異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜   作:トンコツマン

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始まりの街『ミスティ』へとたどり着いたカスミ達
ミスティに着いた矢先に誘拐現場に遭遇して少女ノルンを助ける
そして、ノルンの案内で孤児院『ファミリア』に行くのであった


第5話 今日から私がアンタ達のお母さんだ! 前編

「――どうも、はじめまして」

 

低く落ち着いた声が、静かに響いた。

 

「私はこの孤児院の院長を務めているロメロと申します。この度は……ノルンを助けていただき、本当にありがとうございました」

 

ロメロは深く、深く頭を下げる。

その背には、ただの礼ではない――責任と覚悟が滲んでいた。

 

「いいってことよ」

 

カスミは軽く手を振る。

 

「困ってる子供を放っとくほど、落ちぶれちゃいないんでね」

 

ぶっきらぼうな言葉。だが、その奥にある温度は確かだった。

 

カスミは視線を外へ向ける。

庭では、数人の子供たちが無邪気に駆け回っていた。

 

笑い声。

土を蹴る音。

――だが、そのどれもが、どこか儚い。

 

「……ここにいる子たちは、どういう理由で集められてるんだい?」

 

ロメロは一瞬、言葉を選ぶように目を伏せた。

 

「……多くは、親を魔物に殺された子供たちです」

 

静かに、だが重く。

 

「あるいは、逃げる途中で“足手まとい”として捨てられた子。……育児放棄で保護された子もいます」

 

空気が、冷える。

 

カスミの眉がわずかに動いた。

 

「……魔物、ねぇ」

 

「簡単に言えば化け物ですよ」

 

ワタルが口を挟む。

 

「この世界には“モンスター”っていう存在が――」

 

「アンタ、妙に詳しいじゃないか」

 

カスミの視線が鋭く刺さる。

 

ワタルは眼鏡をクイッと上げ、どこか得意げに口角を上げた。

 

「いやぁ、前世でそういう作品をいろいろと――漫画とかアニメとか――」

 

「はぁ……」

 

間髪入れずにため息。

 

「要するに、引きこもりのオタクってことかい」

 

「違いますよ!?文化に精通した健全な青少年です!」

 

「どの口が言ってんだい……」

 

軽口が交わされるが、その空気はどこかぎこちない。

 

――重い現実を、無理やり薄めているような。

 

「あの……」

 

ロメロの一言で、二人は我に返る。

 

「ああ、悪いね。話の腰を折っちまった」

 

カスミが顎を引く。

 

ワタルも咳払いをひとつ。

 

「先ほど、親を魔物に殺された子がいると……その子たちは、冒険者の子供なんですか?」

 

ロメロは庭へと視線を向けた。

 

「あそこにいる……赤い髪と緑の髪の少年、ロジーとキース。あの二人の両親は、共に冒険者でした」

 

子供たちは無邪気に笑っている。

だが、その笑顔の裏にあるものを、ロメロは知っていた。

 

「……一年前、討伐任務の最中に命を落としました」

 

短い沈黙。

 

「……そうかい」

 

カスミの声は、低かった。

 

「じゃあ、ノルンも――」

 

「いいえ」

 

ロメロは静かに首を振る。

 

「ノルンの場合は……少し事情が違います」

 

その時だった。

 

「ロメロおじさん!洗濯物、全部畳んでおいたよ!」

 

明るい声が場の空気を切り裂く。

 

現れたのは、十二歳ほどの少女。

 

「ありがとう、メリッサ」

 

ロメロは穏やかに微笑む。

 

「この方たちが、ノルンを助けてくれた人たちだ」

 

「……っ!」

 

メリッサの目が大きく見開かれる。

 

そして――

 

「妹を助けてくれて、本当にありがとうございます!」

 

深々と頭を下げた。

 

その動作は、年齢に似合わず、あまりにも“慣れていた”。

 

「いいってことよ」

 

カスミは短く答える。

 

「ほら、もういいから遊んできな」

 

「はい!……本当に、ありがとうございました!」

 

もう一度頭を下げ、メリッサは駆けていく。

 

その背中を、三人は無言で見送った。

 

――やがて。

 

ロメロが、ぽつりと呟く。

 

「あの子たちの両親は……二人を捨てたんです」

 

「……何だって?」

 

カスミの声が、低く震えた。

 

ロメロは目を伏せる。

 

「あの子たちは、二年前……外で魔物に襲われました。その時、両親は――」

 

一拍。

 

「……“生き延びるために”、二人を置いて逃げたそうです」

 

静寂。

 

風の音だけが、やけに大きく聞こえた。

 

「ふざけるな……!」

 

カスミの拳が、ぎり、と鳴る。

 

「自分の命惜しさに、子供を捨てただって……?そんなの、親でも何でもないじゃないか!」

 

怒りが、露わになる。

 

だが――

 

「カスミさん」

 

ワタルが静かに言う。

 

「それは……違うと思います」

 

「……何?」

 

鋭い視線。

 

だが、ワタルは目を逸らさない。

 

「極限状態で、人は正常な判断ができなくなる。……パニックの中で、最悪の選択をしてしまうこともある」

 

「だからって――!」

 

「擁護するつもりはありません。でも……」

 

言葉を選びながら、続ける。

 

「その結果を背負わされた子供たちは、今もここで生きているんです」

 

ロメロが、静かに頷いた。

 

「……はい」

 

そして、子供たちを見る。

 

「ここにいる子供たちは、確かに過去に傷を負っています。ですが……その痛みを糧に、前を向こうとしている」

 

風に乗って、子供たちの笑い声が届く。

 

「どうか……そのことだけは、理解していただけませんか」

 

カスミは何も答えなかった。

 

ただ、子供たちを見つめる。

 

走る姿。

転んで笑う姿。

手を取り合う姿。

 

――その全てが、あまりにも“強く”見えた。

 

「……チッ」

 

小さく舌打ち。

 

だがその目には、怒りだけではない何かが宿っていた。

 

拭いきれない感情。

そして――

 

かすかな決意。

 

――

 

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「今日から私がアンタ達のお母さんだ! 中編」

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