「委員長〜。2番倉庫にパワーローダーや戦車が沢山ありますが、どうします?」
「パワーローダーは何機か改装してアリウス復興の作業機械として使う。あとはいつも通り接収する」
「
「このパワーローダーは頂いていく、アリウス再興のために…‼︎」
「やかましい!」
「支援要請は、案外早く終わりましたね」
「自治区運営における取引先の見直し相談とは…まぁクーデターが頻発してるから建造物やインフラの再建で大変なんでしょ」
「それですぐに設備が復旧せず不満が溜まってまたクーデターの負の連鎖…いやホントよく存続できてますね…」
仕事を終え、アマツとコハクは227号特別クラスへ向かいながら雑談を交わしていた。
寒いのが嫌いなコハクが同行してるのは他に手が空いてるものがいないのと、雪景色を見ながら入る温泉は好きなので温泉郷イベントに関わりたいという願望があったからであった。
「…あ、もう温泉が噴き出てるや。副司令、急ぎましょう。メグちゃんが行動起こす前に介入して穏便に済ませないと」
遠くに湯煙と共に舞い上がる水柱を見つけ、急ぎ足で現場に駆けつけるとメグたち温泉開発部が集まり作業を行おうとしていた。
「はいはーい、一回作業を止めてくれるかな〜?」
「ん?アマツちゃんたちじゃん?どうかしたの?」
「湯煙を見て何事かと思ってきたら、またメグちゃんたちがやらかそうとして…」
「アマツさん、この人たちのこと知ってるの?」
「この人たちは温泉開発部といって、ゲヘナで指名手配されてる部活だよ。だからこの人たちが無断で活動してるのが知れると事務局経由でゲヘナ風紀委員がここに来てドンパチになるかも知れないんだ」
「えぇっ⁉︎それは困ります‼︎」
「まぁ、事務局から許可を得れば問題ないってことだから。メグちゃん、少し開発は待って貰える?アタシの方からここの生徒会に許可出すように交渉してみるよ。そうすれば、ヒナ委員長の邪魔が入らずに開発が出来るし、悪くないと思うけど…」
「う〜ん…よくわからないけど、アマツちゃんが協力すれば風紀委員とかが邪魔しに来ないってことかな?ちょっと部長に聞いてみるよ」
メグはすぐにカスミに連絡を取り、しばらく話した後アマツと話したいとの事でアマツはメグから通信機を受け取った。
「やっほカスミちゃん。この前はどうも」
《あーうん、そうだな。あまりあの時のことは思い出したくないな…アマツちゃん、レッドウインターの書記長から開発許可を得られる保証はあるのかい?》
「もちろん。この手の交渉は得意だよ。だからそれまで開発は待って貰えるかな?待って貰えるのならヒナ委員長には黙っておくからさ。そっちとしても合法的に活動できるならそれに越したことはないでしょ?」
《……わかった。アマツちゃんが交渉で嘘は吐かないのはよく知ってるからなぁ。メグ、許可を得るまではいい子で待っててくれ。計算によればそこの温泉はしばらく放置しても枯れはしないさ》
「はーい‼︎」
「よし決まりだね。アタシたち大和はこれからレッドウインターにおける新事業立ち上げの支援を行おう。ノドカちゃん、一緒に事務局に行って早速交渉に行こうか」
コハクは残ってメグから施設開発のプラン擦り合わせを行い、アマツはノドカと共に事務局へと歩いて行く。
その道中で温泉郷を設立するにあたり、工務部の協力が必要であることと、どうせなら出版部にも協力して宣伝を行なって貰えばより外部の観光客が増えると説明していった。
初めは複数の部活が関わることで利権が減ることに難色を示していたノドカだが、レッドウインター内での大規模建設に工務部を除くとデモ騒ぎになるのは明白であることと、下手にこちらが儲けを独占すると角が立って温泉郷そのものを打ち壊される可能性がある事を伝えると渋々納得していった。
事務局に到着し、早速チェリノに交渉を開始し、温泉郷が出来れば観光名所として非常に経済効果が見込めること、それで得た利益を自治区のインフラ整備に回せば支持を得やすくクーデターの発生率を低下できることを全面的に押し出していくと、チェリノやトモエも納得した様子で頷いていた。
「うむ…なるほど。温泉郷があればよりレッドウインターが豊かになるというわけだな!で、当然利益は全部こちらのものだな?」
「いえいえ。流石に全て持ってかれると関係部署への配当に加えて、施設維持費や万が一の修繕費、さらにはスタッフの心身ケアが出来なくなります。サービスの質を保つためにも、六割をそちらが受け持つのがベストかと」
「ちょっと⁉︎温泉見つけたのはこっちなのに向こうが多く貰うのはおかしくない⁉︎」
「ノドカちゃん。一応そっちは懲罰されてる側だし、許可を貰う立場だからね?事務局の面子を立てるのも大事だよ。それに…間接的にレッドウインターのインフラ向上に貢献してると周りが理解すれば、何かあった時の味方にできるでしょ?」
後半部分をこっそり耳打ちするとノドカは何かあった時の人脈を増やしたほうが利益になると判断し、その後幾つかの確認を済ませて温泉郷設立の許可と工務部らへの経費を捻出させることに成功し、そのまま工務部や出版部へ依頼を済ませて行った。
「本当にありがとうございます〜!私だけじゃ上手く交渉できなかったので助かります」
「こちらとしても、温泉施設が出来るのは楽しみだしね」
「にしても、アマツさんのセールストーク、すごかったです。引き込まれるというか、なんというか…なんか詐欺かなって思うくらいに…」
それを聞いた途端、アマツは足を止め、真顔でノドカに振り返った。
「…心外だね。仮に詐欺をするのなら不都合な事は話さずにやるし、こちらへの報酬も要求するよ。二度と詐欺師呼ばわりはやめてくれない?不快だから」
「あっ…えっと…ごめんなさい…」
尋常でない言葉の圧にノドカは失言を謝罪し、足早に去って行くとアマツはやってしまったと頭に手を当てていた。
「ついカッとなっちゃたな…気を付けないと。いつまでも昔のこと引きずっちゃいけないしね」
完成までの間に料理の材料や浴衣やタオル類の取引先の選定を行なったり、コハクがシグレにノンアルカクテルのメニューを教えたりして準備を進めていた。
やがて温泉開発部と工務部の建設技術の高さもあり、四日ほどで温泉郷が完成し、工事途中で設計図を見たミノリがこのままだと源泉の水圧に異常が起きる可能性を発見し修正案を出して再設計したことで源泉が枯れるのを未然に防ぐことに成功したのであった。
宣伝記事を書いてもらう為プレオープンに出版部を呼んだところで、ノドカは工務部と出版部にカードを渡していった。
「これは?」
「協力してくれたあなた達への特別パスポートです!正式オープン以降にコレをお持ち頂けたら入湯料を半額にしますし、ドリンクを1杯サービス致しますのでご贔屓にして頂けるとありがたいです」
「なるほど…労働でかいた汗をここで流すのも悪くはないな」
「貰えるものは貰いますけど、それはそれとして適切なレビューをさせていただきますよぉ?」
・ー ・ー ー・・ーー ー・ ・・ ・ー・ *1
ヤクモのレビューの影響もあり開業してから温泉郷は大盛況であり、様々な自治区から生徒が訪れて行った。
ムサシたちも入浴しに訪れ、それぞれ別の湯に向かって入浴していると、湯煙に混じってメルが様子を伺っていた。
(ふっふっふ…粘った甲斐があったというもの…!次の同人誌のネタ集めのために、ムサシさんたちの赤裸々な姿を網膜に焼き付けなくては!)
メルは下心の籠った目で銭湯内を彷徨き、まずアマツの姿を見つけて身体を眺めていく。
(ほうほう…うすほそ、というには肉付きが良く、スレンダー体型でこれはこれで需要はありますね。バストも僅かな膨らみと…お、ちょうどいいところにムサシさんが…⁉︎)
ムサシの姿を見つけ、キヴォトス内で人気が高まってる彼女の姿を捉えようと凝視するメルであるが、彼女の腹部にある二つの銃創を見て思わず固まっていた。
(…おぅ、コレが例の…痛そう…。ですが、忠実に描くためにもしっかり見ておかないと…いやぁ、それにしても綺麗でえっちな腹筋ですなぁ…!おっと、背中も中々…やはり翼を動かしてる分背筋もいい感じに仕上がってる。それに、バストも整って良いですなぁ!飛ぶ時の抵抗を考えて形が崩れないようにしてるというのは本当でしたか…)
傷跡に怯みつつも、しっかりと隅から隅まで眺めた後、メルは再び移動していき彼女にとってメインであるコハクを探していった。
(あの人は滅多にレッドウインターには来ませんからね…この機を逃さずあのナイスバディを拝まなければ…!)
露天風呂へ移動して行くと、ちょうど遠くで湯船に浸かるコハクを見つけ、その豊満な身体にメルは固まっていた。
(うお、デッカ…‼︎スイカじゃん…いや、湯船にスイカはおかしいな…
ざぶざぶと湯を掻き分けながら進んでいくと、何者かに肩を掴まれて振り向くと、ヨウカの姿がそこにはあった。
「げぇっ!ヨウカさん…⁉︎」
「やぁメル。いや、メルリーと呼んだ方がいいかな?この前私とキリノの本を書いた件について、肖像権侵害を念頭に入れた聴取をして良いかい?」
「あ、あはは…」
ヨウカに連行されていったメルの事など知るよしもなく、ムサシ達は風呂から上がって浴衣に着替えてロビーで休んでいた。
「ハァ〜。いい湯だったな」
「そうですね〜。色々種類もあって楽しめましたし」
「ングッ…ぷはぁ。副司令の指導もあって、シグレちゃんのノンアルカクテルも中々美味しいですよ」
感想を口にし、湯上がりで上気した肌に浴衣を着ている3人の姿に、生徒達はじっと眺めていた。
(湯上がりのムサシさん達、凄い色っぽい…‼︎)
(コハクさん、耳と尻尾がしっとりしてる…珍しい)
(アマツさん…浴衣から見えそうで見えない…でもそれがいい…!)
じっとりとした視線に気づかないふりをしながら、アマツはあることに気がついてムサシに話しかけた。
「…そういえば司令官、なんか良い匂いしますけど、ゆず湯入りました?」
「まぁな。塩擦り込むタイプのサウナ入ったあとにな。ゆず湯は生姜も入ってたみたいで、おかげで身体が温かい」
「……丁寧に下味付けてませんか?」
(…ジュルリ)
「待って、今誰かジュルリって言ったか⁉︎」
一方、温泉郷の繁盛により、レッドウインターの経済は大いに成長し、校舎を中心にインフラがだいぶ整い、給湯器が充実していったのが一番の成果であった。
「おお…!ついに掃除でもお湯が使えるぞ…!にしても、何故給湯器は最新式ではないんだ?」
「どうやら、最新式の給湯器だと販売所は自治区内に無いので、故障した際にパーツの取り寄せと修理に時間とお金がかかるみたいで。ですがこちらの給湯器はキヴォトス内で広く販売され、この自治区にも支部があることに加えて他社製品との部品の互換性もあって、さらにはアフターサービスも充実してるのですぐ修理が可能だからとアマツさんから勧められました。ちゃんと考えてくれてますね」
プリン製造場にも予算が回り、質の悪いプリンが出回ることは少なくなったが、やはりクーデター気質はそうそう治るものではなく、月に2〜3回は起きるが、それでも改善されたことにチェリノは感謝し、後日大和学園に勲章が贈られてきたのであった。
Q.結局、コハクの胸の頂きはどっちなん?
A.どちらもありうる…そんだけだ。
関係各所に報告してるのでトラブルが起きず、温泉も枯れることなく観光名所として残ることになりました。
そして次回、伝説のスケバンvs大和の怪鳥です。
(なお、どの結果でもコノミはキレる模様)