遊戯王5D´s  絆の物語   作:なおにぃ

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レベル 15 降臨した2体の地縛神

ダークシグナーとなった鬼柳とのデュエルで負傷した遊星の手術はまだ続いており、体の中に刺さっている破片を医者のシュミットが取り除いていた

 

ラリー達は曇った表情で、手術が無事に終わる事を祈り続けていた

 

「遊星……」

 

 

 

 

…しばらくして、手術をしていた奥の部屋からマーサとシュミットが出てきた

 

「シュミット先生、遊星は!?」

 

クロウを先頭に、ラリー達は慌てて立ち上がった

 

「まったく、あの子は強運だよ」

 

「内臓や血管はどこも傷付いてない、傷口が塞がれば問題はない」

 

シュミットに言われて、クロウ達はホッとしたように脱力した

 

「…はぁ……はぁ……」

 

「「「はっくしゅん!!」」」」

 

脱力したラリー・ナーヴ・タカ・ブリッツが、4人同時に盛大なくしゃみをした

 

「どうした?」

 

「ラリーくん達、顔色が……」

 

クロウとユキに続くように、ラリーは鼻水を啜りながら呟いた

 

「何か、熱出てきたみたい……」

 

ラリー達の顔はほんのり赤くなり、ガタガタと震えていた

 

「ちょっと、しっかりおし!!

クロウ…と、そこのお嬢ちゃん、手伝っておくれ!!」

 

「お、おう」

 

「は、はい!!」

 

熱を出したラリー達は、すぐにベッドに寝かされ、そのまま看病はユキが担当した

 

 

 

 

 

「…毛布はそこの押し入れの中に、洗面所は部屋を出て左側の廊下の突き当たりを右に曲がれば有るから、好きに使っておくれ」

 

「ありがとうございます、マーサさん」

 

マーサにテキパキと指示を出されたユキは、濡れタオルをラリー達の額に乗せた

 

「…それで、ユキちゃん…だったかい?」

 

「はい、十六夜 ユキです」

 

「ユキちゃん…遊星は一体どうしたんだい?」

 

「……このサテライトで、とても大きな闘いが始まったんです

遊星さんは、その闘いで……」

 

「負けたのかい?」

 

「…正確に言えば、負けてはいません

けど……あんな人知を遥かに越えた代物に、また立ち向かえるかどうか……」

 

言いにくそうにしているユキを見て、マーサは小さく微笑んだ

 

「そうかい……ありがとうね、それだけ聞けたら充分だよ」

 

「え?」

 

「後は、遊星が起きたら聞くさ

それじゃあ私は遊星を見とくから、ここは頼んだよ」

 

「…はい、マーサさん」

 

微笑んだマーサはそのまま、部屋を出て行った

 

(話を途中で切ってくれた…私が言いにくい事に気付いてくれた……器のとても大きな人……)

 

看病を再開しようとしたユキは、窓ガラスに黒いD-ホイールが動いている姿を見つけた

 

「アレは……」

 

看病をそのままに、ユキは慌てて部屋を飛び出した

 

 

 

 

 

 

「……クロウさん!!」

 

D-ホイールを押してマーサハウスを出て行くクロウを、ユキは後ろから呼び止めた

 

「おぅ、ユキか」

 

「どこへ行かれるんですか?」

 

「ンなもん、決まってるだろ?」

 

クロウの覚悟の決まった眼差しに、ユキは真剣な眼差しを向けた

 

「まさか…ダークシグナーと戦うつもりなんですか…?」

 

「当たり前じゃねぇか!!」

 

「1人じゃ危険です!!

闘うなら、シグナーの私が…!!」

 

「お前はここで、遊星を守ってやってくれねぇか?」

 

「え…?」

 

「また鬼柳が遊星を狙って来ても、遊星は今は闘えねぇ

それにここには、マーサやガキ共がいる

ここの事、お前に任せるわ」

 

「……良いんですか?」

 

「あ?」

 

クロウが不思議そうに顔をしかめた

 

「……あの時、鬼柳って人が言ってた事…聞いてましたよね?

私が…魔女だって事

そんな私にここを任せて「バーカ」

 

クロウの弱めのチョップが、ユキの頭に当たった

 

「前にも言っただろ?

「お前がシティの連中とは違う奴だ」ってよ

それに、遊星がお前を信じてんだ

だからオレもお前を信じてんだよ、分かったか?」

 

「は、はい…」

 

「ぅしっ!!

じゃあ、行って来るぜ!!」

 

「……必ず、帰って来てくださいね」

 

「おう!!」

 

クロウはD-ホイール ブラックバードを発進させてそのままいなくなった

 

 

 

 

 

……その翌日ラリー達は回復し、遊星も日常生活にあまり支障は無いレベルまで回復した

 

その遊星は壊れた倉庫にしまってある、D-ホイールの前にいた

 

「遊星ーっ!!」

 

声に遊星が振り返るとラリー達が駆け寄り、その後ろからユキが恐る恐る歩いて来た

 

「ラリー・ブリッツ…もう大丈夫なのか?」

 

「ああ

お前達こそ、もういいのか?」

 

「ちょっと熱が出ただけさ」

 

「それより、D-ホイールはどうよ?」

 

「パーツが必要なら、いくらでも集めて来るぜ?」

 

「いつもすまない、皆に迷惑をかけて……」

 

遊星は俯きながら、ラリー達を見渡した

 

「水臭ぇな、オレ達は仲間だろ?

何でも言えよ」

 

ブリッツの励ましに、ラリー達も首を縦に振り同意する

 

「……ありがとう

(だが、D-ホイールが直ってもあの鬼柳の強さ……今のオレでは奴には勝てない……)」

 

遊星の手は微かに震え、その震える手を誤魔化すように握りしめながら遊星は離れた所にいるユキを見た

 

「……どうしたんだ?」

 

「いえ、その……」

 

言いにくそうにしているユキを見て、ラリー達は頷き合った

 

「─ユキ…鬼柳 京介に正体バラされた事、気にしてんのか?」

 

ブリッツのストレートな物言いに、ユキはビクリと反応した

 

「「正体」……?

ッまさか…!!」

 

「…鬼柳は、私が堕天の魔女だと知ってました」

 

「そうか…」

 

「……でもあの時、真っ先に遊星を助けに行ったのはユキだったよな!!」

 

「ああ

ドラゴンが本物になって、D-ホイールごと飛んでったのはビビったけどな」

 

「オレ達の看病も、全部ユキだったんだろ?

お前が良い奴だって事は、もう皆知ってるぜ」

 

ラリー・タカ・ナーヴと次々に褒められ、ユキは周りを見渡して戸惑い始めた

 

「だから魔女だろうが何だろうが、気にする事なんか無いんだよ!!」

 

ラリーが纏めて、ブリッツ達は頷いた

 

それを聞いたユキは声を詰まらせ、静かに泣き始めた

 

「っ……ぅぅっ……」

 

「えっ!?

ちょっ!?」

 

「どうしたユキ!?」

 

いきなり泣き出したユキに、遊星やラリー達は焦り始めた

 

そこにタイミングよく、マーサが雑賀とシュミットを連れて外に出て来た

 

「どうした?」

 

「って、どうしたんだいユキちゃん!?

アンタ達、なに女の子泣かせてんだい!?」

 

「オレ達にも訳が分かんねぇんだよ!!」

 

「オレ達、何かおかしな事言っちゃったのかな!?」

 

(どうして……どうしてここの人達は、こんなにも優しいの…?

どうして…こんなにも、私の欲しかった言葉をくれるの…?)

 

遊星達がマーサに叱られている間も、ユキは静かに泣き続けていた

 

……その後ラリー達はパーツ集めに出掛け、遊星はユキを助手にしてD-ホイールの修理に取り掛かった

 

 

 

 

 

……数日後、D-ホイールの修理がほぼ完成に近付いていた遊星とユキの痣が光り出す

 

「これは…!!」

 

「痣が、光って……遊星さん、アレ!!」

 

遊星はユキと一緒にシティの空に浮かぶハチドリの絵を見ていた

 

「アレは……まさか…」

 

「あの時と同じ…誰かがダークシグナーと戦っているんでしょうね…」

 

「一体誰が……?」

 

「それは分かりませんけど…龍可や姉さん、大丈夫でしょうか…?」

 

何も出来ないまま、2人は空を見上げていた

 

 

 

 

 

 

……同時刻、アルカディア・ムーヴメントにいる十六夜 アキの前に現れたモデルのミスティ・ローラが、ダークシグナーの姿でアキにデュエルを挑んでいた

 

アキはデュエルに応じ、2人のデュエルが始まった

 

そして空のハチドリの絵の上から、トカゲの絵が姿を現した

 

 

 

 

 

「……絵が2つ重なってる」

 

「ハチドリと…アレはトカゲだな……」

 

2つになった空の絵を見つめていた遊星とユキを、覚えの有る感覚が襲った

 

「ぐっ…!!

この感覚は……鬼柳が使ったのと同じ!!」

 

「という事は、まさか……っ!!」

 

一瞬、痣を通してユキはある光景を見て、光景を見た直後ユキは足元をふらつかせた

 

「ユキ、大丈夫か!?」

 

「はい……けど、誰が闘っているのかが…一瞬だけ見えました」

 

「…誰だったんだ?」

 

「……姉さんです」

 

「十六夜が?」

 

「はい……それにこの感じ…あの時と同じ……地縛神が召喚されたんでしょうね……」

 

「おそらく、そうだろうな……」

 

「姉さん……」

 

遊星とユキは、また空に浮かぶ2つの絵を見上げた

 

……しばらくして、2つの絵は空から消え去った

 

シティで起きたダークシグナーとの戦いで、アルカディア・ムーヴメントは壊滅

 

総帥 ディヴァインは行方不明になり、中にいた十六夜 アキは駆け付けたジャック・アトラスによって救われたが、意識は戻らなかった

 

……そして、ジャックに協力していた記者のカーリー渚が、ハチドリの痣を持つ新しいダークシグナーとなってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…昨日、ネオドミノシティ西5地区を中心に原因不明の火災が発生しました

現在治安維持局による実況見分が行われていますが、現場付近に居住されていた約120名の人々が行方不明だという未確認の情報も入っております

なお、火災事故中心に位置する高層ビルから救出され、ドミノ病院に搬送された少女は今だ意識不明のままとの事です」

 

ダークシグナーの襲来の翌日、廃墟と化したアルカディア・ムーヴメントの前で、リポーターのアンジェラが生中継で伝えていた

 

ドミノ病院の前に1台の車が止まり、中から2人の中年の男女が降りて来た

 

周りにいる報道陣を無視して、彼等はそのまま中へ入って行った

 

 

 

 

 

……院内の広い病室で、アルカディア・ムーヴメントからジャックに救出されたアキは眠り続けていた

 

その様子をジャックと、アキの協力を取り付けようとアルカディア・ムーヴメントに近付き、逆に囚われていた龍可と龍亜は見つめていた

 

「アキさん……」

 

「あ、ねぇねぇ!!

何か3人のシグナーが同じ場所にいるなんて凄い事じゃないの?」

 

場を和ませようとした龍亜に、龍可は静かに呟いた

 

「そうね……」

 

そこに2人の中年の男女がやって来て泣きそうな眼差しでアキの様子を見つめ続け、しばらくして病室から出てきた医師に男女は駆け寄った

 

「あなた方は?」

 

「あの子の親です」

 

「あの、娘の容態は……?」

 

「それが、手は尽くしているのですが……こちらへ」

 

医師は夫婦を連れて病室へ戻った

 

「今だ何の反応も見られず…正直申しまして、このまま意識が戻らない事も…」

 

「先生……!!」

 

「私達のせいなんです……!!

私達がアキをここまで追い込んで……!!

アキ、お願いよ!!

起きてちょうだい、パパとママを許してちょうだい……!!

ユキの居場所も分からない…もう、どうしたらいいの…!?」

 

アキの母親はベッドに顔を埋めて泣き続け、そんな姿を見た龍可は右腕を押さえながら俯いた

 

「わたし達、同じシグナーなのに何か出来る事は無いのかな……?

アキさんの心に話しかける何か…」

 

「オレ達には、ただ痣を持つという共通点しかない

互いの事は何も分からない、分かり合いたいとも思わんがな……」

 

ジャックの話に龍亜と龍可は顔を見合わせた

 

「だが、あいつ等なら……」

 

ジャックはそう呟き、病室の中へと入って行った

 

 

 

 

 

 

…一方サテライトで遊星はD-ホイールの整備を、雑賀はパソコンでネオ童実野シティの現状を調べていた

 

D-ホイールのエンジン音を聞いた雑賀は、パソコンを片手に遊星に近付く

 

「どうやら、やっと復活したようだな」

 

「ああ、D-ホイールはな……」

 

(そうか、お前自身はまだ…)

 

その答えに状況を察した雑賀は、何も言わずにパソコンを開いた

 

「お前の方はどうだった?」

 

雑賀はパソコンのディスプレイを、遊星に見せた

 

「お前と嬢ちゃんの勘は当たっていたようだ

ダークシグナーがネオ童実野シティに…このビルはアルカディアムーブメントの本部だ」

 

「アルカディア・ムーブメント……じゃあ、十六夜は……」

 

「彼女は病院に運ばれたらしい…」

 

「そうか…」

 

バラバラッと上空からヘリコプターがやって来て、マーサハウスの庭に着地した

 

ヘリコプターの中から、スーツ姿の1人の男が出て来た

 

「─突然失礼する

不動 遊星くんというのは、君か?」

 

「…そうですが、あなたは「遊星さん?」

 

物音を聞いたユキが、ハウスの中から遊星達の方へやって来た

 

「どうかし「ユキ!!」ぇ……」

 

男の声にユキはその場に固まり、目を見開いて男を見ていた

 

「ユキ、無事だったんだな…!!」

 

「どうして…あなたが、ここに…?」

 

震えながら後ろへ数歩下がるユキの後ろから、マーサがやって来た

 

「どちらさんだい?」

 

「ぁ、私は……」

 

「とりあえず立ち話もなんだし、話は中でしようじゃないか」

 

「…はい、失礼します」

 

遊星達はハウスの中に入り、一室で話を始めた

 

「ユキ、この人は……?」

 

「……父です」

 

椅子に座るユキの隣の席に座るユキの父親は軽く会釈した

 

「私はネオ童実野シティで議員をやらせてもらって…いや、アキとユキの父親の十六夜 英雄です」

 

「十六夜達の父親……?

それで一体、オレに何の用が……」

 

「娘を…アキを救って欲しい……」

 

「どういう事?

姉さんの身に、何があったの?」

 

「今アキは昏睡状態で意識が…意識がなく……」

 

「何ですって…?」

 

(やはり、ダークシグナーと闘って…)

 

「親なのに…親だというのに私達ではダメなんだ……!!

あの子を…救ってあげられない……!!」

 

首を横に振る英雄を、ユキは鋭い眼差しで見ていた

 

「まぁ落ち着きなよ」

 

取り乱す英雄の前に、マーサが飲み物を置いた

 

「ちゃんと事情を話さないと、何もわかんないよ」

 

マーサに言われた英雄は、ゆっくりと話し始めた

 

「……妻は、娘達がああなってしまったのは…私達の……いや、私のせいだと言う

だが、私もできる限りの事をしたつもりだ

しかし……」

 

英雄は仕事が忙しくアキとユキとあまり遊ぶ事が出来ず、寂しい思いをさせていた事を話した

 

「そうなのかい?」

 

「はい

私も子供の頃、父と遊んでもらった記憶はほぼありません」

 

アキの能力が目覚めたのは11年前、ユキが能力に目覚めたのは6年前だった

 

 

 

 

ーーー

 

アキはその日、英雄と念願のデュエルをしていてユキはその様子を座って見ていた

 

「─罠発動『ローズ・フレイム』の効果により、パパが……」

 

アキのターンにプルルルルッと、英雄の電話の呼び出し音が鳴る

 

「もしもし、ああ……そうか、すぐに行く」

 

英雄の最後の一言に、アキは絶望した

 

「お父さん……」

 

「すまない、アキ・ユキ…これから急いで出掛けなければならないんだ

2人はいい子にして待って「あたしは…あたしは……ローズ・フレイムの効果を発動!!」

 

アキがカードを発動した瞬間、炎が英雄を襲い壁に打ち付けられた

 

英雄はその場に倒れ、騒ぎを聞き付けた母親の節子が駆け寄る

 

そしてアキの右腕に竜の痣が浮かんでいた

 

「何!?

これ何!?

何なの!?

パパ、怖いよ…怖いよ……パパ…」

 

アキは英雄に近づいて行く

 

「来るなアキ!!

何だその力は……!!

お前はまるでバケモノ…「あなた!!」

 

「バケ……うわあああああーん!!!!」

 

絶望感に襲われたアキはその場で泣き出してしまった

 

「すまないアキ!!

そんなつもりじゃ……」

 

そして、当時3歳だったユキもつられるように泣き出した

 

ーーー

 

 

 

 

当時を思い出したユキは視線を反らし、英雄は頭を抱えた

 

「取り返しのつかない一言でした…私は、アキとどうやって接したらいいか分からなくなってしまった……あの恐ろしい力を持つアキと、一体どうやって……」

 

 

 

 

 

ーーー

パァンッと英雄はアキの頬を叩いた

 

「あなた!!」

 

「パパはどうして私をぶつの?

私が普通の子じゃないから?

私がバケモノだから!?」

 

ーーー

 

 

 

 

 

「アキが力に目覚めた5年後、今度は8歳になったばかりのユキも同じ力を発し始めたんです

私はどう接したら良いのか分からず、ユキにも同じ対応をしてしまった

ですから仕方がなかったんです……娘を理解できない親といるより、そこにいる方がアキ達にとって……「取り繕うのは止めて」

 

英雄を遮って、視線を反らしていたユキが英雄を睨んだ

 

「ユキ……」

 

「正直に言えばいいじゃない、今までのように……」

 

「ユキちゃん、それはいくらなんでも「良いんです」

 

ユキを咎めるマーサを制して、英雄は話し続けた

 

「ユキの言う通りです…私はアキ達を押し付けたんだ!!

デュエルアカデミアに……しかし、そこでもアキとユキは…あの力によって孤立してしまった……」

 

「アカデミアにいるのが嫌で家に帰って来た私達が見たのは、私達がいないのに笑ってる両親の姿でした

それを見た時、私達の中で何かが切れたんです

私達は家と両親を捨てて…アルカディア・ムーヴメントに向かいました

魔女と恐れられながらも、私達はディヴァインの指示に従い続けました……あの日までは」

 

「あの日?」

 

「─…ディヴァインがサイコデュエリストを軍事強化の道具にするという計画を見つけてしまった

ディヴァインも最初から、私達を化物としか見ていなかった

だから私は、アルカディア・ムーヴメントを捨てたんです…姉さんの傷付き過ぎた心を救う為に…」

 

「ユキ…」

 

「じゃあ、何でその時に家に帰らなかったんだい?」

 

マーサの一言に、ユキは眉をしかめて苦しそうにしていた

 

「最初に化物と呼んだ両親が、今更私達を受け入れるハズが無いじゃないですか…!!」

 

「ユキ、それは「良いんです、私達が悪かった事なんですから」

 

咎めようとする遊星を遮り、英雄は頭を下げた

 

「娘の、アキの心は固く閉ざされていて、私の言葉は届かない……!!」

 

「だが今のオレには、彼女を救うことなど……」

 

「お願いですっ!!

私はあのジャック・アトラスから聞いた、フォーチュン・カップでユキを救い、アキを救おうとしてくれた君ならアキを救い出してくれると!!」

 

「……しかし、オレが行ったところで何が出来ると……っ!!」

 

懇願する英雄から、遊星は視線を逸らした

 

「頼む、遊星くんっ!!」

 

「─遊星」

 

返事をしない遊星を見兼ねて、マーサが声をかける

 

「大の大人がこんなに頼んでんだ、助けてやんな

お前、鬼柳を恐れているね……お前はかつての仲間だった鬼柳と戦う事を恐れている、向き合う事をね

ちゃんと向き合えないで何が仲間だい」

 

「オレは鬼柳に恨まれても仕方が…「分っかんない子だねぇ!!」

 

ネガティブになっている遊星の耳を、マーサはギューッと摘まんだ

 

「今のお前は心を閉ざしちまってる、その扉を開けてくれるのは仲間じゃないのかい?

仲間といる事が、その扉を叩く事になる

その音に気付けば扉が開く事もあるんじゃないのかねぇ?

まずは仲間に向き合わなきゃ、なぁ遊星?」

 

マーサの説得に、遊星は渋々と頷いた

 

「ありがとう、遊星君!!

さっそく出発しよう!!」

 

「─…私も行く」

 

途中から黙っていたユキが、席を立つ遊星と英雄に聞こえるように声を大にして言った

 

「ユキ…」

 

「私の目的は、姉さんを元の姉さんに戻す事

その為なら、私も動きます…良いですよね、遊星さん?」

 

「…ああ、勿論だ」

 

「ユキ…お前……」

 

感激したような声を出す英雄に、ユキは鋭く言った

 

「まだ許したわけじゃない

まずは姉さんを元の姉さんに戻して…それからあなた達がどうするかで、それは決まって来るんだから」

 

「ああ、分かった」

 

英雄と遊星に続いて、ユキも席を立った

 

「─遊星ぇ~、そのアキちゃんって子が好きなんだろう?」

 

「なっ…!?」

 

マーサの意外な一言に、遊星がギョッと反応した

 

「ぇ、そうだったんですか…?」

 

「ち、違う!!」

 

「照れなくたっていいだろ~?

未来の嫁さん捕まえといで!!」

 

「いやっ、待ってくれマーサ!!」

 

完全に焦り出した遊星に、傍観者になっていた雑賀は大笑いを始めた

 

「ハッハハハハハ!!

マーサが相手だと、流石の遊星も形無しだな!!」

 

雑賀が笑ってる間も、遊星とマーサの話は続く

 

「どんな娘だい?

可愛い感じかい?

それとも綺麗な感じかい?

ユキちゃんのお姉さんだっていうなら、どっちも有り得そうだねぇ」

 

「だからマーサ…!!」

 

「それともアンタ、ひょっとしてユキちゃんの方なのかい!?」

 

「へ…?」

 

「そうじゃない!!

ユキはクロウに気が有るんだ!!」

 

「い、いきなり何を言い出すんですか遊星さん!?///」

 

真っ赤になったユキは、バシィィンッと遊星の背中を思い切り叩いた

 

「ぐっ…!!」

 

「ぁ……ごめんなさい…何か、条件反射で……」

 

マーサと雑賀に見送られ、遊星・ユキ・英雄の3人はヘリコプターに乗り、シティのドミノ病院へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

病院へ向かうヘリコプターの中は、そこまで緊張感に満ちてはいなかった

 

「もぅ…遊星さんったら、マーサさんの前でいきなり何を言い出すんですか?」

 

「すまない…だが、お前とクロウの距離は近かったような気がしてな」

 

「そう、ですか…?」

 

「ああ」

 

「そう、ですか…」

 

言い切られて恥ずかしくなったユキは、遊星から視線をそらした

 

「……優しい人だって事は確かですけど」

 

「そうだな」

 

「…遊星さん」

 

真剣な眼差しで、ユキは遊星に向き直った

 

「どうした?」

 

「姉さんの心をこじ開けるのは、簡単じゃないハズです」

 

「だろうな」

 

「…もし、闘う事になったら、私も一緒に闘わせてください」

 

「ユキ!?」

 

それを聞いた英雄が、慌てたように席を立った

 

「結果的に、家の問題に遊星さんを巻き込んだ形になったんです

全てを丸投げする訳にはいきませんよ

それに…私だって、姉さんを助けたいから」

 

「…ああ、分かった」

 

ヘリコプターはそのまま、病院の屋上ヘリポートに着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

…遊星とユキは英雄の案内でアキの病室へ向かい、病室の入り口にはジャック・龍亜・龍可とアキ達の母親の4人がアキを見守っていた

 

「あっ遊星!!」

 

「ユキさん!!」

 

龍可の一言に、アキ達の母親 節子は弾かれたように顔を上げた

 

「ユキ…ユキーっ!!」

 

節子はユキに駆け寄り、泣きながらユキを抱き締めた

 

「ごめんなさい!!

パパとママが弱かったから、あなた達を苦しめて…お願いユキ!!

パパとママを許して…!!」

 

泣きつく母親をそっと引き剥がしたユキは、病院のアキを見た

 

「ユキ…?」

 

「そういうのは全て後にしよう

万が一の事も有るから、下がってて…母さん」

 

それを聞いた節子は、嬉しそうに頷いた

 

遊星とユキは頷き合うと病室へ入り英雄達も後に続いて、眠っているアキのベッドの側で立ち止まった

 

「十六夜……」

 

パアァッとシグナーの痣が光り、スッとアキが目を覚ました

 

「十六夜」

 

「姉さん…おはよう」

 

ゆっくりとアキはベッドから起き上がる

 

「遊星…ユキ……助けに来てくれたの……?」

 

「…アキ」

 

遊星達の後ろで英雄がアキを呼ぶと、アキは驚いて目を見開いた

 

「ッ何であなたがここに!?

私にはもうあなたは必要ない!!

私にはディヴァインが……!!」

 

そこまで言って、アキはアルカディアムーブメント内でディヴァインの末路を思い出した

 

「ディヴァインは…ディヴァインはもう……いない!!」

 

「まさか…ディヴァインは、死んだの……?」

 

ユキの呟きに、アキは震えながらも譫言のように呟いた

 

「アルカディア・ムーヴメントのビルの高いところから…」

 

そのままアキは頭を押さえて震えだした

 

「ディヴァインは言ったのよ…もう考えなくてもいいって……私の代わりに考えてくれるって……!!」

 

「十六夜、落ち着け!!」

 

「ジャックさん、全員を下がらせて!!」

 

ユキの指示で、ジャックは龍可達を連れて後ろに下がった

 

「ディヴァインは…パパが私から取り上げたものを与えてくれた

私の…私の居場所を……その居場所をなくした今、あなたはまた私を笑いに来たのね!!

だったらもう一度、見せてあげるわよ!!

バケモノの力を……!!」

 

アキは遊星を押し返し、デュエルディスクとデッキを持ち遊星達と距離をとった

 

「止めろ、十六夜!!

お前のお父さんも苦しんでいるんだ!!」

 

「あなたじゃなかったの?

シグナーが 仲間が、私を導いてくれると言ったのは……!!

あなたも敵よ、私の!!

私から居場所を奪う…敵!!」

 

アキがカードを発動した瞬間強い風が吹き、風にベッドや医療器具が飛ばされる中遊星とユキは立ち上がった

 

「十六夜…」

 

「無駄ですよ、遊星さん

言葉で語りかけても、今の姉さんには届かない」

 

「十六夜の心に声を届かせるには、やはりデュエルしか……!!」

 

デュエルディスクを構えた遊星の隣に、ユキもデュエルディスクを装着して並んだ

 

「ユキ……」

 

「言ったハズです、「闘う事があったら一緒に闘わせてください」って」

 

「…そうだったな」

 

デュエルディスクを起動するユキを、アキは睨み付けた

 

「ユキ…やはりあなたも私を捨てるのね

もう私に仲間なんて要らない!!

私たちは仲間なんかじゃない!!

闘う運命なのよ!!」

 

「違う、これは仲間である事を確かめるためのデュエルだ!!

オレ達はタッグでいかせて貰う!!」

 

「今度こそ、姉さんの中の魔女を葬ってやる!!」

 

「いつでも来い!!

行くぞ、ユキ!!」

 

「はいっ!!」

 

「「「─決闘(デュエル)!!」」」

 

3人の声が揃い、変則なデュエルが開始された




十六夜家の1件は、ユキの設定上どうしても外せないシーンだと私は思っています
なので、次はユキが遊星と組んでアキと闘います
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