異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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タマモクロスのねんどろいど化キター(・∀・)ー!
ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘


第32話 出会いは突然に 中編

「おい! こっち! こっちに来いや! アンタ、カスミやろ!」

 

 騎士団から逃げる最中――。

 

 王都の大通りを全力疾走していたカスミたちの耳に、突然そんな声が飛び込んできた。

 

 声のした方を見ると、人混みの中からスーツ姿の小柄な少女が必死に手招きしている。

 

 オレンジ色のショートカット。

 小柄な体格。

 一見すると十歳前後の少女にしか見えない。

 

 しかし、その瞳には妙な自信と貫禄が宿っていた。

 

「えっ!? 誰!? カスミの知り合い!? 知ってるのカスミ!?」

「知らん! でも、この状況だと素直に従うしかないよ! 行くよ!!」

「ちょっと! 待ってくださいよ! 罠だったらどうするんですか!」

 

 ワタルが慌てて叫ぶ。

 

 だが、後ろからは騎士団の怒号が聞こえてくる。

 

 立ち止まって相談している暇などなかった。

 

 カスミは迷わず少女の後を追い、ワタルとアスナも慌ててその後に続く。

 

 少女に言われるがまま路地裏を抜けていくと、やがて一軒の大きな屋敷の前へとたどり着いた。

 

 門には立派な看板が掲げられている。

 

 ――『ナツコ不動産』

 

「『ナツコ不動産』?」

 

 ワタルが看板を見上げながら首を傾げる。

 

「ナツコ……ナツコ……最近聞いたような……。そう言えばカスミさんのこと知ってたみたいだけど、そもそもボクたちはレガイアには初めて来たのに……」

 

 そんなワタルの呟きをよそに、カスミは少女の顔をじっと見つめていた。

 

 数秒後――。

 

「ぷぷぷっ!」

 

 突然吹き出した。

 

「何で子供の姿なんだよぉ! 『ナツ姉』!」

「ナツ姉!?」

 

 ワタルとアスナの声が綺麗に重なる。

 

 少女――いや、『ナツ姉』は呆れたようにため息をついた。

 

「話はあとにしてくれるか? とりあえずこっちや」

 

 そう言うと、ナツ姉は屋敷の中へ入っていく。

 

 カスミたちも顔を見合わせながら、その後を追った。

 

 屋敷の中は不動産屋というより、高級ホテルのような内装だった。

 

 さらに奥へ進むと地下へ続く階段が現れる。

 

 ナツ姉は迷うことなく階段を下りていった。

 

 そのまま地下へ進むと、一枚の扉が現れる。

 

 扉には『応接間』と書かれたプレートが取り付けられていた。

 

 ナツ姉が扉を開く。

 

 中へ入ると――。

 

 豪華なソファー。

 

 大きなテーブル。

 

 そして、そのソファーに腰掛けながら優雅にコーヒーを飲んでいる男の姿があった。

 

 ダイチである。

 

 まるで今まで何事もなかったかのような、実にくつろいだ様子だった。

 

「ああっ! ダイチとマスミ! あんたらねぇ! よくも私たちを見捨てて逃げたわね!」

 

 カスミの怒声が部屋中に響き渡る。

 

 するとダイチはコーヒーカップを置きながら立ち上がった。

 

「何を言うでござるか! 初対面の人間に喧嘩を売ってくる輩を助ける義理はないでござろう!」

 

「んだとぉ! だからって、お前の妹が魔法をぶっ放さなければ大事にはならなかったんだぞ!」

 

「それは君たちがマスミをパチモン呼ばわりしたからで! 大体、君らだって新八のパチモンと釘宮キャラのパチモンではござらんか!」

 

「てめーコノヤロー! 誰がパチモンだ!」

 

 ワタルとアスナが同時に叫ぶ。

 

 特にワタルの反応は激しかった。

 

 黒髪のツンツン頭。

 四角いメガネ。

 妙にキレのあるツッコミ。

 

 そして何より、その声がどこか阪口大助を連想させるため、初対面の人間からは高確率で「新八じゃね?」と言われる。

 

 本人は全力で否定しているが、残念ながら説得力は薄かった。

 

 一方のアスナもまた、ツンデレ気味な言動と声質のせいで『釘宮キャラ』扱いされることが多い。

 

 つまりダイチの言葉は、二人にとって非常に腹立たしいものだった。

 

 しかし――。

 

 ゴン!

 

 ゴン!

 

 ゴン!

 

「「「ぐはぁっ!!」」」

 

 三人の頭に拳骨が落ちる。

 

 犯人はもちろんカスミだった。

 

「アンタらはいつまでもくだらない言い合いしてんじゃないよ!」

 

 三人は頭を押さえながらうずくまる。

 

「痛いでござらんか! カスミさん、あなたも騒ぎの原因の一人じゃありませぬか!」

 

 ダイチが涙目で抗議する。

 

 だが――。

 

「まだ言うかい?」

 

 カスミがギロリと睨みつけた瞬間。

 

「ひぃっ!!」

 

 ダイチは即座に口を閉じた。

 

 その変わり身の早さはある意味で芸術だった。

 

 そんな様子を見ていたナツ姉が腹を抱えて笑い出す。

 

「はっはっはっ! 相変わらずやなぁカスミ! 『騒ぎのある所に宍戸香澄あり』は転生した後でも健在やな!」

 

 ナツ姉は大笑いしながらソファーへ腰を下ろす。

 

 そしてポケットからチュッパチャップスを取り出し、口に咥えた。

 

 その仕草は妙に板についていた。

 

「ところで『ナツ姉』」

 

 カスミは改めてナツ姉の姿を見つめる。

 

「その姿は? それに、その子供じみた声も? 確か天界で転生前の容姿を設定したんだろ?」

 

 その問いに、ナツ姉は少しだけ遠い目をした。

 

 どうやら、その経緯には色々と事情があるらしい――。

 

「それがな――」

 

 ナツ姉はチュッパチャップスを口に咥えたまま、懐かしむように天井を見上げた。

 

「死んで天界に送られて神様に会ったんやけどな。転生の話をしとる途中で、急に奥さんがやって来てな」

 

 そこで一度言葉を切る。

 

 そして、どこか疲れたような表情を浮かべた。

 

「突然、『あんた! また天使族の女の子にちょっかいかけたやろ!』って怒鳴り出してな」

 

「……は?」

 

「……え?」

 

「神様が?」

 

 カスミ、ワタル、アスナの声が綺麗に重なった。

 

 ナツ姉は深々と頷く。

 

「神様がや」

 

「神様ってそんな人なの!?」

 

「ウチもびっくりしたわ! ほんで神様も『違う! あれは業務や!』とか言い出してな」

 

「最低だな神様……」

 

「いや、まだ決まった訳じゃないだろ!」

 

 ワタルのツッコミが飛ぶ。

 

 しかしナツ姉は構わず続けた。

 

「結局そのまま夫婦喧嘩が始まってな。転生どころやなくなったんや」

 

 どうやら天界も色々と大変らしい。

 

「そしたらルナって娘が出てきてな」

 

「娘さんいたんだ」

 

「おった。ほんでその子が『あとはアタシに任せて♪ 何か要望ある?』って聞いてきたんや」

 

「それで?」

 

「せっかくやから若い頃をやり直したいって言うたんや」

 

 ナツ姉は自分の身体を見下ろす。

 

「そしたらこうなった」

 

「極端すぎるだろ!!」

 

 ワタルが思わずツッコむ。

 

「若返るにも限度があるだろ!!」

 

「ウチもそう思うわ!!」

 

 珍しくナツ姉が即答した。

 

 

 

 するとアスナが何かを思い出したようにスマホを取り出す。

 

「カスミ、もしかしてこの人って『中野ナツコ』なの?」

 

「そうだけど?」

 

「あの『ベアー中野』?」

 

「そうだよ」

 

 アスナの口元がニヤリと歪む。

 

「……くふふ」

 

 嫌な予感しかしない笑みだった。

 

「ねぇワタル。『中野ナツコ』検索してみ♪」

 

「ん? 何か面白いの?」

 

 ワタルは素直に検索を始める。

 

 数秒後――。

 

「ぶふっ!!」

 

 盛大に吹き出した。

 

「だっはははははは!!」

 

 腹を抱えて笑い始める。

 

「お、おい! 何笑っとるんや!」

 

「だって!! この大女が前世の中野ナツコさん!?」

 

 ワタルはスマホの画面と目の前のナツ姉を何度も見比べる。

 

「まるで巨漢ハートじゃん!!」

 

「誰が巨漢ハートや!!」

 

「しかもアフロヘアー!!」

 

「余計なお世話や!!」

 

 ナツ姉のツッコミが追いつかない。

 

「それが今じゃ関西弁を喋るロリっ娘で、声が完全に大空直美さんじゃないですか!!」

 

 その瞬間。

 

 ナツ姉の動きが止まった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「そやそや♪」

 

 突然、ナツ姉は妙に愛嬌たっぷりのポーズを取る。

 

「前世のウチの身体はゴムみたいなモンでな~♪ どんな攻撃も柔らか~く包み込んでまうねん♪」

 

 そして。

 

「――って誰が拳法殺しやねん!!」

 

 スコーーーン!!

 

「いったぁぁぁぁ!!」

 

 いつの間にか取り出した巨大ハリセンがワタルの頭に直撃した。

 

 見事なノリツッコミだった。

 

「久しぶりに見たね。ナツ姉のノリツッコミ」

 

 カスミが苦笑する。

 

「あたたた……。いきなり何するんですか」

 

「あほう!! アンタが巨漢ハートとか言うからやろ!!せめて魔人ブウって言わんかい!」

 

「どっちも同じ巨漢キャラですよ!」

 

 見事な関西式漫才である。

 

 

 

 ひとしきり騒いだあと。

 

 カスミは改めてナツ姉の顔を見る。

 

「それよりもナツ姉。容姿よりも声がえらく子供っぽくなったね」

 

「ん?」

 

「前世では『ちびまる子』のお母さんみたいな声だったじゃないか」

 

 その言葉に、ナツ姉は少し怪訝そうな顔をした。

 

 そして足を組みながら大きくため息をつく。

 

「それなんやけどなぁ……」

 

 どうやら何か思うところがあるらしい。

 

「この世界の人らはともかく、一部の転生者たちがな」

 

「うん」

 

「ウチの姿を見たあと、声を聞いた途端に『タマモクロス!』『タマモクロスや!』って言うんや」

 

「……あー」

 

 ワタルとアスナが同時に納得した。

 

「何やその反応」

 

「いやぁ……」

 

 ワタルは苦笑いする。

 

「タマモクロスって競走馬の名前ですよね?」

 

「そうや」

 

「何でウチがタマモクロスやねんって話や」

 

 ナツ姉は心底不思議そうだった。

 

「それはですねナツコさん」

 

 ワタルは説明を始める。

 

「さっきも言いましたけど、ナツコさんの声が大空直美さんにそっくりなんですよ」

 

「ほう」

 

「で、その大空直美さんが演じている有名なキャラの一人がタマモクロスなんです」

 

「ほうほう」

 

「しかも関西弁です」

 

「ほう……」

 

「なので転生者からすると、ナツコさんを見た瞬間に『タマモクロスだ!』ってなるんですよ」

 

 ナツ姉は数秒ほど沈黙した。

 

 そして。

 

「安直やなぁ……」

 

 深々とため息をついた。

 

「それであいつらはウチのことをタマモクロスって呼んどるんか……」

 

「まぁ、気持ちは分かります」

 

「分からんでええわ!」

 

 即ツッコミだった。

 

 

 

「と言うかですね」

 

 ワタルはふと思い出したように口を開く。

 

「ナツコさんも大概ですけど、さっき街中で暴れてたマスミさんも相当でしたよね」

 

「ん?」

 

「完全に暴走女でしたし――」

 

 

 

 バタンッ!!

 

 

「誰が暴走女よ!」

 

 隣の部屋から勢いよく扉を開けて出てきたのは、当のマスミだった。

 

 額には青筋が浮かんでいる。

 

 どうやら会話は全部聞こえていたらしい。

 

「出たわね!」

 

 アスナがビシッと指を差す。

 

「よくも荒怠暴恣の如く街中で暴れた挙げ句に、ダイチと一目散に逃げてくれたわね!」

 

「やかましいわ! 元はと言えばアンタらが先に仕掛けてきたんでしょ!」

 

「何おう! それを言うなら――」

 

 そこまで言いかけて、アスナはふと動きを止めた。

 

 そしてマスミの身体をまじまじと見つめる。

 

 頭の先から足元までじろじろと観察したあと、妙に真剣な表情になった。

 

「……ねぇ、アンタって何歳よ?」

 

「は?」

 

 突然の質問にマスミは目を丸くする。

 

「い、いきなり何よ……」

 

「いいから答えなさい」

 

 アスナの目は本気だった。

 

 何を気にしているのかは誰にも分からない。

 

「十四歳だけど」

 

「!!!!」

 

 その瞬間。

 

 アスナの身体がプルプルと震え始めた。

 

「にゃんですってぇぇぇぇぇ!? じゅう……よんしゃい!?」

 

 部屋中に絶叫が響く。

 

 ワタルは頭を抱えた。

 

「何でそんなにショック受けてるのさ……」

 

 だがアスナは聞いていない。

 

 何やら一人で深刻そうな顔をしていた。

 

 そしてマスミもまた、意味が分からず困惑していた。

 

「何なのよこの人……」

 

 応接間の空気が妙な方向へ流れ始めた、その時だった。

 

 

 

 ――◆ギンガサイド◆――

 

 

 

 時は三十分ほど遡る。

 

 あの騒ぎから逃げ出したギンガ一行は、王都内の路地裏へと避難していた。

 

「ふぅー……ここまで逃げれば騎士団の奴らも追ってこないよな」

 

 ビリーが壁にもたれかかりながら大きく息を吐く。

 

 王都中を巻き込んだ大騒動だっただけに、全員疲労の色が濃かった。

 

「それにしても、とんでもない女だったなぁ」

 

 バリーが頭を掻く。

 

「マスミの魔法を弾き返すし、兄貴を一発でのしちまうし……あの女、一体何者なんだろうな」

 

 そして隣のギンガへ顔を向ける。

 

「なぁ、兄貴?」

 

「……」

 

 返事はない。

 

 ギンガはぼんやりと遠くを見つめていた。

 

「……あの女……許さねぇ」

 

 低く呟く。

 

 だが、その声には怒り以外の感情も混ざっていた。

 

「でも……何だ、この懐かしい気持ちは……」

 

「おーい、アーニーキー!」

 

 ビリーが手を振る。

 

「……ダメだこりゃ。我ここにあらず状態だ」

 

「兄貴が変なのはいつもの事じゃないか」

 

 バリーが肩をすくめた。

 

 そして、ふと思い出したように口を開く。

 

「そう言えばさっき兄貴を叩きのめした姉ちゃんって、兄貴のお姉ちゃんに似てたよな」

 

「ハズキ姉ちゃんかぁ……」

 

 ビリーが小さく呟く。

 

 その瞬間、場の空気が少しだけ重くなった。

 

「あの人が死んで一年……兄貴がああなったのも、ハズキ姉ちゃんが死んでからだったっけ……」

 

 ギンガは何も答えない。

 

 ただ静かに拳を握り締めていた。

 

 

 

 ザザッ――。

 

 

 

 その時だった。

 

 数人の荒くれ者が路地裏へ姿を現した。

 

 手には鉄パイプ。

 

 ナイフ。

 

 棍棒。

 

 見るからに碌でもない連中だった。

 

 男たちはニヤニヤと笑いながらギンガたちを取り囲む。

 

「よう、ギンガ」

 

 先頭の男が嫌らしい笑みを浮かべた。

 

「聞いたぜぇ?」

 

「……あ?」

 

「お前、さっき女と街中で喧嘩してコテンパンにされて、お漏らししたそうだなぁ?」

 

「何だとコラ!」

 

 真っ先に反応したのはビリーだった。

 

「兄貴は確かにあの女に負けたけど、お漏らしはしてねぇぞ! どこ情報だよ!」

 

「うるせぇ!」

 

 男が怒鳴る。

 

「お前はお呼びじゃねぇんだよ!」

 

 

 

 ドカッ!!

 

 

 

「かはっ!」

 

 ビリーの身体が吹き飛ぶ。

 

 男の拳が腹にめり込んでいた。

 

「ビリー!」

 

 バリーが叫ぶ。

 

「てめぇ! よくもやりやがったな!」

 

「お前もすっこんでろ!」

 

 

 

 バキッ!!

 

 

 

「うっ!」

 

 今度は鉄パイプが鳩尾に突き刺さる。

 

 バリーは苦悶の声を漏らしながら膝をついた。

 

「何だコイツら」

 

 別の男が鼻で笑う。

 

「弱っ!」

 

 周囲から笑い声が上がる。

 

「つーかギンガはいつまで呆けてんだ?」

 

「そんなにその女にやられたのがショックだったのか?」

 

「それなんだがよ」

 

 一人の男がニヤリと笑う。

 

「その女ってのがコイツの姉貴に似てるらしいぜ」

 

「はぁ?」

 

「マジかよ?」

 

 男たちが顔を見合わせる。

 

 そして次の瞬間。

 

「だっはっはっはっは!」

 

 爆笑が起こった。

 

「あのハズキにぃ!?」

 

「よりにもよってハズキかよ!」

 

 男たちは腹を抱えて笑う。

 

「何だよコイツ!」

 

「その女がハズキに似てたから間抜け面してたのか!」

 

「どんだけ姉離れ出来ねぇんだよ!」

 

「なになに?」

 

「ギンガってシスコンなの?」

 

 男たちは好き放題に笑い続ける。

 

 その中の一人が煙草を取り出した。

 

 火をつける。

 

 そして煙を吐きながら言った。

 

「結構有名な話らしいぜ」

 

「歳の離れた姉貴なんだがよ」

 

「親を早くに亡くして、ハズキが母親代わりとして育ててくれたんだってな」

 

「へぇー」

 

「これが笑えるんだぜ」

 

 男が下卑た笑みを浮かべる。

 

「ハズキのヤツ――」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 ドゴォォォォン!!

 

 

 

 男の身体が吹き飛んだ。

 

 何が起きたのか、誰も理解できなかった。

 

 ただ一つだけ分かる事がある。

 

 ギンガが動いた。

 

 それだけだった。

 

 男は壁へ激突し、そのまま地面へ転がる。

 

 白目を剥いていた。

 

「なっ!?」

 

「やりやがったな! ギンガ!」

 

 男たちが一斉に武器を構える。

 

 しかしギンガは構わない。

 

 ゆっくりと顔を上げる。

 

 その目には怒りが宿っていた。

 

 

 

「うるせぇ……」

 

 

 

 低い声が響く。

 

 

 

「姉貴の悪口を言うヤツは……」

 

 

 

 拳を握る。

 

 

 

「誰だろうと――ぶっ殺す!!」

 

 

 

 路地裏の空気が凍り付いた。

 

 普段のギンガを知る者なら、誰もが理解できた。

 

 今のギンガは本気で怒っている。

 

 そして、その怒りの矛先が向けられた者に待っているのは――。

 

 決して楽しい未来ではなかった。

 

 

 

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