転生少女は恋も未来も諦めない   作:紅琳檎

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初めての感想に小躍りしておりましたありがとうございます。
もうちょっとペース上げたいところですけど、作中のタイムスケジュールをコネコネしている関係上、もうしばらく固まってくるまでお待ちいただければと思います。
今作中ではレスキューptは、原作緑谷出久の60ptを満点としておりますのでご了承をば。


6.浮かぶってよりもはや飛翔

Side[明々装]

 

「敢えて言わせてもらうけど、オールマイト」

「……なんだい?」

「多分ある程度の合否は出てるだろうけど頑張って隠すように努めなくていいからいつも通りにしてよちょっと寂しい」

「い、いやぁ何のことかわからないなぁ! さ、ちょっと泊りがけの仕事があるからおじさんは早く寝ようかな! 明日明後日は困ったことがあったらお隣さんに頼るように! 話は通してるからねHAHAHA!」

 

すすすす、と摺り足で滑るように寝室に消えていくオールマイトに、溜息を零す。

雄英高校入試から2日。

当日と翌日で採点が終了し、恐らく今日、最終的な合格会議が行われていたのだろう。

表情や態度で結果を知らさぬよう気を付けているんだろうけど動きがもう完全に不審者なんだよね。

 

「はぁ、もう。 ……おやすみなさい、オールマイト。 泊りだけどお弁当は必要?」

「……いつもすまないね。 せっかくだし持っていくよ、装ちゃんのご飯は美味しいからね。 おやすみ」

 

っあー夫婦みたいでキクわこれ、なんかもうさっきまでの不満消し飛んだ。

まぁもちろん寝室は別なんでね、こればっかりはしょうがないけど。

お弁当の仕込みだけしてわたしも寝るとしよう。

ヒーロー科がある世界だからか、中学でもこの時期は自由登校に入っているので時間だけはたっぷりある。

明日は出久でも誘ってお疲れ様会でもしようかな。

 

「でも、なーんかあの日から様子が変なんだよなぁ」

 

入試当日の、あの、妙な感じ。

それ以降の連絡も返信は遅いし、内容もなんだか上の空で。

なにかヒントは無いものかと原作を含めて思い返してみる。

 

「……わからん、だめだぁ」

 

鶏腿肉を揉みこみながら項垂れる。

なんだかんだと丸7年の付き合いがあり、多少は原作での彼を見て精神性を理解していたと思っていたけど……たった一晩であれだけ変わられてしまうともう読める範囲にないんだよな。

考えられるとすれば、ひとつだけ思い当たる、が。

 

「OFAを対人で振るう恐怖……を、前日に認識しちゃったって感じかなぁ……もうそうじゃなきゃAFOに洗脳されてるとかそんなんしか思い浮かばない……」

 

お弁当用にしっとり衣の唐揚げにするから今晩中に揚げるとして。

常備菜からお弁当の中身を調整しつつも、頭の中はヒーロー活動の相棒(ほぼ内定)のことでいっぱいだ。

本来、「解析」して得られた敵味方の情報による予測で戦況を有利に動かす、言わばチェスプレーヤーのようなポジションこそわたしが最大限に活きる状況だ。

もちろん現場でリアルタイムに指揮をする方が確実だし、そのためのヒーロー免許と就職先(と書いて主戦力)を求めていたわけで。

実質最大戦力の出久のことが「解析」無しで読めないのはちょっとよろしくない。

1の指示で10やってくれる信頼をわたしが感じ取れていないのだ。

 

「わかんないし明日とっ捕まえて聞いてみるかな。 うだうだ考えてても仕方ないし」

 

時計を見れば22時。

どうせまだ起きてるだろうし電話でもしてみようか。

 

「もしもし。 珍しいね電話なんて」

「まぁたまにはね。 そうそう、受験日程終了ってことでお祝いしようよ。 なんか出久、調子悪そうだったから誘うのちょっと待ってみたんだけど、大丈夫?」

「あ、うん……そうだね、心配かけてごめん。 大丈夫だよ」

「そっか。 じゃあとりあえず明日、10時くらいに……どこがいいかな」

「じゃあ海浜公園待ち合わせでどこか適当に散策しよう。 この時期ならまだ人多くなさそうだし……僕の不調の理由も、そーちゃんに聞いてほしいから」

「……うん、じゃあそういうことで。 お昼はあそこ、フードヒーロー「パスタ・ミスタ」のところで食べようか。 気になってたでしょ?」

「いいね。 じゃあ、また明日。 おやすみ」

「うん、おやすみ」

 

まだ少し、変な感じはあるかな。

唐揚げを揚げつつ、明日になれば分かる出久のあの様子について、考えても仕方ないのに思考だけは回る。

頼むから、わたしの考察の上を行かないでくれよと願いながら。

 

 

――――――――――

 

 

「入試前日の夜にさ」

 

翌日、海浜公園に着くと既に出久は待っていて。

わたしに一瞥もくれず、ぽつりぽつりと語り出した。

 

「オールマイトに呼び出されて「40%の出力がどういうものか打ち込んでみろ」って言われてさ。 僕的には『この厳しい修行によくぞ耐えた、己が手にした力を試すがよい』みたいな、気の利いたイベントみたいなものだと思ったんだ。 疑いもなく外骨格40%をさ、ぶつけたんだよ。 そしたらまさか、防御態勢も取らなくて」

 

ああ、嫌な想像通りだ。

 

「……その、そーちゃんには多分隠してるだろうけど、リカバリーガールにお世話になるくらいには酷いことになってね。 それを見て、僕はさ」

 

「興奮しちゃって」

 

……聞き間違いか?

わたしの想像では「怖くなったんだ」とかそういう感じだと思ってたんだけど。

あれっ育てすぎてドMが逆転しちゃったりした?

逆に怖くなってきたなこれ。

 

「いやその、暴力を振るうことに対してとか、そういうことじゃないよ? 勘違いしないでね?」

「あっ、ああ、よかった、やりすぎたのかと思って」

 

ここではじめて目が合った。

なんとなく憑き物が落ちたような顔付きに、どちらともなく笑みがこぼれた。

ああ、よかった、知ってる出久だ。

 

「そーちゃんが現れるまで、僕の世界は「持たざる者」の景色しかなかったんだ。 コンプレックスとトラウマが重石になって碌に呼吸もできないような。 どんなに鍛えても「持たざる者」は変わらない、ずっとずっとそう思っていた……けど」

 

「今の僕だってこんなことができるんだって、思わず、ね」

 

世界人口の8割が4歳までに感じるという、全能感。

個性使用による自己肯定と、視力聴覚などの五感に次ぐ新たな感覚に脳が過剰に反応し脳内麻薬による異常な感情の高ぶりと。

それが遥か11年も遅れてやってきたのだから、そうなるのも分からなくはない。

 

「入試の日はコントロールに精いっぱいでさ。 どんなに恵まれた個性の持ち主だろうとも、どんな試験内容だとしても、このオールマイトの力を振りかざせば、押並べて没個性だなんて全能感に囚われていたんだ。 そうしたら入試が対ロボ戦だって聞いて、ちょっと甘めの制御で良いって思ったらようやく調子が出てきて」

「あー……ようやく納得した。 じゃあれか、トラウマの」

「……まァ、お恥ずかしながら、テンションが限界突破してた感じ」

 

原作より多少攻撃的な性格になってはいたけど、確かにあんなこと言うキャラじゃないし。

うーん、それにしても、ことごとくが上手くいかない……というか他ならぬオールマイトの善意によってわたしの最近の計画がすべてご破算になっている現状がなぁ。

 

「……そっか、でも、うん、よかったよ。 力を振るうことに恐怖してしまったのであれば難しい話だったんだけど」

「幸いにしてね。 それで、オールマイトに言われたんだけどさ。 僕のOFAの40%、どうやらオールマイトの40%より出力が高いらしくて」

「ちょっと待ってほしい。 わたしの想定を何度も超えられたらアイデンティティがクライシスなんですけれども。「解析」さん息してない」

 

「解析」で出久とOFAを注視する。

出力自体は同じ40%だが、よく見てみれば「力の大きさ」が単純に桁違いなことがわかる。

見落としていた……?

いや、オールマイトから受け継がれてから段階的に力が膨れ上がっているような……?

 

「OFAは歴代の継承者を経て力が凝縮されたもので、オールマイト本人ももちろんその中に含まれる。 あれだけの超パワーを発揮したのはオールマイト以前にはいなかった。 ……まぁ誰かが研究してるわけじゃないし状況証拠でしかないけど、恐らく僕の中のOFAは歴代の何にも勝る出力になっている、と思う」

 

突然恐ろしいことを言わないでほしい。

そもそもオールマイトのパワーなんて世界中の増強型を集めてもTOP3に入るほどの出力を誇るとんでもない個性だ。

それ以上の出力に化けたとんでもパワーをもし100%を引き出せた日には、世界を股にかけて駆けずり回るとんでもねーNo.1ヒーローが誕生してしまうわけなんだけれども、ヴィランの皆さま大丈夫そうです?

 

「あの入試の巨大ロボ、あれ、15%で爆散しちゃったんだよね」

「人間引退RTAだってもう少しちゃんとチャート組むと思うんですけどォ……」

 

もうなんか、考えるのやめようかな。

とりあえず何かしら全力を出せる環境で「解析」し直すしかないよこれ。

 

「……まぁ出久に何が起きていたのかはよく分かった。 とりあえず考えても仕方ないことが分かったから、あとは全部入学後に「解析」して対策を練ろう」

 

疲れたからもうご飯、というと出久も立ち上がって着いてくる。

原作通りのクソダサ私服の調教には3年かかったが、まぁ身長や体格も整っているし見れる姿にはなっているだろう。

いやー!

困っちゃうなー!

わたしの相棒がモテちゃうなんてなー!

後方腕組理解者面でわたしの光り輝く薬指見せつけて―なー!

ちょっと脳ミソバグってんな。

 

「出久の奢りだよ言っとくけど」

「それくらいはするよ、もちろんね。 心配させちゃったし」

 

 

―――――――――――

 

 

そんなこんなでオールマイトの短期出張も終わり、恐らくそろそろ合否が届くころであろう。

 

「……だからさァオールマイトォ……」

 

朝起きたらメモ書きが残っていた。

『私がいたら合否が気になるだろうからちょっと出かけてくるネ! 夕方には帰るけど、今日は予約を取ってるから外食にしよう!! byオールマイト』

 

「それさァ…………いや何言っても仕方ないか……オールマイトだしなァ……」

 

テンションが残念会のそれじゃないから、普通にネタバレなんよ。

とはいえまぁ、そうね、ポイントってだけなら筆記も実技も自己採点じゃ問題なく合格だから良いんだけどさ。

気の利かせ方が本当に空気読めてない。

そんなところも好きなんだけどさ!?

 

「おーい、そーちゃん」

「はーい、どしたの出久」

「ちょうど下に行ったら郵便が来ててさ、雄英の合否通知届いてたよ」

 

出久が封筒を持って家に入ってきた、のだが、わたしの分は持っていなかった。

 

「いや他人の郵便を渡すわけないでしょ……」

「郵便屋のコンプライアンスがしっかりしていることに感動しちゃうな! もう! ちょっと待ってて!! 先に開けたら流石に絶交!!」

「気を付けてねー」

 

焦るようなことではないので落ち着いてエレベーターで取りに行く。

まぁでも、原作みたいにミニプロジェクターで投影される合否は楽しみすぎるので、ほんのちょっと駆け足で。

 

「じゃあ開けるよ」

「せーので行こう、せーので」

 

「「せーの」」

 

「「私が投影された!!!」」

 

 

――――――――――

 

 

Side[オールマイト]

 

「実技総合成績出ました」

 

入学志願者一覧と、ヴィラン、レスキューのptが並んでモニターに表示される。

上位36名と聞いていたが、37名の表示がある……が、私は特に聞かされていない。

推薦入学が4名で各クラス2名ずつ、計40名であるのは例年と変更無いハズだが。

 

「レスキューpt0で2位とはなぁ」

「後半他が鈍るなか派手な個性で迎撃を続けた……とんでもないタフネスの賜物だ」

「3位の女子リスナーもレスキュー高いぜ! 視野もメチャ広いし随分と鍛えてるみたいだしな!」

「3位の明々は特災ヒーロー免許持ちなので特例で合格確定だ。今年のヒーロー科は2クラス41名となる」

「となるとォ……やっぱ別格だったな、1位の、緑谷出久」

 

他の先生方が動画とptを見比べながら、最終審査としてディスカッションしている。

新任(予定)の私に発言権はないため端の方で静かにしているのだが、実質弟子である緑谷少年の話題になれば、少し気になるというもの。

 

「地表からの跳躍でアレの顔面まで到達……まだまだ余裕を持った一撃で完全破壊……こんなこと言っちゃなんだが、まるでオールマイトを彷彿とさせる存在感だったな」

「精神性も十分だろ! ヴィランpt103も獲得しながらレスキューptも満点60pt!! ぶっ壊しちゃったときYEAH!!って言っちゃったし、緑谷も「スマッシュ!」って叫んでたし、あんなんフォロワーだったらヒーロー冥利に尽きちゃうだろ!!」

 

いやぁ、なんだろうね!

ちょっと気恥しいけどね、嬉しいね!!

明々少女の件は異例なんだろうけど、緑谷少年の結果はまさに自ら勝ち取った結果である。

歴代獲得pt1位での雄英高校主席合格。

ありゃ同じころの私よりも強いんじゃないかな!?

 

「……とりあえず明々装を除いた上位36名は合格確定でよろしいでしょうか」

「うん、そうだね! あとはクラス分けかな!」

 

イレイザーヘッド……相沢くんと、根津校長が司会として会議は進んでいく。

来年の1年は相澤くんとブラドキング……管くんが担当するようだが。

まぁ緑谷少年と明々少女ならどっちが担当教師でも大丈夫そうだけれどね!

 

「あ、オールマイトは退室でお願いします」

「新任(予定)だからね! これ以上は守秘義務があるのさ!」

 

……そうして追い出され、翌日からは合格者への動画撮影。

アメリカで学んだ最強トークテクニックで明々少女へのフォローは完璧、あとは結果が届くまでイイ感じに宥め賺して、お祝いのお店の予約もしとかないとな!

 

 

――――――――――

 

 

Side[明々装]

 

「えー……? いくらOFAがあるとはいえ総合163pt……?」

「歴代最高獲得ptだってさ。 我ながらとんでもないや」

「私はヴィラン28ptのレスキュー45ptの73pt、全体3位だけど……特例入学って、推薦みたいな感じなのかな」

「特災ヒーロー免許なんて初めて聞いたよ。 あとで細かく聞いてもいい?」

「あんま覚えてないけどなんか書類あったかなー。 まぁ探しとくよ」

 

それぞれの結果を聞きながら駄弁っていると、玄関の開く音。

ふたりでじっとりと見つめていると、気まずそうなオールマイトがそっと帰ってきた。

 

「……おかえりなさい、オールマイト」

「出張ってこれの撮影だったんですね。 お疲れ様です」

「ちょっとトゲのある視線だけどただいま! ふたりとも合格おめでとう!!」

 

でっっっっかい花束を渡されながら祝われるのなんで?

このひと純日本人のはずなのになんでこうアメリカンな感じになるのかな?

それはそれとしてお茶目でかわいいんだけど!

 

「あ、出久くんにはこれをあげよう。 過去、私のスーツを手掛けてくれた科学者に無理を言って作ってもらった、君だけのブーツだ。 そのままヒーロースーツに登録できる質のいいやつだけど、これから3年間の学校生活で履き潰すくらい頑張ってくれよ!」

「え!? もしかしてデヴィット・シールド博士のですか!? お、オールマイト見直しました!!」

「み、見直されるくらいだったの私!?」

 

装備はちょっと羨ましいけど、師弟関係と保護者って間柄の違いでプレゼントを変えてくれる、そんな気の利かせ方は嬉しいな。

だってほら、少なくともオールマイトの中では女の子のお祝いに花束ってなってるんでしょ?

ちょっとかわいいが過ぎる、誘ってんのか。

 

「まぁ気を取り直して、今晩はお祝いでご飯食べに行こう! ランチラッシュ監修のお店が予約できたからね! ちょっと遠いけど、今日は私の安全運転で向かうとしよう!」

「ごちそうになります!」

 

まぁなんだ。

第一関門は突破したわけだし、出久の進化してしまったOFAや、今後復活してくるであろうAFOへの対策……様々な未来のことは置いといて、今日は少し羽を伸ばすとしよう。

 

「ランチラッシュってことは洋食? あれでもあの人、最近和食にハマってなかったっけ?」

「最後はコメに行き着くんだよって動画で言ってたね、あの料理チャンネル」

「まぁレストランだし何でもあるんじゃないかな! そんな狭量な男じゃないからね!」

 

 

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