堀越先生お疲れ様でございました。
次回作でも勝気な美女を欠損させてくださいね……。
ということで前話の続きです。
次からは少しずつですが飛ばし気味でシナリオ加速していきます。
感想・誤字報告ありがとうございました。
まだまだお待ちしております。
体力テスト8種目。
つつがなく進行していくが、わたしの個性的にはソフトボール投げくらいしか成績出せないなぁあとは自前かぁなんて思いながらも、出久の「解析」だけは続けている。
「15%でやってみるよ」
始まる直前に出久から伝えられた条件。
OFAの変質前、大体のトレーニングや戦闘訓練は15%の出力で行っていたので差を測るにはちょうど良いのだが、力の大きさが変わってしまった今、どのくらいの差異をもたらすのか正直想像ができない。
てかあの入試の巨大ロボ、15%でぶっ壊したって言ってなかったっけ、ヤバくね。
「緑谷、悪いがストップウォッチを押せなかった。 もう一本走ってもらってもいいか」
「大丈夫ですよ。 じゃあ行きます!」
「人力じゃ難しいな。 ちょうどサポート科から押し付けられたデータ採取用ロボがいるからそれを使う」
「ピピッ! 0.29秒!」
えーーーと、2分の1マッハかぁ……15%で?
約時速600㎞……ッスね……。
「……これが、最高峰。 歴代最強の主席……!」
「随分と、高ぇ壁だな……」
それまで最速記録を出していたメガネ……飯田くんの震えた声に応えるかのような、紅白ツートン、轟くん。
静かに闘志を漲らせる異形型多腕の障子くんに、ギリギリと歯軋りをしながら出久を睨みつける爆豪ことチワワくん。
「確かにとんでもねぇ差があるかもしれねぇけど、そんな程度じゃ俺は止まらねぇぞ!」
わずかな自信の揺らぎも感じさせない赤髪ツンツンこと切島くんのセリフに、茫然としていたみんなに火が付くのを感じる。
そもそもさっきの相澤先生の言葉で、はっきりと差があるのは明確だったのだ。
……ただ、その、決して言ってはならないのだけど、まだ彼、底どころか表面程度しか実力見せてないんですよね。
多分これ、相澤先生も勘違いしてるよね、なんか満足そうな顔してるけど。
「クソが……! 石っコロだったてめぇが、なんでそんな力持ってやがる!!」
「止まれ爆豪。 それについては緑谷が説明すると事前に聞いている」
「爆破」を構えて飛び出したチワワくんを捕らえたのは相澤先生が首に巻いていたマフラーのようなもの。
どうやら合金の鋼線と炭素繊維で編み上げた捕縛布とのこと。
……「解析」でちょっと情報いただいておこう。
「僕の個性は「鍛錬」という、蓄積型に分類される個性です」
これはわたしとオールマイト、出久の3人で作ったカバーストーリーだ。
いきなりこれだけの出力の増強型個性が発現するのは現実味がないし、それを使いこなすのなんて以ての外だ。
であれば、予てより蓄積され続けていた肉体・精神・経験が一定ラインを超えたときに発現する蓄積型個性として扱うことによって、今後さらなる強度のOFAを使用しても誤魔化すことができる。
「ヒーローの先達としての立場で言わせてもらうがな。 「鍛錬」って個性は俺や他のヒーローから見ても異常な個性だ。 見て分かるだろ。 緑谷の肉体は既にそこらのプロヒーロー並みに鍛え上げられているし、足運びや姿勢を見ても武術や格闘技を何種類も修めている。 ここまでやってようやく産声を上げたほどの、な」
「それに僕はまだこの個性の半分程度しか出力できていないんです。 まだ、先がある」
既に単純な個性の出力では逆立ちしても敵わないレベルなのに。
さらに強くなっていく個性だと聞いて、みんなが息を呑む。
だがここは雄英高校、国内最高峰のヒーロー育成の場であり、こんなところに来るやつらがその程度で折れるはずもない。
そうだろう、と言いたげな笑みを浮かべた出久が。
「雄英高生でもプロヒーローでも、僕はずっと強くなっていく。 もちろん今の僕にはいつかは追いつかれるだろうけど、その程度で満足するようじゃ、雄英なんかには来ないだろ?」
「言いたい放題だな……もちろん、いつまでも劣ってるつもりはねぇぞ」
「白黒ハッキリつけたらァ……!」
「超えるべき壁ならば、むしろどこまででも高い方がいい……!」
轟、爆豪、飯田の宣戦布告ともいえる返答に、出久は嬉しそうに笑う。
ライバルでもあり、戦友でもある。
それがヒーロー科であり、プロヒーローであるのだから。
今のこの場が、出久にとって最も幸せな瞬間なのだろう。
「さ、時間は有限。 残りのテストをどんどん進めて行こう」
大体のテストでは出久が1位をもぎ取っていくが、上体起こしでは峰田くんの「もぎもぎ」の反発に僅かながら負け、「人力であの動きはすごさよりキモさがある」と言われガチ凹みしてた。
逆に吹っ切れたのか反復横跳びでは見事に雪辱を果たしていたけど、まぁキモいんだな動きが。
「人体で軽率に残像出さないでほしい! オールマイト見てるみたいで笑っちゃう!」
芦戸ちゃんがけらけらと笑いながら放つ言葉に、先程の5人から更なるギラギラとした闘志が立ち上る。
そう、君らはとても運がいい。
いずれにせよ高みを目指すことが目的なら仮想:オールマイトが身近にいることは果てしないほどのアドバンテージになる。
No.1ヒーローほどの実力差がない分、明確な目標として在り続けるのは成長の度合いが明らかに変わってくるからね。
「人体レベルの質量があの速さで動いているのに衝撃波が起きないのは物理法則に反していますね! 個性の影響ですかね!? ちょっとデータを取りますね!」
「うわ、きみどこから出てきたの!?」
「校長の話が長くて暇だったので近くの機械にハッキングしていたら面白いことしてたんで抜け出してきちゃいました! ヒーロー科の1-Aですよね! 動画データで大体は把握してるんで続きをどうぞ!」
突然出久にべたべたとすり寄るピンク髪でゴーグルをつけた女の子……いや待てこの子、作中最強格にヤベー奴筆頭の発目明ちゃんでは!?
制服でもわかる、随分なおちちをお持ちで……!!
わたしなんだかんだ並みだからでっかいの羨ましいんだよねあとで触りに行こう。
「サポート科の発目か……無許可だろうが、まぁいいか。 せっかくだし紹介しておこう。 サポート科推薦合格を蹴って一般入試で主席合格をした発目だ。 ヒーロー科とサポート科は切っても切れない関係だからな、交流を深めておけ」
「俺らに興味ナイ感じじゃねぇ……?」
「いえそんなことは! ただ、これほどの強化幅を持つ個性はとても珍しいので! ちょっと優先でデータを取っておきたいんですオールマイトとの比較もしたいですね!!」
絶好調だな発目ちゃん。
瀬呂くんもテープの射出にサポートアイテム嚙み合わせたらすごいことできそうじゃないかな、スコープ付けて偏差撃ちできれば移動型個性なのに超長距離からの無力化とか狙えそうだし。
やっぱり雄英レベルの個性持ちは発展先が多くて面白そうだなぁ……そのうち発目ちゃんとそれぞれの強化先の話とかで盛り上がりたいなぁ……ちょっと方向性違うかなぁ……。
「残りはソフトボール投げと持久走だな。 どんどん行こう」
ここでも出久が負ける結果になった。
お茶子ちゃんの∞は流石にどうしようもなさ過ぎてもはやみんな爆笑だった。
「無限、無限て! あの力感で!?」
「物を浮かす個性……重力反転かと思いましたが真上でなく投擲方向に等速直線運動しているのを見るに無重力ですかね! 触れた物だけでなく自分も対象にできたりするんでしょうか!?」
「できるけど、自分に使うと酔っちゃうんよね……」
「でしたら超小型の回転式重力発生装置と重力検知のバランサーを組み合わせて前庭器官の狂いを防止すればかなり抑えられるかと! 入学式前に先輩が作っていたものを改造したのがこちらなのであとでデータ取らせてくださいね!」
なんかオーパーツ渡してないかあの子。
てかなんで持ってんだ……どこから出した!?
「なんて知識量だ。 サポート科って各分野のプロフェッショナルの集まりってイメージがあったけど、ソフト・ハード・発想のどれを取っても一級品だなんて、確かにヤベー奴だけどこの交流は無駄にできないぞ……」
「久しぶりに考察モード入ったね。 そんなに気になる?」
「……まぁ、そりゃあね」
「おっぱい当たってたもんねさっき」
「やめてくれるかな突然だと役得とかより気まずさが勝つんだって知っちゃったよ」
「お茶子ちゃんとどっちが本命なのよ!!!」
「声のボリューム4段階くらいしかなかったっけ。 どっちも出会って数時間程度なのに本命とかなんとかって相手に失礼じゃないかな」
普通にレスバに負けてしまって落ち込んでいると、出久の番になった。
15%で巨大ロボぶっ壊した出力……しっかりと「解析」してやろう。
「さて……ここでもお手並み拝見だな」
「投擲は力の伝達の上手さが直結する……つまりあの強大な力を完璧に制御できているのか、持て余しているのか……隙があるとするならばそこだな」
「ミスって骨折れろ」
「行きます。 外骨格、15%……!! SMASH!!!」
先程までの単純な内部強化だけでない、力の奔流。
同じ15%でも威力として出力されるOFA外骨格はボールをいとも簡単に砲弾に変える。
流石に音速までは至らなかったものの……というよりこの距離で音速出されるとソニックブームで周辺吹っ飛ぶ可能性あったから良かった。
そして「解析」が導き出した、出久のOFA15%は。
「うそじゃん……あの人の21%相当……単純計算4割増し……?」
割合での計算は単純に数値が大きくなれば大きくなるほど変動が大きくなる。
つまり実質『オールマイトの100%は出久の72%』だということ。
このままの育成速度だと遅くとも高2の冬には達成できるぞ……?
「……1500m、か」
「チッ……俺の倍だと……っ」
流石は5分の1オールマイトって感じの成績だ。
まァオールマイトが投げても、数値自体は大きく変わらないだろうけどね。
空気抵抗とかボールの重量とかあるし。
でも……こりゃ……来るな……相棒のモテ期が……!
「おい明々、いつまでうろうろしてる。 早く投げに来い」
「はい。 あ、そうだ先生。 これって個性由来なら何を使ってもいいんですよね?」
「もちろん、ただ早くしろよ」
「はーい! 出久、3%でハイタッチいえーい!」
「なるほどね。 はい、よっと」
OFA3%の力を「装填」で右手にキープする。
わたしの、一般人程度の強度しかない肉体にはこれが限度だ。
スマッシュなんて掛声も烏滸がましい程度の力しか発揮できないので普通に投げよう……。
「いっっっけぇぇ!!!!!」
右手から放たれるソフトボールは綺麗な弧を描いて飛んでいく。
出された数値は85m。
自力じゃ35m程度だから、もちろん結構な伸びである。
やはりエネルギーとしての装填だからか外骨格等も発動できず、下肢の筋力不足で想像より記録が出なかったな。
やはり攻撃というより、別の使いかたをもっと模索していかないとなぁ。
「サンキュー出久。 とはいえやっぱり火力不足が課題だなぁ」
「火力が外付け、かつ人体強度によって限度があるのはしんどいね……僕も何か考えてみるよ」
そうして持久走も終わり、結果発表。
歴代最強の主席合格者との高い壁を認識させられた、みんなにとって少々苦いテストであった。
「ソフトボール投げ、爆豪766m。 50m走、飯田2.99秒。 握力、障子570㎏。 俺の想像よりも高い数値を出しているやつも何人かいたな。 しっかり火ィついたみたいで安心したよ」
手元の端末をしまいながら、相澤先生は馬鹿にしたように鼻で笑いながら。
「ちなみに言っておくが、始まる前の十把一絡げなヒーローになる、なんてもんは嘘も嘘、大ウソだ」
「「「「はぁ~~~~~!?!?!?!?!?」」」」
「そりゃそうだろ、いくら歴代最高得点で合格したとしても所詮は入学したてのピカピカの1年生だぞ? 入学して即『緑谷世代』なんて有り得んだろ。 常識的に考えろ」
本気を出させるための合理的虚偽だ、なんて言うけど、つい先週まで中学生って身分だった子供たちにとって先生ってのは絶対的正義に近い。
そんなのにこんだけ煽られれば、そりゃ信じても仕方のないことだろう。
「ま、彼我の距離がどんなもんかわかったろ。 俺も当然把握したし、今後の授業でも全員の育成プランはしっかりと立てていくからな。 雄英に来た以上、教師陣ももちろん「何者かになる」ための授業をするから安心するように」
じゃあ今日は解散。
そう言ってのそのそと消えていく相澤先生を見送り、全員で顔を合わせ。
「……とりあえず、最低限、自己紹介だけでもしねぇ?」
上鳴くんのひとことに、それもそうだととりあえずの自己紹介が始まった。
――――――――――
制服に着替えた頃には、既に他の1年生は下校しているようだった。
そりゃそうか、入学式で終わりだもんなぁなんて思いながら、出久と並んで校門をくぐる。
「おふたりさーん!」
まさかのお茶子ちゃんのエントリーだ。
こう、あの、いいよね、黒タイツ!
「オチャコチャン!!!!!!カワイイネ!!!!!!」
「発作か……? 麗日さんまた真っ赤になっちゃったじゃないか」
「もー……顔あっつい……! ふたりとも駅まで?」
「君達も駅までか? 俺も同行しても?」
「お、飯田くん。 そだよ、一緒に行こう」
4人でワイワイと話しながら駅に向かう。
……まあその、出久は無個性で差別の対象だったし、わたしはずっと出久のトレーナーみたいなことしてて変人扱いされていたから、お互いそんなに友達もいなかったのだ。
いつもふたりで完結していた時間が、なんだか騒がしいの、嬉しい。
出久も同じことを思っていたのか、ぱちりと目が合うと、お互いに笑ってしまった。
「それにしても……緑谷くん、俺は君に敬意を表する。 無個性だとしてもヒーローになるために鍛え続け、個性が応えて芽生えた力……そして最高峰である雄英にトップ合格……君のすごさは実技試験でも目にしたが、今日はそれを超えてきた」
「そう、それなんよ! あのすごいパンチが努力の結果だーって聞いて、私感動しちゃって!」
「わたしが言うのもなんだけどきみたち本当にいい子だねぇ……」
「実際は僕ひとりじゃ無理だったよ。 7歳の頃からずっとそーちゃんとその保護者の人が協力してくれて、お母さんも食事メニューとか、ずっと助けてくれたから」
「あ、そういえばふたりの関係って?」
「気になっちゃうのお茶子ちゃん! 大丈夫、ただの幼馴染だし、教室で言った通りわたしには結婚を前提にしている未来の旦那様がいるからね! 出久は優良物件だし紹介してあげよう! 手数料は結婚式の時に友人枠スピーチさせてくれればいいよ!!!」
「わ、わー! け、ケッコンて! そんな、いきなりなにをー!」
「……緑谷くん、もしかして明々くんは……」
「相当ヤベー奴だからちょっと距離開けて付き合うといいよ」