ようやく雄英体育祭、開会式です。
主人公は不在です(?)
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ちょっと熱入って感想への返信がアレになることありますが、許してください……!!
[Side:緑谷出久]
雄英体育祭、当日。
1-A控室で入場待ちをしていると、扉がノックされる音に気付く。
「はーい?」
「あ……悪い、その、ちょっと知り合いに会いに来たんだ。 直前で申し訳ない」
ひょろっとした隈のある……1年生かな、誰かが訪ねてきた。
「あれー心操くんだ!」
「おお、心操! もしかして鍛え始めたか? 筋肉質になったじゃん」
「葉隠、砂藤、久しぶり。 明々は……いないのか。 というよりお前ら大丈夫だったのか? 昨日くらいから突然、ヴィランに襲われて撃退したとかって噂を聞くようになったから心配で」
ふぅん……鍛え始めて1.2ヶ月ってところかな……発動系個性……少なくとも増強型じゃないか。
B組ならもう少し育ってそうだから普通科。
あー、入試で知り合ってそーちゃんに脳焼かれたタイプかなぁ。
「箝口令出てたし、なんか報道もされてなかったと思うんだけど……」
「そうだな。 まぁでもほぼ無傷だぜ。 それよりほら、もう少し時間あるし中入れよ!」
「いや、邪魔になるだろ。 顔見て安心したし、戻るよ」
「……心操くん、だったよね?」
思わず話しかけてしまった。
彼には、熱がある。
ヒーローになるって決めて、それを心に焚べ続けている、熱が。
「そーちゃん……明々装ならきっとこう言う。「今のきみの現在地点を見よう。 そこに恥じることなんて無い」って」
「……!!」
「君の個性が競技にどう作用するか分からない。 ヒーロー科の入試で不足を知って、埋めている最中で、先を行く僕らとどれだけの差があるか……現実見るのは辛いかもしれない」
「ああ……分かってる。 俺はどこか諦めてて、ヒーローになるなんて口だけのやつだったけど……気付かされた。 「ヒーロー免許取って現場に出れば誰だって横一線の「プロヒーロー」だ」って。 待ってるとも言われた。 だから……!!」
自然と、彼と握手していた。
僕もこのイベントに浮かれていたのかもしれない。
でもこの出会いは必然で、僕ら1-Aも、彼の熱に中てられたんだ。
「いつか共に学べたらと思う。 心操くん、君を待っているよ」
「宣戦布告たぁヤル気あるな普通科ァ……いいぜ、しっかり叩き潰して差ァ見せたるわ……」
「ごめんな、こいつ最近アツいやつに飢えてて嬉しいみたいでさ! あ、俺は上鳴、んでこいつ爆豪で、こいつ緑谷ね!」
「お、おう……よろしく」
珍し、勝己が興味を持ってる。
……まァ、轟くんとかより、熱量あるし。
分かるっちゃ分かる。
「でも本当に無事でよかったと思う。 本番、俺も精一杯やるから、胸を借りるよ」
そうして去っていく心操くんを見送り、振り返る。
……ああ、いいね、みんなのその目。
雄英高校ヒーロー科ってブランドに目が眩んでるようなやつはいないだろうけど、「その他の学科に同じかそれ以上の熱量のやつがいる」とは思っていなかっただろう?
這い上がってくるやつが、どれだけ自らの心と身体を焚べて燃え上がっているか、知らなかっただろう?
僕は知っている。
だからこそ、僕は彼の先達として、みんなに告げなくちゃいけない。
「足元掬われちゃ、流石に格好つかないよね?」
ほら、燃え広がった。
「緑谷。 力の差は明確かもしれねぇが……オールマイトに目ぇかけられてるお前には負けられない理由がある。 ……お前には勝つぞ」
「おー、センセンフコク!」
「歴代最強の首席といえど、競技と戦略次第では下克上も成るだろう……」
「オイラだって条件次第で……」
「私も……目立たなアカン……!!」
そうこなくっちゃ。
「轟くん。 もちろん君の挑戦は受けるけど、理由があんまりにもつまらない。 正直見損なった感じすらあるよ」
「なんだと……?」
「だって僕らは雄英体育祭で競うんだ。 オールマイトとエンデヴァーの代理戦争をするわけじゃない」
トップヒーローのふたりの確執は、みんなが知っている通り。
No1ヒーローを意識し過ぎているNo2。
その力差は歴然……とはいえ、No2からその下ももちろん力差の開きはかなりのものだが。
そしてその弟子(公認ではないが)と息子が同学年で、はっきりと順位付けされる……まぁ、エンデヴァーが好きそうなシチュエーションではある。
でも、僕らは僕ら、緑谷出久と轟焦凍だ。
「君は随分と傲慢だ。 僕を気にするのは別にいいけど、君の足を掬うやつは他にもいるよ?」
「……関係ねぇよ。 全員越えりゃいい話だろ」
分かってないよ、君は。
上を見るのは大事なことだけど、上だけ見てても良いものじゃない。
積み上げるなら台座は広く大きく、だ。
「……さぁ、入場の時間だ! 整然と! 並んで入場しよう!」
飯田くんの言葉に先程までのわいわいとした感じはなく、無言で整列する。
言ってしまえば、雄英高校1年時点の格付けが始まるのだ。
みんな、本気だ。
「だからこそ負けられない。 そんな辛気臭い面のヒーローに誰が憧れるんだよ。 親子揃ってさ」
笑顔のないヒーローがいても良い。
それは人を救い悪を挫く真剣さの表れだから。
笑顔のヒーローがいても良い。
それは人々に安心を振りまく誠実さの表れだから。
しかし、ヒーローになることを、ヒーローとして力を付けることを、それ自体を目的にすることは、前提として間違っているんだ。
「何かを成すために」力を付けてヒーローになるのではない。
ヒーローになって「何かを成すために」力を付けるのだ。
「競技、組み合わせ次第だ」
「……勝己?」
「あの半分頭は他の奴らにゃ負けんだろ。 俺らでやるぞ。 誰がやっても恨みっこ無しだ」
「目的を履き違えてるのは俺でも分かる。 教えてやらなきゃちょっとかわいそうだよな」
「……はは、ホント頼りになるね君たち。 ヒーローってそんな気持ちでなるもんじゃないって、軽くぶん殴って教えてやろう」
きっと、そういうのじゃないだろ。
君の一歩目は、そんな、誰かの夢に歪められたもんじゃないはずだ。
「「ヘイエビバディ!! お待ちかねの雄英体育祭だァ!! 今年も産声を上げるヒーローの卵どもをご所望だろリスナーーー!?!?」」
ウォォオオオオオ!!!!!!
とんでもない歓声で迎え入れられ、ちょっとだけ緊張する。
なんせこのあと選手宣誓だ。
……まァ、勝己と上鳴くんとの約束もあるし、ちょっとかましてみよっかな。
「選手宣誓!! 生徒代表、緑谷出久!!」
相変わらずキワドいコスチュームのミッドナイト先生がいい笑顔でバラ鞭を振り回す。
というか宣誓はいいんだけど真正面に立たないでもらえないかな……普通に目のやり場に困る……。
「宣誓。 僕達雄英高校1年生は、ヒーロー倫理に基づき、正々堂々と自己アピールに励むことを誓います」
フツー!とかやったれ緑谷ー!とかあれがヒーロー科入試1位ってマ?とか聞こえてくる。
少し呆れた表情でシャラップ!なんて叫ぶミッドナイト先生だが、まるで効果はない。
ので、外骨格40%、右手を振り上げ、巻き起こる風圧で全てを黙らせる。
「「「……!?」」」
「イキってんなよヒーロー科。 斜に構えんなよ普通科。 やる気……っても経営科とかは厳しいか、まぁいいや。 下馬評知ってる? A組の入試1位と2位、推薦のエンデヴァーの息子。 あとは十把一絡げで、この3人がどんな成績を残すかってことしか注目されてない。 僕に言わせりゃくだらねー話だ。 僕か、それ以外か。 それだけだ。 余裕なんて無いんだよね君達。 もう少し現実見なきゃ。 自己アピールで先輩ヒーローに目ェ付けてもらう? ヒーローになるのが目的かな? 違うだろ? ヒーローになって「なにをするか」だろ? もっと必死になれよ、遊びじゃないぜ!!」
「先程の宣誓は撤回!!!
宣誓!!僕が1位になる!!!」
爆発したような観客からの歓声と。
殺気すら籠もる熱量の視線を背に受けて。
不敵な笑みを浮かべる勝己と上鳴くんと。
その奥で昏い光を宿した瞳の轟くんを見て。
僕はにっこりと笑ってやったんだ。