※短編から連載へ切り替えました。
「リン行政官、そういえばエデン条約の調印式、もちろん参加するのですよね?……えってなんですか?スゥ…行政官、ちょっと"お時間"いいですか?」
「なるほど、アビドスでそんな事が…。カイザーの差金か?」
「決定的な証拠は今の所ないですが、状況的にはそうでしょうね。しかし、仮にそうだとしたら、かつての計画を潰した我々の動きに目を向けてる筈。そんな状況でシェマタの事が向こうに伝われば…事態はさらに面倒なことになるかと。なので事が収まるまで捜索は一時中断します」
「その方が賢明だろうな。にしても、シェマタといい貴様らがかつて倒したビナーといい、奴らが探してる"宝物"といい…アビドスには厄介なものが多いな」
連邦生徒会長失踪前から依頼されていた列車砲シェマタの捜索は、彼女らの前世の知識からおおよその場所はわかってはいるものの、道のりが酷く険しいものだったり、環境の急変により捜索中断が相次いだり、その他普段の支援業務により難航していたところでアビドスの問題が起きたため、先述した理由により中断する旨を伝えるとマコトは深く息を吐いた。
シェマタほどの強大な兵器、しかも開発に雷帝が関わっている代物を探しているとトリニティに知られればあらぬ誤解を招く可能性があるが、それ以上にシェマタがカイザーら企業の手に渡り、エデン条約当日にそれを用いて襲撃される方が遥かに危険と判断し、自治区間の移動が容易な大和学園に依頼したわけであるが、こうなってしまっては仕方がなく、条約締結直前に見つかって騒ぎになったり、カイザーに知られていないだけマシかと思うことにしていた。
また場所が場所のため、ホシノにはこの事は伝えているのであった。
「まぁ本当に状況が不味くなったら連絡するよう言ってはいるので、その時は迅速に出向いて連中を制圧しますが」
「キキキッ!“大和の怪鳥"に2度も狙われるとは、カイザーには同情を禁じ得ないな」
【大和の怪鳥】鳥の羽を生やしている彼女の様々な武勇伝と生徒会長である事に掛けて付けられたその異名を聞いた途端、露骨にムサシは嫌そうな顔を浮かべた。
「…その異名、あんまり好きじゃ無いんですけどね。偶に誤解されるので」
「トリニティとの交流戦で剣先ツルギと8時間殴り合った奴ならそう言われて当然だろう」
「正確には、7時間53分31秒50です。しかも見かねた蒼森さんにドクターストップ(物理)された結果ですし。まぁお互いほぼ全身の骨が折れてたりヒビ入ってたりしましたし、仕方ないかと。でもさすが剣先さんです…一週間経たないうちに完治してましたね」
「二週間足らずで完治した貴様も貴様だ。…ちなみに戦った感想は?」
「すごく楽しかったです」
「やはり怪鳥ではないか、この戦闘狂め」
本人はこう語っているが、実際の現場は凄惨としか言えないもので、撃ち合いから始まり、弾が尽きれば銃床での殴り合い、その銃も駄目になれば素手で殴り合うといったものであり、白熱した両者は互いに奇声や雄叫びを上げながら血みどろで殴り合う様は異様であり、他の所で戦闘していたメンバーも唖然としており、見学者は恐怖で震えるか嘔吐、失神、さらには失禁したりと阿鼻叫喚の有様であった。
おかげでその時の記録映像には閲覧制限が掛けられる事になるが、当の本人たちは全力を出して奇妙な友情が芽生えたのか、それ以来良い友人関係を築いていたのであった。
トリニティの実力者と仲が良い事には多少の懸念を感じるマコトだが、彼女を含む大和学園生の交流関係の広さは知っているうえ、普段は物腰柔らかな態度で接してくる反面、戦闘時には口調を変え容赦なく敵を鎮圧するムサシの極端とも言える二面性にある種の混沌を見出しているため、深く気にしない事にしていたのであった。
「そういえば前々から気にしていたが、美食研が以前貴様らに捕えられてから、破壊活動や食材の強盗はせずにマズイ飯を出した店員に食材に申し訳ないと思わないのか的な説教をするだけの集団と化したのだが…何をしたんだ?」
「あぁ、それですか。前に我々が気に入っている店が彼女らの被害に遭いましてね、食材を搬入したばかりだったのでかなり被害が大きかったのと流石に我慢の限界だったので、各所に協力してもらって彼女らを捕まえた後、牛や豚、鶏が生まれて成長して屠殺場で締められたあと食肉に加工されて出荷されるまでの映像をダイジェストで強制的に延々と見せました。なんなら納入先が自分らが吹っ飛ばした店ってところもです。信念的な問題か、鰐渕さんが一番応えてましたね」
「鬼か貴様ァ⁉︎」
「勝手な理由で店ごと食材を吹き飛ばして無駄にしたのが悪いのですよ」
正直なところ効果があるか不安だったものの、死が重いキヴォトスだからこそ、食材であっても死は死であるため、人を選ぶ屠殺が余計に応えたのであった。その後、映像と自分らのやったことを改めて知って精神的に参っていた彼女らに動物でなくとも同じ事であること、食材ではなく観賞用として存在している動植物はそれを尊重することを教えた後、コハクによるメンタルケアをして解放した結果、以前のような活動をしなくなったというわけであった。
なお、最悪の場合ヴィーガン過激派のような事になってた可能性があったことにやった後に気づいたのは内緒である。
その後幾つか雑談を交わした後、最後にムサシがこう告げたのであった。
「そうそう、いずれ公式に伝えられますが、エデン条約の調印式に当日我々大和学園も出席することになりました。正確には、連邦生徒会の護衛としてですが」
「……え?な、何故連邦生徒会も?」
「当然でしょう。条約を推し進めたのは連邦生徒会長ですよ?連邦生徒会が出席しないのは筋が通りませんよ。本来なら七神代行官が出るべきですが、"お話し"した結果、スケジュールの都合で不知火防衛室長が代役で出席します。SRTは当日他の地区で怪しい動きが無いかの警備に当たるので、我々が護衛を行うというわけです。…何か不都合でも?」
ムサシの言葉にマコトは挙動不審になりながら言葉を返していた。
「い、いやいやいや‼︎別に?何も、問題はないぞ?そうか、貴様らがいるならより安全だな!頼んだぞ」
「(うわ、わかりやすッ)ええ、言われずとも。ではまた今度……ん?失礼、部下から連絡が…どうした?」
《司令官、こちら吉田です‼︎現在、自治区内で温泉開発部が一部区画を閉鎖して温泉を掘ろうとしてます!私と金田、栗原が指揮をとって応戦してますが、羽沼議長から何か聞いてますか⁉︎》
「…なに?はぁ…羽沼さん、今こちらの自治区で温泉開発部が暴れてるそうですが、何か知ってますか?」
「いや、何も…私は指示してないが…本当だ!」
「わかりました…だそうだ。つまりこれは奴らの独断だ、すぐに叩き潰せ。お前たちだけでも対処はできるな?」
《もちろんです‼︎風紀委員も呼んであるのでそちらが帰る頃には事後処理を開始してると思います》
「それは頼もしいな。…では羽沼さん。我々はこれで。見送りは大丈夫ですので」
「あ、あぁ…」
ムサシが一礼した後、コハクと合流するため部屋を後にするとマコトは力なく椅子にへたれこんだ。
こちらで手に入れたアリウスの情報を利用してエデン条約を滅茶苦茶にしてやろうとしていたが、大和学園や連邦生徒会も加わるとなれば話は別であった。さきほどの美食研への制裁を考えるに、万が一計画が露見したらタダでは済まないことは想像に難くなかった。
(仕方ない、襲撃計画は白紙にするか…アリウスと接触する前で良かった。流石に大和や連邦生徒会に喧嘩を売るほどバカではない…)
(だが、いずれ私がキヴォトスを支配するには奴らを倒すか懐柔する必要がある…剣先ツルギと仲を深めればそこからムサシの信用を得られるか?…だからと言ってトリニティと仲良くは…いや、奴は秩序側の人間だ、敵対しているトリニティとゲヘナの生徒が仲良くしてるのを見れば信用を得られる可能性が高いか…?しかし、上辺だけ仲良くしてもバレるだろう。しかしなぁ…)
ムサシを懐柔する為にトリニティと親交を深めるかどうかを考えてるうちに、いつの間にか調印式襲撃が頭から抜け落ちているマコトであった。
・ー・ーー ・・ ・ー・ーー ・ー ー・ーー ・ー・・ ーーー・ー ・・ー・ー *1
「くっ、弾が切れたか!栗原ァァァァ‼︎弾、ねぇぞォォォ‼︎」
「今送るから黙っててようるさいなぁ‼︎」
「聞いたか⁉︎アイツ弾切れだ、今のうちに「着☆剣‼︎」ぶべらッ⁉︎」
温泉開発部の一人を銃剣*2で返り討ちにするのを見ながら、栗原マドカはドローンの一機を操作しながら前線の金田ナオに弾薬を届けていた。
「ハーハッハッハ‼︎事前の調べで『設立組』はここには殆どいない事は知っている!この数的差で『統合組』と『転入組』が相手なら問題なーい‼︎」
「だいぶナメた事言ってますねぇ…」
「何故応援が来ない前提なのか、これがわからん」
「強大な重機‼︎よく飛ぶ銃‼︎威力ある発破‼︎大勢の人間‼︎正確な狙い‼︎あとはそこに温泉があれば完成する‼︎わからんか、大和の諸君⁉︎」
「ホントになんて言ってやがるんだ…?」
「さっさと
大和総合支援学園の生徒の内訳は大きく三つに分かれる。
一つ目はムサシら転生者らの集まりであり、学園設立を行った『設立組』
次に彼女らが設立前に潜伏していた複数の自治区に在籍し、学園設立時に統合され、大和学園の生徒となった『統合組』
最後に大和学園の支援策にて他学園から転入してきた『転入組』である。
ここにいるのはナオやマドカの他、先ほど連絡した吉田メルナの三人以外は全員統合および転入組であり、この場には30名程に対して温泉開発部は100名程と3倍程の戦力差に加え、戦車や重機を用いていた。
数的優位があるうえ、ビナーを倒した設立組でなければ、他学園の寄せ集めであるその他の生徒は脅威じゃ無いと思っている温泉開発部であるが、それは間違いである。
連携不足があったのは設立当初の話であり、当然ながら現在まで訓練はしているし、統合組は潜伏時代にも彼女らから手解きを受けている。さらに言えば転入組の中には実力こそあるが元いた学園の方針が本人の性格に合わずに去っていった者もいる為、カスミらの考えは間違いであった。
「え?ちょっ、奴ら旧式の銃ばかりって話じゃ…」
「それは設立組の話!あたしら統合組や転入組はその限りじゃないさ!まぁ弾薬の都合で使用するときもあるけどね‼︎」
「3倍差が何よ‼︎一人で三人くらい倒せばいい話!着剣‼︎」
「部長‼︎こちらの戦力、半数を切っちゃいましたよ⁉︎」
「う、嘘だろう…⁉︎風紀委員でもないのに、こんな戦力を…ま、まだだ!戦車や重機をぶつければ流石に…」
瞬く間に部員たちが倒れていく様子を見て慌てたカスミが指示を出し、戦車が砲撃を行おうとした瞬間、何かが重機や戦車に飛来し、履帯やエンジン部を爆破させたのであった。
何事かと飛来した方を見れば、
「や、大和風紀委員…!」
「今ので敵戦力はほぼゼロだけど、油断せずに二発目を装填して。総員、敵勢力を確保せよ‼︎司令官が来る前に全部終わらせるよッ‼︎」
「了解‼︎大人しくしろテロリスト共‼︎」
「ひ、ひえぇぇぇ⁉︎」
・ー・ ・ー ・・ー・ ・ーー ・ーー・ ー・ *3
「ある泉脈は活かすべきだ…何故理解しない…」
「黙って歩きな‼︎」
「ひえぇ…」
拘束した温泉開発部をゲヘナ行きの護送車に詰め込む様子を見ながら、栗原たちは統合組や転入組について話していた。
「だいぶ実力を付けてきましたね彼女たち」
「この件で各校の問題児たちも考えを改めるといいが…」
「ニノちゃんお疲れ〜。司令官に最近褒められたから張り切ってるね」
「司令官には色々とお世話になってますから、その恩返しがしたいんですよ。それより吉田さん、ホントにコイツらあのバカタヌキとは無関係なんですね?」
「司令官に睨まれて嘘吐けるような人じゃ無いだろうし、無関係だろうね」
「そうですか…まぁ何かあれば
(マコトさんが猫アレルギーなの知っててこれは酷い…しかもペアって…)
(まぁ、残当かなぁ…でもコレは元トリニティの生徒も引いてたしなぁ…)
なお、この『万魔殿に猫カフェチケットを送りつける行為』は現ゲヘナ風紀委員にも伝わっており、嫌がらせに対して報復で直接襲撃するより効くとして積極的に取り入れられているのは内緒であった。
数日後、柴関ラーメンにて
「ん?」
「ヒェッ…」
便利屋68、ムサシと店内で遭遇したのであった。
(あぁ、今日だったのか…)
交流会での様子は端的に表すとアマゾンズとかそんな感じです。
戦闘時間にも小ネタがあります。
・金田ナオ 吉田メルナ
共に設立組であり名前の元ネタは両者の元ネタ作品のメダルオブオナーから。
・栗原マドカ
同じく設立組。普段は転入生たちへの物件紹介をしており、戦闘時は補給を担当している。名前は『窓がない』から。
・七条ニノ
本文通りの経歴だが、詳しく言うと正義感が強く真面目だった結果、幾らシバいても懲りないゲヘナの問題児たちと万魔殿の嫌がらせに心が折れて自主退学したところをムサシがスカウトした。故にマコトが嫌い。なんなら一度猫の毛がギッシリ詰まったビックリ箱を渡そうとしたところ、流石に駄目だとムサシに止められた。
モチーフはソロモン72柱の72番目、悪と不正を発見し処罰する悪魔であるアンドロマリウス。(『七』条『ニ』ノ)
カイザーPMC基地、どうボコる?(結果で戦力が変わります)
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普通に潰す(原作+大和のみ)
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徹底的にやれ(原作+大和+???)