異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜 作:トンコツマン
カスミ達一行に待ち受けているものは・・・・
荒野を切り裂くように、三つの影が進んでいた。
ミスティの街へ――ただ一直線に。
歩き続けて、気づけば四十分。
「はぁ……はぁ……ちょ、ちょっと待ってくださいよ、カスミさん……!ボク、もう限界なんですけど……」
ワタルは膝に手をつき、その場に崩れ落ちる。呼吸は荒く、顔色も青い。
対するカスミは振り返り、呆れたように鼻を鳴らした。
「だらしないねぇ……アンタ、それでも男かい?たかがこの程度でへばるなんて、海に出たら三日も持たないよ」
「海どころか今ここで沈みそうなんですが……ボク、前世からインドア派でして……転生してもなおインドアというか……進化してないというか……」
「胸張って言うことかい、それ」
ため息ひとつ。だが、その目にはどこか面倒見の良さが滲んでいた。
「……しょうがない。少し休むよ」
そう言うとカスミは軽く指を鳴らす。
「来な――“スーパー召喚”」
空間が歪み、突如として現れる異質な建物。
それは――どう見ても“スーパーマーケット”だった。
ガラス扉、自動ドア、整然と並ぶ商品棚。
異世界の荒野に、あまりにも場違いな“日常”。
「……いや、なんでですか!?」
「私のスキルさ。便利だろ?」
店内では、どこか見覚えのある雰囲気の店員が淡々とレジに立っている。
カスミは迷いなく棚からお茶とおにぎりを手に取り、会計を済ませた。
【スーパー召喚――スーパーマーケットを呼び出し、買い物が可能】
「……ネットスーパーみたいですね」
「ねっと?よく分からないけどね、辺境で生きるなら“飯”と“水”は命だ。神様に見せられた中で、これが一番“生きる”スキルだった」
(生存特化すぎる選択理由……!)
ワタルは心の中でツッコむが、不思議と納得もしていた。
――この人は、強い。ただ強いだけじゃない。“生き抜く”強さだ。
***
休憩を終え、再び歩き出す前。
カスミがふと、隣の巨大な獣――フェンリルを見た。
「そういや、この子の名前、まだだったね」
「確かに……何かカッコいい名前が――」
フェンリルが口を開く。
「ああ、俺の名なら――」
「ポチだな」
「へっ?」
空気が、止まった。
ワタルとフェンリルの脳内に、なぜか“ピピッ”という不穏な着信音が響く。
「……カスミさん、今なんて?」
「ポチだよ。犬っていえばポチかシロだろ?」
「いやいやいやいや!!雑すぎません!?」
フェンリルも吠える。
「待て!俺には“ハルク”って――」
だが、カスミには聞こえていない。
既に歩き出し、長い髪を手早く結い上げる。
風になびくポニーテール。その姿は、妙に様になっていた。
(……なんだろう、この人。めちゃくちゃなのに、かっこいい……)
「行くよ、ワタル。ポチ」
「だから俺の名前は――!!」
「(小声)諦めた方がいいよ……あの人、たぶん世界の理屈より自分の理屈で動くタイプだから……」
「……チッ。好きにしろ……」
こうして、誇り高きフェンリルは――ポチになった。
***
それから三十分後。
ついに彼らは、ミスティの街へと辿り着く。
石造りの建物、行き交う人々、異国の匂い。
「ここがミスティか……」
「異世界って感じですねぇ……」
その時だった。
「やだ!離してよ!」
「うるせぇガキ!大人しくしろ!」
視線の先。
二人組の男が、幼い少女を袋に押し込もうとしていた。
一瞬。
カスミの表情から、すべての温度が消えた。
「――ワタル」
「はい!」
次の瞬間、彼女の姿は消えていた。
――ドゴンッ!!
カスミは男の顔面に強力なドロップキックを放っていた
男は三メートル先の大木に叩きつけられ、そのまま泡を拭いて失神する
残る一人。
カスミはゆっくりと顔を上げ、睨みつける。
「……失せろ」
その一言。
だが、それだけで十分だった。
男は仲間を担ぎ、逃げるように去っていく。
(……今の、完全に“覇気”じゃないですか……)
ワタルの背筋に冷たいものが走る。
「ワタル!その子を!」
「は、はい!」
袋を開け、少女を助け出す。
「うわぁぁん……怖かったよぉ……!」
震える小さな体。
ワタルが必死に声をかけるが、涙は止まらない。
その時――
「ワタル、私に任せな」
カスミがしゃがみ込み、少女と目線を合わせる。
そして、優しく抱き寄せた。
「もう大丈夫だ。怖い奴は、全部追い払った」
静かな声。
だが、不思議と安心感があった。
少女の震えが、少しずつ収まっていく。
やがて――
「……ありがとう、お姉ちゃん」
涙の中に、笑顔が戻った。
***
少女の名はノルン。
案内された先は――
「……孤児院?」
古びた建物。
看板には『孤児院 ファミリア』の文字。
「ノルンね、お母さんはもういなくて、お父さんも行方不明なの」
無邪気に笑うその言葉に、カスミは一瞬だけ目を伏せた。
「……そうかい」
その表情は、どこか遠い過去を見ているようだった。
「カスミさん?」
「……いや、なんでもないよ」
その時、扉が開き、初老の男が姿を現す。
静かに――だが確かな気配を纏って。
物語は、次の局面へ進む。
――
NEXT
「今日から私がアンタ達のお母さんだ! 前編」
次はこの作品の醍醐味の1つと言える話です
自信はありませんが、一生懸命書きます