遊戯王5D´s  絆の物語   作:なおにぃ

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今回はデュエル無しの日常回です


レベル 28 進む路と淡い想い

デュエルアカデミアは、今日も午前の授業を終えた

 

昼休憩を挟んで午後の授業の始業のチャイムが鳴っても、中等部のユキ達のクラスに教師は入って来なかった

 

「先生、遅いですね…」

 

「授業ねぇのか?」

 

「それなら良いけどな」

 

「ラッキー!!

なら今のうちに、デッキ調整しとくとすっか」

 

雑談する生徒達の横で、リンボは鞄からデッキと余りカードを取り出した

 

「もぅ、リンボってば…;」

 

「怒られても私達、知らないわよ」

 

「へーへー」

 

それを見ていたユキとあいりの忠告を聞き流し、リンボはデッキ調整を続けた

 

「まったく…」

 

「でも本当、遅いね……」

 

「こんな事、前にもあったりした?」

 

「ううん、初めて…何か、あったのかな?」

 

あいりが首を傾げるとガラッと音をたててドアが開き、教師が中に入って来た

 

「すまないが、今日の午後の授業は自習だ」

 

「先生、何があったんですか?」

 

学級委員の生徒が席から腰をあげながら言うと、教師はバツが悪そうに視線をそらした

 

「─…教頭先生が、初等部を潰すと言い出してな」

 

「「「えっ!?」」」

 

その一言に、ユキ・あいり・リンボはピクリと反応した

 

「成績が良くない初等部の生徒達を退学にすると言って聞かないんだ」

 

「─教頭先生の言う通りだな」

 

教師の話に続くように、マイトは教室中に無駄に響く声で言い放った

 

「期待に答えられない奴は不要だ、教頭先生もそう考えたんだろう

僕もその通りだと思うね!!」

 

「ちょっとマイト、どういう意味よ!?」

 

マイトの言葉に、あいりは眉をつり上げながらガタンッと席を立った

 

「言った通りの意味さ、そんな事も分からないのか須藤?

落ちこぼれが消えた後は…危険分子を退学にしないといけないよなぁ、魔女?」

 

「テメェ!!」

 

嫌味な言い方にリンボは怒鳴りながら乱暴に席を立ちマイトに殴り掛かる前に、ユキに掴まれた

 

「ユキ…?」

 

「今はこんな人、相手してる場合じゃない

龍亜と龍可が心配だから、初等部に行きましょ」

 

「…それもそうだな

っしゃ、行くか!!」

 

「あっ、私も行く!!」

 

走り出したユキとリンボを追って、あいりも走り出した

 

「お、お前達!?」

 

「待ってください!!」

 

教室を出て行こうとする3人を、学級委員が呼び止めた

 

「相手は教頭先生ですよ!?

あなた達でどうにかなる相手ではありません!!」

 

「…このまま放っておくわけにはいかないの、初等部には私の仲間がいるから」

 

「えっ……」

 

返事も待たずに、ユキ達は教室を飛び出した

 

 

 

 

 

 

……途中で同じように事情を聞いたアキと合流したユキ達は、初等部の教室の前に着いた

 

「ここか…」

 

「うん……」

 

リンボとあいりがドアに手をかけようとすると、中から教頭の声が聞こえてきた

 

「─あなた達のような落ちこぼれは、この伝統あるデュエルアカデミアには必要無いのです!!」

 

その一言を聞いた4人は、ムッとしてドアを開いた

 

「─聞き捨てならねぇなぁ!!」

 

「話は聞かせてもらったわ」

 

「アキ姉ちゃん・ユキ姉ちゃん!!」

 

「リンボさんに、あいりさんも!!」

 

龍亜と龍可に目配せしたリンボとアキを先頭に、4人は教頭と向き合った

 

「あなた、それでよく教師を名乗れたものね」

 

「これは…高等部トップの十六夜くんに、中等部トップの須藤くんに十六夜くん…と、実技だけは上位のリンボくん」

 

「オレ様は付け足しかっ!!」

 

リンボのツッコミを聞き流し、教頭はアキ達3人を説得するように両手を広げて言う

 

「あなた達のような優秀な成績の生徒達なら、むしろ私に賛同して欲しいものですな

こんな落ちこぼれの子供など、いる価値が無いという事に」

 

「バカ言わないで!!

そんな身勝手な言い分がまかり通るわけが無いわ!!」

 

「そうよ!!

むしろアンタの言い分の方が、何の価値も無いわよ!!」

 

「まあ、頭のお堅いオッサンには分からねぇ事かもだけどな」

 

「私達は、自分勝手に子供を傷付ける人を許さない!!」

 

「どうしてもって言うのなら、私達はこの子達の味方になる!!」

 

アキとユキの剣幕に、龍亜と龍可は顔を見合わせて焦りだした

 

「ヤバいよォ、アキ姉ちゃん達が怒ったりしたら…!!」

 

「さ、流石にもう力は使わないと思うわよ…?」

 

「─アキ・ユキ?

大声を上げてどうしたんだ?」

 

聞こえてきた聞き覚えの有る男の声に、全員がドアの方を振り返った

 

《遊星!?》

 

ドアの外には、工具入れを持った遊星がキョトンとして立っていた

 

「あ、あなたはフォーチュン・カップ優勝者の、不動 遊星!?」

 

教頭がおびえたような声を出し、初等部の子供達は歓声を上げた

 

「な、何故あなたがここに…?」

 

「仕事をしに来ました」

 

「仕事…?」

 

「「ここに壊れているモノが有る

ネジを締め直してやれば、どうにかなる」…と聞いています

確か名前は、ハイトマンとかいうモノです」

 

「ぇ、「ハイトマン」…?」

 

あいりがギョッとしたような声を漏らすと、遊星は不思議そうに首を傾げた

 

「どうしたんだ?」

 

「遊星……ハイトマンっていうのは…」

 

ユキを遮り、教頭は額にピキリと青筋を浮かべて怒り出した

 

「それは…この私 ルドルフ・ハイトマンの事を言っているのですかァ!?」

 

「一体何が…?」

 

突然怒り出した教頭…ハイトマンを見て事情を理解出来ない遊星を、リンボはそっと手招きした

 

「遊星、ちょっと耳貸せ」

 

耳を貸した遊星は、リンボから事情を聞かされた

 

「なるほど、「ネジを締め直してやれば」か……ハイトマン、オレとデュエルしろ!!

オレが勝ったら、この子達の退学は撤回してもらう!!」

 

「…良いでしょう、この私の考えが正しいという事を分からせて差し上げます!!」

 

こうして、遊星とハイトマンによる初等部を賭けたデュエルが執り行われる事になった

 

 

 

 

 

 

…準備時間の間、アキ達4人は初等部の担任と話していた

 

「本当に大丈夫なのかしら…?

ハイトマン教頭は、デュエルの腕もかなりのものなのに…」

 

「遊星なら大丈夫です」

 

「だな

あんなオッサンに負けるハズがねぇ」

 

「そうですよ、遊星が負けるなんて有り得ないし」

 

「それに遊星だからこそ、教えられる事もきっと有るハズ……」

 

「皆、彼の事を信じてるのね…」

 

 

 

 

 

…そして開始されたデュエル

 

ハイトマンは序盤から、『古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)』を3体呼び出して遊星を圧倒した

 

対する遊星は初等部の子供達のカードを借りて、魔法カードと罠カードを巧みに使って対抗した

 

そしてデュエルは遊星の勝利に終わり、ハイトマンは初等部の生徒達の退学を撤回した

 

…この1件から遊星は「初等部を救った英雄」と呼ばれ、アキ達が遊星の仲間で有るという事は、あっという間にアカデミア中に広まった

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、ユキ達は担任の教師から1枚の用紙を渡されていた

 

「えー、その「進路希望調査表」は来週までに出すように

お前達ももう中学3年だ、高等部へ進学するのが殆どだろうがその先についても考えておけ」

 

(進路、か……)

 

その用紙を見て、ユキは悩み続けていた

 

 

 

 

 

…アカデミアが休みの日、ユキはD-ホイールで出掛けていた

 

(進路……正直今まで、そんな事を考えた事も無かった……

サイコデュエリストとして忌み嫌われて、アルカディア・ムーヴメントに拾われたけど逃げて、遊星達と出会ってシグナーとしての使命を知って仲間になって……結構普通とは掛け離れた人生送ってる……今も、来年のWRGPの事しか考えられない…どうしよう…)

 

「─ユキ?」

 

近くの公園にD-ホイールを止めて考え事をしていたユキが顔を上げると、遊星・ジャック・クロウの3人がいた

 

「皆…揃ってどうしたの?」

 

「これからマーサの所へ行く」

 

「雑賀がオレ達に話したい事が有るらしい…」

 

「雑賀さんが?」

 

「何だったらお前も来るか?

ガキ共もお前に会いたがってたしよ」

 

「(考えても仕方ないかな…1度切り替えよう)

…じゃあ、一緒に行こうかな」

 

「おう、じゃあ行こうぜ」

 

遊星達に連れられて、ユキはマーサハウスへとD-ホイール走らせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげえ変わりようだな……」

 

かつてサテライトと呼ばれていた場所を走る遊星達は、今でも着々と工事が進んでいる様子を横目に見ていた

 

「ここ、本当にあの寂しかった場所……?」

 

「ああ、もう此処はサテライトじゃないんだ」

 

「この街にいた人々の底力が、この街を作り直している」

 

クロウとユキの呟きに、遊星とジャックは答えながらD-ホイールを走らせ続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地のマーサハウスの隣には、立派な老人ホームも建てられていた

 

「クロウ兄ちゃん!!」

 

「久しぶりー!!」

 

「遊星とジャックも一緒だ!!」

 

「ユキお姉ちゃんも来てくれたんだ!!」

 

D-ホイールを降りるとハウスの中から、かつてクロウが面倒を見ていた子供達が遊星達を取り囲んだ

 

「よ、お前等

元気にしてたか?」

 

「してるに決まってるじゃん」

 

「勉強だってちゃんとしてるんだから」

 

ニコニコと笑みを浮かべる子供達を見て、クロウは子供達の頭に手を乗せた

 

「よく来たな

遊星・クロウ・ジャック……と、嬢ちゃんも来てくれたのか」

 

子供達の後ろから、マーサと雑賀が遊星達を出迎えた

 

「お前もすっかり、此処の住人だな」

 

「居心地が良くてな、すっかり居着いちまった」

 

遊星が言うと、雑賀は笑って答えた

 

「マーサに迷惑かけてねぇか?」

 

「アンタが子供の頃に比べたら、ずっと良い子だよ」

 

「あっちゃぁ」

 

頭をかきながらヘラリと笑ったクロウを見て、遊星達は一緒になって笑い出した

 

「ジャック、ゾラから聞いてるよ

全然働いてないんだって?」

 

「オレに合う仕事が無いのだ、仕方無いだろう」

 

「あいりに頼んで、モデルの仕事紹介して貰おうか?

あなた、スタイルは良いんだから」

 

マーサに痛いところを付かれてソッポを向いたジャックに、ユキは呆れた眼差しを向けた

 

「そういやアイツの家、大手の服屋なんだっけか?

えっと……」

 

「服飾企業の須藤グループ、あいりはそこの令嬢よ」

 

「そうそう、それだ」

 

クロウとユキの話を聞いていたマーサは、ピクリと反応した

 

「おや、そうなのかい?

ジャック、紹介して貰いなよ」

 

「気が向いたらな」

 

「まったく……ユキちゃんも、ありがとうね

ユキちゃんの事も、ゾラから聞いてるよ

しょっちゅう遊星達の面倒見てくれてるんだって?」

 

「いえいえ、私にはそれくらいしか出来ませんから」

 

 

 

 

 

…話もそこそこに、マーサに促されて遊星達はハウスに入った

 

部屋に通されてすぐにパソコンの前へ4人を誘導した雑賀は、パソコンを操作し始めた

 

「それで、オレ達に話というのは?」

 

「あぁ、お前達の耳にはいれておいた方が良いと思ってな…

シティの郊外に隕石が落下したのは知ってるだろ?」

 

「あぁ」

 

隕石という単語に、遊星達は顔を見合わせた

 

…数日前、ネオ童実野シティの郊外に隕石が落下したという事件があった

 

すぐに治安維持局が駆け付けたため辺りは立ち入り禁止となり、隕石は誰も見る事は出来なかった

 

「それで、それがどうかしたのかよ?」

 

雑賀はパソコンの画面に、隕石によってできたクレーターらしき画像を映した

 

「妙な噂を聞いてな…」

 

「妙な噂だと?」

 

「どんな噂なんですか?」

 

ジャックとユキの質問に、雑賀は真剣な口調で答え始めた

 

「落下したのは隕石ではなく、石版のようなものだったらしい

そしてその石板は、治安維持局が回収した」

 

「はぁ?」

 

「隕石ではなくて…石版?」

 

雑賀は強く頷き、ジャックと遊星は再び顔を見合わせた

 

「けどよ、おかしくねぇか?

何で空から石板が落下してくるんだよ?」

 

クロウの疑問に、遊星は何かを思い出したように呟いた

 

「…石板

そういえば、ゴーストが現れたのもその頃…」

 

「「「あっ…」」」

 

遊星の一言に、ジャック達は声を揃えた

 

「確かにゴーストが現れた時期と、石板が落下した時期はほぼ同じだけど…」

 

「なんか関係があんのか?」

 

「今のところ、それは分からない

だが、陰で何かが動き出しているとしか思えねぇ…」

 

宇宙から落下してきた石版のようなもの、そして今まで見たこともないシンクロ封じのカードを持つゴースト、ゴーストを陰で操っている謎の人物

 

……遊星は無意識に拳を握った

 

「いずれにしろ、警戒は必要だな」

 

「「「「ああ/おう/はい」」」」

 

雑賀の一言に、遊星達は強く頷いた

 

 

 

 

 

 

雑賀の話を終えリビングへと向かうと、マーサと医者のシュミットが困った様子で話していた

 

「困ったわね」

 

「あぁ、鉄さんもいい年だからな…」

 

「ん、どうした?」

 

「何かあったのか?」

 

遊星達の声に顔を上げたマーサとシュミットは、5人を手招きして話し始めた

 

「いやぁね、サテライトの旧市街に爺さんが1人で住んでいてね

1人じゃ何かと不便だと思って、こっちに来るよう誘っているんだが」

 

「頑固でねぇ…なかなか首を縦に振ってくれないんだよ」

 

マーサ達の様子に、一緒にいた子供達はクロウに目を向けた

 

「クロウ兄ちゃん、何とかしてやりなよ」

 

「はぁ?

なんでオレが爺さんの説得なんかしなきゃいけねぇんだよ」

 

(それより、「何とかしてやりなよ」って……;)

 

ギンガ達の一言に、ユキは内心ツッコミを入れていた

 

突っ撥ねたクロウを見たギンガ達は、わざとらしく言い出した

 

「うん、クロウには無理だね」

 

「うん、絶対に無理」

 

次々と子供達から発せられる侮辱に、クロウはカチンと来ていた

 

表情が固まらせるクロウに、子供達はお構いなく「クロウには無理だ」と言い続けた

 

「面白ェ、そこまで言うんならオレが説得してやろうじゃねぇか!!」

 

「おい、クロウ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫に決まってんだろ!!

全部オレに任せとけって!!」

 

不安そうに言う遊星とジャックにクロウは自信満々に言い放ち、マーサに鉄さんという人物がどこに住んでいるのか聞きだした

 

そのあまりに単純なクロウの様子に、遊星達は呆れて何も言えなくなった

 

「相変わらずクロウ兄ちゃんって……」

 

「扱いやすいよね」

 

すっかり乗せられたクロウを見て、ギンガ達5人はヒソヒソと話していた

 

「……あんまりそういう事しちゃダメよ?」

 

《はーい!!》

 

話が聞こえていたユキの注意に、ギンガ達は声を揃えた

 

「ユキお姉ちゃん、こっちで遊ぼう!!」

 

「早く早く!!」

 

ハウスの女の子達…ヒカリとココロに両手を握られたユキを出て行き、ギンガ達3人も後を追い掛けて行った

 

「ユキは留守番か」

 

「しゃーねぇな」

 

「良いじゃないか

あの子達にはクロウみたいなお兄ちゃん代わりはいても、お姉ちゃんの代わりはいなかったんだ

ユキちゃんに懐くのも、当然さ」

 

「それもそうだな」

 

ユキ達を見送った遊星達は、雑賀と共に出掛けて行った

 

 

 

 

 

 

「待てー!!」

 

「きゃーっ!!」

 

鬼ごっこでタイガがココロを追い掛ける様子を、ユキは微笑ましいモノを見る眼差しで見つめていた

 

「きゃっ!!」

 

鬼ごっこに夢中になり転んだココロに、ユキ達は慌てて駆け寄った

 

「ココロ、大丈夫か!?」

 

「怪我してない?」

 

「うん…けど……」

 

起き上がったココロは、涙目でワンピースの裾を見詰めた

 

「破けちゃってる!!」

 

「あーあ、マーサに怒られるぞ」

 

「どうしよう…このお洋服、大好きなのに…」

 

今にも泣き出しそうなココロを見て、ユキはそっとココロの手を握った

 

「…うん、大丈夫

これくらいならすぐに直してあげられるから」

 

「本当!?」

 

「本当

…けどその前に、汚れちゃった手と膝を綺麗にしないとね

鬼ごっこはこれくらいにして、皆部屋に戻りましょ」

 

《はーい》

 

ギンガ達はユキに素直に従って、マーサハウスの中に入って行った

 

 

 

 

 

「おやまあ、どうしたんだい?」

 

出迎えたマーサは、汚れたココロを見て目を丸くした

 

「ちょっと転んじゃっいまして…服が破れてるので、これから直そうと思うんです」

 

「良いのかい?」

 

「はい

お裁縫、一応は得意な方ですから

ココロちゃんの着替えって、どこにありますか?」

 

「それなら用意しておくよ

アンタ達、外から帰ったんだから手洗いとうがいをするんだよ」

 

《はーい!!》

 

ギンガ達は仲良く、洗面所に歩き出した

 

 

 

 

 

「…それじゃあアンタ達、今日の勉強も頑張りなよ

終わったらおやつだからね」

 

「ココロちゃんの服、直ぐに綺麗に直すからね」

 

《うん!!》

 

ココロを着替えさせたマーサはギンガ達を机と椅子のある部屋に置いて、ユキを連れて出て行った

 

 

 

 

 

 

「……良し、これで良いかな」

 

台所でマーサがおやつを作っている傍らで、ユキはココロのワンピースの裾を直し終わった

 

「おやまあ、上手いもんだね」

 

作業を終えたマーサは、ワンピースの裾を見て感心したような声をあげた

 

「マーサさん…もう終わったんですか?」

 

「今日はマドレーヌだからね、後は焼き終わるのを待つだけさ」

 

「そうですか」

 

「さてと、仕事も一段落ついたし……」

 

何かを含んだような眼差しを向けるマーサに、ユキは身を引いた

 

「あの…マーサさん……?」

 

「─ユキちゃん…正直、クロウの事をどう思ってるんだい?」

 

「へっ…?」

 

裁縫道具をしまっていたユキは、盛大に取り乱して裁縫道具の箱を取りこぼした

 

「大丈夫かい?」

 

「え、ええ…何とか……って、そうじゃなくて!!//

いきなり何を…!?」

 

「いきなりって訳でもないじゃないか

前に十六夜議員がここに来た時に、遊星が言ってたじゃないか」

 

「ぁ……」

 

 

 

ーーー

 

「そうじゃない!!

ユキはクロウに気が有るんだ!!」

 

「い、いきなり何を言い出すんですか遊星さん!?」

 

ーーー

 

 

 

「アレか……」

 

ダークシグナーとの闘いの前の出来事を思い出したユキは、視線を明後日の方向へ向けた

 

「それで?」

 

ズイッと顔を近付けたマーサに、ユキは観念したように小さくため息をついた

 

「……その、好きか嫌いかで言われたら好きです

口調は荒いけど、優しい人だし…ダークシグナーとの闘いでも、何度も助けてくれたし…ちょっと、良いかな~くらいには……」

 

「そうかい」

 

「あ、でもそれだけ!!

本当にそれだけですからね!!///」

 

顔を真っ赤にしたユキを、マーサは優しい顔をして見ていた

 

「それで良いんだよ」

 

「え…?」

 

「あの子は…いや、あの子だけじゃないね

クロウも遊星もジャックも、直ぐに無理をするからね

特にクロウは、顔にあんなにマーカー付けて…将来はどうなるのかと思ってたのさ」

 

「マーサさん……」

 

「けど、ちゃんと前を見て生きてる事が分かった

あの子の良さを分かってくれてる子もいるから、それで良いんだよ

ユキちゃん、どうなるにしろ自分の納得のいく答えを出すんだよ」

 

「…はい」

 

「って、話をけしかけた私が言えたセリフじゃないけどね」

 

「ふふふ…」

 

話をしているとチーンッとオーブントースターから音が鳴り、甘い香りが漂ってきた

 

「おっと、ちょうどいいタイミングで出来たね

…うん、良い焼き色だ」

 

鍋つかみを付けてオーブントースターからマドレーヌを取り出したマーサは、器にマドレーヌを盛り付けた

 

「さてと、あの子達はちゃんとやってるかねぇ?」

 

マーサがマドレーヌを、ユキが飲み物とココロのワンピースを持って、ギンガ達のいる部屋に歩き出した

 

 

 

 

 

「アンタ達、ちゃんと勉強してるかい?」

 

「あ、マーサ!!」

 

「ユキお姉ちゃん!!」

 

「お待たせ、これでどうかな?」

 

机に飲み物を置いたユキは、ココロに直したワンピースを差し出した

 

「直ってる!!

ありがとう、お姉ちゃん!!」

 

「どういたしまして

それで皆、勉強は終わったの?」

 

「ダイチが分からない所が有るって言ってる~」

 

「ぇ、どこ?」

 

「ここぉ……もう訳が分かんないよ!!」

 

ダイチが差し出した問題集に目を走らせたユキは、納得がいったように頷いた

 

「あぁ…コレは、皆にはまだちょっと難しかったかもね

これはね、先にここの括弧の足し算から計算するの」

 

「え?

でも掛け算の方が先なんじゃないの?」

 

「普通はそうなんだけど、こういう問題も有るのよ

やってみて」

 

「うん…」

 

ダイチが鉛筆を走らせて答えを書き終わると、ユキは優しくダイチの頭を撫でた

 

「良く出来ました、正解よ」

 

「本当!?

やったぜ!!」

 

「皆勉強は終わったね?

じゃあ机の上を片付けて、おやつにしようか」

 

《はーい!!》

 

子供達が勉強道具を片付けている間に、マーサとユキはマドレーヌと飲み物を机に列べた

 

「今日はマドレーヌだよ」

 

《いただきまーす!!》

 

子供達は我先にと、マドレーヌを掴んで食べ始めた

 

「おいしいー!!」

 

「甘ーい!!」

 

「オレ、おかわり!!」

 

「オレも!!」

 

「こらアンタ達、ゆっくりよく噛んで食べな」

 

「もう、ポロポロ溢しちゃって…」

 

子供達の食べっぷりに、マーサとユキは口元に笑みを浮かべながら世話をしていた

 

 

 

 

 

おやつを食べ終わった子供達が外で遊んでいる間、ユキはマーサと一緒に洗濯物を取り込んでいた

 

「折角来てくれたのに、手伝わせて悪いね」

 

「いえ、これくらいならお安い御用です

むしろ私の方が、マーサさんや子供達から元気もらえてるくらいです」

 

「そうかい?

本当に助かるよ

…それにしてもユキちゃん、子供の世話上手いね」

 

「え……?」

 

「ココロのワンピースや、ダイチの勉強とか…あの子達の事をちゃんと想ってやってくれてる

もしかしたら、保育士の才能が有るのかもしれないね」

 

「私が、保育士…?」

 

ユキは手を止めて、マーサに言われた一言を繰り返した

 

「あくまでも私がそう思っただけだよ

さ、とっとと片付けちゃおうね」

 

「ぁ、はい」

 

 

 

 

 

……洗濯物を片付け終わると、遊星達は見知らぬ老人を連れて帰って来た

 

「帰ったぞー!!」

 

「あ、クロウ兄ちゃんだ!!」

 

「お帰りー!!」

 

「お帰りなさい皆」

 

「─おお!!

この子がここにいる娘か!!」

 

「え…?」

 

見知らぬ老人の一言に、ユキはキョトンと目を瞬かせた

 

「ああ~!!

悪ィユキ、ちょっとこっち来てくれ!!」

 

「ぁ、わぁ…!!」

 

クロウに手を引かれ、ユキは遊星達から引き離された

 

(…うぅ、昼間マーサさんとあんな事話したからかな…?

変に意識しちゃう……//)

 

そんなユキの心情に気付く者は、誰もいなかった

 

 

 

「…………っつー訳であのじいさん、息子の為にあの家に残ってたんだ

けどその家も壊れちまってな……「ハウスになら、息子も娘も孫もいる」って言っちまったんだよ」

 

「なるほど、そういう事なら……」

 

「悪ィな、気ィ使わせちまってよ」

 

「ううん、大丈夫」

 

 

 

 

 

…夕方、マーサハウスの前には鉄さん特性のスターダスト・ドラゴンの巨大模型があった

 

子供達から褒められ、鉄さんは笑いながら照れていた

 

「ああ、クロウ丁度いい

肩揉んでくれ肩、すっかり凝ってしまってのう」

 

「えっ!?

なんでオレが!?」

 

「馬鹿もん、親の肩揉むんは息子の役目と決まっとるじゃろ」

 

「ったく……」

 

渋々と、クロウは鉄さんの肩を揉み始めた

 

「はぁ…気持ちいいのう……すまんがもう少し強くできるか?」

 

「ん?

強くって…こうか?」

 

クロウが強めに肩を揉むと、グキッといけない音が響いた

 

「あ痛たたっ!!」

 

「だ、大丈夫かじいさん!?」

 

「バッカモン!!

もっと年寄りを大事にせえ、このバカ息子!!」

 

「やれやれ……」

 

やりとりを見ていた遊星達は、盛大に笑った

 

一緒になって笑いながら、ユキはマーサハウスの子供達を見ていた

 

(保育士、かぁ……)




ユキちゃんは設定では現在15歳、思春期まっただ中ですよね
思春期と言えば、色んな事に迷って悩む時期…というのが定番でしょう、多分

進路や恋愛、その他諸々……ユキちゃんは思春期の女の子だという事を再確認したかった為に、マーサとの話を入れました

母親相手だと言い難い事という事も有りますよね?
「母親がダメなら、マーサの出番!!」…というのが私の勝手な見解です

次回は、また新しいキャラを出そうと思います
設定もデッキも用意して有るけど、デュエルを書くのはまたややこしそうです…書きますけどね(笑)
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