勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん   作:Mckee ItoIto

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(魔女パート)

 ハートフルな物語を目指してます。よろしくお願いします。



上司がよく無茶振りしてくるけど無ければ無いで少し物足りない

・・・

 

 

 

 ここは私の研究室である。つまり私の城とも言える。すなわち私の領域。

 ここの主は私であり、私はこの場の絶対支配者である。

 

 この場で私以上に好き勝手振る舞える存在など、許されてはならないのだ……!

 故に、例えどんな偉い奴が来ようが……私は負けない!

 

 そう、負けな……。

 

 負け……。

 

 ……。

 

 やっぱり偉い奴には勝てなかったよ……(諦め顔ダブルピース)

 

 なんか今日も今日とて皇帝様がお邪魔しに来てるよ。邪魔するんやったら帰ってやぁ?

 まあ普通に邪魔ではあるものの、別に対応する余裕が無いわけじゃないから別にいいんだけどさぁ……。

 今抱えてる仕事の納期は余裕綽々だし。修羅場状態なら例え皇帝だろうがおかえりいただくんだけどね……。

 

 私は権力が弱点属性な悲しい男。いや元男。

 断る理由がないなら相手しないわけにもいかないので、とびっきりのお菓子とお紅茶を用意してティータイムのセッティングするよ。

 せっかくだし今回は私もそのまま休憩がてら参加することに。作業も色々あってちょっと長引いちゃってたし。

 

 といってもまだ連続30時間程度だから楽勝だけどな! 昭和のサラリーマンより断然短いからヨシ!

 そもそもその時間の半分以上、仕事じゃなくて私用の使い魔くんの開発なんですけどね!

 いいだろ仕事の方もちゃんとやってんだから! 仕事の進捗は超順調だぞ!!

 

 でも使い魔くんの進捗はあまりよろしくないです(憤怒)

 3号は一切の成果をあげられなかったので残念ながらボツになりました。なので今はまだマシな手応えのある2号バージョン2.95with中継機を運用しつつ、4号の考案中。

 1号もそうだったのだけど魔術的に直接干渉するタイプはどうも難しいみたいだ。色々試したけど目標固定は結局一回も通せなかったよ。

 望遠は別の開発に流用できそうから3号の開発も無駄ではなかったけどねぇ。望遠術式、何となく皇帝様が好きそうな気がする。あとで報告するか。

 しかしホントマジであの無機物、過去の遺物の癖して手強いね。クソが。てか干渉不可範囲が広すぎなんだよクソが。

 今わかってるのは、使い魔くんたちの尽力による不干渉領域の逆算から何となく王国近辺にいたんじゃね? ってことくらい。曖昧すぎるわ。

 それ以上の絞り込みもできなくて遠隔サーチもできないとなると、もうあとは使い魔くんの視界のみで地道かつアナログに探すしかないんかなぁ。

 

 国中を、目視のみでの人探し。

 手詰まり魔女さん心の俳句(季語が無いので才能ナシ)

 

 こんなんシンプルに苦行じゃんよ……。

 

 ……というか、しばらく前からイヤなことに思い当たってるんだけど。

 あいつ王国の冒険者だからてっきり王国にいると思ってたけど……ひょっとして他の国に出てるとかあるのか?

 他国にもって考え始めると更に捜索難易度が跳ね上がるんですがそれは……。

 まあでも聖剣だって王国の外れにあったやつだし、あいつがあの後、他国に移る理由はない、はず……。

 

 ……いや、思い込みは魔術師最大の敵だ。一応検討しよう。

 だとすると候補は王国のほかに近隣の、教国、法国、獣国、若干離れてるけど帝国も範囲に入るか。

 王国はとりあえず王都に潜伏モードの使い魔くん2号たちを投入し始めたものの成果は未だ無し。

 あとの4ヶ国。やるしか、ないかなぁ。帝都にばら撒いたら皇帝様に怒られるかな……?

 

 あいつももっと派手に動いてくれたら冒険者たちの噂とかから特定できたりするのに。

 良くも悪くもあいつは地道だ。こっちも地道にやるしかない。ほんと楽できないね。

 

 

 がんばろ。あいつ、いま何やってるんだろな。

 

 

 そんなこんな考えてたらティータイムセッティング完了。

 さてさて。

 

 元おっさんの元おっさんによるおっさんのためのおっさんズお茶会、はーじまーるよー!

 

 字面がちょっと汚いけど大丈夫、見た目は美丈夫アンド美少女だから!

 あと皇帝のお茶時間に勝手に同席するのって不敬なんじゃないかなとかちょっと思ったりもするけど、そこら辺は当人に黙認されてるので問題ないんです。

 というか今の私、普通に偉いし。皇帝様以外で文句つけれる奴なんている? いるわけねぇよな!

 

「ほう。今日の茶菓子はかなり良いものだな」

「えぇはい。パティスリー・ドゥ・ラ・リベルテの新作だそうで」

「リベルテ商会のか。やはりあそこは扱うものの品質が良い」

 

 弟子の家が手がけている事業の一つの高級お菓子屋さんである。

 リベルテさん家のパティスリーって感じなありがちネーミングのくせして、くっそ敷居が高い店らしい。

 ここのお菓子は配送対応してないから、弟子が持ってこないとなかなか食べられない貴重品なのだ。

 せっかくなので作業合間の楽しみとして冷却箱のストックしてたその貴重品を大放出……まぁあると食べちゃうからあんま数ないけど。

 お前が来なければそのクソうまなちっちゃいゴテゴテしたタルト? は全部私の腹の中に収まったのだがな……!

 

 ……いや別に本気で惜しんでいるわけではないぞ。お菓子ごときでそんなそんな。

 ただ私、外に出てお買い物する暇が中々ないから、あ、これしばらくもう食べられないんだなって思っただけで。

 持ってきてくれる優しい弟子もクエストで他国行っちゃうし……。

 

 ……。

 

 納品クエスト、依頼しちゃおっかな。

 

 ああでもご飯ならともかく、流石に職場に嗜好品をデリバリーしてもらうのはどうなんだ……?

 普通にみんなに良い顔されない気が……あ、いや、いける?

 私は錬金術もチート級だから、こう、錬金素材です! みたいな感じで当たり前の顔して依頼すればいいのでは?

 ちょっと苦しいけど、ゲームとかだったらお菓子を合成素材にするのは、よくあることだし?

 最悪、ちょっとばかし差し入れとしてお裾分け(ワイロ)すれば許される気が?

 

 ……よし後で出そう。ぶっちゃけもっとこれ食べたいし(自分の欲望に正直過ぎるイヤらしい男)(元男)

 

「ふむ……。手広くやってその全てで結果を出す辺りあそこは流石だ。その分、議会では兎角うるさいが」

「ああ、そうなんですね……。そこはかとなく想像できます」

「その親に似て貴様の弟子も中々だからな」

「はは……」

 

 適当に喋ってたら急にリアクションに困る軽口をブッ込まれて思わず変な笑いが出てしまった。

 なにわろてんねんって自分で自分にツッコミを入れたいが、ぶっちゃけ笑うしかないのよこれ。

 

 いやね、弟子の親御さんは会ったことないけど噂には聞いている。

 "嵐"の異名を持つ、やり手の大商人だ。さぞかし騒々しいのだろうね。

 弟子もその気質はしっかり引き継いでいるのかやっぱり騒々しい。

 でもこれは、そう言う話じゃなくてさ……。

 

 弟子、この皇帝様のことが大っ嫌いなんだよ……。

 

 いやいや。何があったか知らんけど、よりにもよって帝国で皇帝嫌いとかやばいでしょ……。

 この人ある意味というか普通に独裁者やぞ……ハラハラするんだが……。

 

 まあ弟子も小さな子供ではないし立場を弁えてるので変に突っかかったりはしない。

 うっかり鉢合わせてもさりげなく席を外すくらいだし、その場で会話を求められれば表面上は普通に話す。

 おかえりいただいて私と二人になった時、一瞬くっそ不穏な表情になったりするんだけどね。それ怖いからやめてけれ。

 皇帝様もそこら辺の空気は読んでくれてるのか、基本的に弟子がいないタイミングを見計らってここに来ている様子。

 でも皇帝様の方は別に弟子を嫌ってないようで、私と話してる時とか普通に話題に出してくる。というかむしろ結構気に入ってるんじゃないか。

 いやお前めっちゃ嫌われてるんだが? なんだこいつそういう性癖なのか? おもしれー女扱いしてるのか? やらんぞ?

 

 でもまあ、この皇帝様がそんな調子で軽い対応してるということは、そこまで深刻な事情による確執ではおそらくないのだろう。

 たぶん、弟子の方が感情的に嫌いってなってるだけ。いやそれもそれで良くないとは思うけど。私の弟子になったばっかりの頃は普通な様子だったのになぁ。

 初対面で当たり前のように私の研究室に入ってきた皇帝様に目を丸くして、そっから緊張しまくってたっていうのに。あれはちょっと可愛かった……。

 魔術師として成長して、仕事を手伝わせられるようになってからかなぁ。弟子にはまだ私の監督抜きでの作業はさせていないけど、最近はほとんど独力といっていい。

 そんで大口発注元の皇帝様に鬱憤の矛先が向かっちゃっているのかもしれない。皇帝様からの仕事って事務作業が多いもんね……。

 私のやつ修羅場った時たまに手伝わしてるけどすまんな……書類作成ってマジおもんないよな……。

 まあ今の帝国は皇帝様が全面立て直し中の黎明期みたいなもんだからね。忙しいのは仕方ないよ。みんなも頑張らなきゃあねぇ。一番頑張ってるのは私だけどな!

 

「そういえば仕事の話なのですが先日納入した使い魔くん、その後の状況どうでしょう? フィードバックがあれば反映させますが」

「ああ、あれは正常に運用を開始していて今のところ問題はない。素晴らしい出来だ」

 

 ご機嫌に微笑んでるところを見るに、十分ご期待に沿えてるようだ。

 いつもキリッとした顔で固定されてるのでこうも表情を緩ませているのは割と珍しい。

 普段はクッソ真面目な鉄面皮で周りを威圧してるからね。

 皇帝だから舐められたら終わりなんだろうけど。ヤンキーかな?

 

 帝国には残念ながら敵が多い。

 先代までの皇帝のせいで仲の良い他国は少ないし、内部も粗方浄化したが膿は未だ残ってるらしい。

 魔族もちょいちょいちょっかいをかけてくるみたいだし、こう見えて皇帝様も大変なのよ。

 ここ数代の皇帝の功績なんか、どいつもこいつも贅沢好きだったから嗜好品がやたらと発展したってことくらいしかない。

 その恩恵を存分に味わってる身としてはそこだけ少し許しちゃいそうになるが、まあ、うん。酷かったらしい。

 そもそも嗜好品とか、昔の一般市民には一切関係なかったからね。

 それが今となってはこの人の尽力もあって庶民も文化的な生活を楽しむことができている。

 

 

 皇帝、グラン7世。大鉈を振るう独裁者にして、私が認める帝王。

 

 

 変なところもあるけど、やっぱ素晴らしい人だよ。

 恩もたくさんあるし、できることなら力になってあげたいね。

 

「その働きに感謝をしている。これからも励んでくれ」

「ありがとうございます」

 

 それに……仕事したらちゃんと褒めてくれるし。

 私は褒められたら褒められただけ伸びるタイプなので、顔には出さないがやっぱ嬉しい。

 

 モチベが上がって開発にも力が入るよ!

 私はね、嬉しくなると、ついやっちゃうんだ! (軽率な技術革新)

 

 でも……できれば無茶振りはヤメテ欲しいかな!!

 

 

 

・・・

 

 

 

「ところで、だが」

 

 

 あ、無茶振りだなこれ。

 

 

「……なんでしょう」

「西の国境付近でドラゴンが目撃された」

 

 

 なんだドラゴンか。身構えて損した。

 

 

「今は休眠中のようだが、隣国に近いため覚醒したら面倒なことになる」

「エルダー以上ですか?」

「いや、年若い。まだしばらくは大丈夫だろうが、早めに対処したい」

「なるほど」

 

 見て若いと分かるくらいなら、ベビーかバニラかな。

 たぶん竜魔法も使えないようなフィジカル頼りのデクの坊だろう。

 そこらへんの上級冒険者でも普通に狩れる雑魚だね。

 

「ギルドはどのような対応を?」

「上級冒険者は出払っている。中級では対処ができないから呼び戻している最中だ」

「なるほど……頭数はどれほどで?」

「3頭だな」

 

 若い群れにしては少ない。ハグレかな? かわいそうだけど、まあ何にせよ駆除対象だ。

 ドラゴンは個体によって人以上の知能を持つと言われる高位の魔物だけど、人類には敵対的。

 というか魔物自体、人類の敵対種なのだからとりあえず駆除して間違いない。

 フィクションなファンタジーだと人に友好な魔物もいるものだけど、この世界でそんなの今まで見たことないし。

 ま、友好的なのって私くらいじゃないかな? ぷるぷる、私悪い魔女じゃないよ! なーんちゃって!

 

 ……、あいつに聞かれたらくっそ怒られそうだから変な冗談やめよ。

 

 まあ実際、ドラゴンは危険だ。エルダー級ともなれば表面上は落ち着いてたりもするけど、基本的には生きた災害。

 わかりやすくレベルという概念で考えると、一般市民が1として、平均的な冒険者が20前後。ドラゴンは生まれた瞬間から30はある。種族全体の平均だと40〜50くらいになるかな。

 上級冒険者の平均も大体それくらいのレベルが多そうな感じ。この辺くると人間卒業認定されてたりしてて、ドラゴンスレイヤーも結構いるよ。

 ちなみに百年生きたエルダー級、千年を生きるエンシェント級ともなると100を超え出したりするから上級冒険者でも中々厳しいものがあるね。

 

 ん? 私? ……350くらいかな? うみみゃあ!

 

 そんな冗談はさておき、私ならそんなクソガキドラゴン程度指先一つでお茶の子さいさいだ。

 問題は、仕事の山に埋もれててそういう冒険者的なことしてる暇ないってことだけ。

 私だってたまには冒険っぽいことしたいけど、そんな暇、ないんだよ!

 今は割と余裕あるけど今後の予定は詰まってるし、普通の人だったら忙殺されて無理だろうなぁ。

 暇ないよ? でもどうせ無茶振りされるんだろうなー、どうしよっかなー!

 

「正午より視察に向かう予定となった。護衛を頼めるか」

「私仕事が溜まってて忙し……」

「そうか。まあ良い」

 

 ま、私ならできるんですけど! 全く、しょうがないにゃあ……って、あれ?

 

 ……え?

 

 なんか引くの早くない? なんで?

 研究室の仕事もあるのに護衛という名の竜殺しを? 出来らぁっ! って内心準備してたのに?

 えっと、これいつもの一回断っとく様式美的なことしてみただけなんだけど?

 

「今回は兵長に頼むとする」

「あ……」

「あわよくば先に討伐しておきたかったが、仕方あるまい」

 

 空になったティーカップを置き、立ち上がる皇帝様。

 え、あ、確かに忙しいは忙しいんだけど……マジで行くの……?

 私チートだからやろうと思えばやれるよ? やれますよ?

 

「それに今回の名目はあくまで視察だ。現時点では必ずしも貴様が必要というわけではないからな」

 

 必要……、ない? 私が、要らない……? いや、いやいや……ご冗談を。冗談でしょ?

 相手は腐ってもドラゴンだよ? 若いならむしろ新鮮かもだけど。

 種族的に寝坊助なドラゴンは一旦休眠に入ったらしばらく覚醒しない。

 だから恐らく当面は大丈夫と判断されてるんだろうけど……。

 相手は生き物。いくらでも例外は起こり得るし、そんなのに全幅の信頼を置くべきじゃない。

 万が一は必ずいつか起こる。そしてそれは大抵、最悪なタイミングで起こるものなのだから。

 いくらなんでも流石に軽率すぎるよ。

 

 それにちょくちょく貴方の護衛を務めてる兵長さん、そこそこの強さだけど私判定では精々40レベルくらいしかないよ?

 ぶっちゃけこないだ作ったアグリちゃんのが強いよ? いやあのゴーレムはちょっと無闇に盛り過ぎた感あるけど……それはいいとして。

 3頭のドラゴン相手はちょっときついし、安全に行くなら最低でも同レベルの実力者があと4、5人は必要じゃないかな。

 上級冒険者、現地にもいないんでしょ? 緊急時の対応も難しいんじゃない?

 

 

 でもそう私なら! その場ですぐに! ぜんぶ一人で対応出来まぁす!!

 なんなら討伐した後の解体、素材の選別と輸送、事後処理まで全部やれますねぇ!!

 ドラゴンは宝の山! 余すところなく美味しく頂けちゃうから素人任せはおすすめできませんよ!!

 

 

 ほら見ろ要るやろがい。中途半端に誘ってるんちゃうぞ。いつもみたいに頼めや。

 仕事? そんなん身体動かす作業は後回しにしてとりあえず頭の中だけでやれること思考分割しまくってやれば問題ないし。

 

 

「……あの!」

「なんだ」

「護衛、やります」

「忙しいのだろう?」

「何も問題ありません。全て完璧にやってみせますので」

 

 指を軽く振る。ティーセットが消える。収容魔術のちょっとした応用だ。魔術は宣言無しだと曖昧化して暴発する恐れがあるが、私はそんなヘマしない。

 虚空からローブを取り出して羽織るように着る。昔あいつが使ってて、一緒に旅をしていた時に譲ってもらったサイズの合っていない大きな黒いローブを。

 私が気合いを入れる時の、一番の装備。他には何もいらない。全ては私の中にあるから。

 魔改造されて魔力線を光らせるローブの長い裾を引き摺らぬよう、浮遊魔術でふわりと浮かび上がる。

 

「お供いたします。さあ、行きましょう」

「そうか、頼もしいな。宜しく頼む」

 

 鉄面皮を緩ませ、ニヤリと笑う皇帝様。

 ていうかお前最初から連れてく気満々やったやろ。そういうとこやぞ。

 とかいいつつわかってるのに思わず釣られた私も私だが。

 

 そう……、この人は横暴で強引だが、理由もなくこういう意地が悪いことはしてこない。

 きっと是が非でも私を連れて行きたい何かが、現地にあるのだろう。

 

 私の身分はあくまでも表向き魔術院特別顧問であり、一応、まだ冒険者となっている。

 皇帝の勅令により任命されたというだけで本来の上司は魔術院長だから、この人と立場的に直接繋がっているわけじゃないのだ。

 いくら帝国の皇帝という絶対的な権力者であったとしても、全ての命令に私が従わなければならない義理はない。

 そしてどれだけ偉い存在なのだとしても、私に対して上から頭ごなしに力づくで強制できるわけがない。

 

 

 だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 私がそれをやるかは別として、その気になれば半日すら必要ない。私はそんな危険な爆弾なのだ。

 だから、どれだけこの人が私のことを信用してようとこの国を治める存在としてそんなこと絶対にできない。じゃあどうする。

 普通にお願いされても大抵のことは聞くだろうけど、断ることも当然ながらある。

 ちょいちょい使われる契約魔術だって強制力はないし、開発者たる私なら強制削除も可能。

 あれはお互いわかっててやってる茶番にすぎず、リマインダー的な役割しか持っていない。

 だから確実に私を動かすためには、明らかな危険に身を晒そうとして私が自ら動くように仕向けるしか無かった。

 

 そういうことじゃないかな?

 たぶん、ここで私が乗らなかったら本当にこの人は現地に行くだろう。

 危ない可能性を承知で間違いなく。だから私は乗らざるを得ない。

 

 いやさぁ、国のトップが軽率に命をベットするとかやめよ? 見逃せるわけないだろクソが!

 私このクソ性格の悪いおっさんのこと身内判定しちゃってるから、今から危険地帯行くけど守んなくていいよ? って言われたら守りに行きたくなるに決まってる。

 ていうか何だよ、そこまでの覚悟が必要なことって現地で何が待ってるんだよ。少し怖いぞ。

 

 でも万が一でもこの人がいなくなったら、きっとこの国は立ち行かなくなる。

 有能で誠実で、民の未来のことをちゃんと考えている、この国に絶対必要な人なんだ。

 私はこの国も、この人も気に入ってるから、出来るなら力になりたいと思ってる。

 私の味方になってくれたのだから、私はこの人たちの味方でありたい。

 

 あぁ……あいつにもよく言われたけど、ホント私ってお人好しだな……。

 

 というか普通にお願いベースで懇切丁寧に説明してくれたらちゃんと聞くのにね。土下座でも可。

 下手に出る皇帝様、面白そうだから一生ネタにするだろうけど。想像だけでもちょっと面白い。

 

 まあいいや。

 ほら、行くんでしょ? 鉄は熱いうちに、熱は冷めないうちに!

 なんか少しだけ楽しみになってきたな……! さぁ久々の冒険に、レッツゴーだよ!

 

 

「では正午にまた会おう」

 

 

 皇帝は研究室から優雅に出て行った。

 

 浮遊魔術を解除して、すとんと着地。

 ぶっかぶかのローブも術式解除して虚空にしまう。

 

 そういえば正午予定って言ってたな……まだ時間あったわ。

 

 恥ずかし……。

 

 

 

・・・

 

 

 この身など安い物。最後の皇帝として、国難の種をまだ摘まねばならない。

 謝りはしない。恨むといい。私は魔神に、この国の未来を願ったのだ。

 あと少し。近く自由を。だが……今は。

 

 

・・・




聖剣ちゃん「ぶっちゃけ魔族と魔術師って何が違うんかよくわからんのよ。どっちも似たようなの使うし? とりあえず主が認知してない奴はダメっぽいから、頑張って弾くよ!」





(チュートリアル、もうちょいで終わります)
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