万歳風味な転生者たち、透き通る世界へ   作:NTK

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「司令官って、自分の神秘がなんなのか気になったことあります?アタシは間違い無く大黒天でしょうけど…」

「いや、興味は無いかな。わかったところで、この神秘だからこうしなきゃってなるのは嫌だし」

「ま、それはそうですかね…」

(でも、司令官だけ尾羽生えてるのは何か意味があると思うんだよな…鳥の妖怪?…待って、鳥の妖怪だとすれば、まさか…?いや、そんなまさかね…)

───いつかのムサシとアマツの会話



彼の者の神秘は

 カタコンベに入り、アリウス自治区の訓練場に着いた一行であったが、疲労で倒れたサオリを介抱するため、その場で待機していた。

 その間、先生はミサキたちのことを聞いていた。アズサとの出会いや、ベアトリーチェが現れて様々な戦闘技術を叩き込まれたこと、アツコが生贄になると聞き、サオリが何かしらの交渉をして指導役となり、スクワッドと呼ばれるまでになった事などを聞き、先生やムサシ、ヨウカは険しい顔をしていた。特にヨウカはベアトリーチェに対する嫌悪を隠していなかった。

 

「スクワッドの一員として、それなりに腕に自信はあったけど…まさかたった一人、しかもボルトアクションライフルで圧倒されるなんてね。アンタ達ってこんなのばかりなの?」

 

「こいつは枠の外側の存在だ。一緒にしないでくれ」

 

「人を人外みたいに…そう言うお前は枠内の上澄みだろ」

 

「あの…アズサちゃんから聞いたのですが、お二人は元は消滅寸前の自治区の生まれなんですよね…?どうしてあんなに強く…?」

 

「元々腕っぷしには自信があったけど…本格的に鍛えたのはユメさんに助けられてからかな。治安維持も兼ねて武者修行してた。同じ中学の不良達や、他所から来た高校の奴らとかもシバいてたな」

 

「中学時代から高校生と…?」

 

「とはいえ、自治区の規模が小さいから良い武器なんて殆ど流通してないうえ、あってもそれ買う小遣いも無かったしな。まともにやり合うのは分が悪いから、たむろしてるところにスモークや閃光弾投げて目眩しして、その間に銃を強奪して相手取ってたよ。壊れそうならぶつけて倒して、そいつからまた奪って、余ったら売り払う生活してたよ。その過程で当時入手してしっくり来たのが三八式だったわけ。今は違うけど」

 

(いつ聞いてもどこぞの青い英傑みたいな戦い方してんな…)

 

 ヨウカはヨウカで、生来の正義感から自警団紛いの事を中学時代から行っており、元々の技術を活かして治安維持を努めていた。同じ自治区の生まれであった二人だが、場所が離れていたため、互いの事は知らなかった。

 ある時、不良グループ同士の大規模な抗争が発生しそうであり、片方は強力な用心棒を雇っている時と聞き、現場に向かったヨウカが目にしたのは既に壊滅した双方であり、そこにいたのがムサシというわけであった。

 

「最初はムサシがその雇った用心棒かと思った。けれど、雰囲気が違ってたから思い切って話してみたら『同胞』だってわかってね。それがこいつとの出会い」

 

 ムサシもヨウカの事を遅れてきた用心棒と勘違いしており、誤解が解けたあとは目標を『同胞』を集めて学園を設立する事に決め、その後各地で仲間を見つけて今に至るといったわけであった。なお、肝心の用心棒は実は当時有名な詐欺師であり、雇い料だけ貰ってトンズラしたようであった。

 

「……仲間が集まって、誰をリーダーにするかってなった時、私は真っ先にこいつを推薦したよ。それまでの付き合いでこいつには『人を導く力』があるって気づいたんだ。行動的な意味でも、精神的な意味でもね」

 

「あ〜わかる。ムサシちゃん、リーダーシップがあるし、ツルギちゃんやナギちゃんみたいな組織の長とも仲が良いもんね」

 

「"ヒナやリオとも良好な関係だったよね。そういう人は珍しいってリンちゃんも言ってたよ"」

 

 その後、体調をある程度回復したサオリからアリウス旧校舎にあると言われてる回廊を目指すという方針が決まり、出発するなか、ミサキがヨウカに質問していた。

 

「最後にいい?あの人、変わった色の羽してるけど、アレは元からそうだったの?」

 

「まぁそうだったな。ただ、昔はもっと濃くて、黒に近い緑色してた。まるで烏みたいだった」

 

(おかげであの時、状況的にレイヴンかと思ったな…夕方だったし)

 

・・ー・ー ・・ー・ ーー・・ー ・・ ・・・ー ー・・ー・ ・・ーー *1

 

「妙だ…静か過ぎる」

 

「それに、知らない建物が幾つもある…」

 

 旧校舎へ向かうなか、異様な雰囲気に警戒しながら進んでいくと、ふとムサシが歩みを止めたのであった。

 

「"ムサシ、どうかしたの?"」

 

「いえ、羽音が聞こえたのですが…変だな。静かなようで、時折羽音に乱れがある…?数は、3…いや40。こっちに向かってます!」

 

 直後、上空と正面から銃弾が飛来し、一向は身を隠すとユスティナと有翼のアリウス生徒の一団が向かってきた。

 

「ユスティナ⁉︎なんで…?」

 

「…まさか、一度でも起動すればあとは幾らでも複製できる?」

 

「それより、羽根付きのアリウス生徒がこんなにいたとは…調印式のときに何故いなかったんだ?」

 

「万が一を考えて待機してるってマダムがいってましたけど…今考えると、特攻を知って士気を下げるのを防ぐためだったり…?」

 

『よく来ましたねアリウススクワッド』

 

 その声と共にベアトリーチェの姿がホログラムで映し出され、ムサシとヨウカは敵意の籠った眼差しで睨みつけていた。

 

「ベアトリーチェ…‼︎」

 

『生き延びたというのに、わざわざ殺されに来ましたか。まぁいいでしょう、裏切り者であるスクワッド、不安分子の先生と共に葬って差し上げましょう』

 

「よく言うよ、お前の力で追い詰めたわけじゃない癖に」

 

『…?何を言っているのです、私のスクワッドに殺されかけたのを忘れたのですか』

 

「は?神秘貫通弾はお前の発明じゃないだろ?それがなければ私は彼女らを制圧できた。ユスティナはお前のものじゃないし、私が倒れたあとに現れた大型兵器もお前が作ったようには考えられない。つまり…お前は他人の褌じゃなきゃ私たちに勝てっこ無いってことだ‼︎」

 

 ムサシが嘲るように言い放つとベアトリーチェは怒りに震えていた。

 

『この…っ言わせておけば…‼︎』

 

「ハハハハッ‼︎図星を突かれて怒ってやがる!見ろよヨウカ、アイツ私ら子供相手に顔真っ赤にしてら!」

 

「ほんとだ…こりゃ赤い‼︎」

 

「ムサシちゃん達、すっごい煽ってる…」

 

『減らず口もここまでです‼︎私に楯突いたことを後悔させて差し上げます‼︎』

 

「「やってみろよバーカ‼︎」」

 

 その言葉を最後にベアトリーチェの姿が消え、ユスティナとアリウス生徒が一斉に銃を撃ち放ち、戦闘が開始された。

 

「先生、有翼生徒の相手は私に任せて、先生とヨウカ達はユスティナを‼︎」

 

「"わかった、気をつけて‼︎"」

 

「ムサシちゃん、私も飛べるよ!」

 

「いえ、ユスティナ達の方が数が多い、ミカさんはそちらを頼みます‼︎」

 

 そう言いムサシは羽ばたき、アリウス生徒へと向かっていった。彼女たちは一斉にサブマシンガンを撃ち、弾幕を張るがムサシはそれを最低限の動きで避け、狙いを定めて小銃を撃ち、眉間に当てて撃ち落としていき、さらにすれ違いざまにストックで背中を殴りつけて叩き落として行った。

 

「なっ…⁉︎」

 

「バカな⁉︎飛びながらボルトアクションで当てるなんて…」

 

「空での戦いで、私に勝てると思うな‼︎」

 

 啖呵を切りつつ、ムサシは叩き落とした際に抜けた羽根を掴んで観察し、先ほどの羽音の違和感の正体に気づいたのだった。

 

(なるほど…この縁のギザギザ、梟のそれに近い。静かな羽音の正体はこれか。でも、汗や埃で一部ベトついて固まってる…だから羽音が乱れてたのか…手入れさえすれば、静かに飛べると言うのに…)

 

 ベアトリーチェが本当にアリウスの生徒を使い捨ての駒として見ている事に怒りを感じつつ、ムサシは移動しながらアリウス生徒たちとの交戦を続けていた。

 

「ひとつ伝えておく、あの日特攻した子たちは無事保護している‼︎」

 

「…っ人質のつもりか‼︎」

 

「違う‼︎私たちがマダムを打ち倒せば、あの子たちに再会できる!その翼だって、綺麗に手入れする事だってできる‼︎だから、道を開けてくれ‼︎」

 

 ふとアリウス生徒が見ると、叩き落とされた仲間は立てずに地面を這っている状態ではあるが、逆に言えば動けるくらいには手加減されている事がわかった。

 

「…でも、トリニティの奴らや、あんたの学園の連中が私たちに危害を加えるかもしれないし…」

 

「そんな事はさせない!とはいえ…四六時中キミたちを見てるわけにはいかないが、少なくとも目と手の届く範囲では保護しよう。だが…私の視界は広いし、手が届かなくともこの通り、飛んで向かえるぞ?」

 

 いつの間にか差していた月明かりを背後に翼を大きく広げ、こちらに微笑みかけるムサシを見上げながら彼女たちは胸を打たれ、涙を流していた。

 

──この人は信用できる。

──この人なら自分たちをマダムの支配から解放してくれる。

──この人ならば、この暗く虚しい世界から明るく暖かい世界に導いてくれる。

 

 そんな確信があり、彼女たちは膝をつき、ムサシに頼み込んでいた。

 

「お願いします……マダムを倒して、姫を救ってください…!」

 

「そして私たちを、助けてください…!」

 

「……あぁ、約束しよう。取り敢えず、安全なとこに隠れててくれ」

 

 その様子を、物陰から見ているものがいた。マエストロである。

 彼は訓練場からずっと彼女たちの後を追けており、ムサシの戦闘の様子を眺めた結果、彼の中でムサシの宿す神秘についての仮説が確信に変わっていた。

 

 初めは『その神秘』とムサシの容姿と差異があり疑問視していたが、黒服から聞いた小鳥遊ホシノ(暁のホルス)の話を聞き、神秘と本人の容姿が一致するとは限らない事と、先ほどヨウカが話したムサシの過去の容姿を聞きある程度仮説が確信に変わりつつあったが、今のムサシを見てそれは確信となった。

 

「彼女にしかないあの尾羽…アレは代わりなのだ…

 

 

 

 

 

『三本目の足』の」

 

──『その存在』は、とある島国においてその国の象徴となる存在をとある場所へと導いたという。そしてその場所の名は、奇しくも彼女の学園と同じ『大和』であった。

──『その存在』は、政争の交渉に赴くこともあり、協調性や循環性の象徴とされていた。

 『その存在』の名は…

 

「……『八咫烏(ヤタガラス)』。彼女の宿す神秘はそれで間違い無いでしょう。彼女がアリウスをより良いところに導くのは間違い無いでしょう。彼女と先生を敵にしたマダムには、同情するとしましょう」

 

時を同じくして、少し前にヨウカから連絡を受けたコハクの指示の元、トリニティ・大和の連合部隊がカタコンベへと突入を開始したのであった。

*1
ミチビクモノ(導く者)(和)




 本文通り、ムサシの神秘は八咫烏です。

 故に先生や各トップ陣の仲が良いですし、特にトリニティと仲がいいのは八咫烏が三位一体の象徴でもあるからです。

 しかし、全てが神秘由来ではなく、本人のカリスマと人望によるものが大きいです。

 なお、八咫烏の足ってそれぞれ(トリニティ)(ゲヘナ)(ミレニアム)を指してると言われてるんですよね。

 それ踏まえると、八咫烏(ムサシ)ホルス(ホシノ)に喧嘩売ったカイザーがヤベェ事してたんですね…

 後詰めの部隊も来たので、アリウスの解放まで秒読みとなりました。
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