(色々買っちゃった。そろそろ帰ろ…っ⁉︎え、何これ…?か、買おうかな…?)
一般生徒から見る大和学園
ある日、メアリは取材のネタ探しに大和学園自治区内を訪れていた。といってもムサシたちへのインタビューではなく、一般生徒から見た彼女らの印象や、そうでなくとも何か面白い話がないか街中を散策していた。
(そもそも、アポは取ってないからね…そっちはまた今度かな)
「…てなわけで、何かいい話あるかな?あるならここの支払いは私が持つよ」
適当なカフェに入り、テーブル席にいた大和生徒3人を見つけて話しかけると、彼女らは少し考えたあと、口を開いた。
「あー、ならあの話がいいかな?」
「でも話していいのかな?」
「平気じゃない?ムサシ先輩もああだったし」
ムサシに関する話題が現れ、メアリが話すよう促すと、彼女たちは数日前の話をし始めた。
ー ・ー ー・ー ・ ーーー ・・ー・ ・・ー・ *1
ハンバーガーショップで食事をしていた彼女らが談笑していると、ムサシが入店し、3人は彼女の姿を目で追っていた。
「すみません、注文いいですか?」
「はい、どうぞ〜」
「えっと、このハンバーガーセットひとつでドリンクはコーラ。あと単品でテリヤキバーガーひとつ…以上をテイクオフで」
「……はい?」
「あっ…テ、テイクアウトで…」
言い間違いに気がつき、恥ずかしそうに顔を伏せて品物を待つムサシを見て3人は湧き立っていた。
「え、ムサシ先輩のあんな顔初めて見た…!」
「意外…というか、可愛い照れ方…」
「ジロジロ見ないの2人とも」
他の客も微笑ましい目でムサシを見ており、品物を受け取ったムサシは足早に店をあとにしようとしたが、外に出たあたりで突然こちらを振り向くと、翼を大きく広げるとガラス越しに唇が動いていた。
「テイクオフ」
明らかにそう言葉を発したあと、ムサシは空高く飛び去っていった。
──数秒後、店内で客や店員の吹き出す音が響き渡ったのであった。
「……意外と茶目っ気があるんですねムサシさん」
話を聞いたメアリが感想を漏らすと、3人はでしょう?と自慢げに胸を張っていた。
「学園のトップだし、戦闘の時もキリッとしてるから私生活もそうなのかなって思ってたけど、あぁいう一面もあるってわかると距離感が近くなるよね〜」
「そうそう。他の設立組の人たちも気さくな人たちで風通しが良いんだよね」
認知度も高く、一般生徒との関わりも多いムサシ達は一般の生徒達にとって意見が通りやすいため、非常に話しやすい生徒会として他の自治区からも評価されていた。
キヴォトスらしく、銃撃戦が起こることもあるが、それも他に比べれば遥かに頻度や規模が小さく、その治安の良さに関してメアリは疑問に思い、問いかけた。
「そういえば、この自治区はかなり治安が良いんだけど…何かわけがあるの?」
「…ここってさ中退したり退学した子を積極的に受け入れてるでしょ?知ってると思うけど、再入学するのってすごく難しいんだよね。だから簡単に受け入れてくれるココはそういう子たちの拠り所なの」
「その恩を仇で返す真似はしたくないから揉め事を起こさないようにしてるのもあるけど…だからこそ、ここを追い出されたら本当に『終わり』になるから、みんな大きな揉め事を起こさないようにしてるんだと思うよ」
「でも、ムサシ司令官達はそれを利用してこちらに何かを強要する事も出来るのにしないから、みんなに好かれてるんだろうね」
設立して間もない頃ならともかく、何かと活躍して有名になった今では、居場所を無くした者たちの拠り所である『大和学園を退学させられた』というのは他の学園のそれとは遥かに意味合いが重く、他の中退者達からも腫れ物扱いされる可能性が高い上、ブラックマーケットとも対立してるためそちらに着くことも不可能に近いため、自主的にルールを守ることを徹底する生徒が多いのが治安の良い理由でもあった。
幸い、まだ1人として退学になった者はいないが、それが逆に『最初の1人』にはなりたく無いとして治安維持に一役買っていることとなっているのであった。
「なるほど…ありがとね。約束通り支払いは済ませておくから、また何かネタがあればお願いね」
「はい、協力できることならいつでも言ってください」
カフェをあとにし、他にも何かないか街中を散策していると何かを取り囲んでいる大和風紀委員の姿があり、近寄ると移動屋台のようであり、ヨウカがちょうど店長らしき四角いブリキロボットのような人物を護送車に叩き込んでいたところであった。
「すいません〜クロノスのメアリですが、何かあったんですか?」
「…あぁメアリさん。この前はどうも。いやですね…近辺で噂になってた『大食いキラー』をやっと捕まえましてね…」
「大食いキラー…ですか?」
ヨウカの説明によると、各自治区に出没してる大食いチャレンジを行う移動屋台ではあるが、内容が味自体は問題ないものの『やたら硬く、長大なバケットを水無し一気食いチャレンジ』だの、『ギリ米と合うレベルでとんでもなく甘いルーの具沢山カレーライス5kg』だの確実に挑戦者を折りにくるようなものだったが、つい最近行われた『砕いた乾燥ワカメと炒り豆をたっぷり練りこんだ煎餅+飲み物は炭酸水のみ』のチャレンジにて、胃の中で膨らんだ煎餅で胃袋を痛めた生徒が複数発生したため、悪質性が高いとして指名手配され、ここに来る噂を頼りに張っていたところ、見事確保したとのことであった。
「うわぁ…酷いですね…。それで、今回は何を食べさせるつもりだったのです?」
「これだ」
ヨウカが屋台の食材ケースを開けると、白い衣らしきものがある焼き鮭の小さな切り身であった。
「これ…ですか?普通の鮭のムニエルみたいですが…」
「食べてみればわかる。毒とかじゃ無いのは確認済みだ。だが、一口で全部食べず、ちょっとだけにしな」
「…?では、失礼して……っ⁉︎しょっっっっぱ⁉︎何ですこれ⁉︎」
「ぼだっこだよ。これを米無しでどれだけ食えるかの文字通りのデスマッチやらせようとしてたんだ。流石に死人が出かねないから、捕まえられて良かった」
なお、押収したぼだっこは勿体無いので希望者にプレゼントすることにし、メアリの協力でクロノスニュースで報道したところ、興味のある生徒が殺到し、そのしょっぱさが話題となり軽くブームになっていた。
特にジュンコからは少ないおかずでたくさん米が食べられるとして大層気に入ったそうであるが、塩分過多になるので食べ過ぎないよう注意喚起が行われていたのであった。
・ ーー・ ーー・ *2
「ナルミ…何故呼ばれたかわかるか?」
「いや〜。な、何のことで…」
生徒会室でムサシは羞恥と怒りの入り混じった目でナルミを睨んでおり、ナルミ自身呼ばれた理由に心当たりがあるのか、冷や汗をかいて誤魔化していた。
「とぼけるなよ?カメラにしっかり映ってたんだからな。卵の無人販売所に私の顔写真貼りやがって‼︎いくら私が羽生えてるとはいえ、悪ノリにも程があるだろオメェよぉ⁉︎しかもなんか完売してるし⁉︎」
「販売所の中はムサシの卵でいっぱいだー!」
「人はッ‼︎卵をッ‼︎産まないんだよッ‼︎留年させるぞ!」
「売り上げに貢献できて良かったじゃ…あ、待って痛い痛い痛い⁉︎それ以上はいけない‼︎腕も掴まないで!肘が増えるからッ‼︎」
流石に買った客の顔をカメラで見る気にはなれなかったため、しばらくムサシは誰がどんなつもりで買ったのか疑心暗鬼に陥ったのであった。
転入生達の中には退学になった場合のデメリットが大きいので渋々ルールを守っていたけど、そのうち居心地の良さに絆されて改心した子もそれなりに居ます。
簡潔にメインストーリーの感想述べるなら、ルルーシュの『軍門に下れ』を思い出しましたね。いやぁ敵目線のギアスってあんなおっかねぇんですね。
それはそれとして、例のシーンでアークワンの必殺技思い浮かぶ人がそれなりにいて安心しました。
知っててやったのか、知ってたけどこうなるとは思わなかったのか、それが問題だ…