「『星が綺麗ですね』」
「本当になぁ」
(……やっぱり、伝わらないか)
まあ分かってはいました。シュタルク様が文学的表現を知っているなんて微塵の思っていませんでしたし。
今日はこの村の催しで、願い事を短冊に書いて女神様にお願いする日だそうです。
この催しには物語があって、とあるお星様たちが神様に離れ離れにされてしまい、毎年この日だけ会うことができるというお話らしい。その二人が会いたいと願い続けたことにちなんで、この催しができたのだとか。
……まあこの二人が離れ離れにされたのは、仕事をサボって四六時中一緒に遊んでいたかららしいのですが。女神様は何も悪くありません。
子供から大人まで多くの村の人が願い事を書き、木に括り付けていく。
豊作祈願、健康祈願、旅の安全など様々な願いが書かれていましたが、一番多かったのは――恋の願い。
お星様たちのロマンチックな話に恋路を後押ししてもらおうという考えなのでしょう。……私もその一人ですし。
この想いを抱き続けて数年。私は、自分の気持ちを気持ちを伝えられないでいた。
気まずくなったらどうしよう、嫌われたらどうしよう、とネガティブなことばかり考えてしまい言い出せないのです。
嫌ったりなんかしない、いつも通り接してくれる。そういう人であることはわかっているのですが、いつも二の足を踏んでしまう。
なので、女神様に力を借りようと思い切って願いことを書きました。
すると――シュタルク様が話しかけてくれたのです。私は女神様に感謝しました。それはもうこれまでにないくらいに。
二人で星を見に行き、そして冒頭のシーンに。
(やっぱりシュタルク様には、素直に気持ちを伝えないとわかってもらえないですよね)
恥ずかしがって婉曲な伝え方をしたのがダメでした。こんなチャンスは滅多にありません。今度こそちゃんと『好き』と伝えよう。女は度胸です。
そう思っていると、シュタルク様がこっちを見ながら言いました。
「星もすごいけど――月も綺麗だよな」
…………えっ?
これって、そういう意味、なのかな?いやまさか、シュタルク様がそんな……いやでもこの状況でならもしかして――。
「あの、それって――」
「さっ、そろそろ戻ろうぜ。あんまり遅いとフリーレンも心配するだろうしな」
「あっ、……はい」
……やっぱり気のせいか。少し、期待してたんだけどな。
この気持ちを伝えるのは、もう少し先のことになりそうです。
*
「星もすごいけど――月も綺麗だよな」
「…………」
(あれ!?伝わってない!?)
せっかくザインに大人の愛の伝え方ってやつを教えてもらったのに!上手く伝わらなかったのか!?もしかして間違った!?
はぁ……。やっぱり俺じゃ、大人っぽい告白は無理なのかなぁ。やばい、泣きそう。
……まあ俺にこういうのはやっぱり似合わないのかもな。
今度は――今度こそは、ちゃんと気持ちを伝えよう。
俺は願い事を書いた短冊を握りしめながら、女神様に誓った。
『星が綺麗ですね』・・・貴方は私の気持ちを知らないのでしょうね。