異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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第2話 カスミ大地に立つ 中編

二人に迫る巨大な影――その正体が、じわじわと輪郭を持ちはじめる。

 

そして、それに真っ先に気づいたワタルは――

 

顔面蒼白、即死一歩手前。

 

「ひゃぁぁぁぁ!? フェ!フェ!フェンリルぅぅぅ!? なんでこんな初期エリアにボスが湧いてるんですかぁぁぁ!?」

 

もはやHPゲージが見えるならゼロ。膝から崩れ落ち、その場で震えるワタル。

 

一方――

 

「……なんだい?フェンリルって」

 

カスミ、通常運転。

 

目の前の巨大な狼(どう見てもラスボス級)を前にしても、微塵もビビらない。

 

「犬種の名前かい?珍しいねぇ。こんなでかい犬、ペットショップじゃ見かけないよ」

 

「ちょぉぉ!?カスミさん!?それチワワと同じカテゴリに入れちゃダメなやつです!!」

 

ワタル、必死のツッコミ。

 

「フェンリルっていうのは北欧神話に出てくる、世界を滅ぼすレベルの巨大オオカミで――つまりSランクどころか運営に怒られるレベルの存在で――!」

 

それを聞いたカスミは、深々とため息をついた。

 

「はぁ……オオカミ?じゃあ犬と親戚みたいなもんだろ。大きいだけで騒ぎすぎなんだよ」

 

「雑ぅぅぅ!?分類が雑すぎるぅぅぅ!!」

 

ワタルの精神がゴリゴリ削れていく中――

 

――ドォォォン!!

 

フェンリルが地を揺らし、咆哮を放った。

 

「ワォォォォォン!!」

 

空気が震え、木々がざわめく。

 

そして、低く唸る声が響く。

 

「……2ヶ月ぶりの人間(エモノ)か。いい匂いだ」

 

完全に捕食者の目。

 

だが――

 

「フェンリルさん!ボク達、脂肪少なめで美味しくないですよ!?返品不可ですけど!?」

 

「そんな理由で逃げられると思うな」

 

冷静に却下された。

 

フェンリルはニヤリと笑い、二人へと迫る。

 

「俺はな……人間が、大好物なんだ」

 

「へぇ、よく喋る犬だね」

 

「だから犬じゃないってばぁぁぁ!!」

 

しかしカスミは一歩も引かない。

 

むしろ――

 

ぐい、と前に出た。

 

「それよりアンタ。いきなり出てきて人を食おうなんて、ずいぶん物騒じゃないかい?」

 

完全に近所の迷惑犬に苦情を入れる主婦のテンションである。

 

その視線に、フェンリルの眉がピクリと動く。

 

「……人間の分際で、俺を睨むとはいい度胸だ」

 

再び咆哮。

 

「まずは貴様から食ってやる!!」

 

フェンリルが飛びかかった――その瞬間。

 

――バチィィィン!!!

 

乾いた音が森に響いた。

 

フェンリル、地面にめり込む。

 

物理的に。

 

「……は?」

 

ワタルの思考が停止する。

 

目の前では、白目をむいてピクピクしている“神話級モンスター”。

 

原因――

 

カスミの平手打ち。

 

「噛むんじゃない!全く!野良犬ってのはどうしてこう躾がなってないんだか!」

 

「だから犬じゃな――いやもういいや!!」

 

ワタル、諦めた。

 

(いやいやいやいや!?今のワンパンでボス沈む!?この世界バランス調整どうなってるの!?運営寝てる!?)

 

震える手で、ワタルはカスミのステータス画面を再確認する。

 

――そして、固まった。

 

【名前:カスミ・ババ 23歳 Lv.1

攻撃力:∞ 防御力:∞ 素早さ:∞ 器用さ:∞ 魅力:∞

固有スキル:NEW!『母は最強(つよし)』/スーパー召喚/???】

 

「む、む、無限大ぃぃぃ!?!?全ステ無限!?バグ!?チート!?いやもう概念!?」

 

さっきまで“普通の人”だったはずなのに、突然のインフレ。

 

しかもスキル欄が光っている。

 

「新スキル……?」

 

【『母は最強(つよし)』:怒り、または守るべき存在の危機に反応し発動。全ステータスが無限大になる】

 

「なんじゃそりゃああああ!!母は強いってレベルじゃねぇぞ!!宇宙最強じゃねぇか!!」

 

ワタル、オタク特有の早口で絶叫。

 

「いやボク、転生モノめっちゃ読んできましたけど!?こんなスキル初見ですよ!?公式チートじゃん!!ナーフ不可じゃん!!」

 

誰も聞いていないのにカミングアウト。

 

その時――

 

ピクッ。

 

地面にめり込んでいたフェンリルの指(?)が動いた。

 

「……あ、起きる!?第二ラウンド!?」

 

ワタルが青ざめる。

 

しかしカスミは腕を組み、仁王立ち。

 

「ほら、もう一回躾けてやるよ」

 

完全に“母”。

 

フェンリル vs 母。

 

勝敗は――言うまでもない。

 

――次回

『カスミ、大地に立つ(物理) 後編』

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