万歳風味な転生者たち、透き通る世界へ   作:NTK

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「イロハ、その木箱はなんだ?」

「大和の方々から、救急医学部を派遣させてくれたお礼だそうで。救急医学部やトリニティの人たちにも贈られてるみたいです」

「ほぅ…!して、中身は?」

「養蜂部が作った蜂蜜の詰め合わせですね。あと、イブキ用に蜜蝋のクレヨンセットまでありますよ」

「キキッ‼︎そうかそうか‼︎ヨシ、今からこれに合うパンケーキを給食部に作らせるぞ‼︎」

───このあと蜂蜜効果でクソ強いパンちゃんに襲われるマコト達の会話



第4章 司令に勝利を‼︎後輩たちの光輪大祭恩返し大作戦‼︎
白狐・狐小隊・黒狐


「ふーっ、お疲れ様。休憩に入りましょうか」

 

「あ"ー終わったぁ…やっぱ硬過ぎるよコハクさぁん…」

 

 SRTの訓練室で、トレーニングを終えたコハクとFOX小隊の面々は休憩を取っていた。身体が頑丈な彼女はこうして時折り訓練相手に呼ばれることも少なくなかった。

 

「オトギちゃん、動いてる頭を狙わずに身体狙ったのは良いけど、誘い出して位置特定をこっちが狙ってる事までは気づいて欲しかったかな?」

 

「いや無茶言わないでくださいよ?ニコやクルミ相手にしながら、誘い出して敢えて対物ライフル喰らうことでカウンタースナイプ決めようとしてるなんで想定できないでしょ⁉︎普通は避けますよ?」

 

「なんならそのあと私が目眩ししたのに普通にこっちに向かって来て蹴り飛ばしてきたのはビビったわよ…」

 

「私、耳がいいって言ってたでしょ?やるならフラッシュバンで音も出さないと」

 

 …ムサシ程ではないが、彼女も大概『あちら側』の人間なので参考になるかは別問題ではある。

 

「そう言うな二人とも。教本通りでない相手との戦闘経験も大事なんだから」

 

「はーい。…それでコハクさん、今回も持って来てくれたの?」

 

 えぇ、とコハクが答えると、荷物置き場のクーラーボックスに向かい、テーブルに中のシェイカーやシロップ、ジュースを並べ始めた。

 稲荷コハク。前世は女性バーテンダーであり、今世では流石に酒は提供できない為、こうしてノンアルコールカクテルを作って後輩や他のメンバーに提供しているのであった。

 

「じゃ、座って待っててください。ユキノちゃんやニコちゃんも飲みますよね?」

 

「あぁ、頼む」

 

「お願いします。コハクさんのノンアルカクテル、オシャレで美味しいんですよね」

 

「ふふ、ありがとうございます。そこのナッツは好きに食べててください」

 

 コハクが準備している中、ポリポリとミックスナッツを食べている四人だが、ふとオトギがクルミの方を見てニヤニヤしていた。

 

「クルミが胡桃食べてる…!」

 

「うっさいわね!毎回毎回同じこと言ってて楽しいの⁉︎」

 

 ギャアギャアと言い争う二人を見てコハクは感慨深そうに目を細めていた。カルバノグでの一面しか見ていないコハクにとって、この様子は普段の彼女たちがこうなのか、はたまた自分らが関わった結果なのかは知る由もない。しかし、彼女らが年相応のやり取りを見せていることが嬉しく思えているのであった。

 

シャカシャカシャカシャカ…シャカシャカシャカシャカ

 

 シェイカーに材料を入れ終え、そのまま持ち上げてシェイクすると小気味よい音が鳴り響き、その様子を四人はじっと見ていた。

 

(いつ見てもなんて滑らかな手首や腕の動き…リロードやコッキングがスムーズなのも頷けるな…)

 

 ユキノがコハクの手の動きに着目してるなか、他3名は『別のところ』に注目していた。

 

ゆさゆさ…ゆさゆさ…

 

(おお)

 

(おお)

 

(これはおおだねぇ…)

 

 比較的硬めの布の制服を着てもなお存在を主張してるコハクの胸がシェイクする度に揺れ動くのを見ている3人だが、コハクは視線が集まってることにはとっくに気が付いていた。

 

(まぁ、最初にシェイカー使った時から釘付けでしたし…女の子同士でも、見ちゃうモンは見ちゃいますよね)

 

「どうぞ、シンデレラです」

 

「…酸味があって美味しいな」

 

(相変わらずの語彙力ですねユキノちゃん…)

 

 5人がドリンクを飲み休んでいるとユキノがある話題を口にした。

 

「そういえば、少し前にアビドスでワカモが現れたみたいだな?」

 

「みたいですね。私らは関わってないですが、先生がアビドスと色々あって居合わせた百鬼夜行の人たちと撃退したみたいですよ。その後の同行は不明みたいですが」

 

「…コハクさん、こうは聞きたく無いのだが…ワカモについて何か知ってたりはしませんか?向こうから何か連絡とかは…」

 

 ユキノがそう問いかけるのには訳がある。

 コハクは百鬼夜行の出身である。それだけではなく、ワカモとは幼馴染の仲であり、学園が違ってもなお彼女が矯正局に送られるまではワカモ側から頻繁に連絡していたため、今も連絡を取ってないか確認していたのである。

 

「……それが一度も来てないんですよ。私に迷惑が掛かるかもしれないから連絡をしてないのかもしれませんね」

 

「…信用していいんですね?」

 

「はい。幼馴染だとしても、脱獄は見過ごせませんから。では私はこれで。ミスズさんのところに用事がありますので」

 

 そう言いコハクは荷物を纏めて去っていく。その後ろ姿をFOX小隊は眺めていた。

 

「……どう思う?」

 

「ほぼ間違いなく、ウソ吐いてますねコハクさん。微妙ですが表情に澱みがありましたし」

 

「まぁでも、隠す理由はわかるわ。ワカモを確保した時に色々コハクさん含めて二人の過去の経歴とか調べたからね…」

 

「建前上聞いたけど、これ以上私たちからは聞く訳にはいかないし、コハクさんからも話せないでしょ。…下手するとキヴォトスが火の海になりかねないし」

 

ー・・ー・ ーー・・ ー・・ー・ ーー・・ *1

 

「はふぅぅぅ…あぁ〜癒されますぅ…」

 

「いつもお疲れ様ですミスズさん」

 

 矯正局の局長室にて、その局長である監原ミスズがコハクの尻尾に顔を埋めて表情を緩ませていた。

 コハクが自負し、様々な学園の人物を虜にしていたその尻尾は、丁寧に手入れしているだけあり、ふんわりと対象を包み込みつつ程よい弾力を持っており、コハクの体温で暖かいそれは激務で疲れたミスズにとって最高の癒しとなっていた。

 

「吸うぅぅぅ〜はぁぁあ…‼︎」

 

(よほど忙しかったんですね…尻尾吸いまでして…)

 

 ミスズの頭を撫でつつ、コハクはミスズを労っていた。

 彼女が矯正局長に就任した日に集団脱獄が発生し、それにより矯正局への志願者数は八割減、その為人員不足により多忙となった彼女の負担は大きく、こうして定期的にコハクがケアしてるのであった。

 

「コハクさん、ありがとうございます。だいぶ楽になりました」

 

「もう少し休んでも平気ですよ?」

 

「いえ、平気です」

 

 身体を起こし、ミスズは身だしなみを整える。

 

「さて、仕事の続きをしないと。またよろしくお願いしますね」

 

「あまり無理をなさらないでくださいね?」

 

 ミスズに見送られ、矯正局をあとにするコハクだが、直後に携帯が鳴り、画面を見た彼女は思わず頭を抱えていた。

 

「はぁ…あの子ったらもう…!」

 

ーー・ー ー・ーーー ー・ー・ー ー・・ー *2

 

 コハクが自宅に戻り、リビングに入ると黒い人影が起き上がり、彼女に飛びついた。

 

「姉様!お待ちしておりました♡」

 

「ワカモ…連絡してくれるのは良いけど、気を付けてね?矯正局に用があるって連絡したでしょ?見られたらマズイんだけど…」

 

「あっ…申し訳ございません…。どうしても姉様のところに行きたくて…」

 

 ションボリと尻尾を垂れ、落ち込むワカモを見てコハクは困ったような笑みを浮かべていた。

 この通り、二人は密に連絡を取っており、こうしてたまにコハクの家に来訪することもしばしばあった。なんなら脱獄当日、真っ先にコハクの元に訪れていたのであった。

 

「まぁいいわ。それで…誰にも見られてない?」

 

「はい。その辺は抜かりなく」

 

「なら問題ないわね。少し待ってて、夕飯の支度するから。ワカモはお風呂沸かしてて」

 

「はい♡姉様のいなり寿司、楽しみにしてますね」

 

 姉様、とは言ってるがワカモの方が誕生日が一週間早く*3、どちらかと言えば彼女の方が姉なのだが、幼少期に面倒を見てもらっていた折でコハクを姉様と呼んで慕っているのである。

 そうこうしてるうちに夕食の支度が終わり、二人は共に夕食を食べ始めていた。

 

「はむっ…うーん♡姉様のいなり寿司、枝豆とコーンが良いアクセントで、いつ食べても美味しいですわ♡別添えの刻んだ青葉や、姉様特製の漬物も良きです」

 

「いつも美味しそうに食べてくれてるわね。…それでお風呂はどうする?久々に一緒に入る?」

 

「いいんですのッ⁉︎是非‼︎」

 

 夕飯を食べ終えた後、共に風呂に入ったあと、互いに髪や尻尾の手入れをし合って寝巻きに着替え、コハクはワカモの耳掻きを行っていた。

 

「〜♪」

 

「ワカモ、念の為聞くけど、自首する気はない?」

 

「ありませんわ。まだやりたい事もありますし、先生に思いを伝えるまでは戻りませんわ」

 

「…そう。私が貴女を裏切るとかは思わないの?」

 

「それこそ有り得ませんわ。姉様は優しい方です。幼き頃、周りから疎まれてた私にずっと付き添ってくれた方ですもの。裏切る訳がありませんわ」

 

 破壊と略奪が趣味と断言するワカモは幼い頃からもそうであり、周りの子供たちからもその性分を疎まれ、仲間外れにされていたが、コハクだけが彼女を避けたりせずに一緒に遊んでくれていたのであった。故にワカモはコハクを姉様と呼び慕っているのである。

 …幼少期でも彼女の腕っ節はそれなりにあり、そんな彼女とずっと遊んでいた結果、コハクは自然と頑丈な身体となったのであった。

 

 コハクが一緒の学園に進まないと知った時は酷くショックを受けていたが、ずっと会えないわけでは無い事と、コハクの意思を尊重していたが、やはりもの寂しさがあったのか、ある程度抑えていた破壊衝動が溢れた結果、矯正局に入れられたというわけであった。

 

(立場上、この子を矯正局に送らなきゃいけないけど、こうなった一因は私にもあるし、何より…この子を裏切るような事をしたら、この子は二度と人を信用することが出来なくなる…。だから、例え司令官に逆らっても、この子を裏切ったりはしません…!)

 

 FOX小隊がコハクがワカモと通じてるのをほぼ確信しているのにも関わらず素知らぬフリをしているのも、ワカモがコハクを実の姉のように慕っている事を把握しているため、彼女を利用すれば、裏切られたと知ったワカモが人間不信となり自暴自棄で今以上に暴れることが目に見えているからであった。また、理由は不明だが最近ワカモによる被害が減少気味なのも、黙認している理由の一つでもあった。

 矯正局内でも、コハクに会いたがるワカモの様子を見ていたミスズもその辺りは理解している為、敢えて知らないフリをしていた。

 一方でワカモはワカモで、コハクになら裏切られても構わないと思っていた。

 

(姉様を困らせているのは理解しております…故に、矯正局に売られても姉様を恨みは致しません。ですが、これを口にしたら余計に姉様を迷わせてしまいます。なので、この思いは胸に秘めておきます…)

 

 翌朝、目が覚めると既にワカモの姿は無く泊めてくれた礼と、どうしても寂しくなった時にまた来る旨の手紙が置いてあった。

 それを見てコハクは物寂しさを感じつつも、登校の準備を進めるのであった。

*1
モフモフ(和)

*2
ネエサマ(姉様)(和)

*3
ワカモ・4/3、コハク・4/10




コハク「チクるべきだけどワカモを裏切りたく無いから絶対黙っとこ」
矯正局・FOX小隊「繋がってるだろうけど利用するとワカモが暴れるだろうから知らんぷりしとこ」
ワカモ「裏切られても構わないけどコレ言うと姉様悩ますから黙っとこ」

 ワカモとコハクは幼馴染で、ワカモにとって所謂年下の姉です。
 上記の通り、色んな事情があって二人が通じてることは黙認されてます。
 なお、コハクはこの事をムサシたちにも教えてないです。それくらいワカモを大事にしてます。

 …多分本編で入れるとこないと思うのでここに書きますが、コハクの前世の死因は『登山時に雪崩に巻き込まれての凍死』です。だから、今世はあんなにモフモフなんです。故に寒くて暗くて狭いところが過呼吸起こすレベルで大嫌いです。やったね、推しのミサキと一緒だよ‼︎()

 次回から光輪大祭です。
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