シークレット・シーズン   作:さしずめろん

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おまけになります


シークレット・ニューイヤー

「さぁて、正月はどう過ごそうかな〜」

「金欠がそんなの気にしてどうすんだよ?」

「モールズちゃん、もっと楽しまなきゃ!」

「楽しむ為の金が無いっつてんだ!」

「そんなの……どうしよう?」

「な?祝い事自体はウチも好きだよ、でもな明日食うに困ってる状態でそれはどうなんだよ?」

「あのモールズが真っ当なことを」

「それだけJが酷いんだ、察しろ」

「はい、でもさ少しずつ良くなって来てるだろ?」

「……」

「もっと頑張ります」

「うっし!じゃあ高収入のヤツやろうぜ!」

「えっーと、“実験体募集 報酬900000フィ”」

「よし、それだ!やろうぜ」

「モールズが関係無いって分かってるから言ってるでしょ!!」

「当たり前だろうが!」

「怒ったからな!」

「へへーん!やれるもんならやってみろ!」

 いつもの様にじゃれ合い、時間を過ごしていく。

「お?」

 そんな時だった、モールズの動きが突然悪くなる。

「どうした?」

「身体が動かねぇ」

「大丈夫なのか!?」

「まぁ古いし荒事もするしでガタが来たんだろよ」

「……」

「老朽化だ、気にすんな」

「気にするさ」

「全く難義な奴だぜ」

「そう、だな」

「このまま放っとけ」

「……」

 モールズはさっさと電源を落とし、眠りについた。多分真面目に働いていたとしても用意出来ない金額になると思うが、結婚した相手であり、相棒なのだから。

(おれは……イヤ後悔は後だ)

 金については後で考える。先ずはハンガーに頼る事にした、情けない話、頼みやすい相手というのもある。駄目で元々だ。

「締めて8000万フィになります」

「……」

「はい、だからお金ですよ、出して下さい」

「い、いや〜そんな大金はいきなり用意出来ないかな」

「分かっていますよ、家を買うようなものですからね、ですがこれでもかなりの良心的価格なんです」

「なっ、何とか出来ないかな〜あの時みたいにね?」

「あの時は学生で恩恵があったからです、ですが今はプロとなりました。仕事なんです、僕がタダでしてしまったら他のプロ達の迷惑になりますから、出来ません」

「……そうですね、無理を言って申し訳ありません、それとありがとうございました」

「いえ、お力になれず申し訳ありません」

「コッチが無茶言ったんですから」

 分かっていた事だ、この程度で止まるなら、こんな恥ずかしい事はしない、カッコつけて言うには余りにもダサい。

 そんな事全部承知の上だった……筈なのに。

 自分の情けなさに涙が出る。

 (自分で、選んだ道だろうが)

 そう自分に言い聞かせるが、フレングルに電話をかけた。

「なんだ?かねのむしんでもしにきたか?」

「まぁ……その、そうだ」

「……じょうだんだったんだがな」

「モールズの身体が動かないんだ、後で少しずつ返すから――」

「むりだ、きんゆうもやってはいるがきさまにかねはかせないな」

「……そうか……まぁそうだよな」

「あぁ、それがじんせいのつけ、しんようだよ」

「……なぁ……俺は都合の良い……駒だっただろ?」

「たしかにねなしぐさのおまえはつごうのいいこまだ、そこはみとめよう、だがそれがしごとをしないいいわけになるか?」

「……なりません」

「こころざしはりっぱだよ、だがこうどうにともなっていない、しょせんおあそびなんだよおまえのこころざしは」

「……」

「いまからでもおそくはない、じぶんのみちにあったしごとをしろ、もーるずをふたたびうごかしたいのならな」

 頭の片隅では判っていたのだ、だが俺はあの時モールズを拾った事で勘違いをしてしまったのだろう、このままでも大丈夫だと。

 現実が追いついて目を背けて来た事に、嫌でも向き合わなければならない。人の助けになりたいのなら警察やカウンセリングにでもなればいい。

 理由を付けて仕事を避けてきたのも事実だ、指名手配されても簡単に逃げられる様になんて、本当に子供の言い訳以下だ。

「俺はやるよ、今までの背いてきたツケを今から払う」

 眠っているモールズにそう決意する。車は売らない立派な商売道具だからだ。

 端末を手に取り高額の依頼を探した、生半可の金額では駄目で、技術も要らない、条件を絞る程に闇依頼しか無くなっていく、でも駄目だ短期間で稼げるものでなければ、そうして最後まで残った実験体募集に電話をかけた。

「あっ、すいません実験体募集の依頼を見たものですが」

『おや、まさか本当に電話が来るとは思わなかったよ』

「え?釣りなんですか?」

『いいや、本当さ』

「なら良いです、他にも依頼がありましたら全て受けさせていただきます」

『まるでアイツみたいだな』

「アイツ?」

『強くなる為に全身強化を受けた奴を思い出しただけさ』

 その言葉にあの警官が思い浮かんだ、だがそれは今関係ない。

「それで、受けさせてくれますか?」

『ああ、良いだろう、全部となれば半年以上かかるぞ?』

「構いません、不躾ですが総額いくらになるんでしょうか?」

『全部で8000万フィだ』

「はっ、8000万!?」

『それだけヤバいって事だ、どうだ?それでも受けるか?』

「好都合です」

『……興味本位だから答えなくて良い、どうしてそこまで金が欲しい?』

「寧ろ金が欲しくない人間がいますか?」

『ハハッ!その通りだ!良いだろうキューレン町まで来い』

「分かりました」

 この熱は一時的なモノで、冷めれば逆戻りなるのは分かり切っていた、だから後戻り出来無い様にしなければ。

 またあの情けない自分に逆戻りだ、それだけは嫌だから好都合だ。騙されて死ぬならそれでいい。

 後からモールズが来てくれるから。

 キューレン町に到着しメールを送る。

 直ぐに返信が来て地図に目的地が印されていた、車で20分ほどの距離、本当に此処だろうか?と思うぐらいにはボロい古民家に入る。

「お前が実験体か?」

「ああ、そうだ」

 玄関を開けて直ぐにそう声をかけられた、その人物は手術着フル装備の格好をしており、目元だけ肌が見えていた。

「なら先ずはこの契約書にサインしてくれ」

「何があっても罪に問わないですか」

「ああ、サインしなかったら当然報酬はナシだ」

 Jは玄関で抵抗無くサインした。依頼人は契約書を確認し背中を見せて歩き出した、俺はその後ろについていく。

「よし、早速一つの手術をしよう、最初の依頼だ」

「因みになんの手術か聞いて良いですか?」

「移植手術だ」

「動物の?」

「いいや?アンドロイド部品の殆どが人体に移植出来るようになってはいるが、当然出来ない部分もある。その移植手術だ」

「……」

「怖くなったか?良いぞ逃げても?所詮は金の為だものなぁ?」

「やりますよ」

「そうか、まぁ安心しろ、異常が起これば出来る範囲で助けてやる。大事な実験体だからな」

 暗い部屋に明かりを付けた、小さい部屋だ漫画で見たような機器が所狭しと並べられ、真ん中には手術台があり赤く染まっているが、関係ないとばかりに手術台に寝転び、依頼人が麻酔を投薬し意識が飛んだ。

「手術は成功した、どうだ?」

「まだなんとも無い」

「なら半年間様子を見て、次の実験に移るぞ」

「はい」

 それからの半年はどんな些細な痛みであっても直ぐに報告する義務と診察を受ける義務を負った。

 経過は順調そのものだ、体に異常は見られず三ヶ月早く、次の実験に移った。

「コレは人工膵臓だ、見てくれこのコンパクトさ!天然物の2倍の大きさで収まっているんだ!」

「それは、凄いですね」

「だろう!私の自信作だ!」

「え!?手作りなんですか!?」

「ああ!そうだ!怖気付いたか?」

「いいや、それだけ金がいいんだろ?」

「そうだ」

「ならやってくれ」

 前回と同じく手術をし経過観察をした数日後に、背中に異常な痛みが出た、麻酔で痛みを和らげ原因を探り経過観察を続行した。

「どれだけ人間に近いと言っても、動物は動物だ、本物の実験には敵わん、だから金を出してでも実験体を欲するのだ」

「そうですか」

「ああ、しっかりと人類に貢献してやるから安心して死ね」

 誰かの役に立つ、俺がしたかったことだ、ならば嫌はない。痛みの原因は不明なままだが次の手術に移る。

「次は人工腎臓だ、流石にこのままでは収まらんから腸を少し切除して――」

「そこまでして収める必要が?」

「……体のバランスを考えなければ出来るが?」

「ならそれでやってくれ」

 もはや語ることもない。

「次は」

 そのまた次の手術を受け内臓の殆どが人工物に置き換わった。その後遺症か上手く喋る事が出来なくなり、体を動かす事も酷く億劫だった。

 だがそんな瑣末事、何もかも振りっきた俺には止まる理由にならない。

「ココまでくればいっその事、脳以外アンドロイドに置き換えてみても面白いな!」

「かネは?」

「勿論弾んでやろう!お前は良い実験体だからな!」

 最後の実験。

「脳以外全てアンドロイド化に成功した、コレが約束の金だ」

 本当に機械の身体なのか疑わしい程には異常がない、まるで元々の身体であったかのような錯覚すら覚える。

 ドンッと三つ置かれたアタッシュケースの中を確認した、総額三億フィ、これが今までの実験で稼いだ額だった。一体何処からこんな大金が?チラッと見るがどこ吹く風だ。

「医療に革命が起こる。有意義な実験だったよ」

「いや、それを実現してるお前は何者だよ」

「ただの医者だ」

「そうか」

「ああ、またな」

「また」

 言葉数は少ないがそれでいい信頼とはそういうものだから、懐かしい愛車ボーダーランに乗り込みハンガーの元へ直行した。

 ドンッとアタッシュケースを三つ置く、ハンガーは恐る恐る中を確認した。

「これで、頼めるかな?」

「……短期間でこんな大金をどうやって?」

「……」

 言えないのは守秘義務がある為だ。ハンガーもその考えに至ったのか。

「分かりました何も聞きません。此方も全力で当たらせて貰います」

「頼んだ」

「はい!」

 

 

 ――――

 

「フレングルか?」

「どうした?きゅうに?」

「モールズの身体が出来上がるまで仕事をしたくてな」

「……そうか、ならばくれてやる」

 仕事に打ち込み焦燥感を紛らわせた、最高スペックの身体は小型の重機並みのパワーを発揮し、思っていた以上の仕事をこなした。

 三ヶ月が過ぎて、更に半年が過ぎた。そして新年度目前にしてモールズの新しい体が届いた。逸る気持ちを抑えられずに乱暴に開封し中を見た。

 少しだけ大人になった姿のモールズがそこに居た、説明書きには、世代を先取りした技術が多く使われたオーバースペック体と記載がされていた。

 中でもデカデカと書かれていたのは、脊髄パワーアシスト、強化手術の代表格だがアンドロイドには搭載不可能だった代物が使われ、どれだけ凄いことかを長文で書かれていた。

 モールズの記憶媒体を挿し込んだ。

「あれ?身体が動くぞ!?しかも軽い!」

「ああ、良かったよ頑張った甲斐があった」

「頑張った?おいJ今は何年だ?」

「モールズがスリープに入って2年半が経ったよ」

「……なぁ、そんな短期間でウチの体を新調するってさぁ」

「……機械の身体になったよ、お陰で腰痛なんかとオサラバだ」

「……全くの大馬鹿野郎だ!!ウチなんかの為にそんな体になっちまってよ!!」

「……ああ」

「見捨てろよ!ウチはアンドロイドだ!何時かはこうなる運命なんだよ!!記憶媒体の寿命だってあるんだ!」

「……ああ」

「ウチにそんな価値なんて無いんだよ!!」

「お前に無くても、俺にはあるから」

「!」

「だから結婚を申し出たんだ」

「……」

「今度は俺がモールズを守ってやる、心配すんな」

「うぅ……うわあああああぁぁぁぁ!!」

「今度は俺が胸を――グッハァ!?」

 モールズの強烈なアッパーがJを襲う。

「ウチが泣くわけ無いだろ、馬鹿が!」

「ひっ、酷い!!せっかく決めようとしたのに!」

「お前なぁウチがそんなタマじゃねぇ事は知ってんだろ?」

「……そうだったな」

「まっ!やっちまったもんはしょうがないな、これからもよろしくな相棒!」

「ああ、此方こそよろしくな相棒」

 モールズとJは拳を合わせた。

 

Fin

 

〜余談〜

 

 脊髄パワーアシストと言うのは言葉通り脊髄に取り付ける機械帯の事でナノ針を通して電気信号を送り身体を動かす物なんですがその際に体のリミッターを解除出来る物がパワーアシストと呼ばれるんですアンドロイドは当然解除出来る物が殆どありませんでは何故今回搭載されたかと言うと人工臓器が人間のモノに近いから搭載できたんです!分かりますか?この凄さが!人類は神の領域に届きそうなんですよ!まだまだ不明なことが多いですがパワーアシストが搭載出来る程アンドロイドが人間に近付いた証拠なんです!凄いですよねこれが実現出来たのはある人のお蔭なんですが一体誰なんでしょうか?興味が尽きませんねそんなことより他にも革新的な技術がありましてそれらにより稼働効率が上がりましてこれまでは人間の約2倍の食料が必要でしたが1.3倍にまで減ったんですよ!これにより各器官の効率化が可能となったんですそれだけ純度の高い燃料精製が可能となれば性能も上げられます何が言いたいかと言えばアンドロイドの体に脳を移植出来る様になるって事です!植物状態の人間でもアンドロイドの体に変えればまた動いて喋る事ができるかもしれませんアンドロイドの発展は人類の発展でもありますからもっと技術発展して欲しい所です長々と書きましたがモールズさんは現状世界最強のアンドロイドですそれは自信を持って言えますが壊せない訳ではないですそこはご注意を因みに三億で足りるのかと言う疑問は問題ないと答えますえぇご安心ください赤字分はすぐに埋められます!それだけの黒字が見込める大仕事でした何よりもこだわったのが小型化です材料費削減もありますが新技術はどうしても大きくなりますからその分だけ成長させました後装甲に関してですが心臓部に重要パーツが密集する関係上防御面を増加させて対応しました理論上携帯武器での破壊は不可能に近いですが注意して下さいそれと運動性能ですが言わずもがなですねかなり向上していますそのせいでスキンは消耗品扱いになるかもしれませんが許容範囲でしょう詳しく観察したいですが仕事の兼ね合いがあり残念です新技術で思い出しましたが近々空気中の物質を取り込んでエネルギー補助にする機関の事を耳にしました!まるで霞を食べる仙人みたいですよね!是非とも上手く行って欲しい所ですが障害もあるようです有害物質の分離や消費エネルギーの増加等実用化まで気が遠くなる年月がかかるそうですそれに何度も予算が止められそうになったりして本当に迷惑な話ですよね人類の進化に必要な技術だというのに!そう言えば人の人体に限りなく近いアンドロイドの開発が行われるそうですそこでは自己修復機能も備えるとか聞いてビックリしましたよもう人じゃんって!一体どうするんでしょうね?楽しみが尽きないって幸せだなぁとつくづく思いますね例えば骨伝導イヤホンって知ってますか?アレの応用で地面に埋まっている人を発見する技術が注目されていますもし実現可能なら地震予測にも繋がる技術になるでしょうね他にも使い道がある素敵な技術です是非完成してアンドロイドにも搭載出来たらと思うともっと研究費用を出せって言いたくなりますねそれと都市伝説なんですが脳以外全てアンドロイドの身体って人がいるみたいで面白いですよねもし実在したらバラしてみたいです。

 書き忘れていましたが今回使用されたのはトライト鋼電磁板というのものですこれは軽量チタンよりも軽くて強度もあるスグレモノですが量産体制が整っていない段階での使用となりますのでかなりの高額となりましたしかし今の内に加工のノウハウを蓄積出来たのはアドバンテージで他社との差が広がりましたコレを駆使したアンドロイド作製も宣伝すれば自分達の技術力の高さを示せますし安心感が違いますよね頼めば出来るって当たり前ですけど難しいですね常に一定以上のパフォーマンスを発揮しなければいけないのは商売になりませんからですからマニュアルを作成し作業の効率化の為の設備だったり色々と勉強になりましたこの経験を活かして次に繋いでっといえ違いましたねトライト鋼電磁板の話ですよねこれは配合等は企業秘密で知りませんが熱した素材に電磁波を当てながら伸ばしていくんです原理は単純ですが今まで出来なかった代物ですから相当研究を重ねて商品にしたとつくづく思えるような製品でした正直加工に殆どの日数を割いてましてその硬さを実感しましただからこそ言えます現在のモールズさんは今現在最強のアンドロイドだと自負しますそしてありがとうございました御二人の益々のご活躍を応援致します。

 

終わり




ご愛読ありがとうございました!

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