雄英体育祭まで残り2週間、といったところでスタートです。
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※上鳴電気の個性「帯電」なのに「放電」になってました過去のネタメモを書いた自身の死を以てしてお詫びいたします
「雄英体育祭が迫っている」
相澤先生のひとことに教室が湧きたつ。
いやぁ……そうだよねぇ、テレビの向こうの景色じゃなくて、実際に自分が参加するとなると……そりゃ、アガるよね!
「え、でもヴィランに侵入されたばかりで大丈夫なんですか!?」
「逆に開催することで危機管理体制が盤石であると示すつもりらしい。 それに雄英の体育祭は最大のチャンスでもあるからな、その程度で中止していい催しでもない」
ちょっと原作を覚えているわたしにとって、この世界で生き始めてから「なぜ雄英体育祭がかつてのオリンピックに取って代わるもの」になったのか疑問だったのだが、実際にテレビで見て氷解したものだ。
個性を持つ人間は、持たない人間と、単純に身体能力のステージが違う。
出久の育成に携わってからはっきりと認識したが、例えば、『どんなに弱い個性だとしても、短距離走の教育を受けた個性を持つ人間の100m走は9秒を切る』とか。
そりゃ廃れるわけだ。
「年に1回、計3回だけのチャンス。 ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ!」
ダウナーな見た目のクセに相澤先生ってば盛り上げ上手。
とはいえ朝のHRで盛り上げられてもすぐに通常授業があるわけで。
そわそわと浮ついた空気のまま午前の授業を終えた。
「なんだかんだテンション上がるなァ!」
「競技次第ではアピールの場も多数あるだろうし」
「攻撃力、機動力、判断……昨今のプロは多くを求められる傾向にあるが……」
「2週間でどこまで伸ばせるか、だよね!」
「まァ1年って括りなら下馬評通りになりそうな部分あるけどなぁ」
切島くん、尾白くん、常闇くん、青山くん、瀬呂くんがお昼休みに集まっていた。
彼らを中心に1-Aがどんどん集まって話が盛り上がっていく。
それを尻目にわたしと出久、爆豪は2週間の強化スケジュールを練っている。
「身体能力の向上は2週間じゃ微増だし、今年も個性戦闘は1種目くらいはあるだろうから個性伸ばしが重要だと思うんだよね」
「わたしも同感。 ということで2週間分の特別強化プログラム組んだから確認しといて」
「できること全部やって備えるンじゃダメか」
「あー……やる? 超回復狙いで筋肉ブッチブチにして「治癒」で無理矢理できなくはないけど……死ぬほどキツイよ? 出久みたいになるけど体」
「望むところだろーが。 そもそも個性の出力も負けてて汎用性ぐらいしか勝ち目が無いってのに身体能力でも劣ってたらいつまでも追いつけんだろ」
「じゃあ僕のときみたいに特別講師を呼んどこうか」
「そうだね……いやまあ……マジで泣いても吐いても規定数までは筋破壊と治癒止めないから……後悔しないでよ……?」
「物騒な話してんなぁ」
お、上鳴くんとか珍しい来客だ。
割り込んで悪ぃなんて言うけど、チャラく見えてきみってばやっぱり雄英生だよね。
うんうん、出久と爆豪と良い友達になってくれそうだって思ってたよ。
「2週間特訓するんだろ。 足手纏いなのはわかってっけど、俺も混ぜてくれ」
「もちろん! 上鳴くんは今のところ1-Aで育てたい個性No1だからね! こっちから誘おうと思ってたんだよ!」
「……え、マジか」
目をまんまるにして驚く上鳴くんをフォローしようかと思ったら、隣にいた出久が不意な発狂を見せた。
「マジもマジだよ。 「帯電」って個性は素晴らしいよね。 恐らく今の上鳴くんは使い勝手の悪い一芸型の個性だと先のUSJで思ってたんだろうけど、解釈を広げれば広げるほどこのクラス、いや少なくとも学年で最も汎用性と戦闘力に秀でるとんでもないものになると僕は想像してるよ。 電圧も電流も大体の操作が可能だなんて、最低限の出力で鎮圧行動、高出力で戦闘行動の切り替えもできて使い方を変えれば磁力を生んだり発熱させたり、物理的な影響も発生させられるんだから」
その癖、ほんとどうにかしたほうが良いと思うなわたし。
でもまぁ、出久が楽しそうだから止めるに止められないんだけどね。
当の本人は爆豪に引っぱたかれて我に返ってるけど。
「……野良個性オタクが全部言っちゃったけど、そうなんだよね。 USJのテーザー銃みたいに、きみは決してチームワークで戦えないわけじゃないし、むしろ何でもできる遊撃手が向いてる。 そんな最高級の素材に手を加えないのは他ならぬわたしが許せない」
それにね、と間をおいて。
「ヒーロー免許取って現場に出れば誰だって横一線の「プロヒーロー」。 それまではみんな強くなるための時間なんだし、足手纏いなんて誰も思わないよ! 存分にわたしに、わたしたちに頼ってよ!」
にっこりと笑いかければ、なんだか泣きそうな上鳴くん。
おーよしよし、きみもきっと「帯電」の使い方についていっぱい悩んだんだろうな。
大丈夫、感動して胸がいっぱいなのは今だけだよ……すぐに多種多様な使い方を覚えさせて運用で頭をいっぱいにしてあげるからね……。
魔改造計画1号はきみだ、上鳴くん、楽しみだね。
「とりあえず上鳴くんは身体能力向上と個性強化と運用のトレーニングメニューを組むから、放課後に自主練参加でよろしく!」
「……あぁ! 俺、めっちゃ頑張る!」
「まぶしいなァ……」
「なんでジジイみてぇな反応してんだオメーは。 それよりそろそろ飯行くぞ」
わいわいがやがやとみんなで食堂へ向かう。
と、そのとき、扉の陰からオールマイトがひょこっと顔を出した。
「ちょうどよかった! 緑谷少年、爆豪少年、明々少女! お昼いっしょにどうだい?」
「わーオールマイト! 実はわたしも用があって探してたんです! それと上鳴くんもいっしょで良いですか?」
「うえっ、俺もいいんスか!?」
「もちろん! 私はそんな狭量な男じゃないぜ! みんな食堂の予定だったんだろう? ゆっくり話せなさそうだし、教師権限でちょっと外に食べに行こうか!」
あっ無邪気な笑顔、好き。
学校生活で以前より摂取できていないオールマイト成分を多量摂取し放心していると、着いたのは完全個室で防音対策済みの超お高い料亭だった。
なぜ。
いやわたしと出久は良いんだよ、こういう人だって知ってるから。
でも確実にビビってフリーズしてる爆豪と上鳴くんのことは考えてほしかったかなぁ!?
「……オイ、なんでメニューに値段が無ェんだ……」
「時価って、いくら……な、なぁ明々……俺、ちょっと怖ぇんだけど……」
「あはは、大丈夫大丈夫、オールマイトの奢りだからお腹一杯食べよ! わたしはどうしようかなー、すき焼き御膳にしようかなー」
「僕は牛カツ定食にしよう」
「私は特上刺身定食かな! ここは一味違うんだ……!」
お品書きを放り出して顔を真っ青にしながら目を白黒させるふたりを眺める。
これがヤオモモちゃんとか轟くんなら別なんだろうけど、一般家庭出身じゃちょっとハードル高いよね……いやまぁわたしたちもこれが日常ではないんだけどさ?
「もしこだわりがないなら牛カツ定食がいいよ! なんせここはウシが美味い!」
「それでいいわ……」
「俺もそれで……」
注文時に出久が謎の気を利かせて「牛カツ倍の大盛で、このふたりも」なんて言ったから声なき悲鳴のようなものが聞こえたけど。
それもまぁ食べ盛りの高校生だし、食べ始めればとりあえず緊張も解けていい感じだ。
「さて、食べながらで申し訳ないけどね。 君達、今日の放課後から自主練棟の申請出しているだろう? なら私に声が掛かるかなと思ってね!」
「流石オールマイト、毎日は難しくとも3.4日に1回くらい来てくれると助かります」
「隔日なら行けそうだ! ただ、私が行けない日にはちゃんと他の先生に指導をお願いすること!何か起きる、ような君達じゃないけれど、やはり生徒だからね! 上鳴少年もありがとうね! 明々少女とともにみっちり鍛えてあげよう!」
「おお……オールマイトに見てもらえるとか、感動すンなぁ……」
HAHAHA!!と豪快に笑うオールマイトに感動して浮ついた上鳴くん。
だがきみはオールマイトに鍛えてもらうには貧弱だからなぁ……とりあえずはわたし預かりかな。
「ご馳走様でした! ひゃー、肉が溶けたなぁ! 美味しかった!」
「牛カツ初めて食ったけど他の食えんわな……」
「俺も。 ちょっと衝撃的過ぎた」
「ここは別格だよね。 まぁちゃんと桁違うから当然っちゃ当然だ」
「桁……??」
――――――――――
「で、緑谷と爆豪はどんなメニューなんだ?」
「僕はひたすら個性無しで筋トレ」
「俺ぁオールマイトにひたすらブン殴られて「治癒」されんのを5セット。 そのあと体力が残って動ければ個性の左右差の調整だ」
「血も涙もねぇメニューだな!? えっ俺生きて帰れんのかなぁ……」
放課後、先に自主練棟に着いていた上鳴くんがわたしを見て怯えてるんだけど何かしたっけ、まだ何もしてないよね?
「ビビってんじゃねーぞ。 オマエ、USJのときに腹ァ括ったんだろが」
「あー……思ったよりハズいな……やっぱわかる?」
「そりゃあんな顔見たらね。 ……というより、僕や勝己を超える可能性があるとすれば君だけなんだよ、上鳴くん。 これはそーちゃんの受け売りなんだけどさ」
プロヒーローからしても異常と言わしめる出久の個性、そして人間最高峰レベルの身体能力。
出久と比べれば見劣りはするものの、オールマイトにダメージを与えられる速さと強靭さをもつ脳無に追従し、僅かとはいえ有効打を与える戦闘面で超ハイセンスな爆豪。
現状では流石に比較対象が悪いと言わざるを得ない。
だが、正直に言おう。
過去から現在、ヴィジランテから始まる長いヒーローの歴史上、類を見ないほどの強個性が集る特異点が、今の世代だ。
だからこそ原作でAFOの討伐が成されたのだろうと思えるほどに。
「そん、なに買われてんの、俺」
その中で滅多にヒーローにならない電気系統個性、しかもよりによって「帯電」なんていう他の追随を許さない汎用性の塊。
OFAという個性の枠を外れたものが存在せず、順当に成長したのであれば次代のNo.1ヒーローは上鳴電気で間違いないほどに。
「もちろん一切の忖度はないよ。 いやーきみの個性が「蓄電」「発電」とか「生体電流」とかならちょっと困ったかもだけど、幸いにして「帯電」だからね!」
「それなんだけど、なんで「帯電」だから良いんだ? 俺、昔から周り巻き込むせいであんまいい思い出が無いんだけど」
やっぱりそうだよねぇ。
発動型で攻撃的、かつ範囲系個性はこどものコントロール能力じゃ難しいものがある。
まぁかつての被害やそこらへんはビルボードチャートTOP3らへんに入ってもらった後で後悔も反省も払拭してもらうことにしよう。
「簡単な話だよ。 「帯電」は体外に簡単に電気を放出できるからね。 他の電気系統の個性じゃ出力に不安があったり、そもそも戦闘用の強化が難しい個性も多いから」
放出できる、というのがミソである。
簡単に言ってしまえば「帯電」という個性を万全に使いこなせれば、OFA歴代継承者の個性が目覚めた出久以上に万能の働きを可能する。
それが「帯電」であり、現時点で130万ボルトの出力を誇る上鳴電気なのだ。
「さて。 では手始めに……」
「お、オテヤワラカニ……」
「きみには賢くなってもらいます」
「……は、え? この期に及んで勉強!? 特訓は!?」
「そりゃ、きみはまずフィジカルを鍛えるより個性の万能性を伸ばした方が圧倒的に伸びしろがある。 それに個性の使い方次第で身体能力は誤魔化せるから」
知識はちからなのだ。
電気系統だからね……まずは大まかに電気工学を叩き込んで、そこから物理学と自然科学に落とし込んでいくからね……覚悟の準備をしておいてね……?
「うっわ笑顔こわっ。 久しぶりに見たけど本気だねそーちゃん」
「このわたしの満面の笑みが怖いだと……? 見てみろこのぷりちーふぇいすを。 どこが怖い?」
「ワードセンスの古さも助長して余計にだよ」
「ちょっと困った、レスバに勝てない」
ふざけるのもそろそろ終わりにして。
「さて! 私が来たぞ爆豪少年! 覚悟はできてるかい!?」
「……おうよ! やるなら徹底的にだ!」
「強制的な超再生による筋肥大! めっちゃ痛いし泣くし吐くけど、私も緑谷少年も通った道だからね! 今日は5セットで、隔日でセット数も増やしてやっていくぞ!」
オールマイトも到着し、肉を打つくぐもった打撃音と悲鳴が響く自主練棟。
片や座学、片やひたすらに筋トレと、随分愉快な絵面となっております。
「ふふふ、2週間でプロ入りレベルにしたげるからね……弱音なんて吐く暇も与えないからそのつもりで……」
「弱音吐く暇も!? くっそ……なんとでもなる! やってやるぜ!」
「そういや、そーちゃんは、どうすんの?」
「え? わたしは当日不参加だからきみらや他に自主練したい子に付き合うよ?」
「「「「は???」」」」