万歳風味な転生者たち、透き通る世界へ   作:NTK

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「…誰?このイケメン?」

「スバルと言うらしい、三年生だって」

「あと、サオリと一緒に行動してたらしいから、そうとう腕が立つらしい」

「イケメンで強いのねッ!嫌いじゃないわ‼︎」

「じゃかぁしい‼︎」

───スバルを目にした大和転生組のヒソヒソ会話


 後半、少し閲覧注意です。


対決・ベアトリーチェ

「チェェストォォォォ‼︎」

 

 掛け声と共に振りかぶった木刀がユスティナの頭部を叩き割り、消滅させた。降伏したスバル達からアツコがいるであろう場所を聞きだし、大和設立組を中心としたメンバーは進軍していた。

 

「栗原ァァァ‼︎弾ァ‼︎」「あ、折れたぁ⁉︎予備を寄越せ栗原ァ‼︎」「てかはよ前来なよ栗原ァ‼︎」

 

「うるさいな〜!こちとら輜重担当ぞ‼︎前出てどうするの⁉︎」

 

 忙しなくドローンを操作しながらマドカは補給物資を提供しながら前線のあとに続いていく。弾の消費を抑えるために銃剣や木刀で応戦してるが、間合いを詰めるのに銃撃を行ってる為、都度補給に戻るよりはと同行したものの、いちいち名前を叫ばれては溜まったものではなかった。

 

《あっ、あー…アマツから前線部隊へ。思いっきりシバける相手がやっと来て張り切ってるとこ悪いけどさ、無駄に弾使ったり銃器壊さないでね?資金は余裕だけどあまり派手に消費されても困るよ?》

 

(^q^)< ハイ、ワカリマシタ

(^q^)< シュリウダンヲナゲロ!

 

《明らかにわかってない返事しないでくれる?どこの部活?予算切るよ?》

 

『申し訳ございません』

 

「こちら吉田です‼︎11時の方向より戦闘音アリ‼︎恐らくミカさんが戦ってると思われます!副司令、援護に向かいますか?」

 

「当然です。司令官たちもその先に居るはずです、直ちに向かいましょう‼︎」

 

『了解‼︎』

 

・・ー・ ーー ・・・ー ・ーーー・ ・ーー・ ー・ ・ー ー・ーー ・ーー・ *1

 戦力の大半をあの場に派遣してたらしく、会敵することなくムサシ達は儀式の間に辿り着くと、磔にされているアツコの側で佇むベアトリーチェの姿があった。

 

「姫ッ‼︎」

 

「…む、随分と早く…あぁ、あの小娘を囮にしたんですか。あなたも人の事言えませんね」

 

 嘲笑うような態度を取るベアトリーチェに先生が反論しようとするが、それをムサシが手で制した。

 

「囮?何言ってんだか…。『あの程度』の戦力なら彼女一人で充分だから、任せて先に行ったんだ」

 

「ものは言いようですね、殆ど同じでしょうに」

 

「友達を信じるのは大事だよ?お前にはわからないだろうな、友達居なさそうだし」

 

 減らず口を、とベアトリーチェは睨みつけ、サオリ達の方に向き直る。その眼差しは愚かな者でも見るかのようなものであった。

 

「…それで、アナタ達は私を倒して支配から解放されると本気で思ってるので?貴女方が傷つけた者達の言う事を信用できると?」

 

「……少なくとも、お前よりは信用できる」

 

「そうですか…ですがいずれ思い知ります、アリウス(ここ)に居た方が良かったと、外の世界を知るべきではなかったと」

 

「"そんな事は無い、こんな事を強要するような場所の方がマシだなんてあるはずが無い…!"」

 

「シャーレの先生、アナタは何もわかっていない。彼女らの憎しみは私が植え付けたものでは無く、元々…それこそアナタが来るずっと昔、トリニティから追放されたその時から培われたものです。トリニティ憎むべしと言われ続け、いつかは、やがていつかはと牙を研ぎ続けてきたその土壌に少し手を加えただけに過ぎません」

 

「その習慣は外とは異なるものとなっています。彼女らの常識外れの行動を見た者らはそれを異端とし、廃絶しようとするでしょう。一自治区の生徒会長を殺害しかけた者と知られてるなら尚更でしょう。その時、彼女たちは後悔するでしょう…アリウスから出なければ良かったと」

 

 痛いところを突かれ、サオリ達は苦々しい顔を浮かべた。

 トリニティへの恨み辛み自体はベアトリーチェによるものではなく、代々伝わってきたものであり、報復のための訓練も当時からあったものを彼女がより効率的に仕上げたものである。

 アズサの場合は『変わった転校生』で済んでいたが、サオリ達の場合は

『調印式を襲撃し、特攻を行ったうえムサシを殺害しかけたテロリスト』

という前情報がある。

 その為、なにかあれば周囲からは『所詮テロリストだから』『まともな自治区の育ちでないから』と言われる可能性は大いにある。それを受けたアリウスの生徒達は、外に出なければ良かったと思う可能も、十分に考えられた。

 

「"…そうだとしても、日向の方に子供たちを導くのが、大人の役割だ"」

 

「いいえ違います!子供は大人に搾取されるべき存在で、私が崇高に至るための踏み台でしかないのです!」

 

「そのためだけに、あんな年端もいかない子を特攻させたのか?」

 

 拳銃を構え、一段と低い声でヨウカが問いかけると、ベアトリーチェはなんでも無いかのように答えた。

 

「えぇ、ロクに訓練もこなせない穀潰しの役立たずを作戦に利用しただけ、ありがたいと思いなさい」

 

「……そうか、もういい。アンタは『大人』でもなければ、『親』でもないのがわかれば充分だ。先生、早いところ奴を叩きましょう」

 

「"うん。私もこれ以上、彼女とは話をしたくない"」

 

 怒りを抑えるような表情で先生が指揮を執り始めると、ベアトリーチェの姿が変化し、足から根が生え背中には枯れ枝のようなものを生やし、顔を花のように開いた醜悪な姿へと変貌した。

 

「フッ、ようやくその性根に見合った姿になったな。叩っ斬ってやる」

 

「こちらこそ、その生意気な口を二度と開けなくしてやりましょう‼︎」

 

 花弁のような頭部から赤黒いエネルギー球を発生させ、ムサシ達に向けて放つ。咄嗟にムサシは先生を抱えて飛び、他の者らも直撃を回避するが、着弾時の爆発の余波で吹き飛ばされてしまう。

 幸い、多少擦りむいたくらいで作戦に支障は無いことを確認し、ムサシは物陰に先生を降ろした。

 

「私とヨウカが撹乱させます。先生はサオリらの指揮を」

 

「"わかった、気をつけて"」

 

 ムサシは空を舞いながら銃撃を行い、ヨウカは瓦礫に身を潜めながら移動し、接近戦を仕掛けていた。

 

「ちょこまかと…!」

 

 ベアトリーチェは羽のように生やした枝から弾幕のように光線を放つが、ムサシは身を捻ったり翼を閉じたりを繰り返して躱していき、反撃を行い視線をこちらに集中させる。

 

(ミサキとヒヨリは火力がありますが、機動性が無いので問題なく対処可能…!サオリの小銃程度なら問題なく、拳銃のヨウカは論外…なら先に潰すべきは小城ムサシ、彼女から‼︎)

 

 そう判断しベアトリーチェは地上への攻撃は邪魔されない程度に行い、弾幕のほとんどをムサシに向けていたが、ムサシは直上に飛翔し、思わず上を向いた隙をつき、先生の指示のもとでミサキのスティンガーとヒヨリの狙撃がベアトリーチェの顎に直撃した。

 

「ぐっ⁉︎この…!」

 

「上ばかり見て、こちらを忘れたか?」

 

 視線を下に向けると、警棒を持ったヨウカが腕を振りかぶっているのが見えたが、足に根を張っている事が災いして避けることが出来ずにいた。

 

「歯ァ食いしばれ‼︎」

 

 渾身の力を込めて振りかぶった警棒はベアトリーチェの右頬に吸い込まれていき、足が固定されてることで衝撃を逃す事なく当たったそれは鈍い音を立てて彼女をのけ反らせた。

 

「がぁぁ…‼︎よくも、私の顔に…!」

 

「えっと…『右の頬を打たれたら、左の頬を差し出しなさい』、だったか?」

 

 ヨウカを睨みつけるも束の間、直後に上から飛来したムサシが銃身を掴んでバットのように振りかぶり、金属板を追加したストックの端をベアトリーチェの左頬に叩き込んでいた。

 

「ゴッ…⁉︎この、調子に乗るなァァ‼︎」

 

 二度も顔を打たれ、怒り心頭のベアトリーチェは先ほどよりも大きな光球を生成するが、サオリの姿が見えない事に気がついた。

 

(どこに…?まさか、ロイヤルブラッドを…⁉︎)

 

 思わず祭壇を見たが、その判断が命取りであった。

 

「いない…ッ⁉︎しまっ…!」

 

「ベアトリーチェ、覚悟‼︎」

 

 背後にまわっていたサオリが手榴弾のピンを抜き、光球に向けて投げつけ身を屈める。

 投げられた手榴弾は光球に触れた途端爆発し、その衝撃で光球はベアトリーチェのすぐ側で暴発し、その余波が辺りを襲い、土煙をあげていた。

 

「……ガ…ァ…!」

 

 爆発をモロに受け、花弁のような顔は一部吹き飛び、羽のような枝も焼け落ちボロボロになっていたが、まだ意識を失っていないベアトリーチェは右手を伸ばして光球を生成しようとするが、直後にムサシが投げつけた銃剣が掌を貫いて生成を防いだ。

 

「ガァァァアッ⁉︎」

 

「今だサオリ‼︎」

 

「ウアァァァア‼︎」

 

 彼女が右手を刺された痛みに叫ぶ中、サオリが肉薄し、その顔面に小銃を撃ち放つ。放たれた弾は全て命中し、そこで限界がきたのかベアトリーチェは元の姿に戻りながら倒れていき、意識を失っていた。

 

ー・ーー ーー・ー・ ・・ ー・・・ー *2

 

「アツコ、アツコ…!目を開けてくれ…ッ!」

 

 祭壇からアツコを降ろしたサオリは彼女の仮面を取り必死に呼びかける。すると、少しして瞼が震えるとアツコはゆっくりと目を開けた。

 

「……ん…サッ、ちゃん…?」

 

「アツコ‼︎良かった…!間に合って…」

 

「まぁ、これで間に合わなかったらシャレにならないしね」

 

「うわぁぁぁん‼︎姫ちゃんが生きてて良かったですぅ‼︎」

 

 表現は違えど無事を喜ぶ3人を見て状況を理解したアツコはホッとした顔を浮かべて微笑んでいた。

 

「そっか…助けに来てくれたんだ…ありがとうみんな」

 

 視線を変えて辺りを見渡すと、ムサシと目が合い、予想外の人物にアツコは目を丸くしていた。

 

「…あれ?あの人、撃たれてたよね…?あの日からどれくらいで目が覚めたの?」

 

3日だ。流石に彼女が協力してくれたのは予想外だったんだ…」

 

「え、3日…?3日で復活して、一緒に戦ってくれたの…?」

 

「病院を抜け出してな」

 

「うるさいな〜。…アツコさん、貴女方はこのあと自首して貰いますが、その間の身の安全は我々が保証します。自治区内の生徒も安全に保護させて貰います」

 

「アリウスのみんなも…?本当に?」

 

「えぇ。約束は守ります」

 

「……ありがとう」

 

 スクワッドだけでなく、アリウスの生徒全員の安全を約束されホッとするアツコ達を先生らが見守る中、意識を取り戻したベアトリーチェは地を這いながら逃げようとしていた。

 

(この屈辱…いつか必ず晴らしてやります…‼︎今は、戻って態勢を…)

 

どこへ行くんだぁ(ドミネ・クオ・ヴァディス)?」

 

「アンタには殺人教唆を始めとした様々な容疑がある。大人しく来てもらうぞ」

 

 それを逃す道理はなく、ムサシとヨウカが行く手を阻み、ヨウカが手錠を取り出した瞬間であった。

 

「──お待ちください。彼女についてはこちらに任せてくれませんか?」

 

 声が聞こえた瞬間、言い表しようのない不気味で不快な感覚がその場にいた全員を襲い、気がつくと『帽子を被った男性の後頭部の肖像画』と『それを抱えたコートを着た首のない大男』が立っていた。

 

「このような姿で申し訳ありません。私は彼女の属する組織『ゲマトリア』、その一員である『ゴルコンダ』と言います。私を抱えているのは『デカルコマニー』。以後お見知り置きを」

 

「そういうこったぁ‼︎」

 

「"ゲマトリア…!黒服の仲間だね?"」

 

「ハイ、その通りですが勘違いなさらないでください。同じ組織といっても一枚岩と言うわけではありません。全員が全員、彼女と思想を同じくする者では無いことを頭に入れていただきたく思います」

 

「それに…私は彼女を助けに来たわけではないのです」

 

「…っ⁉︎どういうことです、ゴルコンダ!」

 

 予想外の言葉に驚くベアトリーチェを見下ろしながら、ゴルコンダは淡々と告げていた。

 

「端的に言えば、アナタはゲマトリアから追放処分と致します。理由は主に契約不履行です。黒服の研究対象である小鳥遊ホシノはまぁ正当防衛だとしても…マエストロの研究対象である小城ムサシ。彼女を間接的に殺害しようとした件は言い逃れできません」

 

(え?私が、マエストロの研究対象…⁉︎)

 

 厄介なことになったなとムサシが内心思う中、ベアトリーチェは抗議の声をあげていた。

 

「なっ…⁉︎そんな事、言ってなかったではありませんか⁉︎」

 

「契約時に内容を確認するのは大人の常識ですよ?聞けば答えたそうなので、確認を怠った貴女の落ち度です。シャーレの先生、こちらを」

 

 ゴルコンダが何やらメモのような物を投げ渡すとどこかの場所らしきものご記されていた。

 

「そこに彼女がここでしてきた事の証拠があります。アリウスの者たちの情状酌量の材料としてお使いください」

 

「…彼女をどうする気だ?こちらとはしては連れていきたいのだが」

 

「轟ヨウカ、でしたね?妨害はおやめください。私は神秘貫通弾とヘイロー破壊爆弾の作成者です。大人しくしてくれた方が互いのためかと」

 

「"…!君が、ムサシを傷つけた弾を…!"」

 

「そうです。効果はあったようですが、あれはこちらにもリスクがありましてね…ヘイロー破壊爆弾の方も効果を見たかったのですが、アレはアレでいいでしょう。なにより、『面白いこと』になりそうな予感がしますので」

 

 ゴルコンダの意味深な発言にムサシは首を傾げるが、構わずゴルコンダはベアトリーチェの方に改めて向き直る。

 

「さて…本来なら連れ去って『処分』したいのですが、貴女は色々と恨みを買っています。我々が秘密裏に逃したと思われてはいけないので…デカルコマニー、頼みます」

 

 直後、デカルコマニーはゴルコンダを左脇に抱え、右手をコートに入れると『拳銃』を取り出してベアトリーチェに構えた。

 

「ッ⁉︎ま、待ちなさ─」

 

 瞬間、デカルコマニーは引き金を引き、彼女の頭部に四発弾丸を撃ち込んだ。全員が言葉を失う中、頭部から血を流した彼女の身体は何回か痙攣したあと、やがて動かなくなった。

 

「"なっ…⁉︎"」

 

「ご覧の通り、彼女は死にました。凄惨な現場をお見せして申し訳ないのですが、こうでもしないと信用して貰えないと思いまして」

 

「そういうこったぁ‼︎」

 

 デカルコマニーはそのまま彼女の遺体を抱える。その時、銃創から何かブヨブヨしたものが溢れ落ち、サオリらは思わず目を逸らした。

 

「"…私の生徒に、こんな光景を見せないで貰えないか…‼︎"」

 

「それについてはお詫びします。ではまたいつかお会いしましょう」

 

 その言葉を最後にまるで初めから居なかったように姿を消し、血溜まりだけがその場に残されていた。

 

「"……っそうだ、ミカ!早く向かわないと…!"」

 

「ヨウカは一応サオリ達と一緒にここに残ってくれ。私は先生を抱えて向かう」

 

 ヨウカが頷くのを確認し、ムサシは先生を抱えて飛び立ち、ミカの元へと向かっていく。その道中、ラッパの音が微かに聞こえてきた。

 

「"これは…?"」

 

「ウチの突撃ラッパ…てことは援軍が来たようです」

 

(当然、ミネさんも来てるよなぁ…色々あったが、まずはミカの救援、そして謝る準備だな)

*1
チヨクセツタイケツ(直接対決)(和)

*2
ケジメ(和)




 ベアトリーチェの末路は決めてましたが、それまでにオラトリオがあったのでカムバックしないか不安でしたが、問題なかったので良かったです。
 ちなみにデカルコマニーが使ったのは神秘貫通弾です。皮肉ですね。

 次回でエデン編は終わる予定です。
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