異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
「ぎゃぁぁぁ!?フェンリルが目を覚ましたぁぁ!!」
ワタル、全力でフラグ回収。
「この人(?)絶対怒ってますよ!!カスミさんが余計なことするからですよ!!ほら見てくださいよこの“ボス再戦確定演出”!!」
「やかましいねぇ!」
一喝。
「こういうタチの悪い犬はね、最初が肝心なんだよ。ナメられたら終わりなんだから」
「だからなんでその分類だけ頑ななんですか!?」
(あれだ……アレだよな……。どんなゲーム機でも全部“ファミコン”って言うタイプのやつだ……)
言い合いをしているその最中――
ゴゴゴゴゴ……
地面にめり込んでいた“神話級モンスター”が、ゆっくりと起き上がる。
「……この人間風情が」
低く、重い声。
「フェンリルである俺に……舐めた真似を……!」
殺気、解放。
「人間の女――貴様だけは、絶対に許さん!!」
怒りゲージMAX。完全に第2形態突入である。
フェンリルは牙を剥き、悪鬼羅刹のごとくカスミへと襲いかかる――が。
「アンタ。まだやる気かい?」
カスミ、動かない。
避けない。構えない。
ただ、そこに“いる”。
そして――
睨んだ。
「……っ!?」
フェンリルの足が止まる。
(え、今たじろいだ!?あのフェンリルが!?)
ワタルの脳内で警報が鳴り響く。
そのまま、カスミは一歩、前へ出た。
そして――
「――お座り」
ギロッ。
空気が凍る。
森が静まり返る。
「な、なんだ今の……」
ワタルが震える声で呟く。
「完全に“あのシーン”じゃないですか……海の主を睨みで追い払う赤髪のアレ……!」
一方その頃――
(な、なんだこの女は!?)
フェンリル、内心パニック。
(あの一撃もそうだが……この威圧感……本能が“逆らうな”と叫んでいる……!?)
(いや待て俺はフェンリルだぞ!?神話の存在だぞ!?犬じゃ――)
「……お座り」
二度目。
低く、静かで、逆らえない声。
(やばい)
(これ、ガチのやつだ)
(次逆らったら“躾”じゃ済まないやつだ)
じり……じり……
フェンリル、後ずさる。
(やばいやばいやばい!!あの平手もう一発来たら普通に消し飛ぶ!!ヘルプ!!どこ!?お巡りさん!?いやここ異世界だった!!)
カスミ、さらに詰める。
逃がさない。
そして、トドメの一言。
「――お座り」
ギロッ。
「………………はい」
観念。
その瞬間――
ズズズズズ……
フェンリルの巨体が、みるみる縮んでいく。
神話級サイズ → 中型犬サイズ。
そして――
ちょこん。
完璧なお座り。
「よしよし。最初からそうしな」
カスミ、満足げに頷く。
「いいかい?大きいからって偉いわけじゃないんだよ。人様に牙向ける子はね、まず座る。話はそれから」
完全に育児方針である。
「ほら、お手」
「…………」
すっ。
フェンリル、お手。
「フェンリル手懐けたぁぁぁ!?!?」
ワタル、世界観が崩壊。
(神話って躾でどうにかなるんだ……)
「カスミさん……前世、何やってたんですか……?魔王とかですか……?」
「失礼だね。ただの専業主夫だよ」
即答。
「それより、この犬。これから人様襲わないように、ちゃんと躾け直さないとね」
「(だから犬じゃないってば!!)」ワタル&フェンリル(心の叫びシンクロ)
――数分後。
「さて、これからどうするかね」
「ボクに任せてください!」
ワタルはポケットから取り出す――スマートフォン。
異世界に似つかわしくない文明の利器。
「あんた、携帯なんて持ってたのかい」
「“スマートフォン”です!略してスマホ!ボク専用の固有アイテムで、スキルの代わりに神様から支給されました!」
「電話なんて喋れれば十分だろうに」
「いやその価値観、昭和なんですよ!!」
ワタルはアプリを起動し、地図を表示する。
「大丈夫なんですか?この世界、圏外じゃ……」
「神様製なので、どこでもフル電波です。いわば“神具”ですね」
「便利すぎて逆に怖いねぇ……」
数分後。
「ありました!ここから約50キロ先に“ミスティ”って街があります!」
「じゃあ、そこに行くよ」
即決。
こうして――
神話級モンスター(しつけ済み)を従えた主婦と、ツッコミ役の青年は、
最初の街“ミスティ”へと向かうのだった。
(誰がお供だコラ!!)
――NEXT
『はじまりの街ミスティ』そして孤児院(+しつけ教室開講予定)
各話にONE PIECEを始めとするパロディーネタをやろうと思っています