万歳風味な転生者たち、透き通る世界へ   作:NTK

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「委員長、司令官たちの戦法を風紀委員に取り込まないのですか?」

「…あの人らの戦法一回聞いてみな?」

「当たらなければどうということはないよ」byアマツ

「当たったところでどうということはないので…」byコハク

「当たる前に倒せばどうということはない」byムサシ

「…アテにならなかったです」

「だろ?」

───ニノとヨウカの会話



嵐の前の夏模様

「それで、アリウス生徒たちの検査結果は?」

 

 確保したアリウス生徒たちの一通りの検査を終えたという連絡を受け、ムサシはミネと大和学園の看護部長、比野(ひの)コノミの元に訪れていた。

 

「慢性的な栄養失調、といったところですね。水と最低限のレーションくらいしか口にして居なかったみたいで…それと、確保時の怪我以外にも、虐待の痕跡が……」

 

「それ以外は特に問題はないのよさ。アレルギーとかも無かったし、ご飯に気を遣う必要がないのは助かると言ったところよね。ただ、病院食をあんなに美味しい美味しい言いながら泣いて食べてるのは流石に複雑だわさ…」

 

 

 二人の報告を聞き、ムサシはアリウスの内情の酷さに心を痛めていた。

 アリウス生徒らについては一旦は大和学園で身柄を預かる事にし、その後本人たちにそのまま大和学園に入学するかトリニティへの帰属をするのかを聞き、その意思を汲んだ対応にするという事に落ち着いていたのであった。それにはティーパーティやシスターフッド、シャーレも協力するという事であった。

 

「それと、これは別件なのだけどよさ…しれぇ、そろそろ休んだ方がいいのよさ。ここのところ動きまくってるし、アンタが休まないと周りが気が張って休めなくなるからとっとと休暇を取るべきだわさ」

 

「あぁ、うん…それはコハクにも言われたな…考えておくよ」

 

「……ミネさん(しゃん)、コイツが2日以内に休暇予定を組まなかったら救護して貰ってもいい?」

 

「あ待って、それはやめてくれ。わかった、立てておくよ」

 

 そう返したものの、どうしたものかと考えている時にハスミから連絡があり、現在に至るというわけであった。

 

(あーそういえばそんなイベントがあったなぁ…)

 

「他学園のトップにこういう事を頼むのはアレなのですが…仲の良い貴女が来てくれればツルギも休まると思いまして…大丈夫でしょうか?」

 

「構いませんよ。私も休めと周りから言われてましたし、同行しますよ。それにしても…あの二人が戦車を強奪して暴れるとは…」

 

「えぇ。戦車が大破した後もアズサさんが銃剣術でさらに抵抗したのでさらに被害が…」

 

「……なんか、すみません…」

 

「いえ、咎めてるわけでは…そちらのおかげでこちらも近接戦に強くなりましたし、ツルギのサポートが出来る子も出てきましたし。ただ、今は平気ですが…マシロまで銃剣術に傾倒すると、その、後方支援が……」

 

「あぁ…なるほど…。それと、このリストに『花火』と書いてありますが「今、花火と言ったか⁉︎」おぉう、いつから居たメリニ…ちょうど良い。メリニ、花火作りを依頼したいが出来るか?あと、出来れば一緒に来てもらえれば良いが…」

 

 ムサシの頼みにメリニは任せたまえ‼︎と快諾し、日程と規模を聞いたあとに早速すぐに始めると言い部屋から出ていった。

 この時期は彼女個人に祭り用の花火の作成依頼が殺到しているうえ、植物開発部としての仕事もある筈なのだが、メリニは疲れるどころか寧ろ自分の芸術をお披露目出来るということでイキイキとした様子であった。

 

 その後、コノミや他の大和生に休暇の旨を伝え、次にヒフミやアズサ、マシロに先生にも伝えた後、最後にツルギに連絡を入れたのであった。

 

「…というわけで、私も海に行く事になった。一緒に楽しもうな」

 

《……》

 

 ツルギからの反応が無くどうかしたのかと心配していると、何か嫌な予感がしたためスマホから耳を離すと案の定、ツルギが叫びだしたのであった。

 

《友達とォォ‼︎海ッ‼︎青春んんんんんん‼︎きへへへへへへへぇぇぇぁぁ‼︎》

 

「(めっちゃ嬉しそうだな…)おーい、ツルギ?聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

《なんだ?》スンッ

 

「(いつも通りの切り替えの速さだ)水着はあるのか?私は去年のがまだ着れるから問題ないが…」

 

《ハスミのお下がりがあるから問題ないと思うが…》

 

「一応着てみた方がいいぞ?サイズが合わなくて当日、先生の前でポロリしたら大変だろう?まぁ、それはそれで忘れられない思い出にはなるか」

 

《ポ、ポロ…⁉︎き、きえええぇぇぇ⁉︎

 

 揶揄い交じりに言ったムサシの発言に動揺したのか、通話の向こうで破壊音が聞こえたあと、通話が切れてしまった。10分ほどしたのちに、着てみたがサイズが少し小さいというメッセージが届いたため、明日一緒に買いに行こうと返信したのであった。

 

ー ・ー ・ー・・ ・・ ー・・・ ー・・ー *1

 

「こりゃまた、大量に用意したなぁ…」

 

「我々だけでなく、他の観光客に配る用にも作ったからね。こういうのは皆で楽しんでこそだ。あと、植物開発部で栽培したスイカもここに」

 

「ほぉ、なかなか立派な…ヨシ、早速詰め込んで向かうとするか」

 

 大量にある手持ちや打ち上げ式の花火と、スイカの入ったクーラーボックスを装甲車(襲撃による誘爆防止用)に詰め込み、ムサシとメリニは無為ヶ浜に向かっていった。

 目的地で先生らと合流し、荷物を下ろしていると遠くに大和の統合組や転入組の生徒たちとハンナの姿があった。

 

「あれ?司令官、今日が休みの日だったか?」

 

「ハンナ…また話を聞いてなかったか…」

 

「冗談だ。ワタシたちもついでに泳ぎに行こうと思ってな。そっちに交じる気はないから気にせず休暇を過ごしてくれ」

 

「ムサシ司令!その水着、凄く似合ってますよ‼︎」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 ムサシが着ているのは緑色のホルダービキニであり*2、日頃鍛えている彼女の身体を惜しげもなく晒していた。そしてその姿をハンナ以外の大和生が熱を込めた目で見つめていた。

 

(ムサシ司令の水着…いい…)

 

(腹筋がえっちだ…これ下手な全裸よりヤバいよぉ)

 

(海に来て良かった…‼︎)

 

 後輩たちの視線を他所に、ムサシはその場を去りヒフミらと共に砂の城づくりを始めていた。

 

「んしょ…もう少しで…」

 

「ツルギ、私がこちらを掘る。ツルギは反対側を頼む」

 

「わかった…」

 

 3人で協力して砂の城が出来上がると、このあとのことを知っていたうえ気配を感じたムサシが翼を広げて砂の城を覆うと、翼に銃弾が防がれ砂の城は無事であった。見るとやはりチンピラたちがこちらに因縁をつけているのが見えた。

 

「わわ、なんか面倒なことに…」

 

「……」

 

「待てツルギ。私が彼女らの相手をしよう。その間に他のリストを埋めるといい」

 

 そういいムサシはチンピラたちに近寄って行った。

 

「お?なんだぁ?ショバ代を払ってくれるのか?てか、どこに財布をしまってんだ?」

 

「……⁉︎いや待て、あいつは大和の怪鳥じゃ「そォい‼︎」うげぇ⁉︎」

 

 ムサシのアッパーカットが炸裂し、チンピラの一人が宙高く舞うと、ムサシが飛翔してその足首を掴むとそのまま上半身を砂浜にねじり込んでいったのであった。その一連の動きにヒフミらだけでなく、大和の後輩たちも驚いていた。

 

「え、あ…えぇ?」

 

「ハンナ先輩、アレは一体…」

 

ローリングドライバーだよ。いやぁ、久々にみたなぁ。お?今度はカワセミハッグにドラゴンアタック…わぁ容赦ない」

 

(ま、何度も絡んでくるからここでシメるのはアリか…あ、そうだ)

 

「キミたち、ワタシは小腹が空いたから海の家で何か買おうと思うのだが…来るかい?」

 

「あーそうですね…喉も渇いてきたので、行きます」

 

 ノリノリで某甲虫王者のワザを繰り出すムサシとそれを受けるチンピラたちの叫びを背後に、ハンナたちは海の家へと向かっていったのであった。

 

ーーー・ー ・ー ・ー・・ ー・ー ーー・ *3

 

 チンピラたちをしばき終えたムサシが戻ると、ちょうど泳ぎのレクチャーをしているところであり、それを遠目で眺めていると砂の要塞が目に入り、あまりの大きさに驚いていた。

 

(よく作れたなぁコレ…なるほど、どこから砂を持ってきたと思ったら塹壕を幾つも周りに掘ってその砂を使ったのか…)

 

「あ、ムサシ司令官。終わったかい?こちらも泳ぎを教わるってやつを終えたところだ。確かリストにはスイカ割りがあったからそれをやってみるかい?」

 

「いや、その前に海の家に行こう。そこで昼食にしてからの方が良いだろう」

 

 そう言った後でムサシは海の家でイズミがやらかすのを思い出して顔を青くしたが、直後にハンナから掲示板での連絡があり、店主がジュリ製マンゴーソースを口にする前に自分らが来店して注文し、店主に対応させたので問題ないという事であり、ムサシは一安心し、一行は海の家の料理を堪能したのであった。

 

「さぁお待ちかね、スイカ割りの時間だ‼︎私とミズホらで栽培したスイカを存分に味わうと良い‼︎木刀はここにあるぞ」

 

「こんな大っきいのが四つも…メリニさん、ありがとうございます。にしても…皮が黄色いスイカなんて初めて見ました」

 

「それは中身は赤いぞ。で、何も貼ってないのが普通の赤いやつで、黄色と白のシールが貼ってあるのがその色の果肉のスイカだ。白いのは珍しいだろ?味としては梨に近いぞ。どれも味は保証しよう」

 

「ワタシもガヤとして参加しよう」

 

 トップバッターはムサシであり、目隠しをして歩く中、周りが指示を出していた。

 

「もう少し前です!」「"そこを少し右だよ"」「少し行き過ぎだ、九時方向に2歩だ」

 

「東経105、北緯20、地点ロのニ」

 

「そこは違うのはわかるぞハンナァ‼︎…すまない、もう一度どこにスイカがあるか言ってくれ」

 

「ヤシの木の近くゥ‼︎」「見えるかァ‼︎」

 

 結局、ムサシはスイカを割ることはできず、ツルギに番が回ってきた。

 

「……ヨシ、そこだツルギやれ‼︎」

 

「キエェェェェ‼︎」

 

「わぁ…スイカが粉々に…」

 

「こうなる事を見越して大きいのを用意した。小さければ木っ端微塵だが、アレなら平気だろう」

 

「キエッ‼︎キェッ、キエェェッ‼︎」

 

「凄い…ツルギ先輩、残りのスイカを気配だけで全部割ってます」

 

「"流石ツルギだね。さ、スイカも割れたし、食べようか"」

 

 メリニが勧めるだけあり、食べたスイカはどれも甘く、アズサは以前のように翼をピコピコ動かして喜んでいた。その後、リストを埋める前に少し自由時間にしようということで、ムサシはツルギと共に泳いだあと、先に上がって木陰で休んでいると、血相を変えた観光客らしき生徒がこちらに向かって来るのが見えた。

 

「あっあの!ムサシさんですよね⁉︎ちょっと来てください‼︎」

 

「ん?あ、あぁ…」

 

 生徒に手を引かれて海辺まで行くと、海で何かを探しているツルギの姿があり、何か嫌な予感がしたムサシだったが、その生徒はツルギに指さしてこう言った。

 

「アレです、あの怪物…?というか、お化け?アレがいると怖くて海に入らなくて…なんとかしてくれないでしょうか⁉︎」

 

 やたらと大きな声で話していたため、ツルギの耳に入ったのか、自分を指さしたあとショックを受けたような顔を浮かべたのを見て、ムサシの額に青筋が浮かび上がったのであった。

 

「………」

 

「あの、ムサシさん?」

 

「なぁ…私の目には、親友のツルギの姿しか見えないのだが…一体・誰が・お化けだって?

 

「え?あ…親、友…⁉︎し、失礼しましたぁ!「おい待てェ、失礼するんじゃねェ」へ?」

 

「謝るなら私ではなくツルギだろう?違うか?」

 

「は、ハイ‼︎ツルギさん、すみませんでしたァ‼︎」

 

 ツルギに深く頭を下げて謝罪したあと、その生徒は気まずくなり足早に去って行った。その後、ツルギが落ち込んだ様子で陸に上がり、ムサシが彼女に近寄った。

 

「まったく、キミをお化け呼ばわりとは、本当に失礼な奴だったな。まぁ余り気にするな…おい待て、何処に行く気だ?」

 

「……このままだとみんなが楽しめなくなる…だから、戦車に戻る」

 

「ハァ〜…周りに気を遣えるのはキミの美徳だけどさ、最後の夏なんだろ?それで良いの?」

 

「それはムサシもだろう…それに、貴女は学園の運営とかで1、2年の時もあまり遊べたりはしてないはず…私はその頃に楽しんだから…」

 

「だからこそ、親友のキミと最後の夏を楽しみたいんだ。キミの言う『みんな』に当然私も含まれているんだろ?ハッキリ言って、私はキミが参加しないと楽しめない。だから一緒に楽しもう。な?」

 

「……ッ⁉︎きひッ、うへ、うぇへへへへへへへへへぇ‼︎」

 

 真剣な顔で話すムサシに、ツルギは嬉しいやら照れ臭いやらで奇声を発したあと、大人しくムサシに着いて来たのであった。

 

 よほど嬉しかったのか、その後のビーチバレー対決では周囲にクレーターが幾つもできるほどに白熱し、最終的にはお互い飛翔しての空中ビーチバレーという訳の分からない事態になったのであった。

 

・・ー ・・ー・ ーー・ーー ー・ーー ・・ ー・・・ ・ー・ ーー・・ー ・・ *4

 

 日も落ちてきて辺りが暗くなると、メリニはテンションを上げながら打ち上げ花火の準備を始め、それを終えると手持ち花火を周囲の観光客に配っていた。

 

「さぁ好きに持って行きたまえ、有澤メリニ特製の花火だ‼︎消化用のバケツとゴミ箱はここにあるからそれも持っていくといい!片付けはきちんとしてくれよ?あと、人に向けて花火をやったやつは見つけ次第ソイツを花火にしてやるからな?」

 

「"メリニ、すごく張り切っているね"」

 

「寧ろこの時の為だけに来たまでありますから」

 

「それだけじゃないぞ?アズサ、君にとっては初めての花火になる。だから飛切りのを用意したからしっかりと目に焼き付けたまえよ‼︎」

 

 あらかた配り終えたあと、メリニは花火のスイッチを押すと、花火が打ち上がる独特の音を響かせたあと、夜空に大小様々な花火が開き、彩っていった。

 

「わあ……!これが、花火…‼︎ヒフミ、とても綺麗だな」

 

「えぇ。とても綺麗ですね」

 

「"ここまでのは、私も初めて見たよ"」

 

「綺麗……!」

 

「ん?あれ、正義実現委員会のマークじゃないですか?よく出来てますね…」

 

 マシロが感心し、それを聞いたメリニが満足げにしていると、浜辺でも手持ち花火の光が辺りを灯していた。それに続いてヒフミらも手持ち花火に火をつけて楽しんでいた。

 

「凄いな。花火もある意味爆弾なのに、花火はこんなに綺麗なんだな」

 

「そうだアズサ。私はね、爆弾全般が好きだが…人を楽しませられるこの花火という爆弾が、一番好きなんだ」

 

 その直後、一際大きな爆音がなり、見ると花火ではなく普通の爆炎が夜空に咲いていた。

 

「メリニ、アレは?」

 

「…あー、多分だが、途中深夜テンションが入ってたから、間違えてグレネードを中に仕込んだかもしれないな…」

 

「危ないなぁ…」

 

 最後に線香花火を付けて撮影したが、3分近くも火が付いていたため一同は驚いていたが、メリニ曰く、もっと長くできるがそれ以上は流石に飽きるということであり、彼女の花火作りの技術に目を丸くしていた。

 その後、朝方まで周辺のゴミ掃除をしたあと帰り支度をしたのであったが、ヒフミを気遣いムサシが運転を変わってトリニティへ送迎し、自身は飛んで帰ったのであった。

 

…なお、こっそり後輩たちが撮影したムサシの水着写真は他の後輩たちからレア写真として出回ることになったのは本人の知る由もなかった。

*1
ムイガハマ(無為ヶ浜)(和)

*2
ちなみにツルギが買ったのはサイズを本人に合わせた原作と同じもの

*3
スイカワリ(スイカ割り)(和)

*4
ウチアゲハナビ(打ち上げ花火)(和)




比野 コノミ(転生組)
 看護部部長。140cm。名前の元ネタはピノコ。
 当然医療技術はありますし、口調は生まれつきです。

 ムーブがムーブなのでムサシは後輩たちにわりかしモテます。

 ちなみにムサシはツルギに対してはガチの親友だと思っており、恋愛的なアレはないので悪しからず。ちなみに、ムサシにも推しがいますし、自分の身長が推しと12cm差なのに動揺した時期があります。

 …さて、調印式に入っていきましょうかねぇ。
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