彼女もまた運命を歪められた存在ですので、間に合うのなら助けるでしょう。
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[Side:明々装]
さて。
なんか隣……1年の会場がとんでもなく盛り上がってるようだけど、まだ開会式じゃないのかな?
こっちも救護所の開設でバタついて見れてないけど、あとで見返せるように配信と別に録画してもらってるから楽しみだ。
「これ、こっちでいいかなー?」
「ありがとうございます! 皆さん怪我しないように気を付けてくださいね!」
おーう!と元気なお返事。
流石に1年間雄英を過ごしてきた先輩たちだ、ちょっと困ってるだけでも手を貸してくれる。
峰田くんほどじゃないけどナンパな人もいなくはないけど、こう、変にネットリした感じじゃないから許そう。
でもまぁ男女比がねぇ……普通科とかサポート科は意外にも半々くらいだけど、ヒーロー科になると男子のが圧倒的に多いし他の学部と関わりはどんどん薄くなるし……何より同じクラス内で男女の関係が生まれてしまうとインターンとか先輩ヒーローとか……ドロドロしてそう!
考えるのをやめた!
「さぁて、2年生の競技はなんだろな?」
初戦は借り物競争、個性使用可、妨害あり。
やっべぇでしょ、ちょっとわたし以外に救護できる人いないんだけど!!
流石に学祭だから大怪我とか再起不能にはならないだろうけどなんか殺気みたいなの漏れてる!!
「競技……開始ィ!!!」
「「「「うぉぉぉぉ潰れろォォォオオ!!!」」」」
風、炎、土、レーザー、爆発、洪水ともはや天変地異のそれだ。
そしてこの盛り上がり。
さては来年のわたしたちもこんなんだな……?
「準備はできてる、ようだね?」
「あ、リカバリーガール。 3年生のところは良いんですか?」
「あの子らの第1競技はサバイバル座禅だからね、怪我人が出なくていいさ」
サバイバル……座禅……???
「それよりほら、ギブアップがこっちに来てるよ。 「治癒」ほどじゃないだろうけど、手当くらいはしてやりな。 私は3年会場に戻るよ」
「は。 了解です」
思わず宇宙猫になってたけど、それはそれとして治療に当たる。
多少の擦り傷や切り傷、あとは個性的に戦えない人やサポート科が命からがら逃げてくる感じだった。
軽傷とはいえ初戦からこれとか2年生中々だぞ。
「いやーこれだよこれ! 自分にない個性浴びて吹っ飛んで後は観戦! コーラとポテトとホットドッグが美味い!」
先輩のセリフにドン引いてるけど周りはみんな、それそれみたいな顔しててここ怖いかも。
しかし盛り上がりはとんでもない。
むしろ3年生側はすごい笑い声が聞こえてくるも、爆発やらなんやらの派手な音は無い。
……やはりサバイバル座禅……何者だ……?
逆に1年会場は大盛り上がりだ。
多少の戦闘音のようなものと大歓声。
うおぉ早く出久と爆豪と上鳴くんの活躍が見たいぞ……オールマイトも1年会場だし……!!
「上位60名!! 勝ち上がったオマエラには休憩後……第2競技!! 3人一組でバベルの塔!!」
バベルの塔……?
と思っていたら、なにやら2年生の担当教諭に「混乱」の個性を持っている方がいるらしく、参加者の言語と身振り手振りを「混乱」させて規定の高さまでブロックを積むという、意思疎通が取れない見てて面白い競技だそうだ。
わたしこれから3年会場にいかないといけないんだけど……!!
普通に面白そうじゃん……なんでこういうときに見れないんだわたしは……!!!
「ちなみにどなたか3年生の第2競技知ってる人とかいます?」
「なんだっけ、激辛パン食い競争だっけ?」
「それ去年! 今年はヌルヌルボルダリングだよ!」
「ヌルヌル……???」
やりたい放題じゃん雄英……誰だよ競技決めたやつ……最高か?
取り敢えず3年のゴリラみたいなやつらがヌルヌルしてるところに行きますかね……。
「じゃあね1年! 手際よくて良かったよ!」
「2年の競技はアーカイブで見れるからあとで楽しんで!」
「ありがとうございました! またお願いします!」
やはり雄英高校、雄英高校は全てを解決する。
ヒロアカ世界は基本的に倫理観が欠如し、かつ治安も普通に悪いどこぞの青春アーカイブ、もしくはロスサントス的な魔境ではあるが、良い人は底抜けて良い人で助かる。
会場と会場をつなぐ巡回バスに乗って、少し溜息。
3年会場から1年会場はちょっと遠いので歓声や放送が聞こえないのでちょっとだけ気分が落ちる。
……1年の競技なんだろうなぁ、早く見たいなぁ。
「おや来たね。 じゃあ交代だ、私は2年の会場に行ってくるよ」
「はぁい。 ちなみに3年生どんな感じですか?」
「インターンとかもあるからね。 1.2年生と比べれば怪我は少なく、身体能力と個性の応用性が高い競技が多いから見てて面白いよ」
「なるほど」
サバイバル座禅にヌルヌルボルダリング、聞いてるだけだと随分と色物競技っぽく見えるけど……いやそれにしても結構アレな感じだけど……有用性がある……のか……?
取り敢えず3年生もアーカイブでしっかり確認しておこう、今度何かに使えるかもしれないし。
「じゃあね。 ……そんな顔するんじゃないよ。 昼休憩には間に合うようにあの子にも声かけてあるんだから、仕事はちゃんとしな!」
「もちろんちゃんとしますー! ちょっと寂しいのは汲んでくださいよもう!」
2年生は割と激しい戦闘があるからか救護所としてグラウンド内に設営していたが、1.3年生は医務室として会場内の個室が割り当てられている。
モニターで1.2年生の競技も一応見れるようになっているので、1年生会場を映してみる。
「……お? 騎馬戦……?」
残り時間は半分ほど。
1位が1000万ポイントとかクイズ番組かな、ちょっと笑ってしまう。
てか1位出久じゃなくて上鳴くんじゃん!
うっわぁ爆豪ブチギレてそう。
「にしてもなんか、面白いな。 全員別のチームなんだ」
ほぼ原作通り。
出久・お茶子ちゃん・常闇くん・発目ちゃん。
爆豪・切島くん・三奈ちゃん・瀬呂くん。
上鳴くん・轟くん・飯田くん・ヤオモモちゃん。
うぇー、現地で「解析」しながら見たかったなぁ。
「すんませーん! 処置願いまーす!」
「っはーい! ただいまー!」
気になるけどわたしはわたしのやることをしよう。
「これ」を使いこなさないことには、わたしの思い描く未来は来ないのだから。
それはそうといま怪我したら、医務はあの子か。
爆豪が怪我しなきゃ良いけど。
相性悪そうだし。
――――――――――
[Side:緑谷出久]
騎馬戦ではしてやられた。
逃げ切りに十分なポイントは稼いでたし、あとは上鳴くんから1000万強奪して勝つつもりが、勝己に先を越されて2位に甘んじてしまった。
うーん、やっぱりOFAがあっても相性やタイミングで勝敗が変わる競技ってのは上手くいかないものだなぁ。
「どォーだ出久ゥ!! 今回は俺の勝ちだ!! ……上鳴オマエ最後に気ィ抜いたか放電ヌルかったぞ」
「だぁー! 「
「あー、くそ。 開会式であんだけ言ったのに障害物競走も騎馬戦も2位ってちょっと恥ずかしいぞこれ……」
障害物競走。
1位上鳴くん、2位僕、3位勝己。
騎馬戦。
1位勝己チーム、2位僕らのチーム、3位上鳴くんチーム。
騎馬戦はチームだけど、それでも僕らでトップ3は獲得し続けている。
上鳴くんがダークホース扱いされて、実況解説のマイク先生と相澤先生が盛り上がっているのが実況から感じられてとても良い。
「……このあと昼休憩か。 取り敢えず、明々は戻ってくるんだよな?」
「そう聞いてるけど……まぁまだ時間あるし、ちょっと腕の怪我だけ見てもらおうかな」
1000万が目の前で拐われていったとき、咄嗟に伸ばした腕が放電と爆破に挟まれて若干火傷している。
危ないかもと10%程度しか外骨格を展開していなかったからなぁ。
「すいませーん、お願いします!」
「はぁーい!」
少しくすんだ色合いの金髪をふたつのお団子ヘアにして。
同じ色で猫のような瞳孔の瞳。
満面の笑顔から覗く尖った八重歯。
上気したように色付く頬に、少しだけ見惚れた。
「怪我ですか? 血ィ出てますか? チウチウしても大丈夫ですか?」
「え、あ、うん。 怪我……火傷かな。 血は出てないですけど」
「あぅ残念です。 じゃあどうぞ! 処置しますよ!」
怪我と聞いてるんるんと出てきた女の子……なんか血ィ啜りたいみたいなこと言ってたような気がするけど気の所為だよね……?
ちょっとした恐怖を感じつつ誘導されて医務室へ。
ふたりも異様な気配を感じたのか、特に怪我は無いだろうけどついてきた。
「えっと、緑谷出久くんですよね! 見てたよ、第1競技、スゴかったね!」
「んー……まぁでも、アレだけ言って負けるようじゃちょっと格好つかないかなって」
「そんなことないです! 私はすごくカッコよく見えました!」
なんかめっちゃ褒めてくれるなこの子。
……僕の勘違いじゃなきゃ、すごく純粋な好意に感じるんだけど、ちょっとよくない、こういうの。
しかも僕の主観だけど可愛いのが本当によくない。
くっ……舞い上がるな……その好意はLikeだ……勘違いして恥ずかしい思いをするのは自分自身だぞ緑谷出久……!!
「あれ、でも結構深い火傷! じゃあちょっと失礼しますね!」
「へっ?」
かぷり、と。
火傷痕に噛み付いて、薄っすらと肉を噛み千切られるのをぼんやりと眺めた。
外骨格の応用で痛みのセンサーを切っているので痛くはないが、この可愛い子が自分の身体に歯を立てる姿はちょっと衝撃が過ぎる。
「ぷは。」
唇に着いた僕の血が、いやに艶かしく、赤く見える。
「うーん、痛覚が無いようですけど患部は3度熱傷じゃないですねぇ。 個性とかで保護してます?」
「い、ちおう、個性で痛覚を切ってます」
「多用は厳禁だよ? 痛覚は肉体の危険度センサーですからね。 じゃあ早速治しちゃいましょう!」
ずるりと、「彼女の姿が僕になる」。
驚きに目を見張る僕らの前で、僕の姿になった彼女は変わらずにこにこと笑っていた。
「はい、治ったよ!」
声と同時に体表が崩れるように流れ落ち、僕の姿から元の彼女の姿に戻る。
個性なんだろうけど、随分と、特異な……。
それよりも治ったって、まさか。
「うお、マジで治ってる」
「……治癒系の個性にゃ、見えねーが」
確かに、火傷痕は綺麗さっぱり治っている。
……いや、治ってはいるが、さっきの火傷痕とは違う場所に小さな擦り傷がある。
これは、「昨日の僕の腕」……?
「私の個性「変身」は、血を取り込んだその人自身になることができるんです。 変身時に人体に触れているとほんの少しだけど伝播するので、その応用で傷を治してるの! 血から昨日の夜の身体情報に合わせて治したけど……昨日も怪我してたみたいですね。 ごめんね、キレイに治せなくて」
「あ、いや……火傷痕に比べれば。 ありがとうございます、助かりました」
……そういうことなら、そーちゃんの「治癒」で誤魔化しているが怪我をしていない日なんて基本的に無いので、この人では全快できないんだろう。
とはいえ本来なら治癒系でも戦闘系でもない個性の解釈をここまで広く持つなんて、見た目の可愛さに反してとんでもない遣り手だ、この子。
「あ、お昼いかないと! 私、次の会場2年生なのであんまり時間がないんでした!」
パタパタと荷物を纏める彼女に立って立ってと急かされ、背中を押されて医務室を出た。
そういえば名前を聞いてないなと声をかければ、にっこりと満面の笑顔で。
「自己紹介がまだでしたね! 私、渡我被身子っていいます! みんなも気軽にトガちゃんって呼んでください!」
「変身」に関しては、またそのうちに。