勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん   作:Mckee ItoIto

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(勇者パート)

シリアスさん「しばらく寝てるので時間になったら起こしてください」



2章:勇者のまったりクエストと魔女さんのお仕事
幼馴染の幼少エピソードがことごとくドン引きされる件


・・・

 

 

 

<魔女さんのスーパーもぐもぐタイム>

 えっと、なんか弟子に謎の宣戦布告されたけど……てかお菓子の山すご……。

 私は大人なのでお菓子如きでそんな喜んだりはしないけど、すっご。やっば。

 新作高級菓子の宝石箱やんこんなん……よくばりセット過ぎる……。

 

 え? 一日、一箱?

 

 

(半日後)

 うん。あるのがいけない。私は悪くない。

 

 

 

<冒険者ギルドの掲示板>

 依頼:納品クエスト

 依頼者:帝国魔術院の魔術師(匿名希望)

 納品物:パティスリー・ドゥ・ラ・リベルテの新作菓子各種

 数量:制限なし

 報酬:定価の5割上乗せ

 期間:3ヶ月

 備考:期間中に違う新作が発売されたらそれもお願いします。

 

「なにこの依頼」

「あん? 俺たち冒険者に菓子を買わせるってバカにしてんのか?」

「しかしノーリスクでこの報酬は魅力的だな……どれだけまとめて買えるかわからんが……」

「何に使うんだろ。そもそも普通に買いにいけばいいんじゃないの?」

「そんなん食うために決まってるだろ。どうせ依頼主は外も歩けないくらいの穴倉デブ魔術師だな」

「いや、あの魔術院がわざわざ依頼するくらいなんだから何か深い理由があるのかもしれない……」

「これ、3つ買って2つ納品すれば残った1つ実質無料で食べられるってことじゃない? 私あそこのお菓子ちょっと気になってたんだけど」

「あ? 菓子なんか別にいらねぇだろ。受けるんなら普通に全部納品するぞ……貴族御用達の店だし仕立てのいい服が必要か?」

「うーむ、高級菓子を使う魔術……? もしそんなものがあるとしたら一体どんな……?」

「むぅ」

 

 

 

 

・・・

 

 

「あ。どうも、お待たせしてしまいました」

 

 早朝の魔術院前。

 これから一時的に仲間となる、魔術師の少女エステルが自動扉から現れた。

 相変わらず手ぶら……いや、小さな袋鞄を持っているか。

 嵩張らないような荷物は普通に持ち歩く、ということだろう。

 

「いや、時間ぴったりだぞ。俺たちが勝手に待ってただけだ」

「ああ、でもお待たせしてしまったことには変わりありませんし。いやはや、すみません」

「律儀だねぇ、エステルちゃんは」

「お前はもっと時間を守れ」

「あっはは、いつもごめんねぇ」

 

 何笑ってんだこいつ……いっつも人のことを待たせやがって。

 ベルはエルフなので見た目通りの年齢ではなく、少なくとも俺の3倍は生きている、らしい。正確な年は教えてもらってないので知らないが。

 だから当然、パーティ最年長になるんだが……とにかく時間にだらしない。バラバラに行動すると大抵こちらが待たされて、いつも最後にひょっこりと現れる。

 それでもなぜか憎めないんだよな。毎回毎回大した事情もなく俺たちを待たせやがるやつだけど、なんていうか、絶妙にタイミングが上手いというか。

 いや、遠慮なく遅刻できるタイミングを見計らってるのだとしたらそれはそれでどうなんだって思うが。

 

 思えばあいつはいつだって時間に正確だった。

 村にいる時はもっぱらこちらから会いに行かなければならなかったので気にしてなかったが、一緒に旅をしている時期にも待たされた記憶はない。

 だからと言って他人に厳しいわけでもなく、待たせてしまうことがあったとしても、冗談混じりに文句を言うことはあれどそれだけだ。

 俺も平和な状況が続いてるとうっかり気が抜けることもあったから、それが申し訳なくも有難く感じたものだ。

 

 

──ん、ああ待ってないよ。そんなにはね。……この寝坊助野郎。

 

──まぁ待たされるのも意外と悪くはないかなってちょっと思ったけどさ。……いやこっちの話。

 

──ていうか……えっと、なんていうか、思うんだけど同部屋でも別に良くない? 部屋代無駄じゃん? てか前に一緒に寝た仲なんだし、また昔みたいに一緒に……。

 

──え、ダメ? ……あ、いやいや冗談だから。そんな困った顔すんなよバッカだなぁ流石に冗談だってばさ!

 

──冗談だって、うん。

 

 

 一緒に旅してた時、たまたま宿で寝坊してしまいこんな感じに弄られたことがあったのを思い出す。

 というかそもそも一緒に寝た云々は子供の時の昼寝のことだろうに何言ってやがるんだあいつ……。

 

 ちなみにこの時のあいつの様子が気に掛かったのもあるし、意趣返しの意味も込めて次の宿で本当に同部屋にしてみようかと考えてみたんだが。

 一瞬固まった後で慌てて拒否してきたので、やっぱりあれはただからかってきたってだけのようだ。

 

 幼少時代のあいつは男の子みたいな雰囲気だった。だから俺も気にせずべったりだったんだが、それでも当時から十分美少女の片鱗を見せてたので、今考えると俺もガキだったんだなって思える。

 それで7年後に再会したあいつが美少女そのものといった姿に成長してたから正直内心ビビりまくってたんだが……再会直後はあいつが色々ヤバかったのでそれどころじゃなかったしな。

 なんとか正気を取り戻させてからは表面上、昔みたいな調子に戻ったように思える。でもやっぱり昔とは違う、というか……やっぱり女の子なんだなって感じることが多くなった。

 

 表情を失くしたあいつも、まるで人形のように綺麗だった。でもあいつは魔術が得意なだけの、普通の女の子なんだ。やっぱりあいつには、笑っていてほしい。

 一緒にいて、日に日に元気になっていって、どんどん女の子っぽくなっていったあいつを見てると……ほんと元気になってよかったなって思えたんだ。

 

 だからこそ、そんなあいつを守ってやれなかったことが本当に悔しい。

 俺は弱すぎた。あいつが俺に失望したのもわかる。だから、強くならなければ。次があるかどうかはわからない。許してもらえるかも、わからない。

 でも、いつかまた会えると信じてる。そして許されるなら、次こそは必ずあいつを守ってみせる。どんなことをしてでも。どんなことからも。

 

 ……そうだな、もっと頑張らなきゃな。

 

「……まーた幼馴染ちゃんのこと考えてる?」

「ん、ああ……すまん、何かあったか?」

「いや何もしてないけどさぁ……いつものことながら、可愛い女の子を前にして違う女の子のことに没頭するのってちょっとどうなのかなぁって思うよ?」

「可愛い……? ああ、あの二人か」

「おい、私も可愛いだろこら」

 

「ふふふ……」

「この人たち、いつもこんな感じなんですかね……?」

 

 いつも通りニコニコ笑っているアリアと、ジト目で呆れた様子のエステル。

 というかエステルの雰囲気が若干怖いんだが……何か気に障ったか……?

 

「まぁまぁじゃれ合いはこの辺にして、行きましょっかー」

「あ……というかその幼馴染さんのお話、若干気になるんですけど」

「いあいあだいじょぶ、これからアルと一緒にいたら腐るほど聞けるから」

「ふふ、アル様はいつだってその方のこと考えられてますからね」

「そうそう、一途もそこまでいくとちょっと気持ち悪いよね」

「おい」

 

 なんだかんだ盛大にバカにされながらも歩き出す。

 いいだろ別に。ほんとあいつ、ほっとけないやつだったんだから。

 

 ……離れ離れになって、もう4年にもなるのか。あいつは元気にやってるのだろうか。

 いつかのように、悪意を仕方ないと飲み込んで、傷ついてたりしてないといいのだが。

 

「もう、ほらアル行くよー?」

「ん、ああ今行く」

 

 

 あいつ、いま何やってるんだろうな。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「では本日から依頼開始ですので改めて。名目上このパーティのリーダーをやらせていただいております、聖女見習いのアリアという者です。どうかよろしくお願いいたします」

「あ、どうもよろしくお願いします。エステルです。依頼期間は3ヶ月ですが、場合によっては延びることもあるでしょうから、まあその時は延長してお付き合いしますよ」

「律儀な奴らだな……まあいいか。アルだ。この聖剣ともどもよろしく頼む」

「ベルだよ。見てわかる通りダークエルフだけど仲良くやろうねー」

 

 帝国の入出口門を目指して歩きながらの簡単な自己紹介を行う。すでに何回かしてるけど、まあ一応な。

 まだ朝早いが出口の門に着くころにはちょうど出国の受付開始時間になってることだろう。

 朝一は冒険者や商人などでごった返すものだが、アリアがいればそこまで待つことはないはずだ。

 ……うん、なんかやっぱズルい気がするな。

 

 入出国門は帝都に隣接した街にある。そこまでは徒歩か乗り合い馬車での移動になるが。

 

「えっと、良ければそこまで転移しましょうか?」

「え?」

「門の近くであれば目印があるので転移できますが……」

「あ、やっぱ使えるんだ……ホント規格外だねエステルちゃん……」

「いや、エステルが超一流の魔術師なのはわかってたろ。えっと、頼めるか」

「お任せを」

 

 

──『空間転移』

 

 

 

 一瞬で景色が切り替わる。

 この、身体の中身がふわっとする感覚……ちょっと懐かしい。慣れないと気持ち悪くなるんだよな。

 まあ昔からあいつが結構雑に使ってたから俺は割と経験豊富だったりするんだが。

 

「はい、到着です。出国受付までまだ少し時間がありますね」

「おう、ありがとう。やっぱエステルは凄いな」

「お、おぉ。初めてだけどなんか変な感じ」

「えぇ……何度経験してもこの感覚は慣れないですね……ドキドキします」

 

 そんなこんなで門に到着。やっぱりそれなりには混んでるが、まあ問題はないだろう。

 

「では、先に行ってきますね」

「ああ、いつも悪いな」

「よろしくー」

 

 足早に手続きに向かうアリアを見送り、人混みの中で俺たちは待機する。

 暇を持て余した3人は中身の無いことをダラダラと……まあ、いつもの駄弁りタイムだな。

 

 ふと気づくと、エステルがアリアが向かった方を不思議そうに眺めていた。

 

「……アリアさんって聖女見習いですよね?」

「そうだが、どうした?」

「あ、いえ、見習い……。んー、まあ気のせいですかね」

「?」

 

 アリアのことで何か気にかかることでもあったのだろうか。

 

 聖女、その見習い。俺もその響きには若干違和感があったのだが、一緒にいる内にまあそういうものなんだなと思えてきている。

 魔王の再誕と同時期に生まれたらしい法国の聖女は、かつての伝説になぞらえるかのように幼い時から教会の聖女として育てられたそうだ。

 そして聖女の仕事として法国の大教会で魔族や魔物と戦う人々のために奇跡を振り撒いてきたのだが……しばらく前から聖女は活動をしていない。

 健康不安説やら死亡説やらの噂が裏では流れているが、現実として教会から聖女見習いと呼ばれる存在が何人も表立って活動を増やしているので、割と信憑性のある話なのかもしれない。

 その中でもアリアは聖女の従者の一人だったらしく、見習い代表として色々精力的に動いているらしい。

 冒険者に近い活動をしている聖女見習いの人も多く、優秀な助っ人ヒーラーとしてそれぞれ活躍しているそうだ。

 

 で、アリアは俺と出会ったってわけだな。ていうか聖女見習いなのに助っ人じゃなくて俺の固定パーティメンバー化してるけど、教会的にそれはいいのか……?

 あとたまに、ほとんど表に出てこない聖女の実際の話とかも教えてくれたりするけど、それって俺が聞いても大丈夫なやつなのか……?

 あとで教会から審問官とか来たりしないよな……? 若干怖いんだが……?

 

「私から言っておいてなんですけど、お気になさらず。軽率に首を突っ込める話でもなさそうですし」

「そういわれると逆に気になるんだが……」

 

 なんだったんだ? ……まあいいか。

 

「まぁまぁ、大丈夫だよエステルちゃん。それより私、魔神さまのこと聞きたいなー?」

「……」

「……?」

「あー……ごめんなさい、ちょっと事情があってあんまり話せないんですよね」

「そうなの? 残念……」

 

 

「……大丈夫か?」

 

 

 今。

 

 見逃してしまいそうなくらいほんの一瞬だったが、エステルの顔が曇った。

 やっぱりあの時の前後で雰囲気が僅かながら変わっている気がする。

 

 

「大丈夫です。……うーん、そうですね。支障のなさそうな範囲でなら質問大丈夫ですよ」

「お、やった。えっとえっと、うーん……魔神さまの好きな食べものってなに?」

「なんか質問……雑じゃないです? まあ、甘いものとか好きですね」

「えー、ちょっと意外。ならもし会う機会があったら手土産はアイスクリンちゃんにしよ」

「いいですね、多分喜ぶと思いますよ」

 

 上手く躱されてしまったが……まあ少しずつだな。

 

 というか実際意外だ、魔神って甘いものが好きだったのか。少しイメージが変わったな。

 なんていうかこう、冷静で切れ者な壮年の男って感じのイメージだったんだが……。

 思ったより子供っぽい感じのやつなのかもしれない。

 

「というか、子供舌ですね。苦いものと辛いものがとにかく苦手なので食べてくれません」

「そうなんだ……私も割と子供舌だから少し親近感湧くね」

「放っておくと作業中とか延々お菓子食べてるんですよね……一日一箱って書置きしてお菓子をたくさん置いてきたんですけど、明日には全部無くなってる予感しかしません……」

「というかさっきから魔神さまのイメージが……でもちょっと可愛いかも」

「実際食べてる様子がなんだか可愛らしいのでついつい差し入れしちゃうんですよ……あんまり甘やかしてもダメって思うんですけど」

 

 おいおい。もはやそれ、ほぼ子供の扱いでは……?

 イメージがどんどん崩れていくんだが……それが本当に世間で恐れられている最強の魔神なのか……?

 

 というか好き嫌いに関してはなんかクーに似てるな。甘いものが好きで苦いものと辛いものが苦手って。

 そういえばいつだったか、あいつが苦手だったはずの苦い野菜を食べてて不思議に思ったことがあったんだが。

 ネタバラシされたら単に魔術で甘くしてみただけだったという。実験も兼ねてって言ってたけど魔術の無駄遣いすぎる。

 

 ちなみに料理の味見はズルせず我慢してちゃんとやってるとのことだった。

 俺は辛いものが好きなんだが、それを知ったあいつが涙目になりながら味見しているのを度々見たものだ。

 

 いや我慢してまで俺が好む料理を作らなくても良かったんだが……?

 別にお前がたまに作る甘じょっぱい料理も好きだったぞ……?

 

 ……ところであの不思議な料理、どこの料理だったんだろうな。王国には無いものだったのだが。

 いつかあいつに会えたらまた、作ってほしいな。お願いしたら作ってくれるのだろうか。

 

「あ、そだ! ちょっと一個聞きたかったんだけど!」

「はい?」

「エステルちゃんってワイバーンを一撃で叩き落とすことできる?」

「えっと……? できるとは思いますが……?」

「じゃあ、6歳の女の子ができると思う?」

「え、えぇ……? いや流石に難しいかと……」

 

 ベルが勝ち誇ったかのような物凄いドヤ顔でこちらを見てくる。

 その顔ちょっとムカつくからやめろ。

 

「あのなぁ……だからクーは幻想じゃねぇっての」

「え?」

「いやぁ、いたにはいたとは思ってるけどさ。やっぱそのエピソード無理があるってば」

「あ、えー……?」

「嘘くさいとは俺も思うけど、実際この目で見てるしだなぁ……まあ無理に信じろとは言えないが」

「あー……いや信じますよ……信じます……はい」

 

 いや、信じてくれるのは嬉しいけど……その何とも言えない顔はなんなんだ……?

 とても遠い目をして頷かれたが……なんだかドン引きしてないか……?

 

「まぁ、ししょーなら多分それくらいの時でもできたでしょうし……いやもしもの話ですが」

「うわ……そうなんだ、どんだけ凄いの魔神さま」

「まあクーのが凄いだろうけどな」

「はいはい。でも……あり得るのかぁ……」

 

 反射的かつ勝手にあいつの凄さでマウントを取ってしまったが、我ながら何を張り合ってるんだか。

 いやでも、いくら魔神と呼ばれる男が凄くてもやっぱりあいつ以上の存在は想像できないんだよな……。

 

「ちなみに幼馴染さん、他にどんなエピソードあるんですか……?」

「なんでそんなに恐る恐るなんだよ。まあいいが、そうだな……」

「聞いちゃうんだね……信じがたいヤバヤバエピソードが盛りだくさんだよ……」

「おい、変な煽り方するのやめろ」

 

 ……でもそうだな、流石の俺も今ではあいつの異様な凄さがわかってる。

 あんまり何回もドン引きされてちゃあいつが可哀そうだし、軽めのエピソードを出すか……。

 

「まあ普通のだと、子供のころに花を咲かせる魔術を見せてくれたりだとか?」

「あ、なんかいいですね。そんな可愛い一面が」

「そうそう、一面の土丸出しの地面が花畑になったりして結構壮観でさ」

 

 

「は?」

 

 

「……うん?」

「あのちょっと確認なんですけど……それって元からあるつぼみを開かせるってことだったりですよね……?」

「いや、何もない地面から勝手に花が生えてた」

「やってること全然可愛くない……!!」

 

 えぇ……そんな頭抱えるような話だったのか……?

 前に冒険者の魔術師に話した時は鼻で笑ってスルーされたんだが……もしかして単に微塵も信じてなかったってだけなのか……?

 

「あー、えっとその、そうだ。昔、俺が一人で遊んでてうっかり崖落ちた時に思わずあいつの名前を呼んだらいきなりあいつの目の前にいてビックリしたけど助かったってことがだな」

「……それ、何歳のことです?」

「5歳……、だな」

「目視無しの正確な遠隔空間転移……5歳で……ふふ」

「ね? やばいでしょ? あり得ないよね?」

「あー……いや信じるは信じますよ。あり得ます。身の引き締まる思いですね」

「あり得るんだ……」

「私……私のこと、もしかして天才なんじゃ? って実はほんのちょっとだけ思ってたんですけど、自惚れてました。もっと頑張ります」

「え、ああ、なんかすまん……その、ほどほどにな?」

 

 

 遠い目をして立ち尽くす3人。なんだか微妙な空気になってしまった。

 すまないクー……俺にとってはいい思い出だったんだが……どうしてこうなった……。

 

 

「お待たせしまし、た……? みなさんどうかなさいました……?」

「いやなんでもないぞ……ありがとうアリア、行こうかみんな」

 

 絶妙なタイミングで来てくれたアリアに感謝しつつ、門へと向かう。

 何だか濃い滞在期間になったな。ともかくこれで帝国滞在は終了……。

 

 

 

 

──聖剣が光った。

 

 

 

 

 いつものこと。しかし、なんとなくこの時だけは気にかかった。

 そういえば帝国に来てから数が増えている気がする。

 

 聖剣は割と意味もなく光るので今まで気にしてなかったものの……なんだろう。

 聖剣とは、割とふわっとした感じの曖昧な意思の疎通ができる。それでなんとなく最近のこいつが何かに警戒しているということだけはわかる。

 でも実際には何も起こってないし、聖剣も聖剣で何かあってもどうとでもなりそうって意思を感じさせてるので問題ないとは思うんだが……。

 

 

 ふと、さっきまでいた帝国の街並みを振り返る。

 何かやるべきことを忘れている。そんな感覚。……気のせいだろうか。

 

 

「どしたの?」

「……ああ、いや。忘れ物してなかったかなってな」

「?」

「多分気のせいだ。……いこうぜ」

「あ、うん……?」

 

「……」

 

 

 まあとにかく、頑張らないとな。

 俺は俺のやることをして、経験を積み、成長し、あいつに近づいていかなければならないんだ。

 

 さあ、クエスト開始だ。気を引き締めるぞ。

 

 

 

 

・・・

 

 

(鈍感なんだか敏感なんだか……よくわかりませんね)

 

 

・・・




聖剣ちゃん「魔法使い……じゃなくて魔術師の仲間、かぁ。なんか懐かしい感じ。気を付けなきゃ」





(おおむね、まったりクエストな予定)
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