遊戯王5D´s  絆の物語   作:なおにぃ

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レベル 17 赤き竜に選ばれし闘士達

ユキが実家に戻りアキが退院した翌日、遊星はアキとユキを連れて治安維持局のモニタールームに来ていた

 

深影が写すモニターに、子供が無理矢理に人体実験をさせられている映像が次々写される

 

そのあまりの酷さにユキは顔をしかめ、アキは映像から目を背けた

 

「これは、先日アルカディア・ムーブメント本部ビルから発見されたものです

アルカディア・ムーブメントによって攫われた子供達と、施設内で行われていた人体実験に関する詳細が記されています」

 

「ユキ、これが……」

 

「はい…ディヴァインの悪事の、ほんの一部です」

 

「まだ、何か有るのか…?」

 

遊星に答えるユキに、アキと深影の視線が集まった

 

「…この映像は第1段階、強いサイコパワーを持つサイコデュエリストを作り上げる事が目的です」

 

「「作り上げる」って、相手は人間なのに…!?」

 

答えを聞いた深影は、悲鳴のような声をあげた

 

「…ディヴァインは自分以外の人間を、人間と思っていない

自分が良ければ他はどうでもいいと考えている、自分勝手さの塊のような男……この真実を知った時に、それを知ったの」

 

「「第1」…という事は、まだ先が有るんだな」

 

遊星に答えたのは、モニターを消した深影だった

 

「ええ…この件は治安維持局も調査を進めてきましたが、それを裏付ける強力な証拠です

ディヴァインは能力の高い者をよりすぐり、デュエル以外にも能力を発揮できるよう改造して兵士として紛争地域に送り込む計画を立てていたようです

アキさん・ユキさん……あなた達もその中に……」

 

兵士の名簿の中の自分の顔写真を見つけたアキは耐え切れずに、部屋から出て行った

 

「目を背けても耳を塞いでも、事実は変わらないわ!!

ディヴァインはあなたの能力を利用しようとしていただけなのよ!!

アキさん!!」

 

深影の話に耳を貸さず、アキはそのまま走り去った

 

「ユキ、これが…」

 

「私がディヴァインを裏切った理由です

そしてもう1つ…この名簿の中のサイコデュエリストは、ディヴァインのサイコパワーによる洗脳を受けている人も多くいます」

 

「なっ…!?」

 

「洗脳!?

じゃあアキさんやユキさん、あなたも…!?」

 

深影に1つ頷いて、ユキは部屋の出口へ歩き出す

 

「もっとも、姉さんの場合は言葉巧みに騙されていただけでしょうけど

……けど私が堕天の魔女として動いてた時代、私はディヴァインの洗脳下にあった…姉さんの様子を見て来る」

 

「オレも行こう」

 

遊星と連れ立って、ユキは部屋を出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…部屋を飛び出したアキは、カフェテラスのイスに座っていた

 

「アキ……」

 

「…フォーチュン・カップでユキが言っていた事は、本当だったのね

でも、それでもよかった……ディヴァインは私を受け入れてくれた

たとえ能力を利用するのが目的だったとしても…私にとっては、かけがえのない存在だった……」

 

様々な感情が入り交じったアキの手は、フルフルと小刻みに震えていた

 

「分かっている」

 

「え…?」

 

「それでいい、オレはお前を否定したりはしない

誰も否定する権利はない

ただ1つ確かな事は、今もお前を必要としている者がいるという事だ」

 

「遊星……」

 

小さく笑うアキの向かいの席に、ユキはそっと座った

 

「父さんと母さん以外にも、まだ居場所は有る

…もう、姉さんも私も、本当の意味で1人じゃなくなった」

 

「ええ……そうね」

 

「ああ、オレ達は仲間だ」

 

右腕の袖をめくり痣を見せた遊星は言い切った

 

「仲間……」

 

呟きながら、アキはそっと右腕を押さえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…それから数日後、遊星達は深影の運転する車でゴドウィンの屋敷へ招待された

 

「ほえ~、でっかいお屋敷だな~

ここがゴドウィン長官の家かぁ」

 

龍亜が辺りを見回していると、屋敷の中からゴドウィンが出て来た

 

「お待ちしておりました」

 

深影はゴドウィンに一礼すると、後ろに下がった

 

「ようこそ、シグナーの諸君

随分と回り道をしてしまいましたが、やっとこうして皆さんをお迎えできた事を喜ばしく思います」

 

ゴドウィンは丁寧に一礼した

 

「フン、どこまでも胡散臭い男だ」

 

ジャックが鼻を鳴らす隣で、アキとユキは小声で遊星に話し掛けた

 

「遊星、どうしてこんな所に来たの?

ゴドウィンはあなたの仲間を人質にとって、無理矢理フォーチュン・カップに出場するように命令したんでしょ?

そんな奴の事を信用するの?」

 

「そうですよ

それにそのマーカーだって、結果的にゴドウィンがほぼ無理矢理に着けさせたモノらしいじゃないですか

私は、アイツは信用出来ません」

 

「いや、ゴドウィンがこれまでにやってきた事を許すことはできない

だが世界は今、不可解な現象によって滅びの危険に瀕している

その真相を知る者は、ゴドウィンをおいて他にはいない」

 

「それを聞き出すために、敢えて誘いに乗った訳ね」

 

「今はそうするしかない」

 

「分かりました

遊星さんがそう言うなら、従います」

 

「なぁなぁ、オレ達に用って何だよ?」

 

「…君を招待した覚えはないが」

 

前に出た龍亜を、ゴドウィンは冷たい目で見下ろした

 

「そ、そんな堅い事言わないでさ…」

 

「シグナーでない者に用はありません、お引取り願いましょう」

 

ピシャリと言い放たれ、龍亜はションボリと肩を落とした

 

「わたし、龍亜が一緒じゃないと行かない」

 

隣にいた龍可が、ギュッと龍亜の腕を掴んだ

 

「龍可……」

 

龍可に続くように、ユキは腕を組んで冷たい表情でゴドウィンを睨んだ

 

「それにあなたや腹心のイェーガーは、私達を集める為に私達や関係の無い人達に散々迷惑をかけ続けたじゃない

これくらいの妥協をするのは当然だと思うけど?」

 

「……分かりました」

 

小さくため息をついたゴドウィンを見て、龍可は龍亜の腕を握ったままはしゃいだ

 

「良かったね、龍亜!!」

 

「う、うん…

ユキ姉ちゃんも、ありがと」

 

「どういたしまして」

 

「では、さっそく邸内へご案内致しましょう

こちらへどうぞ」

 

案内するようにゴドウィンは歩き出し、遊星達を中へ連れて行った

 

 

 

 

 

……地下へ降りたゴドウィンに連れられて、遊星達は歩いていた

 

「どこへ行くのかしら……?」

 

「さぁ…?」

 

龍可は呟きに、ユキは周りを警戒しながら答えた

 

「キングは、一度お連れした事がありましたね」

 

「アレは他人だ、オレはもうキングではない」

 

「ならばこれからは、敢えてジャック・アトラスと呼ばせていただきましょう」

 

 

 

 

……そのまま遊星達は最奥の、神殿のある部屋へと入った

 

「こ、これは!?」

 

遊星達の目に飛び込んで来たのは、赤き竜全体の絵だった

 

「あの形は……!!」

 

「わたし達の痣と一緒!?」

 

「赤き竜……」

 

遊星・龍可・アキが言うと、絵を見ていたゴドウィンは振り返った

 

「そう、それは星の伝説として語り継がれてきたシグナーの証」

 

ゴドウィンの一言に反応するように、5人の腕の痣が赤く光り出した

 

「龍可!!

皆も……!!」

 

遊星は初めて赤き竜が現れた事を思い出しながら、ゴドウィンに話し掛けた

 

「あの日、無人デュエルスタジアムで行われたオレ達のライディングデュエルは互いの誇りをかけた闘いのはずだった……」

 

「だがその時、赤き竜が姿を現した」

 

「そう、あの時君達が赤き竜によって導かれてこのネオドミノシティにやって来た」

 

「赤き竜に導かれただと?

アレはお前が仕組んだ事のハズだ!!」

 

「オレ達はオレ達の因縁に決着をつけたまで!!

赤き竜など関係ない!!」

 

「その事自体が赤き竜の力によって導き出された運命なのです

私自身も赤き竜の導きに従って行動しているにすぎません」

 

「想像以上に胡散臭いわね」

 

「ええ…」

 

「信じろというのか?

そんな話を」

 

ユキ・アキ・遊星の鋭い眼差しを見ながら、ゴドウィンは至って真面目な顔をしていた

 

「信じる信じないかは自由です

ですが、君達がシグナーである限りその宿命から逃れる事はできません

決して……」

 

「シグナーとしての宿命……?」

 

光る痣の有る右腕を見ながら、感情の高ぶりを抑えるようにユキは拳を握った

 

「じゃあ私や姉さんにサイコパワーがあったのも、私達の今まで全てがその宿命というもののせいだったという事!?」

 

「その通りです」

 

「周りの人間達から恐れられ、忌み嫌われてきた私達の感情は、私達の中に燻る怒りの炎によってどんどん肥大していった」

 

「だが、その能力がなければあなた達が出会う事もなかったでしょう

その痣は赤き竜に選ばれたデュエリストにだけ与えられた印

シグナーとしての宿命が君達1人1人の運命を結び付け導いているのです……それは龍可さん、あなたも同じですよ?」

 

ユキとアキの話を聞きながら、龍可は右腕で光る痣を見ていた

 

(シグナーとしての宿命……ずっと忘れていた幼い頃の思い出

わたしはこことは違う世界で、デュエルモンスターズの精霊達と心を通わせていた

そこで出会ったのが、『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』……あの不思議な出会いに、どんな意味があるのかあの時は考えもしなかったけれど……今なら分かる

エンシェント・フェアリーを助けるのがわたしの宿命……いえ、わたしの望み

そう、わたしはエンシェント・フェアリーと精霊の世界を助けたい!!)

 

「目を背ける事はできないでしょう

君達は同じ痣を持つ者たち、伝説のシグナーの生まれ変わりとして選ばれたのです

好む好まざるに関わらず、運命に翻弄されながらもこうして再び巡り合うよう数千年前から約束されていたのです」

 

「シグナーとして巡り合う……」

 

「それが私達の運命……?」

 

赤き竜が消えた瞬間、フッと5人の痣の光も消えた

 

「光が……」

 

「ね、ねぇ……1つ肝心な事忘れてない?

シグナーは確か6人いるんじゃなかった?」

 

龍亜はゴドウィンにビクビクしながら話に加わった

 

「そうよ、もう1人はどこにいるの?」

 

龍亜の質問に、龍可はゴドウィンを見上げた

 

「もう1人はとっくに目覚めています」

 

ゴドウィンの一言に、遊星達は目を見開いた

 

「君達が本当の危機に瀕した時、その者は赤き竜と共に姿を現す事でしょう」

 

「どういう事だ?」

 

「今に分かります」

 

ゴドウィンが手を挙げた瞬間、周りの景色が変わり最近ニュースで話題となっているナスカの地上絵だった

 

「数千年前、赤き竜がこの地に降臨し悪の化身どもを大地に封じました

その封印こそナスカの地上絵と呼び称されし者……その真実は我々以外の者達には、決して語り継ぐことの許されぬ禁断の歴史とされました

そして現在……ナスカの辺縁から忽然と消失するという怪奇現象が頻発しています

これは全てダークシグナーによる仕業です」

 

「ダークシグナー……」

 

遊星は鬼柳を思い出しながら呟いた

 

「彼等は君達と同様にダークシグナーの証である痣を持っています」

 

「あの、黒い痣の事ね……」

 

ユキはこれまで見た2人のダークシグナーを思い返していた

 

「奴らの作り出す特殊なフィールドからは逃れる事は出来ない

そしてその攻撃は実体となって襲いかかって来るそして、あのダークシンクロモンスター……」

 

「ダークチューナーと呼ばれた特殊なモンスターの力で、モンスターのレベルがマイナスになるモンスターをシンクロ召喚するダークシンクロ……私達のこれまでの常識を覆すようなデュエル……」

 

シグナーの中で最も多く実物を見て経験している遊星と、傍にいたユキはこれまでで得た知識を答えた

 

「そう

我々のデュエルが生命に基づくものなら、彼等のデュエルは冥府の力と呼ぶに相応しい」

 

「冥府の力?」

 

「ご存知の通り、ダークシグナーが現れる時必ず地上絵も現れる

彼等の出現により、ネオドミノシティ全体は今、存亡の危機に晒されています」

 

「ああ、オレはこの目ではっきりと見てきた

サテライトで多くの人々が奴らの犠牲になっていく所を!!」

 

「そうですね……」

 

遊星は鬼柳とのデュエルの光景を思い出しながら言い切り、ユキは辛そうに視線をそらした

 

「お前の言う、生け贄としてな!!」

 

遊星は憎しみを込めて、ゴドウィンを鋭く睨みつけた

 

「すでに彼等の行動は、私の推測の範囲を超えていると言っていいでしょう

地上絵はシティにも出現し、多くの犠牲者を出した」

 

「やはり……」

 

「やっぱり、姉さんの方にも地縛神が……」

 

「……ええ」

 

アキは闘った相手、ダークシグナーのミスティを思い出して俯いた

 

「遊星・ユキ、君達がサテライトで目の当たりにした現象はここ シティでも起きている

地上絵が現れたモンスターによって、付近にいたとされる数百人の人々が現在行方不明になっているのです」

 

「数百……!?」

 

遊星達の周りの景色は、ネオドミノシティの景色へと変わった

 

映像には地縛神 コカライアとアスラ・ビスクが映し出され、実物を見ていたアキは口元を被った

 

「アレも地縛神?」

 

「そう、地縛神は人々を生け贄に召喚されるダークシグナーの神」

 

「生け贄になった人々はどうなった!?」

 

ジャックのポケットには、行方不明になった協力的 カーリー渚のメガネが忍ばせてあった

 

「…私にも、分かりません

ですが事態は一刻を争います

手を拱いていれば、シティとサテライト全ての住人がダークシグナーの手に墜ち、ネオドミノシティは崩壊してしまうでしょう

君達が見たビジョンのように……」

 

グッとジャックは手を強く握り絞める

 

「シティとサテライト全ての人達って事は……」

 

「天兵や氷室のおっちゃん、矢薙のじいちゃん達も……」

 

「パパ・ママ……」

 

「元よりこれは避けられない戦いです、シグナーとダークシグナーは云わば光と闇

ダークシグナーを倒し地球存亡の事態を救えるのは、シグナーである君達を置いて他にはいないのです」

 

「宿命など関係ない!!

オレの成すべき事は、オレ自身が決める!!」

 

遊星は断言したジャックを見ていた

 

(マーサの言う通りだ

この闘いはオレ1人で乗り切る程、簡単じゃない…)

 

「…ゴドウィン、1つ答えて」

 

ジャックと遊星が決意を固めている中、ユキはゴドウィンを真っ直ぐ見つめて言った

 

「何ですか?」

 

「私や遊星さんの前に現れたダークシグナー、そいつは遊星さん達が言うには既に死んだハズの人間

そんな人が私達の目の前に現れたわ…これはどういう事か、あなたは分かる?」

 

ユキの質問に、遊星とジャックはピクリと反応した

 

「それは、オレも気になっていた……

どうして鬼柳がダークシグナーになってしまったんだ?」

 

「答えろ!!

そもそもダークシグナーとは、一体何者なんだ!?」

 

「……それは知らない方が良いかもしれません」

 

ゴドウィンは目を閉じた

 

「ふざけるな!!

オレと遊星は、かつて友と呼んだ男と命がけのデュエルをする事になるんだぞ!?」

 

「それに、まだ姿を見せないダークシグナーの中に私達の関係者がいる可能性が無いとは言い切れないのよ!?

戦う私達には、それを聞く権利は有るハズでしょう!?」

 

「オレはシティとサテライトを守るために命を賭ける覚悟は有る

だが、もし鬼柳達を元に戻す方法があるのなら……!!」

 

「無駄です」

 

ゴドウィンは、遊星達の言葉を間髪を入れずに否定した

 

「ダークシグナーとなった者を元の人間に戻す方法などありません、皆無なのです」

 

「どういう事だ?」

 

「─ダークシグナーとは、亡者の魂が能力に目覚めた状態なのです

すなわち、彼等は既にこの世の者ではない」

 

その一言は、遊星達に強い衝撃を与えた

 

「運命は動き出しています、もう後戻りは出来ません

ダークシグナーを倒すか、我々と共に世界が滅びるか、それは君達の手に委ねられているのです

自分達がどうすべき事かよく考えて答えを出して下さい……ただし、あまり時間はありませんがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当だって!!

炎の壁の向こうで何十人もの人が…」

 

「1個のでっかいモンスターになったって話だろ?

オレもその噂聞いたぜ」

 

一方サテライトでは、鬼柳の地縛神の話で持ちきりになっていた

 

「幻覚だよ、幻覚

まぁ、あの辺には務所しかねぇからなぁ…どっちみちオレ等には関係ねぇ話よ」

 

「─関係大有りだぜ!!」

 

噂話をするサテライトの人達の上に、ブラック・バードに乗ったクロウがいた

 

「何だい、オメェは?」

 

「オレかい?

そうさなぁ……通りすがりの正義の味方ってとこかな!!」

 

ヘルメットを被り直すクロウを見て、サテライトの人達は声をあげた

 

「最深部に行くなんて止めときな!

あんちゃんもモンスターにされちまうぜ!!」

 

「アンタ等こそ早くどっかに逃げたほうがいいぜぇ!

待ってろよ、ダークシグナー!!」

 

クロウはそのまま最深部に向け、ブラック・バードを走らせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……話を聞き終えた遊星は、ゴドウィンの屋敷の部屋で外を眺めていた

 

「鬼柳……」

 

遊星は苦しそうに拳を強く握り締め、その様子を龍可・アキ・ユキが見ていた

 

「遊星…」

 

「苦しんでいるのね」

 

「え?

アキさんにも分かるの?

遊星の気持ち」

 

振り返った龍可に、アキとユキは頷いた

 

「ええ…遊星は人と人との絆を何よりも大切に持っている

だからこそ、親友がダークシグナーになってしまった事が本当に辛いでしょうね」

 

「何があってあの人が亡くなってダークシグナーになったのかは私達には分からないけど、あの鬼柳という人は遊星さんを相当憎んでいたわ…」

 

「それなら、自責の念にもかられているのね」

 

「遊星、かわいそう……」

 

悲しそうに呟いた龍可に、アキとユキは話し掛けた

 

「そういうあなたはどう?

闘う覚悟はもう出来ているの?」

 

「龍可はまだ小さいし、龍亜が言うには体も弱いんでしょう?

無理に闘う必要は無いと思うわよ?」

 

「わたしなら大丈夫

だって……闘う理由があるから」

 

(こんな小さな子まで……)

 

「あっ、遊星!!」

 

「すまない、1人にしておいてくれ」

 

そう言って遊星はそのまま部屋を出て行き、アキもユキを連れて部屋から出て行った

 

「遊星……」

 

その様子を、階段からジャックが見下ろしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

……遊星達から離れたアキとユキは、ゴドウィン邸のガーデンに来ていた

 

「こんな風景、懐かしいわね」

 

「うん…昔は家にもこんな小さな庭園があって、母さんと一緒に手入れしたりお茶したりしてたもんね」

 

「けど家の庭園は、私達が壊しちゃったのよね…」

 

思い出しながらアキは寂しそうに、薔薇の花に触れた

 

「父さんが、また作り直すって張り切ってたから大丈夫じゃないかな?」

 

「ふふ、パパったら…」

 

小さく微笑んだアキは、ユキの方に振り返った

 

「ユキ…ありがとう」

 

「…何が?」

 

「…私を本物の化け物にさせないように、私と真っ向から向かい合ってくれた事

私をパパとママと引き合わせてくれた事…色々」

 

「それは遊星さんに言って

…私はやろうとしても、出来なかった

遊星さんがいなかったら、出来なかった事ばかりよ」

 

「遊星が…」

 

「遊星さんって、とてもスゴい人だと思う

絆をあそこまで尊ぶ人を、私は知らない…けど遊星さんも人間だもの、何かに恐怖する事も有るのよね」

 

「…そうね」

 

アキは部屋を出て行った遊星を思い出して、小さく呟いた

 

「姉さん、私は闘う

どこまで出来るか分からないけど、遊星さんを支える

……それに、サテライトの人達を地縛神の生け贄になんかさせたくない」

 

「ええ…遊星の仲間もそこにいるんだもの」

 

「私がシティから来たって言っても、遊星さんの仲間は皆とても優しかった

…今遊星さんを苦しめている奴は私が魔女だって事を知ってて、バラされてもあの人達は変わらなかった……とても暖かい、私達が望んだような居場所だった

だから絶対に無くさせる訳にはいかない!!」

 

強く握ったユキの手に、アキはそっと自分の手を重ねた

 

「ラリーくんやクロウさん…マーサさん達を、地縛神なんかに襲わせないわ!!」

 

「何としても止めましょう!!

遊星が取り戻してくれた、私達 姉妹の絆の力で!!」

 

誓いあったアキとユキは、力強く頷き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

…アキとユキはガーデンを出て歩き回り、しばらくして芝生に座る遊星とジャックを見つけた

 

「遊星さん」

 

「アキ・ユキ…」

 

「私もあなたと共に闘う、その先に私の成すべき事がある気がするの」

 

「そうか」

 

「遊星さん、私はあなたに大きな恩が有ります

あなたと…あなたの仲間達を守る事で、その恩返しをさせてください」

 

「…分かった」

 

「遊星!!」

 

アキとユキの決意に頷いた遊星の後ろから、龍可が走って来た

 

「…行くのね?」

 

「ああ」

 

龍可が後ろにいる龍亜に振り返ると、少し考えた龍亜は遊星に駆け寄った

 

「遊星!!

オレ、分かったんだ

遊星がカッコイイのはどんな時も自分を信じて闘うからだよね!!」

 

「龍亜…」

 

「ジャックも、もうキングじゃないけどカッコイイよ!!」

 

「「もうキングじゃない」……だと?」

 

龍亜の一言に、ジャックの額にピキリッと青筋が立った

 

「だから、オレもカッコよくなれるよね!」

 

「なれん!!

お前のような小僧はカッコよくなどなれん!!」

 

「なるよ!!

なるなる!!

絶対になるー!!」

 

「断言する!!

絶対になれん!!」

 

「なるったらなる!!

なるなるなる!!」

 

「もう、龍亜ったら…」

 

「ジャックさんも大人気ないわよね」

 

ジャックと龍亜の延々と続く押し問答を眺めながら龍可とユキは呆れたため息をつき、遊星とアキは苦笑していた

 

「……ところで遊星、あなた何でずぶ濡れなの?

しかもボロボロにもなってるし」

 

「そういえばジャックさんも…ケンカでもしたんですか?」

 

アキとユキの疑問に、ジャックは龍亜との押し問答を止めた

 

「…オレが鬼柳の事で悩んでいたら、ジャックが喝を入れてくれた」

 

「喝が殴り合いなの?」

 

「何で?」

 

「さぁ…?」

 

アキ・ユキ・龍可が顔を見合わせると、ジャックは鼻を鳴らして遊星を見た

 

「フン、オレは軟弱に成り下がって見るに堪えん奴を殴っただけだ」

 

「でもジャック、その遊星に負けてるじゃんか」

 

「何だと!?」

 

「ヒェーッ!!」

 

ジャックの睨みに、龍亜は怯えた声を出して逃げ出した

 

「待たんか、貴様ーっ!!」

 

「絶対嫌だよーっ!!」

 

ジャックが龍亜を追い掛け始め、その鬼ごっこを遊星達は呆れて眺めていた

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