勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん   作:Mckee ItoIto

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(魔女パート)

 短めで特にヤマもオチもなくだらしないお遊びな日常回です。



誰も見てないところでもちゃんとできる人ってマジ尊敬

・・・

 

 

 帝国は未来の国、みたいなことを言われたりすることもあったり、なかったり。

 異世界の国っていう言葉が聞こえたときはちょっとドキッとしたけど、まあそれはさておきだ。

 

 元々は普通に魔術を教える的な感じで魔術院にぶち込まれた私なんですが、日々思いついたものを興味本位で自作したりしてたらそれがバレてしまったという経緯があってですね。

 私はチートなので、前世のものを再現しようとしたそういったものなんかは当然のように文明への影響なんか全く考慮してないオーバーテクノロジーなやつばっかだったわけでして。

 まあ途中から自重し始めたけど時すでにお寿司。いや遅し。あ、ところでどうでもいいけど、お寿司は帝国にはないんですよ。

 海がクソ遠いので生魚を食べる文化があんま無いというか。冷却箱が出回ったので海鮮は食べられるようになってきたけど、今後に期待かな。

 

 食欲のせいで横道に逸れました。

 本筋に戻すと、この国の技術革新って私の思いつきからうっかり始まってしまってるので、割と技術レベルがチグハグだったりする。

 

 例えば冷却箱。

 昔……といっても数年前までの話、食べ物を冷やすためには自然の氷を使うか、魔術師が魔術を使って冷やすか、くらいしかなかった。

 基本的に魔術は魔術師しか使えないので、普通の人は氷屋か魔術師から氷を買って、それを断熱性の高い箱に入れて冷やしてたってわけだ。つまり冷蔵箱ってわけね。

 そんなアナログなクーラーボックス式では当然長距離の持ち運びなんかできないので、帝国みたいな内陸国の生鮮食品とか氷菓とかなんかは魔術師を雇える貴族の食べ物だったってわけだ。

 

 で、そんな状況を憂いた私が、ついついチートでやらかしちゃいます。

 まずですね、魔石ってのがあるわけですよ。これはそれそのものが効力を持った魔力の塊……自然界が作り出した天然の術式結晶、とでもいうべきかな?

 自然魔力が濃い地域ではちょこちょこ自然発生したりするのだけど、当然ながら偶然の産物みたいな感じなので安定性はほぼ皆無。ちょっとした刺激で暴発する危険物なわけだ。

 その反面、上手く使えれば外部からの刺激により自前の魔力無しで魔力現象を起こせる。

 

 と、いうことは?

 意図したタイミングで使える暴発しない安全な魔石があれば、魔力が無い人でも使える魔道具を作れるんじゃ?

 

 

 はい。

 そんなわけで私、魔石の安定化技術、発明しちゃった。

 

 

 あー、いやほんと。ほんとに……今思えばこれマジでやらかしなんだよね……。

 これまでにも皇帝様の下で色々やらかしててごめんなさいしてるんだけど、その中でもトップクラスの軽率さだった。

 もっと段階を踏むべきだったよ……この技術が国に莫大な利益をもたらした一方で、反面どれほどの人が地獄を見たものか……。

 正直、人工魔石生成術式のが術式難易度がクソ高いおかげでまだマシだったってほんとなんなんよ……。

 

 ともあれ。安定魔石ができたおかげで冷蔵箱は自発的に氷、というか冷気を発生させられる冷却箱に進化したわけだ。

 なんなら調子こいて温度調整とか冷蔵冷凍の区画分けとか機能を増やし始めた結果、もはや前世の冷蔵庫と何も変わらんのではないかという。

 前世的に考えると軽く100年とか200年は技術が離れてて、これジャンプアップ進化しすぎやろっていう。

 

 もちろん魔石は冷却系以外にも色々ある。

 なのでその種類の数だけ新たな魔道具が考案されて、なんかカンブリア爆発ってこんな感じだったんかな(遠い目)って他人事のように見てました。いやほんと皇帝様すみません。

 

 まあ安定化術式の精度によってはだいぶ魔石の効果下がるんですけどね。私がやれば加工効率ほぼ100%だけど。

 あと天然魔石の加工はだいぶ危険だから、資格がない人は絶対やっちゃダメだよ。

 ここ最近は聞かないけど違法加工による暴発事故とか、術式開発者として流石にちょっとは心が痛むのよ……。

 

 

 そんで。

 今回はそんな魔石を使った魔道具のお仕事。

 

 

 はい、じゃじゃーん。携帯コンロぉ。

 魔力のない人でも使える画期的な携帯式加熱調理機だよ。

 少し前に開発した魔石式発火装置が組み込んであって、商業ギルド経由でお試し販売中なんですがね。

 さっそくフィードバック的なお便りご意見がいっぱい届いたので、ざっと確認しつつ改修作業に入りますよー。

 

 ていうかこれ……前までは弟子が選別してまとめてくれてたから確認作業楽だったけど未選別だと結構数あるな……めんどいから巻きで見てくか。

 

 

 えー、なになに。

 

 値段が高い?

 うっせぇ価格設定に私は関わってねぇよ私に言うな店に言え。次。

 

 興味本位で分解したら使えなくなった?

 素人が思いつきで魔道具分解すんなやボケ。有料だけど修理するから送ってこいアホ。次。

 

 無駄な機能が多過ぎる?

 もっと簡易的にして操作を簡単にしてほしい?

 

 ん、あー……納入先の依頼評価としては問題ないはずだったんだけど、これは発売後のユーザー様からのご意見か。

 この携帯コンロの当初の販売ターゲットは貴族や隊商だったらしいけど、意識高い系の裕福な冒険者パーティでも使われてるみたい。

 冒険の道中に使うとしたら細かい温度調整とかスチームとかタイマーとかの機能はそら要らんわなぁ。

 

 うーん、でもさぁ、やっぱ高機能ってロマンじゃん……?

 私は女だけど元男なので、まだこいつはポテンシャルを残している……! みたいなのめっちゃ好きなんですよ。

 そういやあいつもそういうロマンを理解してる男だったから、こういうやつの方が好きそうよね。そんな手の込んだ料理は作らないくせに。

 一緒に旅してた時期に作ってたのは煮込み系の料理が多かったかなぁ。シチューっぽいのとか、カレーっぽいのとか。

 

 そうそう、この世界にはカレーはある。正確に言うと、スパイスを使ったカレールー的なもの。

 王国にはスパイス文化が根付いてないのでメジャーじゃなかったけど、あいつは行商人の子なので色々な地域のものを知っているのだ。

 

 あー……あいつの作る甘口のカレーがまた食べたいな……。

 りんごっぽいのと花の蜜が隠し味に入ってて、前世を思い出して涙が出るんですよ……。

 これ自分で作るとなんか違うんだよな……成分単位でこだわって再現しようとしてもなんか違うんだ……。

 

 

 ……あいついま何やってるんだろうな。美味しいものとか食べれてるのかな。

 

 

 おなか空いてるせいでまた脱線しちゃった。

 それはさておき。うーん、冒険者向けに機能削った廉価版も開発するかなぁ。

 単純に機能削るだけってわけにはいかないから全体調整……いや最初から作った方が早いか?

 そもそも今の携帯コンロは組み込みバッテリー付きIHコンロって感じで魔術師による魔力充填が必要だから、できればゆくゆくはカセットコンロみたいに交換式にしたいよね。

 そのためには完全に電池的な、魔力貯蔵オンリーの人工魔石カートリッジとか作らないとだけど。

 交換式ならカートリッジは安価にしなきゃだし、大量生産できるように魔石生成術式の改良もやってかないとだし、課題は山積みだなぁ。

 なんとか早めに試作できるように頑張らなきゃ。

 

 思考分割しながら他のご意見も見てたけど9割方どうでもいい感想だったからそれは無視するよ!

 例えばもっと最大火力上げて戦闘にも使えるようにって意見とか。いやなんでコンロを戦闘に使おうとしてるんですかねぇ!?

 

 ……ちょっと面白そうって思っちゃったけど。作らないぞ? 作らないからな?

 

 

 よっし、さてさて、作業に入るとしますかね!

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 わぁい、ちょこふぉんでゅ。わたし、とうぶんだいすき。

 

 断じて遊んでるわけじゃないよ。改良コンロのテスト中なんです。

 ちょっと趣味を兼ねてるだけです。遊んでないです。

 

 こっの……!

 高級なチョコっぽいのを! わざわざ溶かして! 別の高級菓子につけて食う!

 なんという背徳感!! 最高だね!!!

 

 これ作ったパティシエの人が見たらキレそうだけどね。

 ごめんね。思いついたからにはやらずにいられなかったんだよね。

 

 いやほんと、溶かした高級チョコ(っぽいの)つけたマシュマロ(っぽいやつ)マジでうめぇ……。

 火力調整機能を簡略化したから上手くトロ火にできなくて若干焦げついてるのがちょっとだけ悲しいけど。

 錬金術チート持ちの癖に失敗したのは我ながら死ぬほど恥ずかしいんだが、まぁ大いなる甘さの中のほんの少しの苦味はアクセントみたいなものだし?

 むしろ逆に成功みたいな? うんやっぱ失敗してなかったわ。気のせい気のせい。

 

 ほら、アルも食ってみ?

 

 

「確かに美味いな。美味いんだが……」

「なにさ、やっぱ焦がしたからダメだった?」

「いや……俺の出番ってアレで終わりじゃなかったんだなってな……」

 

 はい。今日はプライベートルームでアル人形と一緒です。

 別に弟子がいなくなって一人が寂しくなったってわけじゃないぞ。

 

「そりゃまあ苦労して作った最高傑作だし。それはそれ。これはこれ」

「マスターがそれでいいなら、まあいいか……」

「おいマスターって呼ぶな。ちゃんとロールしろ」

「……マスター」

 

 あれ。こいつ普通に逆らってきやがった。

 というか完璧にアルを再現してるはずなのに、おかしいな。バグか?

 

「俺は、設定上アルという男なんだろ?」

「うん? ……まあ99.9%はアルだね」

「だったら……俺が100%じゃなくて、俺が俺である以上、マスターはマスターだ」

「意味がわからんのだけど」

 

 自己学習機能のせいか?

 なんか製作者が意図してない形での進化なんだが……まぁ害は無いしいいか。

 

「ところで俺探しは順調なのか?」

「その言葉の字面違和感あって少し面白いな……進捗ダメです」

「そうか……とりあえずこれ食って元気だしてくれ」

「マシュマロうめぇ」

 

 そうそう、アルってこうやって軽率にアーンしてくるんだよな。

 ふふ……客観的に見ると羞恥で死んでしまうような光景だが、いま私の部屋に無断で侵入できるようなやつはいないから問題ない。

 思考分割して仕事してる方の私の思考がすごい死んだ雰囲気を醸し出してるが、最終的に統合されるから別にいいだろよ!

 

 

 で、前のクエストで飛ばした使い魔くん4号のその後なんですが。

 この世界は普通に地球に似た惑星タイプなので、観測衛星的な感じで地軸を基準に北極点と南極点をぐるぐる周回する感じで回る予定だったんですね。

 星は自転をしているので、そうすりゃ最終的には地表全部を網羅できるだろうと。

 

 あ、ちなみにこの使い魔くんは速さと観測機能に特化してるので戦闘機能は一切無かったりする。

 でも飛行速度が音速を軽く超える使い魔くんに追いつけるやつなんか早々いないし大丈夫やろ! と正直タカを括ってたんですよね。

 

 

 そしたらエンシェントドラゴンさんにマッハで撃墜されました。

 

 

 大気圏すら突破できなかったわクソがッ! ムシるぞトカゲめッ!!

 めっっっちゃ高価な素材とかすっっっごい手の込んだ魔石とか使ってたのに全部消滅したんだが!!!

 お前滅多に人間襲わないから色々パワーバランスとか考えて見逃してやってるだけなんだからな!!!

 

 

 

 あはは。ふふ、つらいね。

 

「あぁアルよ……慰めてくれぇ……私って頑張ってるよな……?」

「そうだな、マスターはほんと頑張ってるよ」

「もっと。ついでにあたま撫でろ」

「……よし、よし、しょうがないやつだなほんと」

「あ、とてもよき」

 

 ふぅ……うへへぇ。超おちつく。

 リアルあいつの職人技が上手く再現されてるんだぜ。

 最初はちょっと躊躇いもあったけど、まあこいつは偽物だからな。

 あの時は不気味の谷現象的な嫌悪感が一瞬よぎったけど、偽物だと割り切っちゃえばやっぱ動かないよりは動いてた方がいいわ。

 それに偽物にだったらこうして本物には簡単に要求できないことだって軽率に要求できるし。

 

 ……まあ流石にこう、一線を超えたことはいろんな意味でできそうにないが。

 

 そもそもだな、そこら辺はちゃんと我慢すべきだ。偽物で妥協すべきではないだろ。

 あーあ、早く本物と会いてーなぁ。あいつ今なにやってんのかなぁ。

 

 よし、とりあえずお前、ハグしろハグ。あ、バックハグな。

 ナデナデも継続だ。疲れた私を全力で癒してくれ。

 

「あ、おかしたべるー」

「……ほら」

「うーまうま」

「……このマスター、ほんとに大丈夫か?」

「うん? 大丈夫ですがなにか?」

「なんかどんどん……いや、なんでもない」

 

 お? こいつさては私のことバカにしたか?

 ダメな子を見るような目で見やがって生意気なやつめ……!

 

(いや当たり前でしょ。今の私、普通にだいぶダメなんだけど?)

 

 おいやめろ! 冷たい目で客観視してくるんじゃない仕事中のイマジナリー私!

 なんか当たり前のようにメインスレッドに侵食してきやがったけどお前は黙って仕事に戻ってろ!

 

(ダメというかキモいんだけど。イカれてるって。人が見てないとはいえもうちょいまともになろうよ。せめてあいつに見せても恥ずかしくない振る舞いをさぁ)

 

 こいつ……自己批判の切れ味が、鋭すぎるっ……!

 これがクリティカルシンキングってやつなのか……? (違う)

 

(こんなんだから、……。って危ない、自分にイラつきすぎて度を超えた自虐で自爆するところだった)

 

 う、む……? 仕事用とはいえ思考に独立性を与えすぎてたか?

 念の為一旦統合しとくか……他のもまとめてこれで100%魔女さんです。

 

 やりすぎて匙加減間違えると自己崩壊しかねないからね、思考分割の術式。

 ほんと、こんなん四六時中やってる魔術院長って私から見てもやっぱ頭おかしいわ。

 

 とりあえず今日はしばらく休憩かなぁ。ちゃんと休もっと。

 まー休めば休むほど仕事はたまるんだけどねー。頑張れ未来の私ぃ。

 きっと未来の私は今の私より、しっかりしてるはずだし! たぶん!

 

 そんなことよりこのチョコっぽいのを消化しないといけないしな! これも仕事の一環だし!

 

「あ、そうだ」

「どうした?」

「『流体操作』『温度調節』『時間加速』」

 

 溶けたチョコっぽいの……めんどいからもうチョコでいいか。を空中でまとめて、空気を抜きながらゆっくり冷やして固める。

 のを、普通にやると時間かかるので過程を加速して飛ばしてしまう。

 

 こうして出来上がったのが、トランプのマークの形をしたチョコたち。

 チョコレートと言えば前世にはバレンタインなんてもんがあったなぁと思ったわけでして。

 チョコを大事な人に送るっていうそんな風習。まあチョコ云々はジャパン特有のアレらしいんだけどさておき。

 私が前世の最後らへんで見たバレンタインって恋愛的な意味抜きで友情的な意味でも送り合ってたりしたんだよね。大事な人への贈り物、として。

 

 で、私にとって大事な人といえば、あいつと弟子と、まぁ皇帝様もかな。

 他の同僚とかも大事っちゃ大事だけど3人は私の好感度パラメーターで言えば頭抜けてるよね。

 

 なので、今度会った時に手作りチョコでも渡そうかなっと。

 手作りって言っても溶かして成型しなおしただけですが。まあ前世でもこれ手作り扱いだからええやろ。

 あとこれ元々弟子からもらったチョコだろってツッコミは受け付けないです。

 

 んー、あいつは……剣のイメージあるからスペードかな。

 弟子がハートで、皇帝様がダイヤ。余ったクラブは私のもの。

 

 

 四つのマークが集まって、空中に浮かんでいる。

 ふわふわと、寄り添うように。

 

 

 ……あぁ、なんかこんなふうにさ。

 私の大事な人たちが仲良く一堂に会する、なんてことがあったらいいのにね。

 皇帝様の思惑も、決して悪いものじゃないんだ。弟子も嫌わないでやってほしいな。

 

 あとあいつならきっと、二人とも仲良く……あーどうだろ、弟子と仲良くされるのはちょっと複雑かも。でも嫌い合うよりはいいよね。

 

 

 あー……あいつ、ほんと今なにやってるんだろな。

 

 

 ……。

 

 

 ……なんだか眠くなってきた気がする。

 後ろから抱きしめられて頭を撫でられてるこの体勢、前に村であいつと再会した日と同じなんだよね。

 なんだかあの時みたいに、静かに眠れそうな気がするよ。久々に、嫌な夢を見ずに。

 

「……ちょっとだけ寝る。ああ動かなくていい。そのままでいい。90分経ったら起こして」

「わかった。……お疲れ様。ゆっくり休んでくれ」

「ん」

 

 チョコは大事に次元の隙間に仕舞う。

 他の後片付けは……起きてからでいっか。

 

 私は神でも魔物でも、ない。人間だから……人間なんだから……。

 たまには、こんな時くらいは、何も考えずに全部の思考を止めて、眠ったりなんかして、休んでも……いいよね。

 

 

 

 そうだよね。じゃあ、おやすみなさい……。

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

(やっぱり俺じゃ、ダメだな……。早く会えるといいな)

 

 

・・・




女神さん「zzz...」




(魔女さんはチートなので本気で真剣にやれば失敗しませんが、失敗も経験値理論で適当やること多々ありなのでちょくちょくやらかします)
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