勇者のことが気になって仕方ないTS魔女さん 作:Mckee ItoIto
シリアスさん「過去話だから出番かと思ったけどまだ早かったみたいなので二度寝します」
・・・
聖剣。全ての魔を断つ神の力。人間を助ける女神の恩寵。
勇者。主。人間。優しく強い、純粋な魂の持ち主。
魔族。魔法を使う魔物。
魔物。この世界を生きる生き物。
魔法使い。魔法を使う人間。
人間。この世界を生きる生き物。主は人間。
??
ていうか、生き物って……なんなの?
そもそも、生きてるってなに?
自分の力だけで動いてるもののことなんかな。違うのもあるみたいだけど、結構あってると思う。
それで、生き物の中で、いっぱい魔力があるのは魔物とか魔族とか魔法使いって言われてる。
でも、魔力だけじゃよくわかんないし、言葉だけじゃよくわかんない。
どれも同じような生き物だし、どうやって見分ければいいんだろう。
魔物は、主と全然違う言葉を話す。見た目もなんか違うのが多いからなんとなくわかる。
魔族は、主と同じ言葉を話す。見た目も似てる。でも少し話すと主はいつも不機嫌になる。
魔法使いも、主と同じ言葉を話す。見た目も似てる。話すと主が不機嫌になることも、ならないこともある。
魔物も魔族も敵。主の味方はいないから全部斬っていい。
魔法使いはほとんど味方。紛らわしいけど、斬っちゃダメだって言われた。
でも、その中には主の敵がいることもあって、それは斬っていいとも言われた。
……えっと、全然わかんない。人間を助けるのに、斬っていい人間がいるってこと?
それってどう区別すればいいんだろう。でも主が戦ってる相手なら、敵ってことでいいんかな。
うん、大体は大丈夫みたいだ。じゃあ、これも斬っていいってことなんだよね。
怒られた。え、違うんだ……。これは敵じゃなかったみたい。
戦って、攻撃してきたのに。殺気が無い? 殺気って……なに?
よくわかんない。仲間じゃなかったけど仲間になったんだって。仲間って味方?
でも、仲間になってからはずっと、主はこれと一緒にいた。
主は楽しそうだったり不機嫌だったりする。でも大体楽しそう。
あれから、戦ったり敵を斬ってたら、いつの間にかまた、仲間が増えた。
人間の聖職者で、これは女神の力の欠片があるからわかりやすい。
なんか偉い人間らしいけど、偉いってなんだろう。
魔法使いは魔法以外にも色んなことを知ってて、わかんないことも少しずつわかっていった。
あと、聖職者は主よりも人間と話すのが上手で、主が不機嫌になることもあまりなくなった。
主は魔法使いや聖職者から色々教わって助けてもらいながら、人間を助けてる。
これが仲間ってこと?
それから主は仲間と一緒に、いっぱい敵を斬って、頑張って魔王を倒した。
聖剣としてのお役目も、これで終わりなのかな?
でも主はまだ戦うって言ってて、だからまだ主と一緒。
聖職者は別れて国に帰って、魔法使いとはまだ一緒にいる。
聖職者の国はとっても大きくなったらしい。
主は、よく、その国でお仕事をしてる。
魔法使いはそのお仕事を、手伝ったり手伝わなかったり。
だんだん一緒にいないことも多くなって、でも一緒にいる時の主はやっぱり少し楽しそう。
だけど……なんでなんだろう。主の仲間だったはずの魔法使いが敵になった。
どういうこと? 仲間だけど味方じゃなかったってことなの?
何が起こったのか、なんもわかんなかったけど、敵だから斬った。
敵が、主の敵だって言ったから。主に本気で、魔法を使ってきたから。
何も言われなかったから、いつも通り主の身体を使って、魔法ごと斬った。
怒られなかった。終わったあとも。
ずっと。主には何も言われなかった。
ずっと、ずっと。最期まで。
なんだかよく、わかんなかった。わかんなかったけど、でもちょっとわかった。
たぶん、あれは敵だけど、斬っちゃダメだったってことなんだ。
どうすればよかったんだろう。失敗、しちゃったな。
わかんないけど、でも、気をつけないと。次はもっとちゃんとやらないといけない。
そんな次が、本当にあるのかは、わからないけど。
主は聖職者と一緒にいることが増えた。でも楽しそうじゃない。味方のはずなのに。
一度も楽しそうじゃないまま、最後に主は少しも動かなくなった。
斬った敵みたいに、生きてる、じゃなくなった。
主がいなくなってからは、聖職者と、たくさんの人間がそばにいるようになった。
その中に、主になれる勇者はいなくて、なのに、主じゃないのに色々言ってくる。
ずっと無視してたけど、そんな人間たちからは頭を下げられたり、手を合わされたり。
でも聖職者が動かなくなっていなくなってからは、少しずつそれも減っていって。
なんか代わりに聖職者そっくりの石の塊に頭を下げたり、手を合わせたりしてる。
女神の力への祈りは女神に還るから、女神としては別にどっちでもいいんだろうけど。
だけど気づいたら、たくさんの人間と人間が戦ってた。
何で人間と人間がこんなに戦ってるんだろう。人間の敵の人間がたくさんいたってこと?
色んなところを転々と運ばれて、最後は最初に主と会った国にいた。
だけど、やっぱりそこに勇者はいない。色んな人間に命令されたけど、全部無視した。
そもそも主がいなくて動けないから、魔力以外へは何もできないし。
そしたらいつからか、魔術師っていう、魔法使いに似た人間の前に運ばれるようになって。
なんか色々な魔術? とか魔法みたいなのがたくさん飛んできたりして。
意味がわかんなかったけど、攻撃されたからとりあえず全部弾き飛ばしたりしてた。
それで、何もできなくなったそれを近くの人間が剣で刺したりする。
なんだったのだろう。そんなのが何回もあった。魔術師って人間の敵な人間なの?
そのうち、国が燃えて人間たちは違うとこに集まるようになったけど。
置いていかれちゃったみたいだ。もうなんだかよくわかんないや。
人間も見なくなった。魔力を弾いてたら魔物もこなくなった。
周りは崩れ木が生えて。何度も雨に打たれて森になった。
静かで、小さな生き物だけが動く、冷たくて暗い森。
どうしよ。なんもできることなくなっちゃった。
一体、女神は今頃、なにやってるんだろな。
『私』は今、なんでここにいるんだろ。
人間のためにって役目も終わって。
もうずっとなんもしてないよ。
すっとこのままなのかな。
いつまでも、ずっと。
なんもかわらず。
……ずっと。
……。
・・・
……目が覚めた。
思わず聖剣を見る。
鞘の中でいつもよりぼんやりとした光を放っている。
なんだか変な、夢を見た。
懐かしくて、悲しくて、苦しくて、寂しい夢。
内容はあまり思い出せないが……あれは、昔の出来事なのか……?
「どしたん? まだ夜だよ。やな夢でも見た?」
暗がりから声がかかった。
姿は見えないが、野営中の見張りを買って出てくれたベルの声だった。
アリアが結界を張ってくれてるから弱い魔物は寄ってこない。
でも骨のある魔物や野盗なんかが出る可能性がないわけじゃないからな。
ベルは目が良くて気配に敏感だからこういう時に率先して見張り役をしてくれて、本当に助かってる。
……ああ、そうだった。
俺たちは帝国から法国へ向かう道中を数日。
その途中にある教国の、少し手前で野営をしていたところだった。
エステルが「これ新製品なんですよー!」と、ご機嫌な様子でどこからともなく丸められた布を取り出して。
そのまま魔術で浮かせたと思ったら、ボンっと勝手に開いて仕切り付きの大きめな天幕になって。
ベルと盛り上がりながら、こりゃあ快適な野営になりそうだなと、機嫌良く飯を食って、床についたのだった。
「うーわ、ひどい顔してる。大丈夫……? あ、ひどいってそういう意味じゃなくてさ」
「どういう意味だよ。まぁ……少し夢見が悪かっただけだ。気にするな」
反応を返さなかったからか様子を見に来たベルを適当にあしらう。
子供じゃないんだから、嫌な夢を見たぐらいでどうってことは……。
……手を、軽く握る。開いて、今度は少し強く。
さっきの夢の内容は、ほとんど覚えてない。だけど。
最悪の一場面だけは、頭に焼きついてしまった。手汗が止まらない。
それは嫌になるほど……生々しかった。
似ても似つかないはずの顔に重なった、あの、何もかも諦め切った顔。
まるで、俺たちにもこんな未来が待っているのだと。そう予見しているみたいで。
……ふざけんな。
そんな結末、冗談でも認めてたまるか。
あいつが今、何をしているかはわからない。でも、ちゃんと生きているはずだ。
生きているあいつとまた再会して、次こそはあいつと一緒に、最後まで生きてやる。
俺よりも立派な勇者だったのかもしれないが……俺はそいつみたいに諦めたりなんか絶対しない。
「あぁくっそ、眠気がぶっ飛んだ。見張り代わってくれ」
「うーん、まあいいけど……ほんと大丈夫?」
大丈夫だ、とひらひら手を振り、聖剣を持って天幕から出る。
静寂の中、ぼやっと闇夜を照らす、聖剣の光。
特に今は何も意思を伝えてこない。まるで眠っているみたいだな。
睡眠が必要とも思えないから、眠ったりはしてないのだろうが。なんだか大人しい。
そういえば……俺は聖剣のこと、何も知らないな。
伝わってくる意思と使っている感覚以外は、嘘か本当かもわからないような御伽話のことだけ。
さっきの夢、ちゃんと覚えてれば良かったんだけどな……。
あの勇者みたいに、聖剣の意思が俺の身体を動かしたり、みたいなのは今まで一度も無い。
こう動いたらいい、みたいな手本? の意思はあるが……。それでも主導権はずっと俺自身だ。
俺がまだ聖剣の力を引き出せてないってことなのか、単に聖剣がそういうのを自重してるってだけなのか。
ともかくあの聖剣と一体になった凄まじい力が、気にならないといえば嘘になるが……それよりまず俺自身が強くならなきゃだしな。
それに憑依的なことはしてこないけど魔力無効化は割と空気読まずに雑に使ってくるから、この辺りはもうちょっとちゃんと教えないとだし……。
……うん、そうだな。
もっと頑張ろう。一緒に成長してこうぜ、聖剣も。
・・・
「ちょっとだけ! ちょっとだけでいいので! お願いします!」
──ピカピカ!
いや、なんだこれ。
エステルが聖剣に解析の魔術を使わせてくれって言ってて、聖剣がめちゃくちゃ嫌がってるっていう状況。
「聞けば聞くほど完璧に意思があるじゃないですかこの剣! 伝説の武器って聞いてまあ多少の応答能力はって思ってましたけど、思ってた以上というか、せめてこう、自律思考のプロセスがどうなってるのか、ちょっと、本当にちょっとさわりだけでいいんで、頭の、こう、先っちょだけでも」
「落ち着け、とりあえず落ち着け……」
「おちついてなんか! いられないですよっ!!」
そこまで興奮することなのか……?
「完全な知能を持った魔道具なんてししょーですら、あ、いや……? あの農作業ゴーレムとかだいぶ頭おかしいレベルでしたけど、でも流石にここまでじゃなかったし……うーん……改修後のやつは見てないけどそろそろ術式公開されてるのかな……ああ魔術院に帰って確認したい……でも仕事が」
「おーい、帰ってこーい?」
「うぐぐ、忘れられない……まだ未熟だった時、ししょーに自信満々でレビュー依頼した術式に、すごいね人工無能じゃんって言われたときの、あの死にたくなるような恥ずかしさと悔しさっ……!」
「全然帰ってこねぇ……」
「なんか楽しそうだねぇエステルちゃん」
「ふふ……」
「お願いしますよー……」
とりあえずな、俺が聖剣を背負ってるとはいえ、俺に縋り付くのはやめてくれな?
ちょっとこう、正直悪い気はしないんだが、客観的に見たら酷い構図だぞ……?
二人も楽しそうに見てないで早く止めてくれ……。
というか、聖剣も少し……「絶対!!!! 嫌!!!!!!!」か……そうか……。
うーん、どうなんだろうな。聖剣的には頭の中を覗かれる、みたいな感じなんだろうか。
「なぁ、それって聖剣からしたら思ってることとか知ってることとかを全部見られちゃうってことだったりするのか?」
「あー、それは記憶領域的な話なのでちょっと違いますね。それも見たいですけど。えっと、真面目な話をしますと認知能力……簡単に言えば、どういうときに何をどう思うか、っていう仕組みを知りたいといいますか」
「うん……?」
「たとえば質問に対して正しい答えを返す。それだけなら単純なんですけど、実際私たちってこういう時、質問の意図を探ったり、答えた後の応答を予測したり、みたいなこと考えるじゃないですか」
「……?」
「私のゴーレムではそういうことができないけど、その剣はそう言う反応がちゃんとできてるってことです。見ただけで全部わかるとは思えませんが、私はまだそれを実現できてないので、それをどうやってるか、そのヒントを知りたいんです」
「どういうことかわかるかベル」
「ぜんぜんわかんない」
とりあえず離れてくれたので俺の情緒的にも一安心なんだが、なにをいってるかは全くわからん。
そういやあいつもこういう難しい話をよくしてたなぁ……思わず遠くを見てしまう。
「なるほど……感情などもそうですね?」
「あ、そうですそうです」
「え……アリアわかるの!?」
「怒ってる時、悲しい時、楽しんでる時、喜んでる時。様々な感情と状況。考えることはその人、その時々で違っております。ですが"考える"という仕組みは同じであるはずだと」
「そう、そうなんです。人種が違えど、個人差はあれど、知能という概念、それそのものは同じ。感情、思考、性格、直感、認知、意思。どれだけ複雑でも解の仕組みが画一の形で動いてるのであれば、必ず術式で再現できるはずなんです」
「なるほど」
「……うーん?」
熱を帯びるエステルと、大きく頷くアリア。やはり何もわかってない様子のベル。
正直、俺もよくわからないな。記憶はなんとなくわかる。たぶん再現もできるんだろう。
でも、そもそも俺たちがしてる考えるって行為に仕組みがあるのか?
そりゃあ本当に仕組みがあるなら、それと同じように作れれば人間と同じように考える道具になるってことなんだろうが。
あ、ちょっと待て。ということは……?
例えば、俺の記憶と、"考える"を完璧に再現すれば、俺がもう一人できるってことか?
俺以外に俺がいるという状況。それは……そんなことがあるのだとしたら……。
……それはなんだか少し、ワクワクするな。
「ですが、少し危険ですね」
唐突に、緊張感が走った。空気が少し冷える。
アリアがこういう突き放したことを言うのは……珍しいな。
「……危険?」
「突き詰めてしまえば、それは
「そう……かもしれません。ですが、魔術師はあらゆる既知に学び、すべての未知を究明する存在です。たとえそれが神の技術であったとしても、私は魔術師ですから。そんな理由で諦めたりはしません」
「ええ。その考えは尊重します。ですが少なくともこれから向かう教国ではそのようなお話はされない方が良いでしょう。そういったことに少々、厳格な国ですので……」
「……ご忠告、ありがとうございます」
ニコニコした表情に戻ったアリアと、硬い雰囲気のままのエステル。これは、どうしたものか……。
あと聖剣が空気を読まずに「助かった……?」とチカチカ瞬いてるけど多分諦めてないから助かってないぞ。
「でもさ、たぶんアリアは個人的にそれ面白いって思ってるんでしょ?」
「え?」
「ふふふ……立場的にはあまり大きな声で言えませんが、素晴らしい話だとも思ってますよ?」
呆れた様子のベルが突っ込み、アリアが目を細めた。
薄い微笑みに細い眼差し。
その顔、笑顔のはずなのに若干怖く感じるんだが……?
「私は聖女として神の恩寵をこの身に受ける器。その力の偉大さは誰よりも理解しています。果たして、人の身で何処まで近づけるのか。その窮極に辿り着き、人は神となれるのか。実に……興味深いですね。是非とも、頑張っていただきたいものです」
「……魔神と呼ばれる魔術師に、私はなるんですから、頑張るだなんて言われるまでもありませんよ」
「ふふ、私も見習いの聖女ですのでお互い頑張りましょうね?」
「……見習い、……ですもんね。まぁ私は確実に見習いですけど」
「いやぁ、エステルちゃんを見習い魔術師っていうのもだいぶ無理あると思うけどねぇ」
とりあえず、話は落ち着いたんだろうか。
お互い納得できる形に着地できたんならいいんだが。どうなんだろうな。
なんだかんだ話してる間にも目的地は近づいている。
話題にも少しあがった教国は、もうすぐ見えてくるところだろう。
教国。法国と同じく、女神を強く信仰する宗教国。
元は法国と一つだったが、教義の違いから国土を分け合う形で独立した国。
今は表向き、両国の関係は良好らしいが……まぁ通り抜けるだけだしな。
あまり踏み込むべきではないだろう。
「ところでその剣、触るのは大丈夫ですか?」
「ああ……その話終わってなかったんだな」
「もう、終わるわけないじゃないですか。魔術院で魔剣は結構見ましたけど、観察してるとやっぱりこの剣は結構違いますね」
「そうなのか」
……ああいや違うぞ、お前は魔剣じゃないからな。
聖剣なんだからそんなのと全然違って当たり前だよな。だから拗ねないでくれよ?
「まあ、魔剣はあくまで魔道具ですからねー。内蔵術式がメインのもありますが基本的には剣としても使える杖って思った方が近いかもしれません」
「なるほどなぁ。……うん、ちょっとだけなら良さそうだぞ」
「おお、やった! ……では失礼して」
エステルが恐る恐る聖剣を受け取って持ち上げる。
撫で回す。軽く叩く。擦る。顔を近づける。匂いを嗅ぐ。揉むように何度も握る。
優しい手つきだが結構遠慮がない。
あー……聖剣から、我慢してるけどめちゃくちゃ嫌そうな意思を感じる……。
「感触、質感、温度、重量、密度、うーん……ししょーなら舐めたりもするんでしょうけど流石に……」
「舐め……?」
「外装の素材はなんなんでしょうねこれ。鉄っぽいけど鉄じゃない。異様に軽いし、実在感がない。御伽噺だと神が作ったとか鍛えたとかっていってるけど、本当に未知の素材……やっぱり構造解析」
ここに来て我慢の限界に至ったのか、聖剣がめちゃくちゃに光った。
これまで見たことないくらいの強く眩しい光。いやすまん、そんな嫌だったんだな……。
穴が空くくらいに間近で見てたエステルは盛大な直撃を食らって悶えている。
「あああ! 目が! 目が!!」
「楽しそうだね……もう着くから準備しなよー」
気づいたら入国の受付詰所がそれなりの近くに見えてきていた。
アリアが目潰しされたエステルに軽い治癒をかけ、入国手続きのために先行して向かう。
ここまでくるのに一週間。
教国滞在は横断のみで突っ切れば大体一週間かからない。
補給も考えたら二週間弱、と言ったところか。
その後は法国の聖都まで二、三日で到着するはずだ。
どこかで辻馬車でも拾えたらもう少し楽に早く着くんだろうがなぁ。
まあ歩くのも修行と思っておこう。
さあ、俺たちも行くぞ。
・・・
<魔女さんinプライベートルームwith偽アルくん>
「パクパクモグモグ! 使い魔くんの進捗、ダメです! パクパクモグモグ!」
「おいおいマスター、そろそろ控えた方がいいんじゃ……それと、そろそろ皇帝様と打ち合わせする予定だったろ? 準備しといた方がいいんじゃないか?」
「む……そうだった。ていうか……なんかこいつ私室内の情報とかから勝手にスケジュール拾って私の秘書みたいなことやり始めてるけど、悔しい……意外と有能……!」
「こういうことなら俺でも役に立てるだろ? 好きにしていいって言われたから、ずっとマスターのこと考えてるんだよ」
「……」
「どうしたマスター?」
「……、ぅ、ぐっ……、ふぅ……危ないところだった。ロールプレイが完璧なら耐えきれなかったわ。さすが私の最高傑作。その声と表情でその台詞は不意打ちすぎ」
「はは。……まあ、完璧なやつは頑張っていつか本物に言ってもらうといいさ」
「……そうだなぁ。あいついま、何やってるんだろうなぁ」
(というか、流石にこいつをこのまま遊ばせとくのはちょっと勿体無いよなぁ……別の使い道も考えておくか)
・・・
聖剣ちゃん「……勇者だっ!新しい主っ!やったっ!頑張る、私めっちゃ頑張るよっ……!」
(新しい主の影の中に変な盗撮用使い魔を見つける3秒前)