会場内の廊下を歩いていた遊星は、向かい側の角の方から来る十六夜 アキと会い視線が合うと同時に2人は立ち止まる
アキは右腕を押さえながら遊星を睨み付け、遊星も右腕を押さえた
「……何故忌むべき印なんだ?
痣はお前にとって何なんだ?」
「私は、この印を持つ者を憎む……嫌悪する」
「…妹が言っていた事を無視するのか?」
「…やはり、お前が……!!」
アキが声を荒げる前に、龍亜と龍可が目を覚ましたユキを連れてやって来た
「遊星ー!!」
「もー、こんな所にいた」
「もうすぐ決勝だよ!
あ、ユキ姉ちゃんの姉ちゃん!!」
アキは龍可を見ると、一瞬哀しそうな顔になった
「…姉さん」
「…あなたにあんな嘘をついたのは、この男?」
「「あんな嘘」?
…何の事?」
「あなたを受け入れようとしているというのは、この男?」
「…そうだ」
ユキと向かい合うアキの後ろで、遊星は言い切った
「ユキはオレ達の仲間だ」
「嘘よ
力を持つ者を仲間と言えるのは、力を持つ者…ディヴァインだけ」
「そんな事無い!!
オレ達はユキ姉ちゃんの仲間だもん!!」
言い切る龍亜の隣で、龍可は1つ頷いた
「…人は必ず裏切るモノ、それは誰であれ変わらない」
「─ヒーヒッヒッヒッ
これはこれは十六夜様」
ピリピリした空気の中、イェーガーが現れた
「先程のデュエル、感服つかまつりましたよ
決勝戦を前にゴドウィン長官が一言ねぎらいの言葉をと申しておりまして
ご一緒して頂けますでしょうか?」
「─…アキは疲れています」
アキの後ろから、アルカディア・ムーブメントの総帥 ディヴァインが部下を連れて来た
「あなたは?」
「…ディヴァイン」
現れたディヴァインに、ユキは忌々しそうに呟いた
「アキの保護者…とでも言っておきましょうか
もっとも、あなた方のほうでもう調べはついているのでしょうが
決勝を前に少しでもアキの体調を回復しておかなければなりません、お察しを」
アキを部下に任せたディヴァインは、ユキに向き直り穏やかな口調で話し出した
「探したよ、ユキ
さあ、一緒に帰ろう」
「お断りよ」
「何故だい?
君の居場所は我々の所しか無いじゃないか」
「さっきのデュエルでの話を聞いていたら、答えは分かるハズよ」
ディヴァインは肩を竦めて、呆れたようなため息をもらした
「やれやれ、君は反抗期のようだね
…まあいいさ、いつでも帰っておいで」
ディヴァインはそのままアキ達を追って行った
「フン、神気を気取るイカサマ集団が…」
(どの口が言うのやら…)
鼻を鳴らすイェーガーの前に遊星が立った
「貴様、ラリー達をどこに……?」
「ご自分のお立場をお考えに
さもないと……」
イェーガーは厭らしい笑みを浮かべて、去って行く
(どいつもこいつも、ロクな奴がいないのね…)
「やっぱり恐いなぁー、魔女は」
「……恐くないよ」
怯えたような龍亜に、龍可は右腕を押さえて言った
「どうした?」
「うん、痛くて…ズキズキする
あのお姉さん見てると…この腕と心が……」
「……きっと姉さんは、龍可も私達と同じだと思っているんだと思う」
「どういう事?」
「…龍可にも人とは違う力が有るでしょう?
だから、自分と重ねているんだと思うの」
…一方、アルカディア・ムーブメントのトラックの中でアキが休息をとっているとディヴァインからの画像通信が入った
『アキよ、分かっているね?
この大会で我らの存在を明らかにした事により、リスクは格段に増えていく
さっきのようなアキを惑わす輩が、これからも付きまとってくるだろう
ユキのように、離脱する者もね』
「無駄な事です
私の心はディヴァイン……あなたによって正しく導かれている」
『アキは賢いな
そう、彼等イリアステルの野望は悪しき者の象徴、赤き竜の復活になる
人々は知らない……赤き竜によって彼等が世界を跪かせようとする行為
それに気づいているのは、神より受けられた能力を持つ我々だけだ』
「分かっています」
『もうすぐ決勝だ
対戦相手の不動遊星……あの男もイリアステルの一員かもしれない…だが、ユキ以上の力を持つアキなら大丈夫だ
遊星を倒しイリアステルの傀儡 ジャックを破った時、人々の声は称賛に変わるだろう
理想成就の時は近い』
「はい」
『─そしてその力で操られているユキを取り戻そう』
「え?
それはどういう…?」
『ユキが何故あんなでたらめを信じこんでいるのか…それはユキと一緒にいる不動 遊星による洗脳だ
まずは奴を倒す事で、妹をお前の手で取り戻すんだ』
「(そんな事が…)
わかりました」
(拒絶と怒り……2つの感情が向けられているのは、あの痣……)
ユキ達を客席へ行かせた遊星は、控え室で自分の右腕を見る
(その中に…十六夜のもう1つの感情が隠されているとしたら…この痣は、確実にオレ達を繋いでいる……奴らはそれに気付き、オレ達を利用しようとしているのか?
十六夜を取り巻き、ユキを連れ戻そうとしたあの連中…結局、シグナーとしての彼女達を……オレ達は利用されてはいけない
そのためにも、彼女の閉ざされた心……それをこじ開け、本当の十六夜に会わなければ……)
遊星はデッキホルダーからスターダストのカードを出した
(ユキの…仲間の為にも、全力で行くしかない
オレの存在をかけて…十六夜と向きあわなければ
そして、この闘いの果てに……お前がいる)
…決勝戦前のデュエル会場では、観客達が遊星を応援していた
「何だよ皆して…何とか返ししてさ」
「手の平返し、でしょ?」
「あのお姉さんが怖いなら、来なければいいのに」
「ワシはちっとも怖く無いんじゃがのぅ」
「それが人間の厭らしい所だからな」
「ええ…」
龍亜達に答えたのは氷室と、フードで顔を隠したユキだった
「恐ろしい存在が目の前で滅ぶ姿を見たいっていう欲望が、ここにいる観客達を集めたのよ」
『イェーイ!!
いよいよ決勝戦だぁ!!
この決勝戦のウィナーがキングへの挑戦権を得る!!
偉大なキングに拝謁し、下克上のチャンスを勝ち取るのはどっちだー!!?
1人目のチャレンジャー、黒薔薇の魔女 十六夜 アキ!!
そして、サテライトの流れ星 不動 遊星!!』
司会の実況と共に、遊星とアキがデュエルディスクを構えてステージに出てきた
(…よし
こっちが姉さんの攻撃が飛んで来る方向ね……いざとなったら、私の力で姉さんを止めないと…)
ユキは服の内側に忍ばせたデュエルディスクにそっと触れた
「「─
そして、遊星とアキのデュエルが開始された
アキ LP 4000
遊星 LP 4000
「私のターン、ドロー!!
『アイヴィ・ウォール』を守備表示で召喚
カードを1枚伏せて、ターンを終了」
アキのフィールドに、蔓の壁のモンスターが現れた
アイヴィ・ウォール
☆2 地属性 植物族 ATK 300 DEF 1200
「オレのターン
『スピード・ウォリアー』を召喚!!」
遊星のフィールドに、薄緑色の戦士が現れた
スピード・ウォリアー
☆2 風属性 戦士族 ATK 900 DEF 400
「スピード・ウォリアーは召喚したターンのバトルフェイズに、攻撃力が2倍になる」
スピード・ウォリアー ATK 900→1800
「スピード・ウォリアー、アイヴィ・ウォールに攻撃!!」
「アイヴィ・ウォールが攻撃対象になった時、相手フィールド上に『アイビー・トークン』を守備表示で特殊召喚する」
「─ソニック・エッジ!!」
遊星のフィールドにトークンが召喚されると同時に、アイヴィ・ウォールはスピード・ウォリアーに蹴飛ばされて破壊された
アイヴィ・トークン
☆1 地属性 植物族 ATK 0 DEF 0
「このトークンは…ターン、エンドだ」
「私のターン、ドロー
─リバースカード オープン、永続罠『カースド・アイヴィ』を発動
その効果により、墓地からアイヴィモンスターを表側守備表示で特殊召喚できる…私はアイヴィ・ウォールを呼び戻す
カースド・アイヴィはアイヴィ・ウォールに装備され、フィールドからなくなった時、装備モンスターも破壊する」
(またアイヴィ・ウォールを?
オレの場にアイヴィ・トークンを増やそうというのか?)
遊星が自分フィールドのアイヴィ・トークンを見るのを見て、観客席の龍亜達は不思議そうにしていた
「お姉さんの魔女さんは、一体何がしたいのかのぅ?」
「相手にトークンを渡したりしても、向こうを有利にするだけなのにさ」
「いいえ、違うわ」
矢薙と龍亜の意見に、ユキはフードの端を引っ張り顔を隠しながら答えた
「どういう事?」
「…姉さんの上級モンスターは、ブラック・ローズ・ドラゴンだけじゃないでしょ?」
「まさか、嬢ちゃんとのデュエルで出した、あのモンスターに効果か…!?」
(コイツが破壊された時、コントローラーは300ポイントのダメージを受ける)
「ターンを終了」
「オレのターン!!
戦士族のスピード・ウォリアーをリリースして『ターレット・ウォリアー』を特殊召喚!!」
スピード・ウォリアーが消え、薄茶色の兵器のようなモンスターが現れた
ターレット・ウォリアー
☆5 地属性 戦士族 ATK 1200 DEF 2000
「ターレット・ウォリアーはリリースした戦士族モンスターの攻撃力分、攻撃力をアップ!」
ターレット・ウォリアーがオーラに包まれていく
ターレット・ウォリアー ATK 1200→2100
「ターレット・ウォリアーで、アイヴィ・ウォールを攻撃!!」
ターレット・ウォリアーの装備の砲身が、アイヴィ・ウォールに向けられる
「アイヴィ・ウォールが攻撃対象にされた事により、相手フィールドにアイヴィ・トークン1体を守備表示で召喚」
遊星のフィールドに、2体目のアイヴィ・トークンが召喚される
「─リボルビング・ショット!!」
「アイヴィ・ウォールが破壊された事によって、カースド・アイヴィも破壊されるが、このカードが墓地に送られた時、相手フィールドにアイヴィ・トークン2体が守備表示で特殊召喚される」
遊星のフィールドにアイヴィ・トークンが更に2体に増え、遊星のモンスターゾーンは埋め尽くされた
「(オレの場を埋め尽くそうというのか…?)
ターンエンド」
「私のターン、ドロー
─手札から魔法カード『偽りの種』発動
手札からレベル2以下の植物族モンスター1体を特殊召喚できる
現れよ『ダーク・ヴァージャー』!!」
フィールドに葉に巨大な目を持つ、植物モンスターが現れた
ダーク・ヴァージャー
☆2 地属性 植物族 ATK 0 DEF 1000
「そしてダーク・ヴァージャーをリリース!!
『ローズ・テンタクルス』をアドバンス召喚!!」
ダーク・ヴァージャーが消え、薔薇のイカのようなモンスターが現れた
ローズ・テンタクルス
☆6 地属性 植物族 ATK 2200 DEF 1200
「やっぱり…」
険しい表情で、ユキはステージのアキを見つめていた
「ローズ・テンタクルスでターレット・ウォリアーを攻撃!!
─ソーン・ウィップ!!」
ローズ・テンタクルスの触手のような棘を受けたターレット・ウォリアーは、一撃で破壊された
遊星 LP 4000→3900
「ふぅ~、たった100ポイントで済んで良かったのぅ」
「そんな訳無いじゃん」
「へ?」
「ユキさんが言ってたじゃんか
相手はあのモンスターの効果の為に、トークンを召喚したって」
「そう…この状況は、ローズ・テンタクルスの効果を思い切り発揮出来る状況よ」
「まだだ
ローズ・テンタクルスはバトルフェイズ開始時、相手フィールドに存在する植物族モンスター分、攻撃回数を増やす事ができる
そして植物族モンスターを戦闘で破壊した時、相手プレイヤーに300ポイントのダメージを与える」
「じゃあ後、4回も攻撃が…!?」
「しかもローズ・テンタクルスの効果で300、アイヴィ・トークンが破壊された時の効果で300…1回の攻撃の度に600のダメージかよ!?」
次々に逃げ出して行く観客達の中、龍亜達は残っていた
氷室と庇われる龍可はアキのコンボに、目を見開いてステージを見ていた
「ローズ・テンタクルスでアイヴィ・トークンを攻撃!!
─ソーン・ウィップ ワン!!」
1体目のアイヴィ・トークンが破壊されつつ、蔓が遊星の右腕に巻きついていく
逃げなかった観客達が物影に隠れて衝撃を防ぐ中、アキの攻撃は続いていく
「─ソーン・ウィップ ツー!!」
遊星 LP 3300→2700
「─ソーン・ウィップ スリー!!」
遊星 LP 2700→2100
アイヴィ・トークンが破壊されると度に、シュルシュルッと遊星の手足に蔓が巻き付いていく
「くっ……!!
(拒絶と怒り……確かにこの痛みは十六夜の叫び
だが…感じる、お前のもう1つの感情!!)」
「ハァ…ハァ……これが最後の攻撃
─ラスト ゾーン・ウィップ!!」
体に巻きついた蔓が遊星を空中へ持ち上げる
「くっ……お前……!?」
遊星はアキの口元が緩んでいる事を見逃さなかった
次の瞬間、空中に持ち上げられていた遊星は勢い良く地面に叩きつけられた
「うわぁっ!!」
《遊星/さん/あんちゃん!!》
龍亜達が一斉に叫び、遊星はフラフラと立ち上がる
遊星 LP 2100→1500
「オレの…ターン……『シールド・ウォリアー』を……守備表示で、召喚……」
フラフラのままカードを引いた遊星のフィールドに、盾の戦士が現れた
シールド・ウォリアー
☆3 地属性 戦士族 ATK 800 DEF 1600
「カードを2枚伏せて、ターンエンド……」
ハァハァと息を絶え絶えにしているアキは、顔は楽しそうにしていた
「─ようやく分かった……お前の拒絶や怒り…その先にあるもう1つの感情
十六夜 アキ…お前は破壊を……その力を楽しんでいる
その力に愉悦を感じている」
「私が……破壊を楽しんでる…?」
自分の感情に気付いていないように、アキは遊星の一言を繰り返した
(遊星さんの言い当てた姉さんのもう1つの感情…それは正しい……そう思っていないと、私達は……)
フードを目深に被ったユキは、続けられるデュエルを悲しそうに見つめていた
「私のターン、ドロー
─永続魔法『アイヴィ・シャックル』発動
相手フィールド上にいる全てのモンスターを私のターンの間、植物族にする事ができる
お前のシールド・ウォリアーを戦士族から植物族に変更する」
シールド・ウォリアーがあっという間に、全身に蔓が巻かれた
シールド・ウォリアー 戦士族→植物族
「そしてローズ・テンタクルスの効果
バトルフェイズ開始時に、相手フィールドに存在する植物族モンスター1体につき1回、攻撃回数を増やす事ができる……よって、ローズ・テンタクルスは2回の攻撃が可能となる
ローズ・テンタクルスでシールド・ウォリアーを攻撃!!
─ソーン・ウィップ!!」
シールド・ウォリアーが破壊され、攻撃の衝撃が遊星や観客達を襲う
「現在シールド・ウォリアーは植物族
ローズ・テンタクルスは植物族モンスターを破壊した時、相手プレイヤーに300ポイントのダメージを与える」
遊星 LP 1500→1200
破壊された物を見て楽しそうに笑うアキに、遊星は自分の考えに確信を持っていた
「やはりそうなのか…お前は……」
遊星の一言で、アキは我に帰ったような反応をした
「ローズ・テンタクルスで2回目の攻撃!
相手プレイヤーにダイレクトアタック!!」
「─罠カードオープン、『カード・ディフェンス』!!
手札のカード1枚をコストに相手モンスター1体のダイレクトアタックを無効にし、その後カードを1枚ドローする!!」
「ターンを終了する」
「……十六夜、お前は痛みを与える事を喜んでいる」
「やめろ…何を言っている」
「……オレのターン
手札より『ジャンク・シンクロン』を召喚!!」
遊星のフィールドに、オレンジ色の機械のような戦士が現れた
ジャンク・シンクロン
☆3 闇属性 戦士族 ATK 1300 DEF 500
「ジャンク・シンクロンの効果により、自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスターを1体 守備表示で特殊召喚する!
スピード・ウォリアーを特殊召喚!!」
ジャンク・シンクロンの隣に、青いスピード・ウォリアーが戻ってきた
「─レベル2 スピード・ウォリアーにレベル3 ジャンク・シンクロンをチューニング!!
シンクロ召喚!!
─出でよ『ジャンク・ウォリアー』!!」
遊星のフィールドに、紫色の機械のような戦士が現れた
ジャンク・ウォリアー
☆5 闇属性 戦士族 ATK 2300 DEF 1300
「更に手札から装備魔法『ジャンク・アタック』を発動、ジャンク・ウォリアーに装備!
ジャンク・ウォリアー、ローズ・テンタクルスを攻撃!!
─スクラップ・フィスト!!」
ジャンク・ウォリアーの拳の一撃が、ローズ・テンタクルスを破壊した
アキ LP 4000→3900
「更にジャンク・アタックの効果!!
装備モンスターがバトルによってモンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!!」
アキ LP 3900→2800
「ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー
永続魔法 アイヴィ・シャックルの効果により、ジャンク・ウォリアーを戦士族から植物族へ」
ジャンク・ウォリアーの体に、蔓が巻き付いていく
ジャンク・ウォリアー 戦士族→植物族
「チューナーモンスター『コピー・プラント』を召喚!!」
アキのフィールドに、ねじ曲がった樹のモンスターが現れた
コピー・プラント
☆1 風属性 植物族 ATK 0 DEF 0
「コピー・プラントは1ターンに1度、フィールド上に存在する植物族モンスターを選択し、レベルを同じにする事ができる
ジャンク・ウォリアーのレベルをコピー!!」
コピー・プラント ☆ 1→5
「あれぇ?
レベルだけコピーして何するつもりだい?」
「「だーかーらぁー!!」」
何度目か分からない矢薙の質問に龍亜と天兵はまたツッこんだ
「来る……!!」
その横で、ユキはアキの次の手に確信を持っていた
「墓地に眠るダーク・ヴァージャーの効果発動!!
植物族のチューナーモンスターを召喚した時、墓地より特殊召喚する事ができる
─レベル2 ダーク・ヴァージャーにレベル5 コピー・プラントをチューニング!!」
2つの光の玉になったダーク・ヴァージャーが、5つの光の円になったコピー・プラントをくぐり抜ける
「─冷たい炎が世界の全てを包み込む 漆黒の華よ 開け!!
シンクロ召喚!!
─現れよ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」
アキのフィールドに黒薔薇の竜が現れると同時に、観客達は怯え遊星達の右腕に痣が浮んだ
ブラック・ローズ・ドラゴン
☆7 炎属性 ドラゴン族 ATK 2400 DEF 1800
「ブラック・ローズ・ドラゴンのモンスター効果
墓地の植物族モンスター1体を除外する事でこのターンの間、相手モンスター1体の攻撃力を0にする事ができる
─アイヴィ・ウォールを除外、ローズ・リストリクション!!」
ブラック・ローズ・ドラゴンの棘が、ジャンク・ウォリアーに巻き付いて力を奪っていく
ジャンク・ウォリアー ATK 2300→0
「ジャンク・ウォリアー!!」
「ブラック・ローズ・ドラゴン、ジャンク・ウォリアーを攻撃!!
─ブラック・ローズ・フレア!!」
「─墓地からシールド・ウォリアーの効果発動!!
墓地にあるこのカードを除外する事で、モンスターの戦闘による破壊を無効にする」
「だが、戦闘ダメージは発生する」
「─罠カード オープン、『スピリット・フォース』!!
プレイヤーが受ける戦闘ダメージを1度だけ無効にする!!」
攻撃がかわされて、観客席に炎が飛んでいく
「ひぇーっ!!
こっち来たァー!!」
「チィ…!!」
矢薙が怯え氷室が咄嗟に子供達を庇う中、前に立ったユキは隠していたデュエルディスクを起動させた
(─罠カード『神風のバリア-エア・フォース-』!!)
ユキが発動させ現実化した風のバリアが、ブラック・ローズ・ドラゴンの炎を吸収した
「ぁ……」
「ユキ姉ちゃん!!」
だがその衝撃でフードは外れ、ユキは素顔を観客達に晒していた
「魔女だ!!」
「こっちにも魔女がいた!!」
「化け物め!!」
容赦無い罵倒がユキに浴びせられる中、氷室に庇われていた龍可が起き上がった
「─ちょっとあなた達!!
さっきは誰のおかげで助かったと思ってるのよ!!」
「そうだぞ!!
ユキ姉ちゃんが力でオレ達を守ってくれたから、みんな怪我して無いんじゃないか!!」
「助けられたのに、そんな事を言うなんてあんまりだよ!!
みんな最低だ!!」
龍可に続くように怒鳴り出す龍亜と天兵に、ユキはそっと肩に手を置いて首を横に降った
「ユキさん…?」
「みんな、ありがとう……けど、良いのよ
我が身愛しさに他者を蔑ろにする……この力を持ってしまってから、私は人間の浅ましい所を嫌になる程見ているから…この社会で生きる殆どの人間が、どんな者なのかをもう知ってる…」
肩から手を離したユキは、ステージのアキを見つめた
「…それは姉さんも同じ
そして遊星さんが見抜いた破壊を楽しむ心…それは、そう思っていないと自我を保てなかったから生まれた哀しい感情よ……本心で有るかどうかは、別の問題だけどね」
「ユキさん…」
そう言ってユキは、龍亜達に背を向けて歩き出した
「お嬢ちゃん、どこに行くんだい…?」
「…私がここにいる事がバレたんですもの
ここにはいない方が良い…氷室さん、後をお願いします」
ユキはそのまま、観客席を出て行った
観客席を出たユキは、無人の控え室に腰を下ろした
「はぁ……やっぱり、力を使うとスゴく疲れる……コントロールは結構出来るようになったハズなのに…」
デュエルディスクを外してテーブルに置いたユキは、右腕の小さな羽の痣を見ていた
(この痣に一体何の意味が有るというの……?)
ユキは力無くモニターのスイッチを入れて、モニターに映る遊星とアキのデュエルを見始めた
アキのフィールドにはブラック・ローズ・ドラゴンの他に、『フェニキシアン・クラスター・アマリリス』が召喚されていた
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
☆8 炎属性 植物族 ATK 2200 DEF 0
そして遊星のフィールドには、『スターダスト・ドラゴン』と装備魔法『プリペント・スター』、そして伏せカードが1枚あった
スターダスト・ドラゴン
☆8 風属性 ドラゴン族 ATK 2500 DEF 2000
「……楽しくないんだろ?」
「うるさい!」
「…苦しいんじゃないのか?」
(どうしてこの痣が疼く!?
どうして楽しくない?
どうして苦しい?)
「妹が変わったように、今度はお前自身が変わる時がやって来たんだ
お前を苦しめてきた破壊への喜び、その痛みが…同じ痣を持ったオレ達に共有する痛みに変わってきたんじゃないのか?」
痛む右腕を押さえながら、遊星は言った
「オレ達を導いたこの印…この痛みは何かを訴えている
その答えを得るには、自分で考えなければいけないんだ
その答えを、この痣は持っているんじゃないのか?
考えを預けるな!!
お前自身で考えるんだ!!
その為にお前の妹は…ユキはお前と真っ向から向き合ったんだ!!」
「魔女の私が、何を考える?
ディヴァインが私を導いて愛してくれればそれで…」
「─違う!!
お前がお前自身を愛するんだ!!」
「そんな事が出来れば…出来れば…出来ないから!!
苦しんでるんじゃないかっ!!」
悲痛な叫びと同時に、力の制御装置のアキの髪飾りが取れた
「─ブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動、ブラック・ローズ・ガイル!!
フィールド上の全てのカードを破壊する!!」
「何度でも受け止めてやる!!
全部吐き出せ!!
お前の悲しみを!!
─ヴィクティム・サンクチュアリ!!」
スターダスト・ドラゴンはブラック・ローズ・ドラゴンを受け止めて、互いのドラゴンは光となって消えた
「痛みが…薄らいでいく……」
スターダスト・ドラゴンに装備されていたプリベント・スターのカードが破壊された
「これでプリベント・スターの呪縛からフェニキシアン・クラスター・アマリリスが開放される、お前のフィールドはがら空き
ダイレクトアタックが決まれば、私の勝ちだ!!
全て無くなればいい…考えさせるな……お前はやはり忌むべき敵!!」
「─…だったら、どうして泣く?」
頬には涙が伝っていた事に気付き、アキはハッとして頬に指を滑らせた
「─罠カード『コズミック・ブラスト』
オレのフィールドのドラゴン族 シンクロモンスターがフィールドから離れた時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!!」
スターダストを型どったエネルギーがアキにぶつかり、ダメージの衝撃で魔女の仮面が割れて落ちた
アキ LP 1900→0
「助け……」
「十六夜…「ざまぁみろ魔女!!」
デュエルの決着が着き観客のアキへの罵声が酷くなる中、崩れ落ちたアキの傍に来たディヴァインがコートをアキに着せる
「よくやったね、アキ
さぁ、一緒に戻ろう」
ディヴァインに連れられて、アキは去って行った
「十六夜 アキ……」
遊星は右腕を押さえながら、アキの後ろ姿を見つめていた
「……人は異質な力を持つ何かを恐れ、その力が敗れる事を願う生きもの…」
デュエルの決着後のアキをモニターで見たユキは、そっと右腕を押さえた
(私の時よりも姉さんの反応がずっと大きかった…不動 遊星さん…頼んでもいないのに、姉さんの心を動かすなんて……あの人は、損得なんて気にしていないんだ…あの人を、信じて良いのよね……)
次でフォーチュン・カップ編も終わりです
ダークシグナー編では、デュエルは3回くらいは書きたいなと思ってます
折角D-ホイールを持ってる設定なので、ライディングデュエルも書きたいなぁ……スピードスペルを調べないと