「正面ゲート、突破されました‼︎」
「北部一個大隊、壊滅‼︎ゲヘナ風紀委員、こちらに向かってきます‼︎」
兵士たちの報告を受け、カイザーPMC理事は苦々しい顔を浮かべていた。
二年前に大和総合支援学園の連中にビナーを撃破されてからは、対デカグラマトン部隊という名目での軍備拡張も通用せず、戦力を否応無しに減らされたものの、ようやくアビドス最高戦力である小鳥遊ホシノを確保したと思いきや、この襲撃である。
正面ゲート付近のモニターを見ると大和やアビドスだけじゃなく、卒業した筈の梔子ユメまでもが参戦しており、3名の兵をミニミの掃射で撃ち倒していた。隙をついて一人の兵が接近戦を仕掛けるも、彼女は懐から銃剣を引き抜…こうとするも勢い余って手からすっぽ抜けてしまうが、それが偶然投げナイフのようになり兵に突き刺さっていた。
「この…っ!装備不足で砂漠に行ったマヌケのクセによくも…!」
「理事‼︎基地東側に…その……」
「何だ?早く言わんか‼︎」
「騎馬です!大和の騎馬隊が弓を持ってやって来てます‼︎」
「……は?」
部下の報告に一瞬唖然となるが、該当モニターを見ると確かに騎馬隊がこちらに向かうのが見えていた。そしてカイザーPMC理事は怒りに任せて机を叩いて怒鳴りつけた。
「弓矢と騎馬で来るとは、我々を舐めているのか⁉︎すぐに叩き潰せ‼︎」
・ー ・ーー・ ーー・ー・ ・ーー ・ー ・ーー・ ー・ー・ー ・ーー・ *1
「部長〜連中が来ましたよ。ま、向こうからすりゃバカにしてるようなモンですしね」
「良し……者どもォォ‼︎矢を
弓道部長、石川ナルミの掛け声を合図に、部員達は一斉に矢を番えて狙いを定める。弓のしなる音と馬の駆ける音が響く中、カイザー兵が配置につき、足を止めた瞬間…
「──射てェェェ‼︎」
掛け声と共に放たれた矢はブゥン‼︎と羽音のような音を立てて飛来していき、カイザー兵の関節や銃器を貫き、破砕していった。当然それだけでは終わらずに二射、三射と続け様に矢を放ち、ある者は腕ごと銃を吹き飛ばされ、またある者は盾を砕かれて驚いてるうちに身体中を射抜かれていった。
「ぐあっ‼︎」「うぉお⁉︎」
「バカな…弓矢にこんな威力が…⁉︎」
「えぇい怯むな‼︎コイツを喰らえば流石に…」
予想外の威力に周りが怯むなか、ロケットランチャーを持った兵が彼女らに向けて引き金を引こうとするが、直後膝に矢を受けて前のめりになってしまい、その際思わず引き金を引いたことが災いし、辺りが爆散し何名かの兵が無力化されていった。無事な兵たちも馬を狙って応戦するが、身体が頑丈な馬であるうえ、多少の事では怯まないよう訓練をしているため走りを止められずに射抜かれるかそのまま撥ね飛ばされるかして数を減らしていった。
「部長‼︎ゲートが…!」
「慌てるな。操作してるのは……アイツか」
管制塔にいる兵を見据えたナルミは矢筒から
「このまま突入する‼︎あとに続け‼︎」
『了解‼︎』
弓道部が基地内部に突入すると同時に、無数の砲弾がアビドス生徒らのいる辺りに降り注ぐのが見えた。
「部長、あれは⁉︎」
「もしもし司令〜?大丈夫〜?」
砲撃の正体は知っているが、ソレを今の状況では知るはずが無いため、ムサシに連絡を入れると、彼女から返答が返ってきた。
《…あぁ、問題ない。アレはどうやら援軍によるものらしいな》
「だってさ。じゃ、矢の残数に気を付けながら進んでくよ‼︎」
ーー・・ ーー・ーー ・・ー ーーー・ー ・・ー・・ *3
「敵超兵器群、沈黙‼︎」
「今のは…?」
「わ、私です‼︎」
ムサシ達の前に並んでいた多数のゴリアテやドローンは突然降り注いだ砲弾により多数が破壊されていた。何事かと困惑する一行の前に、紙袋を被った女子高生が姿を表した。
「だだだだっ誰だー⁉︎」
「いち・に・さn「違う‼︎」」
「そうです、私はファウストです!あれはトリニティの砲撃隊に見えますが、トリニティとは無関係で…その、通りすがりで…とにかく!トリニティとは関係ありませんから‼︎」
欺瞞‼︎だがジッサイ無関係である。
「もういい、それ以上話すな。こちらの味方だとわかればそれでいい」
「ありがとうな」
そうこうしているうちにも追加のゴリアテが現れ、遠くからも無数のドローンが飛来してくるのが見えてきた。敵の新手にシロコたちは身構え、迎撃を行おうとするが、ムサシがそれを手で静止する。
「どうして止めるの?」
「先ほど連絡があった。もうすぐヘリ部隊が到着する。乱戦になると向こうが撃てなくなる」
「……何か聞こえてきませんか?」
「"本当だ。これは…『ワルキューレの騎行』?"」
振り返るとSRTのを含めた5機のヘリが音楽を爆音で流しながら向かってくるのが見えていた。
《司令官、こちらハンター1。まもなく爆撃を開始します。というより、RABBIT3が早く撃たせろと喚いております》
《だってさ、こんな大勢で合法的にカイザーの基地を爆破する機会なんて滅多にないんだよ⁉︎早く撃たないと壊すものが無くなっちゃうよ‼︎》
「了解。RABBIT3、今から人質と味方の場所を送る。そこ以外は好きに爆撃して構わん。……絶対にその場所は撃つなよ?」
《それってフリ「あ"?」ひぃ⁉︎ごめんなさい、絶対撃ちません…》
直後、ヘリ部隊が爆撃を開始し、カイザー兵たちを近くの施設諸共吹き飛ばしていき、残った兵もヘリの機銃や乗組員の銃撃に晒されていたのであった。
「逃げるオートマタはカイザー兵だ!逃げないオートマタは良く訓練されたカイザー兵だ‼︎」
「正しい見出し、正しい引きつけ、正しい頰付け…コトリと落ちるように…」
(色々混ざってないか…?)
《あー、RABBIT1及びRABBIT2。対空兵器は粗方潰した。降下するなら今のうちだ》
「り、了解しました。これより降下してシャーレの援護に回ります。RABBT4、サポートを頼みます」
「は、ハイ…!(でも…これ、私必要、なのかな…?)」
正面からはアビドス生と主に前時代のライフルを装備した大和の生徒、東からは弓矢を装備した大和の騎馬隊、北からゲヘナ風紀委員、上空にはヘリ部隊、基地郊外にはトリニティのものに良く似た砲兵隊、そしていま最新の装備を持ったRABBIT小隊が合流したのであった。
今現在、カイザーPMC基地内は敵の兵器を含めると弓矢からオートマタ・ドローンまで、古今東西あらゆる兵器の博覧会と化していた。もはや無いのは潜水艦くらいである。
「ノノミ殿‼︎弾幕で奴らを釘付けにして下さい!そのまま弓矢でブチ抜きます‼︎」
「弓矢⁉︎今弓矢って「わかりました〜♧」何で受け入れてるんですノノミ先輩⁉︎てかあの人たち馬に乗ってる⁉︎」
「乗馬は良い…自転車とは違う趣きがある…」
「"シロコ、乗馬出来るんだ…"」
「戦車・十一時の方向」「ファウストの支援を要請する‼︎」
「え?あ、はい‼︎みなさん、撃ってくださーい‼︎」
「コイツは頂いて…あぁ‼︎横取りしやがって‼︎」「あ、空崎さんどうもー」
「随分と派手にやってるわね」
「ま、相手が相手ですからね」
他愛のない会話をしているヒナとムサシであるが、その背後では騎馬隊やシロコのドローンに追いやられていたり、銃剣でどつき回されたり、上空からミユといつの間にかヘリで現れたアルの狙撃とヘリの機銃掃射を受けているカイザー兵たちの悲鳴が響き渡るというもはやどちらが被害者かわからない地獄絵図が広がっていたが、誰も気に留めていなかった。なお、この大破壊というべき状況にモエはすでにトリップ状態となっていた。
「…あ、社長。このヘリもうすぐ燃料切れで堕ちそう」
「な、何ですってぇ⁉︎」
「あーあ、アルちゃんがお馬さんに見惚れてるから〜」
そして、地下に囚われているホシノは微かに聞こえる地響きに対して、今地上で起きてることに予想がつきつつも、妙な不安を覚えていたのであった。
(絶対なんか聞こえたって…大丈夫?私、生き埋めにならないかな…?)
ー・・・ ・ー ・・・ー ・ーーー ーー ー・・・ー *4
「"アロナ、ホシノのいる建物はあとどれくらい?"」
《もう少しです‼︎》
「……」
残存勢力を文字通り蹴散らしながら進んでいく一向の前に、専用のゴリアテに搭乗したカイザーPMC理事が降り立った。
「一度ならず二度までも、よくもよくも我々の計画を潰してくれる…大和総合支援学園‼︎」
「当時中学生、または中卒の我々にも潰されるような計画を立てた貴社にも、問題があるのではないかね?」
「…ッ‼︎貴様らぁぁぁ‼︎」
「そもそも、誰の土地で好き勝手やってるのよ‼︎」
「にっぽn「違う‼︎」」
「先生、ここは我々に任せて、小鳥遊さんの救出を」
「"君たちに任せて……大丈夫そうだね"」
「RABBIT1、RABBIT2。先生たちの援護を」
ミヤコとサキと共に、先生はアビドス生と一緒にホシノのいる建物へと走っていく。一方でカイザーPMC理事はムサシの挑発に完全に頭にきているのか、その場を離れる彼女らに目を向けずにムサシたちを睨んでいた。
「小城ムサシィィ…!貴様だけは私自らの手で「RABBIT4、撃て」は?…ぐあッ⁉︎」
もはや聞く耳は持たないといった風にミユに指示を出し、理事はその剥き出しの頭部に狙撃を受け、よろめいた。
「なっ貴様⁉︎人が話してる最中にぐぉッ⁉︎」
「構うな、全員撃ち続けろ!所詮は誘拐犯の言うことだ、聞く必要はあるまい。基地の自爆を行う前に潰せ」
「外道には情けは無用ぞ‼︎」
「そうね。暴れられたら面倒だし、早く終わらせましょう」
「き、貴様ら、少しは加減を…⁉︎」
異様な早さでコッキングをしながら容赦なく射撃を行うムサシらに戸惑っていた風紀委員と便利屋たちだったが、ヒナが率先して銃撃を加えたのを皮切りに一斉にゴリアテに火力を集中させた。左腕、右腕、上部砲身と瞬く間に武装が破損していき、やがて崩れ落ちて搭乗者本人が投げ出されるも念には念をと、数秒ほど撃ち続けたあとでムサシが近寄り、完全に気を失ったのを確認すると理事を拘束し、懐にしまってあった自爆スイッチらしきものを撃ち砕いた。
「容疑者の鎮圧を確認。あとは小鳥遊さんを救出すれば任務完了だ」
「え、エゲツないわね…」
「アルちゃん、アウトロー目指すならアレくらいやんなくちゃ♪あー、色々面白いもの見れて楽しかったー‼︎」
「…あーダメだ、こんな
「モエちゃん、顔が怖い……」
数分後、ホシノの救出完了の連絡を受け、アビドス組以外の面々は先生たちからお礼を言われたあとにその場から撤収していった。
そして現在、ホシノはユメの目の前で正座をさせられていた。
明らかに怒ってますといった様子のユメに、ホシノは冷や汗をかいていた。
「ホシノちゃん、前に私がムサシちゃんたちに助けられた時に勝手な行動しないでくださいって怒った癖に、自分は勝手な行動しちゃうんだ?」
「あの…えっと、それはですね…アビドスのみんなのためだったからで…」
「私もアビドスのためにやったんだよ?ホシノちゃん、せっかく沢山後輩ができたんだからさ、自分の言ったことくらい守って欲しいな」
「ハイ…迷惑かけて、すみませんでした…みんなもごめんねぇ」
心なしかアホ毛までシナシナになりながら謝るホシノの姿を見てユメはようやく顰めっ面をやめて笑顔になった。
「うん、謝れてえらい!でもね、また同じことしたら…ツンツンしてた頃の髪型にしちゃうからね?」
「うへぇ…」
その後、セリカを皮切りに口々におかえりと告げられたホシノは返事をしようと立ち上がるが、足が痺れていたため尻餅をついてしまい、みんなの笑いを誘った後、改めてただいまと返したのであった。
ーー・ーー ・・ー・・ ーー・ー・ ー・・ー ・ーー・ *5
「で、結局カイザー本社は例によって尻尾切ったわけですか」
ムサシ、コハク、アマツの3名がシャーレに出す報告書を纏めながら、大和学園の執務室でコハクが呆れたように呟いていた。
彼女の言うとおり、理事は無事に収監されたものの、カイザー本社はこの件に関して例の如く関係者をクビにしたうえで、当事者の独断であるとシラを切っているわけだが、アビドス側はこれに対して、元とはいえカイザー社員がやったことには変わりはないのだからと、多額の慰謝料と『賃貸料の引き上げ』を要求。カイザー側は渋々ながらもこれを受け入れ、手打ちにしたのであった。
「賃貸の打ち切りじゃないんスね」
「ホシノ曰く、なに探してるか泳がすってのと、今まで金を貪ってた分、たんまりと絞るだけ絞るってさ。まぁ原作の意趣返しってところか。それでコハク、ミレニアムプライスの期限はあとどれくらいだ?」
「あと一ヶ月…つまり、あと二週間ほどでパヴァーヌ編が開始しますね。でも、その前に…」
そういってコハクが取り出したのは『百夜ノ春ノ桜花祭』の招待状であった。
・石川 ナルミ
苗字はゴーストオブツシマの先生、名前は名前メーカーから。
ジェネリックアシタカな弓道部長で設立組。
なお、部員も平均でアシタカの七割程のスペックだが、その殆どは統合組や転入組である。わぁすごい。
「アレは矢じゃない、静音性のある対物ライフルだ」by喰らったカイザー兵
次回は桜花祭です。話自体は短めになる予定です。
以下、記載予定のセリフの先行公開です。
「勇美ィィィィーー‼︎久しぶりだな‼︎勇美ィィィィー‼︎」
「ご飯食べて映画見て…寝るぅ…私の修行は、これで十分だよぉ…Zzz」
「発射されたRPG素手で投げ返したぞコイツ⁉︎」
「お前ら…笑うなッ‼︎」(転入生です)(例のアレは教えてないです)
「……っ!」(笑いを堪えてる)