が表示されている。
ワタルが手際よく操作──
次の瞬間。
バリバリバリッ!!
「ぎにゃああああ!!忘れてたぁぁぁ!!この装置、電流流れるやつだったぁぁ!!」
「ちょ、体ビリビリするんだけど!?これ必要な工程なの!?」
「おいぃぃ!!(カスミさん、また変なこだわり出してる!!)」
謎仕様すぎる転送演出。
⸻
数分後、無事にレガイア王都へ到着。
そこは圧倒的な都会だった。
「ねえここ異世界よね!?なんでビルあるの!?しかも巨大モニター付き!?」
「本当だ……あの人たち“ケータイデンワ”使ってるよ」
「ほぼ新宿じゃない……?」
「前にキョウコさん言ってたでしょ?ミスティは大陸一のド田舎だって」
文明格差、エグい。
⸻
そんな中、鎧姿の男が声をかけてきた。
「あのっ!すみません!!もしかしてカスミさんでありますか!?」
──声、デカい。
「そうだけど……ああ、騎士団の……ラルフのとこの新人かい?」
「はっ!レガイア騎士団所属、ダイチ・ミサワであります!!」
ビシッと敬礼。
「ロックハート家の件では……その節は本当にありがとうございました!!」
深々と頭を下げる。
……一瞬、空気が静まる。
「……ああ。あの件かい」
カスミが静かに応じる。
──が。
「……あっ、いやその!ちょっと今の固すぎましたね!?テンプレ騎士ムーブ出ちゃいました!!」
ダイチ、突然崩れる。
「本音言うとマジで助かりました!!あの時ガチで詰んでました!!死亡フラグ乱立でしたからね!?」
「うるさいわよ!!声デカすぎ!!」
アスナ即ツッコミ。
「まるで檜山修之ボイスじゃないの!!」
「えぇっ!?そんなにですか!?」
「そんなによ!!ほぼ勇者王なのよ!!」
「確かに“我が名はダイチ・ミサワ!!”って言いそうになりましたけど!!」
「やめなさい!!」
ワタルが頭を抱える。
「っていうかなんで檜山修之のキャラってあんなに濃いんだ……?」
「分析するな!!」
ダイチ、再び姿勢を正す。
「……こほん。以後、騎士として──」
「いや無理でしょアンタ」
即終了。
「でありますと“っす”混ざってるわよ」
「えっ……あ、ほんとだ……」
「拙者……キャラの切り替えが甘いでござるか……?」
「増えた!?何その新キャラ!?」
「これは某侍キャラリスペクトで──」
「やめなさい!!」
⸻
「ていうかアンタ……その顔」
アスナが指差す。
「シロー・アマダっぽいのよ!!」
「何おう!?ならばそちらは三千院ナギと神楽を足して二で割った顔でござるな!!」
「はぁ!?」
「あとそこのメガネ!!」
ワタルを指差す。
「失敗した志村新八というか、ほぼ志村新八でござる!!」
「やめろォォォ!!それは禁句だァァァ!!」
ワタル絶叫。
⸻
収拾不能。
その時──
⸻
《大声》「何バカやってるの!?お兄ちゃん!!」
⸻
空気が変わる。
(この声……!)
ワタルとアスナが同時に振り向く。
⸻
NEXT:間抜けな不良グループ 中編
ギャグパートのネタが欲しい