転生少女は恋も未来も諦めない   作:紅琳檎

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オリ主です。



2.明々装:オリジン

Side[明々装]

 

 

私は転生者だ。

管理番号22、性別女、年齢7歳。

個性は「装填」という不良品だと、恐らくオール・フォー・ワンから告げられた。

……のだと、思う。

ついさっきの出来事なのだが、その際に同じく不良品だという個性を移植された瞬間、わたしの中に記憶が溢れ出したのだ。

 

(個性。とあの顔。確実にAFOだった。となればここは『僕のヒーローアカデミア』?顔があってマスクをしていないということは本編開始前……とはいっても今がいつかも分からないし、わたしがどの立場なのかも分からない……脳無の素体かもしれないし……モブヴィランのひとりになるかも……40巻の、爆豪がAFOを倒したところまでしか知らない。もう終わるって言われてたけど、死柄木との最終決戦はわからない……)

 

前世のことは少しだけ覚えている。

結婚もせずそれなりにオタ活をしていたただのOLだった。

なんの特徴もなく社会の歯車と化していたし、それで良いというタイプの一般人だった。

……それ以外は、なんだか摩耗したかのように思い出せないこともあるが、最早わたしには関係のないことだった。

 

(恐怖は、なくもない。場合によっては殺されたり個性を抜かれたりするだろうけど、それはきっと時間の問題だ。だったら怖かろうが何だろうが逃げ出したほうが良いに決まっている。原作知識はある……でも完璧じゃない。それにわたしが介入した時点で変化もあるだろう。本来道を踏み外すべきでなかった人を、本来死んでしまうはずだった人を……できるだけ助ける。AFO相手に獲れるだけ獲りに行く。わたしにはそれが……きっとできる。原作知識だけじゃない。個性。この力……不良品だなんてとんでもない。「装填」と「解析」、原作で言っていた完成された使い勝手のいい個性以外は他人に押し付けるのは本当だったんだ)

 

「オタク、舐めんな……!」

 

パッと見は普通の児童養護施設だが、個性実験施設だ。

監視や施錠は想像以上だろう。

だがそれなりに大きい町の近くに作ったのが仇になる、外にさえ出てしまえば自分ひとりなら十分保護の可能性は高まる。

……この施設は、そのあとに必ず助けてもらう。

わたしだってこんな非現実に落とされても現実はわかる。

全員で脱出するなんてこともできないし、そもそもわたしはこの施設内で自分以外の子供に出会った記憶がない。

まずは助けを呼ぶために、わたしが助からなければ。

 

「まずは……「解析」。 これはわたしやAFOが思うよりずっとずっととんでもない個性のはず……よく考えたらあいつなんか目が変って描写あったしちゃんと使えてなかっただけなんじゃ……」

 

目を閉じて力を集中させるイメージ。

たったそれだけで、開けた視界は全く別の景色に変わった。

扉の向こうや地下通路、隠し部屋、電子キーの解除コード、なんなら外の様子まで、見たいと思ったすべてが「解析」され、脳内に流れ込む。

爆発的に増加した情報量を処理しきれずにぶっ倒れることを覚悟していたわたしは、その実、全く何の負担もなく「解析」が作動していることに少々の違和感も覚えつつ、逃げ出す算段を立てていく。

 

(やっぱり転生モノのスキルで酔ったり頭痛が起きるのって、そもそものキャパシティが人間寄りだから起きるのかな。この世界、個性由来で尻尾とか腕4本とか火吹いたり凍らせたり、あからさまに脳の使用領域が他作品と違うんだよな。多分これはこの世界における人間の進化の結果なんだろう。であればこれ以上のことを、この個性が成長すればできるってことだ……獲れるだけ獲る……現実的に……!)

 

……と、ここでぼんやり感じていた違和感がはっきりした。

この施設には「人間」がいない。

意識が目覚める前のわたしがどんな状態だったのか今になってはわからないが、定期的に配膳される食事とたまに訪れる医者のような……あれがドクターか……以外はただただ広いだけの建物なのだ。

隅から隅まで「解析」しても何も見つからないことから弾き出したひとつの結論。

 

「これ、捜査攪乱のためのダミー施設か。 子供置いとけば少なくとも強制捜査で爆発させたり暴力的に出辛くさせて、かつ地下まで作って電子キーまで使って、本当に隅まで調べないといけないヒーローを逆手に取った造り……ってことは……わたしは、捨て駒か……」

 

だったらもう好き勝手していいな、覚悟しとけAFO!

と喜び勇んで外に出た瞬間、「解析」していた範囲外から銃弾が飛んできた。

……まぁ、「解析」で後から知ったというか、動体視力や反射神経は自前のものなので、避けようがなかったというのが正しいか。

右の脇腹を抉られ吹っ飛んだわたしは運よく遮蔽物代わりの庭石に転がり込む。

 

「いっっっ……た……ちょっと、無理、なんだけど……」

 

幸いなことに追撃はなく、痛みは収まらないものの自身の傷を「解析」してみれば内臓は外れているし出血も今なら致死量ではないので、とりあえず致命傷ではないだろう。

そして弾丸の方向から射撃位置を「解析」したが、自動射撃のようだ。

であれば「解析」で穴は見つかるし、逃げ出すこともできるだろう。

……ただし、この子供の身体で、脇腹も抉られ、出血もあり、全身傷だらけの状態でどこまで行けるか……いや、行かなければ、どっちにしても死ぬだけだ。

 

 

――――――――――

 

 

その後、わたしは逃げこんだ町の中で拾った小銭と公衆電話で公安委員会に電話を掛けた。

意外と電話帳に載ってるもんだね。

 

「違法な個性実験施設から逃げ出しました。 その……ヴィラン名があるか分からないのですが、本人の口からオールマイトの名前が出たので一応……それと怪我をしていて、あまり長くもちそうにありません。 大変申し訳ないのですが、早めに保護をしてもらえると助かります……」

「あ、え、な……と、突然だね!? 君、土地勘はあったりするかい? あれば現在位置を教えてもらえればすぐに向かえる!」

「ちょっとわからないです、ね……生まれて初めて外に出たので……逆探知とか、できたり……」

「少し待てるかい? ……ああ、田等院市か! すぐにヒーローと警察を向かわせるよ!」

「ありがとうございます……その、喉が渇いて……公園とか、少し移動しても……?」

「わk

 

……拾った小銭じゃ、限界だったみたいだ。

途中で切れてしまったが、わたしも限界が近い。

とにかく、水……できれば治療もしたいところだけど……まぁこんな浮浪児じゃ保護されるまでは難しいだろう。

というか、致死量でなくとも出血量が多すぎて意識が飛びそうになっている。

足を引き摺るように歩いて、公園を見つけて、水を少し飲む。

とてもじゃないけど、もう動けそうにない。

水飲み場に凭れ掛かって、目を閉じる。

……頼むから、意識喪失中に死なないでくれよ、わたし。

 

 

――――――――――

 

 

その後しばらくは、ちょっとメタいけど緑谷出久:オリジンにて語られた通り。

リカバリーガールに脇腹の銃痕だけ「治癒」され、公安委員会にて事情聴取された。

 

「……なるほど。 彼女の話は非常に信憑性が高い。 確かに私が追っているスーパーヴィラン、オール・フォー・ワンで間違いないでしょう」

 

まさかのオールマイト同席で。

 

「ごめんなさい、これ以上の情報は……その、元々、わたしが監禁されていた施設は捨て駒というか、ダミー拠点だったみたいで……」

「いや! 君の証言だけでもひとつの施設を安全に潰すことができる! そうして少しづつ奴を追い詰めて捕らえる! お手柄だぜ、よく勇気をもって逃げ出してくれた!」

 

なんだか褒められるのくすぐったいな。

前世から数えてもそんなに褒められたことないし、今世なんて捨て駒だったわけで。

……なんだかうれしいなぁ。

 

「というか、君、名前はあったりするのかい?」

「一応、管理番号22と呼ばれてはいましたが……」

「SHIT!!」

「オールマイト落ち着いてください、気持ちはわかりますから」

「その、名前だったら、名乗りたい名前があるんですけど」

 

「明々装(あきあけ そう)。 わたしを表すなら、わたしはこれがいい」

 

「HAHAHA! Coolな名前じゃないか! センスがいいね明々少女!」

 

アメリカンなノリは実際どうなんだろうと思っていたけど、なんか褒められると嬉しいというか、この人、褒め上手だなぁ。

そして私は気付く、このままだと身元引受人の話になってなんやかんやで軟禁されそうなことに!

二重個性、敵施設からの脱走、精神系個性で操られていないか一定期間の隔離!

嫌なことばかりが浮かんでは消え、不安がどんどん大きくなる。

身体に引っ張られた精神がいくらか悪さをしているんだろう……けど、あまりの不安がつい口を吐いてしまった。

 

「オールマイト。 わたしはこれからどうなりますか」

「……明々少女?」

「わたしが完全に信用されていないのはわかります。 多分、隔離して精神異常とか健康面とか調べたりもするでしょうし、もっと詳細に取り調べがあるのもわかります。 でもそのあとの……わたしが安心して過ごせる場所って、どこかにあるのでしょうか」

「……それ、は」

 

公安委員会の人が言い淀むのを見て、わたしの中で何かが崩れた。

産まれてこの方、名前すら与えられていないわたしに、公的な居場所は無い。

であればまた、外に出ることが叶わないのではないか。

抑え込んでいた涙とともに、わたしは溢してしまった。

 

「たすけて、オールマイト……」

 

「……AFOの手のものが襲ってくれば、それは一般のヒーローたちでは太刀打ちできない可能性がある」

「オールマイト、それは……」

「明々少女。 こんな頼りにならないおじさんだが……君を守らせてくれるかい?」

「……オールマイトが、いいです」

「よぉし! じゃあそうだね、5日間で私の方も準備しよう! その間に明々少女の様々な検査や生活基盤を整える時間にしよう! 私が来たってね、迎えに行こうじゃないか!」

 

……その後のわたしは泣いてしまって頷くことしかできなかったけれど。

オールマイトがわたしの身元引受人に決まった瞬間だった。

あれよあれよという間に検査とか買い物(通販だったけど)とかを済ませて、きっかり5日後。

 

「迎えに来たぜ明々少女! 私が来た! ちょっとしたサプライズも携えてね!」

「オールマイト!」

「Oh……やっぱり、ちょっと同年代の子に比べて軽いね? いっぱい食べていっぱい寝て、しっかり元気になっちゃおうぜ!」

 

肩車で公安委員会の施設から出る。

……女の子とはいえ体重の話をするのはデリカシーがないけど、この人、ヒーロー活動ばかりで女性の扱いはあんまりだろうし……せっかくだから教育してやろう。

 

「さて、明々少女、ちょっとだけ警察署に向かうがいいかな? 私の知人が君に会いたいらしくてね! ……あと、これから君とは浅からぬ間柄になってしまうから、少し私の秘密も見せようと思う」

「……よく分からないけど、警察署でお話するんですよね?」

「ま、そういうことさ!」

 

HAHAHA!と笑うオールマイトの頭をがっしりつかみながら考える。

これはつまり、トゥルーフォームをわたしに見せるってことなんじゃなかろうか。

警察ってつまり塚内さんだろうし……今ってAFOとの決戦前だけど、あのガリガリの骸骨状態なんだろうか……ちょっと怖い……。

 

「やあオールマイト。 ここ1週間、あんまり活動してなかったみたいだけど……そうか、その子が……」

「やぁ塚内くん! そう、今後のこともあるから顔合わせってね! ……それと、ちょっと空き部屋があったりしないかな、私の事情を明々少女に見せないといけないからね」

「そういうと思って会議室を抑えてある。 じゃ、詳しい話はそっちで」

 

警察の塚内さん、思ったより優しい顔してるんだなぁ、目に光はないけど。

それよりわたしはこの後に待ち構えるトゥルーフォームの御開帳が……怖い!

 

「明々装です。今後ともよろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとう、塚内直正です。 困ったことがあったらオールマイトからでも、直接でも相談してね」

「そして知っての通り、オールマイトさ!」

 

HAHAHA!……ワンパターンだなオールマイト。

まあでも、この人の陽気さには助けられるなぁ。

 

「さて、まぁ顔合わせはこんなもんかな。 明々少女」

「……はい、オールマイトの秘密、ですね? 奥さんとか子供とか紹介されるのかなって、ちょっとドキドキしてますわたし」

「残念だけど独身なんだなぁ!」

 

たはー!とおでこをぺちんと弾くオールマイト。

知っててとぼけるのも、ちょっと大変かもしれない。

今後どうなるものか……。

 

「……さて、私の秘密だが。 明々少女、これは機密中の機密……トップシークレットってやつだ。 身勝手ではあるが、これが漏れたら君とは一緒に暮らせない。 いいね?」

「……はい!」

 

ボフンと漫画的表現で煙とともにオールマイトの姿が変わる。

そこにいたのは、220㎝の身長はそのままに、ちょっと筋肉質な、スマートでちょっと癖っ毛なイケメンが立っていた。

 

「これが№1ヒーロー、オールマイトの真なる姿さ。 世を忍ぶ姿、とも言えるがね」

「…………カッコイイ!! えっ、好き!!!」

「かつてないテンション!?!?」

「オールマイト!! この姿で活動しましょ!! わたしがお嫁さんになりますから!!」

「待ちたまえ明々少女!! ここ警察署!! 目の前ポリスメン!! そして私に少女趣味はナッシンッッッ!!!」

 

とまぁ非常にグダグダしたのだが、普段のオールマイトの筋骨隆々な感じからして印象がかなり変わる細身のトゥルーフォームの紹介をされた。

いやほんとイケオジ感あってめっちゃ好き……って感じ……。

 

「どうなることかと思ったけど、落ち着いてくれてよかったよ」

「内心はあんまり落ち着いてないですけど」

「Oh……」

「それより、ここが……?」

「そう、君の帰る場所……新たな家、マンションさ!」

 

さて、そのあとはお察しの通り、緑谷家の隣に引っ越してきた、というわけだ。

 

まァ、オリジンって言い方をするには間延びした、ただわたしが助かっただけの話なんだけれど……自分で抜け出して、自分で助けを求めた結果……なんて受け取る人もきっといるだろう。

でもわたしはあの日、ちゃんと「助けて」もらったんだ。

私にとって最強のヒーローたち。

オールマイトと、緑谷出久に。

そんなふたりを、いつか「助けられる」ヒーローへ。

 

それが、私がヒーローを目指した日の話だ。

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