「…殉職だが、あまりそういうのは聞かない方がいい。触れられたくない奴もいるかも知れないしな。他に私らみたいなのがいるかは知らないが」
「まぁ…そうだな。あ、ちなみに私は母なる大地とラブ・イット・ワン」
「……どういう事?」
ヒヨリを捜索してしばらくすると、アリウス生徒が数名、付近を探索している様子が見え、物陰に隠れているとヒヨリの帽子と荷物らしき物が見えていた。
「荷物持ったまま逃げてたのかアイツ…」
「だが、あのままじゃいずれ見つかる…どうする先生?」
「"まずアリウスの生徒を無力化しないとね。下手に撃って増援が来ても困るし…ヨウカ、頼める?"」
「任せてください」
ヨウカは手頃な石ころを手に取ると、遠くのドラム缶に投げつけ音を立てた。音が鳴った方を見たアリウス生徒の隙を突き、警棒を構えたヨウカが接近し殴りつけて制圧したのであった。
「うっ!」「げっ⁉︎」
「制圧完了しました」
「なんて早い制圧…!」
「凄いだろ、ウチの風紀委員長?」
倒したアリウス生徒たちを拘束し、物陰に安置してヒヨリの元に駆けつけると、こちらの姿を見たヒヨリが驚愕の表情を浮かべていた。
「え、ええぇぇぇ⁉︎なんでリーダーがシャーレ先生やムサシさん達といるんですか⁉︎てかムサシさん撃たれたのになんでピンピンしてるんです⁉︎」
「ヒヨリ、まずは話を…」
「あぁ、ついに天罰が下るんですね…私はもう終わりです、よく考えたら自分を殺しかけた人たちに報復したいのは当たり前ですよね…」
「…っ」「待て、私は報復する気は…」
「やっぱり私たち捕まって拷問されるんですね‼︎耳と鼻を削ぎ落とされて、爪を剥いで指を一本ずつ切られるんですね⁉︎」
「だから話を…何だその噂」
「うわぁぁぁああん‼︎もう終わりですぅぅ‼︎まだやりたい事や読みたい雑誌が…」
「今すぐ黙らないならお望み通りにしてやろうか?ん?」
「ひぃぃぃぃい⁉︎」
「"ムサシ、落ち着いて…"」
話を聞こうとしないヒヨリに思わず手が出そうになるムサシを落ち着かせ情報を共有すると、スクワッドのメンバーには先生とムサシのどちらか、或いは両方を仕留めればアリウスへの帰還を許可するとの取引があったが、先生はともかく、ムサシは病院の警備が厳重であった事に加え、調印式での出来事からマダムへの不審感が強く、取引を蹴ったということであった。
「多分ですが…姫ちゃんもわかっていたと思います。マダムが約束を守る気は無いって事…。でも、あの場で対抗しても何の解決にもならないから、自分を連れて行かせる事で、私たちが誰かに助けを求める時間を作ったんじゃないかと、思うんですよね…」
「姫……なら、早くミサキと合流して助けに行かなくては…多分、あそこに居るはずだ」
10分程でミサキのいる放棄された橋に着き、橋の縁に佇んでいるミサキを発見しミサキもこちらを確認してサオリらの選択を理解すると、ムサシを訝しげな目で見て話しかけてきた。
「…何であなたは私たちを助けようとするの?自分を殺しかけた相手を恨みこそすれど、こんなことをする理由って、何?」
「……もう二度と、助けられる状況下でありながらそれを行わず、もしくは行えずにその事を、助けるべき相手から言われるのは嫌だからな」
「…っ!違う、ムサシ…私は、アレは八つ当たりのようなものでっ、そんなつもりで言ったんじゃ…」
「いや、居場所がなく困ってる生徒を支援するために学園を設立したのに、あんな事言われるようじゃ私はまだ未熟だよ」
実際、サオリがムサシを撃った時に発した言葉は彼女の心を揺さぶり、それで足を止めた結果があの負傷であり、例え傷を治せるようになったとしても、自戒の意味を込めて残しておくと決めていたのであった。
「…お人好しが過ぎるね。でも、だからこそあんなに大勢の生徒が駆けつけたんだろうね。そっちが協力する事についてはある程度は納得した」
その後、サオリの説得もありミサキもアツコ救出に同行することとなり、カタコンベへと向かう前に、ムサシがミサキに話しかけた。
「ミサキ、一応言っておくが、そこから飛び降りたら、運が良ければ着水時に気絶してそのまま溺死だろう。だけどね……落ちるまでは一瞬だとしても、本人にとっては凄く長く感じるし、凄く怖いんだ。それを覚えてくれ」
「何でそんな事知ってるの?」
「…内緒」
謎に説得力のある言葉にミサキが不思議そうにしているが、ヨウカだけがその意味を理解していた。
基本的に、ムサシたち転生組の『前』の死因は不慮の事故や災害によるものが殆どであるが、そうでは無い者もいるため基本的には本人が話さない限りは詮索しないのが暗黙の了解である。
ムサシの場合自分から話しているが、その死因はある意味酷いものであった。
(スカイダイビング中に鳥と衝突、その際にパラシュートの開閉装置が故障してそれを理解したまま墜落死だからな…そりゃ説得力あるよ。にしても、かなりの恐怖体験なのにも関わらず空を飛び続けるんだからよほど空が好きか頭のネジが飛んでるかだな)
コハクやアマツの死因も知っているヨウカとしては、あの3人の見た目や神秘はその時の思いに強く反映されているのでは無いかと考えているが、今はそんな場合では無いと切り替えて、あとを追いかけていた。
「それと…私たちの身の保証はするって言っても、あんだけの事してるんだから、仲良くしようなんて思う奴はいないと思うんだけど」
「キヴォトスは広い。キミらの事を良く知れば、何人かは好意を持って接してくれる人は居るはずだよ」
(少なくともミネさんはほっとかないだろうし、何より…コハクが推してるからな。味方がいないってのは無いだろうけど、コハクは構い過ぎて嫌われそうではあるが)
・・ー・・ ・ーー・ ー・ー・ ー・・ーー ・・ー *1
「ここを真っ直ぐ行けば、そろそろ着くはずだ」
サオリの案内の下、カタコンベ入り口へと差し掛かろうとした時、銃撃の音が響き、何事かと見てみるとミカがアリウス生徒と交戦していた。
「"ミカ⁉︎どうしてここに…"」
「(あー、私らが来た分タイミングがズレたのか)理由はあとで聞きましょう、兎に角加勢を…いや、あと2人しかいないな。なら私が」
そう言いムサシが銃を構えて狙いをつけると、アリウス生徒の頭部に『二発ずつ』撃ち込み、制圧させたのであった。
「よし。行きましょう」
「あの…なんでボルトアクションでダブルタップが出来るんです?」
「右手の動きが見えなかったんだけど…なんなのこの人、しかも病み上がりでしょ?」
(ナグサさんたちも似たような真似が出来るって知ったらどんな顔するかな…)
「ん…?あ、ムサシちゃん!それと先生とヨウカちゃんまで…?な〜んだ、私が先に着いてたんだ〜。……それで?なんでサオリたちが一緒にいるわけ?」
ムサシを見つけて安堵したのも束の間、すぐに険しい顔でサオリたちを睨みつけるミカに対してムサシは、既にサオリらに敵意はない事、アツコ救出の為に自分らが協力し、その後は全員自首することを約束させた事を話した。
「というわけです。救出が成功するまで私は戻りませんので。それと、出来ればミカさんにも協力して貰いたいのですが…」
「…まぁ、構わないけどさ…サオリ、私はムサシちゃんがあなたを信用してるから協力するけど、もし…それが演技でムサシちゃんをまた傷つけたりしたら……絶対に許さないから」
「…わかっている」
ミカも救出メンバーに加わり、一行はカタコンベへと突入を開始したのであった。
ー ・ ・ー・ ・ー・ ーーー ・ー・ *2
「…『神秘』の裏側、つまり相反するものである『恐怖』を弾丸に適用させたもの。それが『神秘貫通弾』の正体です」
ベアトリーチェが出て行った会議室で、ゴルコンダは黒服に自身の発明である神秘貫通弾について語りかけていた。
「ククッ…なるほど。以前私が小鳥遊ホシノにやろうとした事を応用したわけですか。これではカイザーらが手にしても複製することなど不可能といったところですね」
「彼らにそこまでの技術は期待してません。『神秘』を『恐怖』で相殺させる事で彼女らに弾丸が通用するようにしたのですが、一つ懸念点がありまして」
「ほぅ?」
「被弾した者が死ぬのならまだいいのですが、もし生存した場合、神秘の弱い者なら相殺を通り越して『反転』する可能性がありました。幸い、ムサシとやらは高い神秘を有していたので問題は無かったですが…もしかしたら超回復よろしく、相殺された彼女の神秘が増大するかもしれませんね」
「そういうこったぁ‼︎」
「ふむ…もし小城ムサシがマエストロの見立て通りの存在ならば、そうなれば私にとっても興味深い存在になりえますね」
「さて、私はそろそろベアトリーチェのもとに行くとしましょう。恐らくマエストロも来ると思いますが、あなたはどうします?」
「興味はありますが遠慮しておきます。万が一彼女がここまで逃げた際の防波堤として残るとしましょう」
ムサシの前世は本編通り割とエグい死に方をしました。なお、その際地面に旭日旗が出来たのは本人は知る由もないです。
ちなみにコハクとアマツの前の死因も決めてます。コハクは見た目の特徴、アマツは神秘がそれぞれ死因に起因してます。正確には、死因を回避するために望んでたものです。
…それ決めた後で公式で出たとあるキャラが思いっきりアマツの地雷を踏んでる事に頭を抱えたのはここだけの話です。
そしてさぁ……なんでここでサオリがムサシ撃った時のセリフと似たニュアンスの言葉を公式でスバルパイセンが言ったんですかねぇ?
メリニの件といい、なんで当たるんでしょうね?
通常セイア実装時に二人当てたのと、この前の水着でセイアのみ出たことくらいしか心当たりないんですよね…。