異世界から帰還した元勇者、モブウマ娘を育成します!   作:越路遼介

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第十二話 グランドライブ始動

廉二郎、たづな、そしてライトハローの話は、まだ続いていた。

「それでライトハローさん、グランドライブ開催が学園とURAから許されたとして私は何を協力すれば。楽曲を作って欲しいと言うのなら学園にそれを要請してくれれば」

「はい、楽曲を作って欲しいと言うのが一番のお願いです。それとグランドライブが終わるまでトレセン学園側の担当者となって下されたらと思います。やはり音楽に通じている方なら私としても心強いですから」

「ふむ…」

「ライトハローさん、それは改めて学園に要請していただけますか?」

たづなが言った。

「はい、それはもちろん」

「それとこの話…ウマ娘にも協力者が必要ですね」

「そうですね…。と、駿川さんもグランドライブ開催に賛成と?」

“も”と言っていることは廉二郎の気持ちも決まっていると言うことだ。

 

「ええ、誰も言いませんが、やはり一着から三着にならないとファンに感謝の想いを歌で伝えられないと言うのはおかしいですから。学生時代の氷室先生と同じく、ずっと勝てないウマ娘を応援しているファンはいます。その方たちにも応えるいい機会と思います。理事長も賛成するかと」

 

「現在学園に在籍しているウマ娘たちで協力者にしたらどうかと思う子はいます」

どうやらライトハローは事前に調べてきたようだ。廉二郎も、たづなが『ウマ娘にも協力者が必要』が言った時点で見当はつけているが

「生徒会に味方してもらうことは必要不可欠です。そして、ウマドル、ロコドル、ウマチューバーとして強い影響力を持つスマートファルコンさん、ホッコータルマエさん、カレンチャンさん」

廉二郎の見当と一致した。

 

「彼女らに協力してもらい、グランドライブのことを各自が持つチャンネルで喧伝してもらえるよう…」

「いえ、それだけでは足りません。過去のグランドライブは一年に一回行っていたことは先に言った通りですが、その前に告知を兼ねたミニライブを三ヶ月に一度開催しています。ウマ娘たちに、そのライブを行ってもらう必要があります」

「確かにそうです。三ヶ月に一度催していました」

ライトハローの言葉に頷くたづな

「生徒会がそれに出るのは難しい…。ファルコン、カレンチャン、ホッコータルマエはトゥインクルシリーズに臨むから負担が大きい。協力者を増やさないと…」

話に熱がこもってきたが、そろそろ十九時になる。今回のところは廉二郎が先の三名のウマ娘を味方につけること、たづなは理事長を説得と言う話に落ち着いた。廉二郎とライトハローは業務用のスマホで連絡先を交換、ライトハローは校門からタクシーで帰宅した。

 

 

翌朝、廉二郎が職員室に出勤すると机の上にメモが置かれてあった。

『理事長室に来られたし』

すぐに理事長室に向かい、ドアをノック

「氷室です」

「入れ」

秋川理事長とたづながそこにいた。

「仔細はたづなから聞いた。あの三曲から妙な縁に繋がったものだ」

「はい」

「グランドライブの開催は私も賛成だ」

「よかった…」

胸を撫でおろした廉二郎だった。

「すでに知っているだろうがライトハローは我が学園のOGでな。戦績は振るわなかったが、いい根性していた。何より性根が真っすぐで頑張り屋だ。よいビジネスパートナーとなるであろう」

「では…」

「うむ、ライトハローは学園の担当者に氷室先生を指名したそうだが、どうする。私は了承しても良いと思っているが」

「ぜひ、やらせていただけたらと思います。グランドライブ開催まで粉骨砕身務めるつもりです」

 

再び理事長室の扉がノックされた。

「長谷川です」

「入れ」

「長谷川トレーナー」

廉二郎と同期のトレーナー、歳は廉二郎より二つ上の男性トレーナーだ。スマートファルコン、ホッコータルマエ、そしてカレンチャンが属するチーム『アンタレス』を率いる。ライトハローが三人同じチームに属していると知っていたかは不明だが彼女たちの勧誘に際して窓口が一つと言うのは手間が省けて良い。

 

「長谷川トレーナー、実は昨日〇〇コーポレーションのイベントプロデューサーが当学園を訪れて…」

たづなの説明を聞く長谷川、そして

「アンタレスに属するスマートファルコン、ホッコータルマエ、カレンチャンに協力してもらいたいのです」

「それは理事長命令ですか」

「否、彼女らはトゥインクルシリーズに挑戦する。君から見て助力は困難と判断したのなら断ってくれてかまわない」

「この場で即答は出来かねます。彼女らと相談してから回答いたします」

「分かった。氷室先生もそろそろ一時限目の支度があるだろう。退室して良いぞ」

「はい」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「氷室先生の授業って素晴らしいです!すごく分かりやすい!」

「実家の両親と兄も私が英語話せるようになって、ものすごく喜んでくれたんです!」

午前中の授業を終えるとウマ娘たちが英語で感謝の言葉をくれた。学園に直談判した高等部三年の生徒たちだ。成り行きで英語教師となった廉二郎だが嬉しい称賛だった。教師冥利に尽きる話だろう。

 

「だけど、氷室先生って英語以外にも外国語話せるのですよね。アクア先輩とアニー先輩、七ヶ国語を話せるそうだし」

「氷室先生、英語に目処が立ったら、他の外国語を私たちに教えること出来ませんか?」

「時間割に『英語』と記されてあるから、それはどうだろうなぁ…。教頭先生に相談して許可を得られたら君たちの意見も取り入れて、俺が教えられる外国語は教えてあげたいと思うよ」

「「やったぁ!」」

「それにしても、みんな勉強好きだな。俺が君たちくらいの時は遊んでばかりだったのに。ははは」

 

 

教室から職員室に戻る途中のこと。

「氷室先生」

「ん、スマートファルコン」

「トレーナーからグランドライブの話は聞きました。私、やります」

「そうか!あ、いや、返事は長谷川さんから聞かないと」

「それでその…お願いがあって…」

「ん?」

「私に新曲を作って欲しいんです!私ずっとカヴァーなので自分の歌が欲しくて!」

「な、何の話かな?」(のワの)

 

「ファル子さん、なに抜け駆けしているのですか!」

「げっ、タルマエちゃん…」

「氷室先生!苫小牧を元気にする歌を私に」

「二人とも、やっていること同じじゃないのよ!」

「「カレンチャン…」」

「いや、言っていること分からないのだが?俺に曲を作れとは何の話?」

「「「…………」」」

ため息を吐くカレンチャンが前に出て

「あの、もしかして学園のウマ娘たちが知らないと思っています?『BLOW my GALE』『彩Phantasia』『BLAZE』を作詞作曲したのが誰かってこと」

「……」

「カレンたちは来年からクラシックです。トゥインクルシリーズに導入される、その新曲のレッスンはしているのです。で、歌詞カードを見れば作詞作曲氷室廉二郎と書いてあります。サトウヒロシやスズキイチローなら誤魔化せるでしょうけど、この無駄にかっこいい名前、そういないでしょ」

「無駄は余計だよ」

「うん、氷室先生は英語教師だけではなく音楽家としても素晴らしいと思います。というわけで、このカレンに新曲…」

「ドサクサに紛れて何を言っているの。人のこと言えないじゃない!」

と、スマートファルコンがカレンチャンに食って掛かろうとした時

「こらー!」

「「げっ、トレーナー」」

 

「はあはあ、や、休み時間にグランドライブのこと、は、話したら、こいつら部室から脱兎のごとく出て行きやがって…」

呼吸の荒い長谷川、急いで追いかけてきたようだ。

「長谷川さん、彼女たち、グランドライブに前向きなようだけど…」

「ああ、だけど同時に目を輝かせて『氷室先生に新曲を作ってもらえる!』と勝手に勘違いして出て行ったんだよ」

「うーん、バレているんじゃ仕方ないけれど君たちがトレセン学園在学中は無理かなぁ…。トレーナーならともかく教師が一生徒を贔屓するわけにはいかないから」

「「「えええ~」」」

 

「だからトレセン学園を卒業した後も、君たちがウマドル、ロコドル、そしてウマチューバーとして活動を続けるつもりなら、その時は楽曲を提供しよう。それにグランドライブに備えて楽曲は出来るだけ多く作るつもりだから俺が作った曲を君たちが歌うことは変わらない。そうしているうち、俺にどういう曲を作ってもらいたいかイメージも湧くだろう、それでどうかな」

三人は目を輝かせて

「「「はいっ、それでいいですっ!」」」

「おいおい、いいのか氷室、そんな約束をして」

「ええ、そのころには私も彼女たちにどんな歌が合うのか見極められるでしょうから、むしろ作らせてほしいくらいですよ」

「まあ、お前がそれでいいのなら…。とにかくあとでたづなさんを通して今朝の話、了承の旨を伝えるよ」

「分かった。みんな、ありがとうな」

「いえ、いい機会をいただけて嬉しいです。ただ…私たち三人だけでは告知ライブまで回せないと思います」

スマートファルコンが言うとホッコータルマエとカレンチャンも頷き

「私たちの方でも勧誘しますが、先生の方もお願いします」

「ふふっ、何人かアテもありますからね。任せて下さい」

カリスマウマチューバーのカレンチャンが言うと心強い。

「ああ、頼んだよ」

 

その日の放課後、廉二郎は改めてライトハローに連絡を入れた。先の三人の協力を取り付けたと。すると

『よかった!では早速、最初の告知ライブの日程ですが…』

その後もライトハローとライブの場所と日程について話し合った。そして

 

『先輩に、あの引退レースの日観客席最前列で大きな声援を送っていた人がビジネスパートナーになったと知らせたら喜んでいました。氷室さんのこと先輩は覚えていましたよ。いつも勝てない私に声援を送ってくれた大切なファンの人だと』

「本当ですか、それは嬉しいですね」

『グランドライブ、絶対に観に行くと言ってくれました』

「じゃ、じゃあ、その時にサインを下さいと…」

ライトハローは廉二郎の言葉に笑ったものの『必ず伝えます』と言い、その後に通話を切った。廉二郎は思った。

「美しい声だ…」

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