「ほらフェルン、行こうぜ」
いつものようにシュタルク様が手を差し出してくれる。
前までは手を繋いで歩くことにお互い気恥ずかしさを感じていたけど、今ではだいぶ慣れてきました。
だけど今日だけはダメなのです。
今日の気温は37℃。茹だるような暑さで、周りの人たちも心なしかぐったりしているように見えます。人だけでなく野良猫も、地面から立ち昇る陽炎を回避しようと日陰へ避難していました。
そんな暑い日に手なんか繋いだら――手汗が気になって気が気じゃありません。
シュタルク様が手汗をかいている分には問題ないのです。こんな暑い日に汗をかかないほうがおかしいですし、シュタルク様は基本清潔にしているので気になりません。
ですが私の手汗は別です。
もちろん清潔感がないとかではありません。ここ数日は宿に泊まっていてお風呂にも入れていますし、臭いとかは気にならないはず。
でもそれはそれとして、手汗をかいているなんてことをシュタルク様には知られたくありません。
「……今日は暑いから、やめておきます」
「えっ。……そっ、か。そうだよな。今日、めっちゃ暑いもんな」
可愛い……じゃなかった、物凄い罪悪感が……。
でもそんな顔をされても今だけは手を握るわけには……。
「……じゃあ、行こうぜ」
〜〜〜ッ!ああもう!
「えっ!?フェルン!?」
シュタルク様の手を取り、指を絡める。お互いの手汗が混じり合う不快感と、手汗をかいていることを知られた事による羞恥心が同時にやってきましたが全力で無視した。
「……これで満足ですか」
少しぶっきらぼうになってしまいましたが、こっちも我慢しているんだから多少は我慢してほしい。
「――うん。ありがとう、フェルン」
(……その顔はずるいですよ)
照りつける日差しにも負けない笑顔を見せつけられ、その瞬間、私の羞恥心はどこかへ消え去った。
おまけ
「暑いねザイン……」
「本当にな。こんな暑い日にお熱いこって」
「『かき氷を出す魔法』あるけど食べる?」
「いる」
「それにしても変わってるよね。手汗なんか気にするなんて」
「……俺が言えたことじゃねーと思うけど、お前さんはもうちょっと乙女心とか持ったらどうなんだ?」
「私だって多少の乙女心は持ってるよ」
「ほーう、どんなところがだ?」
「服を着ていないと恥ずかしい」
「……それは乙女心じゃなくて常識だ」
「かき氷できたよ。……あっ。シロップがない」
「はぁ……。ちゃんと乙女心を持った年上のお姉さんが欲しい」
「目の前にいるじゃん」
「……っはぁぁぁぁ……」