でもその過程で桐生ちゃ〜んやナツも入手したし、何より臨戦ホシノが手に入ったのは嬉しい誤算だったぜ。(カツカツのレポートとクレジットから目を逸らしながら)
合宿施設に着いた補習授業部の面々の前に、メルナ達大和生徒が掃除をしている様子が見えた。
「あ、先生どうも」
「"メルナ、怪我の方はもう大丈夫なの?"」
「ハイ、おかげさまで。それで一足先に到着したのですが、少々施設内が汚れてたもので、掃除をしていたところです」
「わざわざありがとうございます。私たちも手伝います」
「では、既に掃除を終えた部屋があるのでそこに荷物を置いて、体操着に着替えてきてください。金田ァ‼︎案内‼︎」
「只今参りまぁぁす‼︎」
ナオの案内を受けて移動する中、アズサは掃除をしている大和生の様子をじっと見ていた。
(掃除をしている中でも周りの警戒をさりげなく行なっている…サオリたちじゃなくとも、マダムの密命を受けたアリウス生徒が見てる可能性を考慮しているのか。深夜には上手いこと私が抜け出せるよう手助けする手筈になっているからその辺りは問題ないが、勉強を疎かにするつもりはない。もし詳しい情報を得る前に全員合格したらどうするつもりなのだろうか…)
彼女の懸念点は尤もであるが、その点については事前にハナコに協力を依頼しているため解決済みである。
ハナコがワザとテストの点を下げていることはナギサの調査と、ムサシらの原作知識で把握しているため、ムサシとナギサが彼女を呼び出して協力を依頼したのであった。
仕方ないとは言え、自分を含めた無関係の者を巻き込むことにハナコは苦言を呈したが、ナギサが素直に頭を下げて謝罪したことに動揺したものの、最終的に事が済み次第ムサシが彼女の『お願い』を一度だけ聞くことを条件に協力することにしたのであった。とはいえ、ハナコの胸中は複雑なものであった。
トリニティのドロドロとした内部派閥の争いに嫌気が差していた彼女は以前から何度かムサシに転校希望の話を持ちかけたものの、大和学園は転入生を受け入れることはできても他学園から生徒を引き抜く権限は持ち合わせていないため、断るしかなかったのであった。
『自分のお願いは聞けなくてティーパーティのお願いは聞くのか』
協力をお願いされたとき、そういった感情が湧いてきたが、アリウスがやろうとしていることの重大さは理解しているため自分の事はそれに比べれば大したものでないとはわかっている。しかし、自分に構って貰えなかったという子供じみた不満は多少は残っていたのであった。
(まぁ、あの交流会以降の先代ティーパーティの様子は見ててスッとしましたし、私のお願いを聞いてもらうと言われた時のムサシさんの狼狽えぶりは面白かったですし♡)
なお、ヒフミもナギサからある程度の事情は伝えられているため、この合宿の裏事情を本当に何も知らないのはコハルだけである。
既に掃除を始めていたこともあり施設内の清掃はあっという間に終わり、ついでにと行なったプール掃除も終わり早くに終わらせる事ができ、水を張っている間、ヒフミ達は教室内で休んでいた。
「あの様子だと、夕暮れくらいには水が溜まりそうですね」
「夕日で煌めくプールで遊ぶ私たち…果たして赤くなっているのは夕日のせいですかね〜?」
「ハナコ、何言ってるの?」
「やっほ〜みんないるね」
そう言い教室に入ってきたのは手提げ袋を持ったアズキであった。
「あれ?アズキさん、今日は当番じゃないはずじゃ…」
「いやね、ナオから掃除をしてるってモモトークで知ってね。お疲れのようだから差し入れ持ってきたのよ」
「わ、ありがとうございます!アズサちゃん、運が良いですよ。アズキ先輩の和菓子って凄く美味しくて人気なんですよ」
「先生の分もあるので、良ければどうぞ」
「"ありがとう。頂くよ"」
アズキは紙皿を取り出して持ってきた手土産、もとい羊羹を切り分けてみんなの前に渡していく。すると、それを見たアズサが怪訝そうな顔を浮かべてヒフミに問いかけていた。
「ヒフミ、この黒いC4みたいのはなんだ?確かにC4は甘いと聞くが…毒だぞ?」
その言葉に全員が唖然とし、事情を知っている大和設立組が目頭を押さえて天を仰ぐなか、ヒフミがその質問に答えた。
「アズサちゃん…それ、羊羹っていう和菓子で、C4じゃないです…」
「羊羹?」
「はい。簡単に言うと小豆という豆を甘く煮て寒天で固めたものです」
「豆?豆を甘く煮るのか…?大丈夫なのかそれ…?」
アズサに限らず、基本的に豆はスープやサラダに入れるものというイメージがあるのか、餡子やきな粉といった甘くした豆を敬遠する生徒は少なくはなかった。美味しいから大丈夫ですよ、とヒフミに促され、アズサは一口大に切った羊羹を恐る恐る口に入れる。
2、3回ほど咀嚼するうちに怪訝そうな顔をしていたアズサの表情はパァァ…!とわかりやすく変化し、翼もピコピコと動かしていた。
「ヒフミ!これ、すごく美味しい…‼︎」
「そうでしょう?気に入ってよかったです」(可愛い…)
「作った身としては喜んで貰えて嬉しいよ」(なにこの可愛いの塊は…)
(可愛い)(可愛い)(結婚しよ)(私が
満面の笑みを浮かべるアズサにヒフミやアズキだけでなく、その場の全員が頬をゆるませていたのであった。なお、上記の反応の一部は設立組のものである。
「"そういえば、ムサシたちも条約関連で色々頑張ってるんだってね?"」
「はい。今日は確かアマツさんがゲヘナで用事があるって言ってましたね」
「条約というと…」
「日米和親条約…」「違う‼︎」
「ポーツマス条約!」「違う‼︎」
「SHI☆MO☆NO☆SE☆KI…(パァン‼︎)」
「ア、アズキさん⁉︎撃って良いんですか⁉︎」
「ボケ続けるコイツらが悪いんですよ」
ニコニコと黒い笑みを浮かべるアズキを見て、この人は怒らせないようにしようと胸に誓うヒフミ達であった。
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万魔殿執務室内にて、アマツとマコトが机を挟んで話し合っていた。
「正義実現委員会が会議に出るから、主だったメンバーの顔を覚えたいという試みは悪くないですが…何故急に?」
「いや何、このマコト様がトリニティの者であってもしっかり顔を見分けられると示す良い機会だと思ってな」
実際の所は、会議の際にツルギの名前を間違えたことをムサシに知られたら関係が悪くなるのではというものであるが、自分が他人の顔も覚えられないと風紀委員に知られるのが嫌と言う理由もあった。
「なるほど…事前に相談してくれたので写真はここにあるので、それで覚えましょう」
「わかった」
「これが委員長のツルギさんです」「ほう」
「そして副委員長のハスミさん」「…うん?」
つまずくのが早ぇよ、と内心思いながらアマツは写真を続けて出した。
「二年生のイチカさん」「な、なるほど…?」
「一年生のマシロちゃん」「……」
「最後に、コハルちゃんです」
「全部同じではないか」
「せめてコハルちゃんはわかりましょうよ髪色違うんですから」
呆れたように話すアマツに対して、髪の色も髪型もほぼ同じ奴ばかりではないかと反論するマコトだったが、それは違うとアマツに返された。
「よく見てください。イチカさんは青みがかった黒髪ですし、マシロちゃんは髪が短いです。ツルギさんとハスミさんは似た髪型に見えますが、ツルギさんは二本、髪が飛び出てます。せめてツルギさんとハスミさんの違いがわかるようにしておきましょう」
やたら詳しく話すアマツにマコトは頼む相手を間違えたかと思いながら写真を見比べた。とはいえ、ゲヘナ生徒ならともかく、トリニティともなれば覚えるのに少々時間がかかっていた。
「よし、コイツが剣先ツルギだな‼︎」
「違ァァう‼︎それはイチカさんです‼︎目の色が違うわ‼︎」
「開いてないだろう⁉︎」
1時間程かけてようやくツルギとハスミの違いを判別できるようになったところでアマツはゲヘナ自治区をあとにしたのであった。
一方で、時間は遡りトリニティ自治区内でマドカはファミレスを外から覗いてなにやらブツブツと呟いていた。
「うーん、ここはさっきよりは似てるけど…今は11時41分か。…調印式当日の太陽の位置を考慮しても影の向きが違うな。家具が一致してるファミレスチェーンはこの系列店しかないし、新しく開店する予定がない事は把握済み。彼女から見て右から左に来たことを踏まえると該当する店舗はあと…80以上⁉︎流石三大校…いや、到達時間や彼女らの寮の位置を考慮すれば…あ、カタコンベ出入り口候補の図面があればもっと楽か?ウイさんに聞いてみるか…その前にここでお昼にしよ」
早く特定しないとな、と呟きマドカはファミレスに入店したのであった。
ハナコ「協力しますけど、その代わり私の『お願い』を一つ聞いてもらいますね♪」
ナギサ「え、えぇ。いいですよ…(何を頼まれるのでしょう…?)」
ムサシ(まぁ、『あはは』よりはマシかな…)
ハナコ「ムサシさんが♡」
ムサシ「…⁉︎」
ハナコはムサシに対して重めの感情を持ってます。
…ミカもそうだけどホシノもユメの件でムサシに変な感情向けてるだろうし、ピンク髪に妙な縁があるな司令官。