遊星と鬼柳を取り囲む炎のレーンの真上に、レーンと同じ姿の絵が浮かび上がった
「な、何だアレは…!?」
「痣が、反応して…!!」
崖の上にまで移動したクロウは目の前の光景に絶句し、隣にいたユキの右腕の痣は赤く光っていた
「アレは!?」
遊星達を探すラリー達も、空に禍々しく輝く絵を見上げていた
「何が……起きてんだ!?」
その光景はサテライト住民だけでは無く、ネオ童実野シティの住人達…そしてゴドウィンも見ていた
…フォーチュン・カップでの遊星とのデュエルで負傷して姿を眩ましたジャックは、記者のカーリー渚の手を借りて病院を抜け出した
その事を知った治安維持局の狭霧 深影はカーリーの家に殴り込みジャックと合流、そのままヘリコプターでサテライトへ向かう途中、ジャックはヘリコプターの扉を開けて空に浮かぶ絵を見た
「コレは……まさか!!」
「もしかしてニュースでやっていたナスカの消えた地上絵と関係が?」
ジャックと一緒になってヘリコプターから顔を出したカーリーは、テレビのニュースを思い出していた
「ヘリをもっと降下させろ!!」
「はい!!」
ジャックの指示に操縦士はどんどんヘリコプターを降下させていき、クロウとユキの真上を飛ぶ
「アレは…!?」
「ジャック!?」
「クロウに十六夜 ユキ!?
(それに、アレは…遊星!?)」
ジャックは炎の中の遊星を見つけ、操縦士に指示を出した
「もっと接近しろ、アイツへ!!」
「これ以上は墜落の恐れが!!」
「アトラス様、危険です!!」
「ジャック、どうしちゃったの!?」
「言う通りにしろ!!」
深影やカーリーの話に耳を貸さず、ジャックは操縦士に指示を出した
操縦士はその指示に従い、さらにヘリを降下させて遊星達の真上に来た
「あれは……ジャック!!」
「お前は、鬼柳…!?」
ジャックは信じられないモノを見る顔で、目の前にいる鬼柳の顔を見た
「限界です、上昇します!!」
「ヒャーーハハハハハ!!
笑えるじゃねぇか!!
ジャック・アトラスに、クロウ!!
そして、遊星!!」
操縦士がヘリコプターを上昇させる中、鬼柳は狂気的な声で笑い出した
「鬼柳…」
「面白ぇ、まさかこの3人が集まるとはなぁ!!
これも黄泉のお導きってか?
オレは貴様等を絶対に許さねぇ……この炎は、オレの復讐の劫火だ!!」
「鬼柳、あの時の事は……」
「忘れるわけないよな!!
オレを裏切り、死に追い詰めた」
鬼柳の一言に、遊星・ジャック・クロウはピクリと反応した
「鬼柳……」
崖の上で顔色を変えたクロウを見て、意を決したユキはそっと息を吸った
「…クロウさん、あの男はあなた達の何なのか…聞いても良いですか……?」
「……アイツは、鬼柳 京介は…オレや遊星・ジャックの仲間だったんだ
…『チーム・サティスファクション』の、リーダーだったんだよ」
「チーム・サティスファクション!?」
クロウから出た単語に、ユキは目を見開いた
「(チーム・サティスファクション……噂で聞いた事が有る
かつてサテライトを統一したデュエルギャングチーム…でも、まさかこの人達がそうだったなんて……)
……そのチーム、解散したって噂を聞いたんですが…」
「ああ…アイツは今、その事を言ってるんだ……」
そう言ったクロウの声のトーンは、表情と同じく暗かった
「この炎はオレの怒りと同じだ!!
勝敗を決するまでは消える事はない!!」
「鬼柳!!」
「そろそろ始めようじゃねぇか、シグナーとダークシグナーの……いや、かつての仲間同士の命を賭けた戦いを!!」
鬼柳は遊星の元に向かって、D-ホイールを走らせて遊星を横切る
「行くぜ遊星!!」
鬼柳は方向転換してスタート地点に着いた
「鬼柳、何故なんだ!?
どうしてお前がダークシグナーなんだ!?」
その問いの返事を貰えなかった遊星は目を閉じ、スタート地点に着いた
「─フィールド魔法『スピードワールド』!!
セットオン!!」
【デュエルモードON オートパイロット スタンバイ】
「本気なんだな、鬼柳……」
「これでフィールドはスピードワールドに支配された
発動できる魔法はSpのみ!!
ライディングデュエル、楽しもうじゃねぇか!!」
「あのデュエルの衝撃が現実となる、命を削るデュエルか?」
「そうよ…死ぬほどの思いを遊星、お前に味あわせてやるぜ!!」
(アレを、やるっていうの……)
ユキは以前体験した、ダークシグナーと化した氷室とのデュエルを思い返していた
「「─
ジャックはヘリコプターのモニターで、クロウとユキはD-ホイールの画面でデュエルの映像を映した
「鬼柳……」
苦々しい顔で呟いたクロウの隣で、ユキは真剣な顔をしていた
「クロウさん……いざとなったら、私の後ろに隠れて下さい」
「え…?」
「いざという時は…私の力でこのデュエルを強制終了させます…」
「お前の、力…?」
そう言ったユキに、言葉の意味を理解出来なかったクロウは戸惑っていた
「さぁ、そろそろ行こうじゃねーか
チーム・サティスファクションの復活だ!!」
鬼柳は盛大に笑いながら、デュエルを始めた
……序盤から鬼柳は攻めの体制を崩さずに、遊星にダメージを与えていく
遊星も『ジャンク・ウォリアー』を召喚して攻撃するが、鬼柳の永続罠カード『デプス・アミュレット』で無効化されていた
……そして次のターン、鬼柳のフィールドにチューナー以外のモンスターと、ダークチューナーモンスター『ナイトメア・ハンド』が揃った
「レベル2のインフェルニティ・ドワーフに、レベル10 ダークチューナー ナイトメア・ハンドをダークチューニング!!
─漆黒の帳降りし時 冥府の瞳は開かれる 舞い降りろ闇よ!!
ダークシンクロ!!」
「何が来る!?」
「クロウさん、下がっててください!!」
次に出て来るモンスターを察したユキは、クロウを自分の後ろに引っ張った
「ぉわっ!!
な、何だ…!?」
「来ます…!!」
「来る?
何がだよ?」
「ダークシグナーのモンスター…ダークシンクロモンスターが…!!」
「─出でよ『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」
フィールドに体中に目を持つ黒いドラゴンが現れた
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン
☆-8 闇属性 ドラゴン族 ATK 3000 DEF 2500
現れたダークシンクロモンスターに、遊星達は戸惑いを隠せずにいた
「レベル-8 攻撃力 3000!!
鬼柳、これがお前のエースモンスターなのか!?」
「何なんだ……こんなモンスター、かつての鬼柳のデッキにはなかったぞ!?」
「…ダークシンクロモンスターは、ダークシグナーしか持っていないカードのハズ…昔の彼のデッキに無いのは当たり前だと思います」
ユキの後ろから出て叫ぶクロウに、ユキは右腕を押さえながら言った
(痣が…更に反応を…!!)
「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでジャンク・シンクロンを攻撃!!」
「─罠カードオープン『くず鉄のかかし』!!」
「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動!!
このカードが表側表示で存在する時、墓地の闇属性モンスターの効果を得る!!」
「何っ!?」
「オレは墓地のインフェルニティ・ビーストの効果を得る!
手札 0で攻撃する時、相手は魔法・罠カードを発動できない!」
「手札 0…これを狙っていたのか!?」
遊星のフィールドで発動しかけたくず鉄のかかしが、セットした状態に戻された
「行けぇワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!!
─インフィニティ・サイト・ストリーム!!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの攻撃が、ジャンク・ウォリアーを破壊した
「ぐあああーっ!!」
遊星 LP 3300→2600
「炎に叩き込まれちまいな遊星!!」
「「遊星っ!!」」
「くっ…!!」
ジャックとクロウが同時に叫び、D-ホイールのデュエルディスクを既に起動させているユキは反射的にカードを構えるが、遊星は炎に入る手前で体制を立て直した
「そうこなくっちゃな、遊星……まだまだくたばらせねぇぜ、もっと!!
もっと死ぬほどの苦しみを味あわせてやるぜ!!」
「鬼柳……」
「ターンエンドだ」
「……オレのターン!!
オレは『ロックストーン・ウォリアー』を守備表示で召喚!!」
ロックストーン・ウォリアー
☆4 地属性 岩石族 ATK 1800 DEF 1600
「守備モンスターで茶を濁すか?」
「カードを伏せてターンエンド!」
「デプス・アミュレットは発動後3回目の相手ターンのエンドフェイズに破壊される」
「(手札を墓地に送る事で、戦闘を無効にする罠……だが手札を必要としない奴の戦術には、最早用済み)
ここまでの戦術……鬼柳、かつてのお前とは全く違う!!
いや、全てが変わってしまった!!」
「お前のおかげでな」
「どうして、どうしてオレ達が…鬼柳……」
その後も鬼柳はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンで攻め続け、遊星は耐え続けていた
そこに遊星達を探していたラリー達が、クロウとユキを見つけて走ってきた
「クロウ・ユキ!!」
「ラリーくん…!?」
「お前等…」
「遊星はどこ?」
ラリーが聞くと、クロウが炎のフィールドを指差す
遊星はスピードを上げ、鬼柳に追いつこうとしていた
「なぁ、どうして遊星の奴、ライディングデュエルを?」
「相手は誰なんだ?」
「……チーム・サティスファクション リーダー、鬼柳 京介」
「あ、あの鬼柳 京介か!?」
「クロウ・ユキ、一体何が起こってんだよ!?」
「オレにも分からねぇ…ただはっきり言えるのは、あの炎のコースがソリッドヴィジョンじゃない事
そして今…遊星が挑んでるのは正真正銘、命賭けのデュエルって事だ!!」
「そしてもう1つ…鬼柳 京介、彼は私達が倒さなければならない敵になっているという事…」
「どうした どうした、D-ホイールが悲鳴をあげてるぜ!!」
遊星のD-ホイールは、激しい衝撃の連続でガタガタと音を立て始めていた
「くっ……耐えてくれ!!
このデュエルが決着するまでは!!」
……次のターン、遊星は自身のエース『スターダスト・ドラゴン』を召喚した
素材となった『ハイパー・シンクロン』の効果で攻撃力を上げたスターダストが、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを攻撃し、鬼柳にダメージを与えた
鬼柳 LP 4000→3700
スターダスト・ドラゴン
☆8 風属性 ドラゴン族 ATK 2500 DEF 2000
だが鬼柳のワンハンドレッド・アイ・ドラゴンは、鬼柳のハンドレスコンボで破壊されなかった
「いいダメージだ遊星!!
もっと命の削り合いを楽しもうじゃねーか!!」
「スターダスト・ドラゴンが戦闘ダメージを与えた事により、永続罠『希望のかけら』を発動する!!
デッキからカードを1枚ドローし、それが罠カードだった場合、希望のかけらを代償として発動できる…このドローに賭ける!!」
遊星はデッキの上に指を滑らせ、勢いよくカードを引いた
「…来た!!
オレのコンボは光差す一筋の道となる!!
オレは希望のかけらを破壊しこのカードを発動する!!
─罠カード『奇跡の軌跡』発動!!
お前はカードを1枚ドローし、オレのスターダストは攻撃力を1000ポイントアップして、このターン2回目の攻撃が出来る!!
さぁ、ドローしろ鬼柳!!」
「おのれぇ……!!」
鬼柳は忌々しそうに、カードをドローした
スターダスト・ドラゴン ATK 3300→4300
「よし、上手いぞ!!
ハンドレスコンボは手札が0の時しか発動できない!!」
「手札が有る今なら、ハンドレスコンボは発動出来ない!!」
「行け!!
2回目のバトル!!
響け、シューティング・ソニック!!」
スターダストの一撃が、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを撃ち破った
鬼柳 LP 3700→2400
「やったぁ!!」
「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを破壊したぞ!!
これで奴のハンドレスコンボを完全に切り崩した!!」
「……ん?」
ラリーやクロウが喜ぶ隣で、ユキはモニターの鬼柳の表情に違和感を覚えた
(今……?)
「…ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが破壊された時、デッキからカードを1枚選択し手札に加える」
鬼柳はデッキから、1枚のカードを手札に加えた
「─これでトドメだ、罠発動『シンクロ・デストラクター』!!
自分のシンクロモンスターが戦闘で破壊したモンスターの攻撃力の半分を相手に与え、それがシンクロモンスターだった場合、さらに同じ数値のダメージを与える!!」
「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの攻撃力の半分は1500!
その2回分、3000のダメージを与えれば……!!」
「遊星の勝ちだ!!」
「……違う」
ラリー達が喜んでいる中、ユキは険しい表情を崩していなかった
「どうしたんだ、ユキ…?」
「さっき…ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが破壊された時……あの人、笑ってた
まるで、こうなる事を分かっていたように……」
「おのれぇ遊星……なーんてな
─罠発動『ダメージ・トランスレーション』!!
コイツはカード効果によるダメージを半減させる!」
スターダストの連続攻撃を、鬼柳は受け切った
鬼柳 LP 2400→1650→900
「いいダメージだぜ、遊星よぉ!!」
ダメージを受けた鬼柳は、楽しそうに笑っていた
「(次のターン、オレのスピードカウンターは8…『Sp-ファイナル・アタック』を発動すれば、スターダストの攻撃力は一気に2倍になる)
ターンエン「このエンドフェイズにダメージ・トランスレーションのもう一つの効果が発動する!!
エンドフェイズ時、カード効果によるダメージを受けた回数分『ゴースト・トークン』を特殊召喚する!!」
鬼柳のフィールドに幽霊が2体、特殊召喚された
ゴースト・トークン×2
☆1 闇属性 悪魔族 ATK 0 DEF 0
「何をする気だ!?」
「感謝するぜ!!
てめぇがワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを葬ってくれたおかげで、このダークシグナー 最強カードが俺の手に加えられたんだからな!!」
「何!?」
「ダークシグナー…」
「最強のカード…?」
遊星・ジャック・ユキの3人のシグナーが目を見開く中、鬼柳は愉快そうに叫んだ
「It's showtime!!」
鬼柳の掛け声に合わせて、炎の中に大勢の人が現れた
「こいつ等は……」
「人だ!!
炎の地上絵の中に人がいる!!」
「あいつらは一体……」
「あいつ等、サテライトから消えた連中だ!!」
ラリーとナーヴが首を傾げる隣でクロウは叫んだ
「あの不思議な宗教団体、アレはやっぱりダークシグナーの…!!」
「サテライトの人々が消えていったのは、お前達の仕業だったのか!?」
ユキと遊星の叫びを無視して、鬼柳は自分のターンを始めた
「オレのターン
しかしパワー・バトンの効果でドローはない」
「鬼柳、彼等に何をした!?」
「そいつ等はなぁ…このカードの生贄となるべき連中なんだよ!!」
そう言うと、鬼柳は手札のカードを1枚取った
「生贄だと!?」
「生贄共によって、このカードは神の力を得る!!
オレは2体のゴースト・トークンをリリース!!」
2体のトークンが空に消え丸い臓器のようなものが現れると、ドクンドクンと脈打ち始めた
レーンの中にいた人々が次々と、臓器の中に吸い込まれていった
「何だと!?」
「─人々の魂を生贄に降臨せよ!!
『地縛神
ゴゴゴゴ…と強い地震が起きて地面から巨大な巨人が姿を現し、ジャック達を乗せたヘリコプターはその場から離脱する
「バ、バカな……!!」
「そ、そんな……!!」
クロウとユキは、目の前の巨人を見て絶句していた
地縛神
☆10 闇属性 悪魔族 ATK 3000 DEF 2500
「こんな…巨大なモンスターが!?」
固まっている遊星達を見て、鬼柳はずっと笑っていた
「遊星!!
亡者の呪いをその身でとくと味わうがいい!!
我が神、地縛神
宿敵シグナーに裁きの鉄槌を振り下ろせ!!」
遊星はD-ホイールがダメージを受けているため、うまくバランスがとれずにいた
「スターダスト!!」
スターダスト・ドラゴンが地縛神
「何!?
…くず鉄のかかし!!」
「バカめ!!
地縛神を前にそんな小細工が通用するとでも思っているのか!?」
「くそ!!
モンスターでも罠でも防御できないのか!!」
地縛神の手が遊星に迫っていく中、限界が来た遊星のD-ホイールが大破し遊星は地面に投げ出されてしまった
《遊星っ!!》
「─お願い、『ボレアス・ガスタ・ドラゴン』!!」
ユキのD-ホイールで召喚されたボレアス・ガスタ・ドラゴンが、ユキを乗せて遊星の方へ一直線に飛んでいく
そして遊星とユキの痣は、闘いが終わった事を示すように光を消した
……同じ頃、シティにいる龍可とアキの痣の光が消えた
「ああっ!!
痣が消えてく!!
遊星達に何かあったの!?」
龍亜は心配そうに必死になっていた
「分かんない……でも、なんか……」
「遊星に何が……?」
シティにいる龍可とアキは、同じ事を考えていた
「遊星さん!!
遊星さん、しっかりしてください!!
遊星さんっ!!」
「敗北寸前でデュエルが中断するとは…D-ホイールの性能の悪さに救われたな!!」
大破したD-ホイールの側で、遊星は意識を飛ばしていた
「ハハハハ!!
苦しめ 怯えろ!!
恐怖に支配され、戦慄の劫火に身を焼かれる生き地獄!!
かつてこのオレが味わった辛酸を貴様も味わうがいい!!」
鬼柳がカードを掲げると地縛神
「遊星・ユキ!!」
ラリー達が走って来る中、遊星を抱き起こしたユキは鬼柳を睨み付けた
「……アンタが遊星さん達の仲間だったなんて、とても信じられないわ…」
「オレは生まれ変わったんだ、もうそいつ等の知ってるオレじゃねぇ!!」
「そうね、それは言えてるわ
遊星さん達が仲間と慕っていた人じゃ無いわ……アンタ、人間のクズね」
言い合いしている内にラリー達は遊星の周りに集まり、クロウはD-ホイールで遊星に走り寄った
「ヒャハハハハハ!!
「人間のクズ」か!!
─…どの口が言えるんだ、堕天の魔女様がよぉ!!」
かつての異名を出されてユキは睨みを更に鋭くし、ラリー達は驚きに目を見開いた
「アンタ…!!」
「魔女、てめぇには別の相手が用意されてある
そいつに殺される為に、首を洗って待ってるんだな!!」
鬼柳はそう言い残し、その場を去って行った
強く拳を握り締めたユキと何も言えなくなったラリー達は、遊星の呻き声で我に帰った
「しっかりしろ、大丈夫か?」
ナーヴが遊星を仰向けにすると、右横腹に尖った鉄筋が刺さっていた
「ゆ、遊星……!!」
「触るな!!
早く乗せろ!!」
「クロウ!」
「マーサの所に連れて行く!!
ユキ、一緒に来い!!」
「ぇ……でも、私は…」
「つべこべ言うな、話は後だ!!」
「は、はい!!」
クロウに叱咤されたユキは、クロウのDーホイールに遊星を乗せた
「ハウスか?」
「ああ、お前等は後から来い!!
ユキ、しっかりついて来いよ!!」
「は、はい!!」
クロウとユキは、遊星を乗せたままD-ホイールを発進させた
ヘリコプターを降ろせとジャックは操縦士に言うが、深影に諭され渋々と帰って行った
「なぁ、どうする?」
「どうもこうもない、オレ達もハウスに急ごうぜ」
「待ってよ!!」
ブリッツが言い、ナーヴとタカが走り出すとラリーがみんなを止めた
「コレを運ばなきゃ」
そう言ってラリーは、大破した遊星のD-ホイールを指差した
「お、おいラリー!!
まさかそいつをハウスまで押して行く気か?
この先には盗賊みたいな連中がうようよいるんだぜ!?
そんなもん押して歩いたら…」
「だったら尚更、こんな所には置いてけないよ!
忘れたのかよ?
これはオレ達の大切な宝物だろ!!」
ラリーの説教にタカ達は戸惑ったが、強く頷いた
「そうだな…オレ達と遊星の絆
皆で手分けして使えそうな部品を拾い集めて、皆で遊星のトコに持ち寄ったんだもんなぁ」
「ああ……完成した時は嬉しかったなぁ」
「ああ」
「みんなでやり遂げたんだもんなぁ!!」
「運ぼうぜ!!」
「ああ、オレ達の友情の証」
「絆をな!!」
「ありがとう!」
ラリー達は遊星のD-ホイールを起こして、押しながら『マーサハウス』へ歩き出した
…一方、クロウとユキは一足先にマーサハウスに辿り着いた
「ここは…?」
「オレ達がガキの頃にいた施設だ…マーサ マーサ!!
オレだ!!
早くここを開けてくれ、早く!!」
D-ホイールを降りたクロウは、ダンダンダンッと扉を乱暴に連打した
「誰だい?
こんな夜中に」
蝋燭を片手に扉を開けて出て来たのは、小太りの女性だった
「…クロウ?
それに、そっちは誰だい?」
女性は、初めて見るユキの顔に首を傾げていた
「私の事はどうでもいいです!!
ここに外科医の先生はいらっしゃらないですか!?」
「ちょっと、落ち着きな!!
どうしたんだい?」
「マーサ、大変なんだ!!」
「ん……遊星!?
どうしたんだい、一体!?」
クロウに担がれてグッタリとしている遊星を見て、マーサは目を見開いた
「脇腹に鉄骨が突き刺さっているんです…!!」
蝋燭の火を近づけて明るくして、マーサは遊星の脇腹を観た
「これは酷い!!
誰か、力を貸しておくれ!!
遊星を中に運ぶんだ!!
しっかりおし、必ず助けてあげるからね遊星!!」
クロウにマーサ・ユキにハウスの人達が協力して遊星を中へ運び込み、医者のシュミットが緊急の手術を始めた
…雑賀の協力でD-ホイールを送り届けたラリー達も、無事ではないがマーサハウスに到着した
ラリー達は4人共、Dーホイールの代わりとして身ぐるみを全部失っていた
遊星は手術中で扉の前で、全員が無事に手術が終わることを祈っていた
(あんなのが相手だなんて……)