万歳風味な転生者たち、透き通る世界へ   作:NTK

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「突入の準備は出来てるかい?」

「セイア様っ⁉︎は、はい!すぐにでも行けます!」

「では急ぐと良い。私とナギサもあとで行こう。ミカを迎えに行く必要があるからね」

「わかりました‼︎」

(セイア様…凄いミント臭が…)

(セイアさん、何故ミントの匂いがこんなにするのでしょう?)

───突入前のトリニティの一幕



アリウス自治区解放開始

 戦闘を終え、ムサシは先生のもとへ戻ると向こうもちょうど終わったところらしく、こちらを見つけたヨウカが手を挙げていた。

 

「そっちも終わったか」

 

「まぁ殆ど説得に近いけどな」

 

「あの赤いの、こっちが制圧したあと『目先の勝利を精々噛み締めなさい』とか捨て台詞を言ってたよ」

 

 側から見れば負け惜しみだろうが、二人は知っている。向こうにはまだバルバラという切り札が存在し、それに対処すべく先生が大人のカードを使用することを。

 

「既に副司令には連絡を入れている。程なくして援軍が来るが…それまでに儀式とやらが終わる可能性が高い。奴の置き土産の相手か、武装解除くらいしか出番が無いかもしれないが、来ないよりはマシだろう」

 

「そうだな。さて先生、急ぎましょう。サオリ、案内を」

 

・・ー・ ー・ーーー ーーー・ー ・・ー・・ ・ーーー・ ーー *1

 

 ヨウカの連絡を受け、カタコンベへの突入を開始する前に、コハクは突入部隊に指示を出していた。

 

「良いですか、今回の目標は生贄にされているアツコさんの救出及び一連の事件の黒幕であるマダムを確保し、アリウス生徒を解放する事です」

 

「ヨウカさんの連絡によれば、カタコンベ内部には調印式にもいたユスティナが確認されているそうです。故に下手に銃撃すれば数で押されて弾切れを起こす可能性もあります。しかし、これに対して我々は有効的な手段を持ってます。何かわかりますね?」

 

『ハイ‼︎着剣(チェスト)ですね‼︎』

 

「そう、チェストです。内部に着き次第、我々はラッパと法螺貝を吹きながら突撃します。その時にビビらずに攻撃してくるハイレグ野郎がユスティナなのでそれをチェストするように。それ以外は普通に対処してください」

 

 トリニティ側の戦力も、対ユスティナ用に銃剣や模造刀の用意をし、最後にコハクはミネの方に近寄った。

 

「多分、事が済み次第司令官は大人しく出頭すると思うので、あとは煮るなり焼くなり好きにしてください。万が一逃げるようならこちらで確保するので」

 

「…あの〜、ムサシさんは一応上司なんですよね?その、扱いが…」

 

「今は権限は私が預かってますし、それはそれなので。理由が理由とはいえ、そちらに迷惑かけたのは事実ですし」

 

 やがて突入準備が完了し、一行はカタコンベへの突入を開始したのであった。

 身内に売られてるとは露知らず、ムサシは儀式の場へと進んでいくがやがて見覚えのある場所へと辿り着いた。

 

(ここは…そうだ、ミカが足止めをした場所だ。なら、もうすぐ…)

 

 次の瞬間、ゾワリとした感覚が背筋を伝い、隠れるように指示を出した直後に弾幕が先ほどまで彼女たちの居たところを通り過ぎていった。

 

『ほぅ…なかなか感のいいネズミですね』

 

「マダム…!ここも読まれてたか…」

 

「ハッ‼︎ネズミだって?どう見ても鳥だろうに。そんだけ目があるのにわからないのか?」

 

『軽口もそこまでです小城ムサシ。貴女方はここでお終いです』

 

 ベアトリーチェの合図と共に、多数のユスティナとアンブロジウスが複数、そして威圧的な存在感を放つバルバラの姿があった。

 

『聖女バルバラ。ユスティナ聖徒会において最も偉大な存在です。それに加え、この数では貴女方も易々と突破できないでしょう。その間に私は儀式を終え、崇高へと至るのです‼︎』

 

「……」

 

『援軍を呼んでいるようですが、来る頃には全てが終わっているでしょう。それでは』

 

 通信が終わると同時にユスティナたちはゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

 

(さて…どうするか。援軍が来るまで時間稼ぎする分には何ら問題はない。奴をシバけないのはあれだが、ここは私が…)

 

 ムサシが残って迎撃しようと考えている中、ミカが一歩前に出てきた。

 

「ムサシちゃん、先生…ここは私が引き受けるから、みんなは先に行って」

 

「"ミカ⁉︎一人じゃ危険だよ!"」

 

「そうです、どうしても残るなら私かヨウカが一緒に…」

 

 二人が止めるが、ミカは首を振って断った。

 

「うぅん…私にやらせて。先生やムサシちゃんは悪くないって言うけど…責任くらいは取らせて欲しいの。でないと、私は私を許せなくなるから…!」

 

 このまま二人の優しさに甘えてはいけない。そう思い殿を引き受けようとするミカの覚悟をムサシは表情から読み取った。

 

「……わかりました。先生、行きましょう」

 

「"いや…でも…!"」

 

「子供を信じるのも、大人の仕事ですよ。時間がありませんし、早く急ぎましょう」

 

 ムサシに促され、先生は迷ったものの、ミカに危なくなったら逃げるよう伝えたあと、ヨウカが煙幕を使い視界を遮らせたあと先に行き、あと残っているのはムサシのみとなった。

 

「さ、ムサシちゃんも早く…」

 

 ミカが急かした直後、ムサシはミカに歩み寄って抱きしめ、その上から翼で包み込んだ。

 

「へっ⁉︎む、ムサシちゃん…⁉︎」

 

「…絶対に、無茶だけはしないでください。我々がマダムを倒すまでに来れなくさせるだけでいいんです。全員倒さなくていいので、自分の身を第一にしてくださいね?」

 

「えっ、あ…うん…」

 

「では、行ってきます。ミカさんも気をつけて」

 

 翼を広げて先に進むムサシを見送り、ミカは熱くなった頬を片手で覆ってため息をついた。

 

「…はぁ〜っ。ムサシちゃん、多分意味知らないだろうし、励ますつもりでやったんだろうけど…何だって『あんな事』…ていうか、元トリニティの子はなんで教えてあげないの…」

 

 ミカがそう言うのも、ムサシがやった行為が原因であった。

 相手を抱きしめながら翼で包み込む通称『羽ハグ』は、家族や恋人間でやる『最大級の愛情表現』であるのはトリニティ内では有名な話である。

 

「ま、いっか…来なさいあなた達。今の私は…すっごく気分が良いから、覚悟しててね?」

 

 10分後、突入部隊がアリウス自治区内に到着したのであった。

 

・・・ ・ーー・ ー・・・ ・・ーー・ ・・ー・ ・ー・・ ・・ ・ー *2

 

「…何か、聞こえてこない?」

 

 一人のアリウス生徒が仲間に問いかけた。

 彼女らは万一を考えて待機を命じられた者たちであるが、マダムのやり方に不信感を抱き始めていたところに遠くの方から妙な音が聞こえてきたのであった。

 

「ん?……ホントだ、コレ…ラッパ⁉︎」

 

「え?じゃあ、終末がもうすぐに…?」

 

 ラッパの音と共に終末がやってくる。その旨が書いた教典を読んでいた彼女らにとって、コレはその終末とやらではと怯え始めていた。

 一人が意を決して見張り用の双眼鏡を使って音の方を見る。すると…

 

『突撃ィィィィーーッ‼︎』

 

『うおぉぉぉーッッ‼︎』

 

 緑や黒の軍服風の制服を着た生徒が多数、ラッパや銃剣付きの小銃を持ってこちらに全力疾走していた。

 

「あっ違う‼︎普通に敵襲だコレ⁉︎」

 

「もしかして、噂の大和学園⁉︎」

 

「今、別部隊からも報告があった!トリニティの連中も来てるみたい!」

 

 すぐに迎撃に向かうが、ロクな栄養を取っていない彼女らの身体能力ではまるでなす術がなく、瞬く間に制圧されいった。

 

「アリウス生徒の皆さんに告げます‼︎我々はこの先にいるマダムの身柄拘束及び、アツコさんの救出が目的です‼︎あなた方と敵対するつもりはありません。速やかに投降し、道を開けてください‼︎」

 

 コハクがメガホンで呼びかけると、一人の生徒が彼女らの前にやって来た。

 

「ス、スバル先輩…」

 

「(スバル?知らない名ですね…)貴女が、ここのリーダーですか?」

 

「えぇ、そんなところです…いきなりそんな話をして、信用しろと?そんな都合のいい話がありますか?」

 

「あります。すでにそちらの先遣隊も保護してますし、調印式で負傷した者…特攻を行った子達も、何名か意識こそ戻ってませんが手厚く看病してます」

 

「え…っ⁉︎特攻、ですか…!」

 

「マダムの指示、と意識の戻った子から証言を得てます。そんな事を指示する彼女を打倒するのは、そちらにとって悪い話ではないと思いますが…無論、あなた方の身の安全も保証します」

 

 やはり知らされてなかったのか、スバルと呼ばれた生徒は酷く狼狽えていた。ぶつぶつと何かを呟いた後、コハクに向き直って質問した。

 

「……こちらが降伏して、我々を手厚く保護することにあなた方に何の得があるというのです?」

 

「…『見返りを求めたら、それは正義とは言わない』。ある科学者の言葉です。悪い大人に支配されてるあなた方を救い、その先の面倒を見る。それが今の我々の目的です」

 

 その言葉を聞き、スバルは少し考えた。このままマダムの指示通りに彼女らを撃退するのと、マダムに反逆して彼女らを通すのはどちらが後輩たちの為になるかを天秤にかけていた。

 

(トップを銃撃したのにこの態度…あとで騙し討ちする可能性は…いや、ムサシという人は義理堅い人間と聞いてます。ならこれは本当と見て良いですね…いざとなれば、私の身を犠牲にしてでもあの子らの身の安全を…)

 

「……全員、武器を捨ててください。この人たちを通しましょう」

 

 スバルの指示に困惑するも、アリウス生徒らは次々と武器を捨てて投降し始めた。

 

「協力、感謝します」

 

「マダムを裏切った以上、そちらには勝って貰わないと困ります。頼みましたよ」

 

「任せてください」

 

「それともう一つ…あの子たちに、十分な食事と寝床を…お願いします」

 

 頭を下げるスバルを、コハクは微笑みながら撫でた。

 

「安心してください。それらの準備はしてますので。もちろん、貴女の分もあります」

 

「…っ!ありがとう、ございます…!すぐに他の子たちにも連絡します」

 

 スバルの連絡により、アリウス生徒の投降がスムーズに行われ、あとのことはトリニティに任せて、コハクらはバシリカへと向かっていった。

*1
チエストセヨ(チェストせよ)(和)

*2
ラツパチガイ(ラッパ違い)(和)




ラッパ天使「何のなんの何ィ⁉︎」

Q.何故元トリニティ生徒はムサシに羽ハグの意味を教えなかったのですか?
A.無知シチュ最高‼︎無知シチュ最高‼︎アナタも無知シチュ最高と叫びなさい‼︎(鼻から忠誠心)

 お久です。携帯が殉職し、11から17への六階級特進を果たしました。

 援軍が到着し、いよいよ大詰めです。

 それはそうと、今作のケテル君、救出諦めて仇討ちを優先したので自販機くんはそのまま水没したけど、どうしようね?まだ生きてたのにオマエが仇討ちを優先したから死にましたってエグい曇らせなんですが…。

 あ、それとエ駄死版をだいぶ前に書いたので、気になる方は目次にURL貼ってあるのでぜひ。
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