この透き通る世界を俺は機械と骨でハッピーエンドにしてみせる 作:多趣味なオタク
結構スケジュールに余裕があって番外編を投稿していましたが、ついに限界が来てしまいました...
ということで冬眠前最後の投稿です!お休みなさい!
・先生と銃
カリカリカリ...
鉛筆が紙の上を滑る音が響き渡るシャーレの部室。そこにはいつも通り先生とサンズがいた。そのほどほどに広い部室の中には二人以外おらず、どうやら今日は当番制度が休みなようだ
『...』カリカリカリカリ...
「...」カリカリ...
両者何も言わずに書類を捌いていた...その時、突如先生がバッ!と立ち上がった
『休憩しようサンズ!この量はちょっとキツイ!』
「了解。じゃあ紅茶注いで来る。」
元気よく休憩を提案した先生とは対照的に、サンズはのそのそと立ち上がって電気ケトルの方に歩いていく
その間に先生はいつも休憩に使っているテーブルの上を軽く整理して、いつでもお茶ができるようにしておいた。その後数分経ってからサンズが二人分の紅茶の入ったカップを持ちながらやってきた
『ありがとうサンズ~いつも助かるよ。』
「あいよ、こっちもいつも先生に助けられてるしお互い様だな。」
そうして二人とも穏やかな雰囲気で紅茶を飲み、そして手元にあるクッキーなどをつまんでいく...サンズはともかくとして、先生は完全に頬が緩み切っている。いつもはキリッとしていて滅多にそのような表情をすることはないが、どうやらこの時間はその例外らしい...
そんなこんなで至福の時間に浸っているわけだが...そんな時間も長くは続かない。この時間が破られるのは、ほとんどは多くの仕事量や急な相談などによってだが...今回はそのどちらでもなかった
『...ふぅ...平和だねぇ...』
「全くだ...いや、毎日銃をぶっ放しておいて平和とは言い難いか?」
『ま、まあ、それがここの普通だし...ん?銃?』
「...どうした?」
『銃...ジュウ...じゅう...』
何かが引っかかったかのように「銃」という単語を繰り返し続ける先生。その手は何かを探しているかのように自身のポケットを確かめるように触り続け...ズボンのポケットに触ったところで、その手がピタッと止まった
『あーーー!!!!』
「うわ、なんだどうした先生。」
机の上に置いていた紅茶のカップが軽く揺れるほどの大声を出した先生は、なぜか犯人を見つけたかのようにしてサンズに指をさした
『銃!銃だよサンズ!この前勝手に押し付けられたアレ!!』
「あ~...プロテクター・パーム・ピストルか。」
『そうそのプロテクターなんとか!アレ結局なあなあで終わったけど、まだちゃんと説明されてないよ!』
納得していません!という様子の先生に、前のことすぎてもはや説明がめんどくさくなっているサンズ。本来なら嬉々としてその説明を始めるところだが、本日はいつもの1.5倍の量の書類によって忙殺されていたためその元気はない
だが最低限の説明責任はあるだろうと先生に促されたサンズは渋々といった様子でその説明を始めた
「ハァ...よし、ちゃんと聞いてくれよ?」
「...この前も説明したが、
『でも、私が...先生が銃を生徒に向けるなんてあってはならないことだと思う。だから、申し訳ないけどそれを受け取ることは...』
「いや、それは分かってる。」
先生の断り文句を当たり前かのようにぶった切ったサンズは、そのままの調子で
「コイツはまあ、銃の名目はあるが
『えっ?...いや、吸ったことはないかな。憧れたことはあるけど...肺がね...』
突然喫煙をしているか尋ねられた先生は戸惑いながらも”ない”と告げる。サンズはどこか安心したような、それでいて残念そうな表情を浮かべた
「そうかぁ...ま、それはそれでいい。んで、コイツの本質...先生にとっての使う用途だが、まあ、なんだ...ライターだな。」
『...ライター?』
予想していなかった答えに、ついオウム返しで尋ねる先生。その疑問にサンズは頷き、詳しい説明した
「ああ、コイツは本来銃弾が入っているところをオイラが改造して半分ライターにしてる。そのおかげでただでさえ少ない殺傷力がより低くなっているが...まあ先生は銃を使わんだろうし、関係ないだろう。」
そうしてサンズは先生が机の上に取り出した
『うえっ!?ちょっ...!』
驚いた先生の声を無視して押し込み続けるサンズ。そして何度かそれをしていると、ようやく銃口からぼうっと火が出てきた
「...ま、こんなとこだ。ライターとして使うか、それとも銃として使うかは先生次第だが...」
『ありがたくライターとして使わせてもらうよ。』
「ハァ...ま、そうだろうな。ってことで、ホイ。」
サンズの手から放り出された銃は、そのまま円を描いて先生の手にすっぽりと収まった。その銃を先生は大事そうにぎゅっと握り、また元々入れていたポケットに入れ込んだ
『...ねぇ、やっぱり銃の機能をなくしてもらうことはできない?』
「無理。せめてもの抵抗として持っといてくれ...グレーゾーンだから大丈夫だろ?」
『う~ん...まあ、そうなんだけど...』
ムムム...と納得がいっていない様子の先生だが、サンズの意識はもはやそこにはなく、先ほどまで処理していた机の上に広がる書類に向けられていた。そしてサンズは未だモヤモヤとしている先生を一瞥し、深い溜息をついて紅茶を一口啜った
「めんどくせぇ...」
・勇者のサブ武器
「ムムム...」
「...」
「クッ...」
「...よっと」
「え?な...うわーん!また負けてしまいました!」
「...もうそろそろやめないか?これで二十回目だぞ?」
「ま、まだです!勇者は決してあきらめません!」
「退き時は重要だと思うが...」
ディスプレイを前にして騒いでいる二人。その部屋には二人以外...いや、カメラの中に居る人物?を加えれば三人以外いなかった
モモイとミドリは二人で新作ゲームを見に行き、ユズは部長として部活動の集まりに参加しに行っている。ちなみにユズは半泣きだった
そして騒いでいる二人がプレイしているのは銃を使う1v1形式の対戦ゲーム。その画面にはサンズ側のキャラクターが連勝中という表示がされている
「まあ、なんだ。アリスはアレだな...サブ武器を全然使わないな。」
「勇者は姑息な手は使いません!」
「別にサブ武器は姑息じゃないだろ...てか勇者も結構...」
脳内でとある厄災の勇者を思い浮かべつつ、アリスにサブ武器の重要性を教えていたところでサンズの持つスマホに通知が入る。丁度いいと思いゲームをポーズさせてからなんとか勝機を見出そうとしているアリスに再度休憩を提案したところでその画面を見てみれば、そこに映るのはウタハからのメッセージだった
ウタハ
例のアレ、完成したよ。アリスも連れて見に来るといい。
「...よし、気分転換がてらエンジニア部にでも行くか?」
「はい!アリスも同行します!」
「じゃあ軽く片付けてから行くか...」
「やあ、よく来てくれたね!」
喜色満面といった表情で元気にサンズたちを出迎えるウタハ。もちろん場所はエンジニア部の部室である
「...大分顔色悪そうだけど、どうしたんですか?」
「ああ、これかい?...ちょっと熱中しすぎてね!」
悪びれることなくそう答えるウタハ。よく見なくとも目の下には隈が浮かんでいる...
「要するに徹夜して寝不足...と、これは部員たちに報告か?」
「もうみんな徹夜なんて当たり前だからね!そう騒ぐことなんてないさ!ハッハッハ!!!」
「...重症だな。」
「”混乱”状態ですね?今すぐマジックアイテムを使用しなくては!」
「大丈夫だ!私たちにはエナドリがあるさ!」
「はよ寝ろ。」
どうやら手短に要件を終わらせ、すぐに目の前の患者をベットに叩き込まなくてはならないようだ。サンズは近くにある保健室の位置の確認を始めた
「...で、例のアレはどこに?」
「ん?ああ、それは...ここに。心配しなくとも自爆機能はないから安心してくれたまえ!Bluetooth機能はあるがね!」
とにかく話を進めようとしたサンズは今回やってきた要件についてを聞きただす。するとウタハは変わらずの元気...いや、深夜テンション?で二つの銃を持ってきた。一つはサンズが持っているのとほとんど同じような白い拳銃、もう一つはそれとは対照的に真っ黒な色をしている
「おお、こうして見てみるとやっぱカッコイイな...」
「だろう!?この白と黒の対比、そしてそれぞれのシンメトリーがこれまた美しくて...!」
「...一旦好きなだけ喋らせとくか。んで、アリスはコイツらをどう思う?」
「え?えっと...」
突然自分に意見を尋ねられたアリスは驚き声を上げてしまったが、きちんと自分の意見を述べるためもう一度よくその二つの銃を観察する
よく見てみれば白い銃はサンズの持っている銃より全体的に少し小さくなっている。まるで体の小さい者が使うことを想定しているかのように...
また、黒い方は色以外全くと言っていいほどもう片方と類似している。アリスの目から見ても、この二つに色以外に差はないように思えた
「...この二つはすごく似ている、と思います。まるで...兄弟のように。」
そのように言ったところで、アリスは自分が何を言ってしまったのか気付いてハッとした。そして同時に僅かな恥ずかしさを覚え、どうしようもない感覚に陥った...
「へへ...いい着眼点だな。」
「わわっ...」
どこかきまりの悪そうにしているアリスをほほえましく思いながらも、サンズはアリスの頭を撫でながらその銃たちの説明を始めた
「アリスの言う通り、こいつらは兄弟銃...いや、キヴォトスなら姉妹銃か?まあそんなやつだ。基本的な性能はほとんど一緒だが、一応ちょっとした違いがある。...ほれ、こっちを右手、これを左手に持ってみろ。」
「わっ...なるほど、これは...」
「気づいたか?」
「はい!白い方は右手で持ちやすくなっていて、黒い方は左手で持ちやすくなっています!逆に持つと...あれ?こっちでもあまり違和感なくちゃんと持てます...どういった作りなのでしょうか?」
手元の銃をこねくり回して構造を確かめるアリスは、サンズの目には新しいおもちゃをもらって大はしゃぎな子供にしか見えなかった。...おもちゃにしては少々物騒だが
「まあそこらへんはウタハさんにでも聞いてくれ。んで、アリスの言う通りこいつらには決まった持ち方があってな。それでもって軽量化もしてある。つまりは二つ同時に使うことを想定されてるんだ。...まだ喋ってんのかあの人。」
「混乱状態です...」
「やはりこのデザインもさることながら実用的にもだね...」
「アリスはあんなふうになっちゃダメだぞ。」メカクシ
「ああっ、何も見えません...」
未だ虚空に向かって話し続けているウタハを見せないよう手でアリスの目隠しをしているサンズ。しかしいつまでたっても話し終わらなかったので、致し方なく強制的に就寝(当て身)させた
「ふう...んじゃ、それやるよ。元々アリス用の武器だしな。」
「えっ!?で、ですがアリスには光の剣が...」
「ああ、それはな...言い忘れてたんだが、近々それ検査しようかって言われてたんだ。元々がそれ単体で使うような想定してなかったからしょうがないが...んで、そのためのこいつらだ。」
「な、なるほど...」
あっさりと衝撃的なことを言われ、軽く思考回路がショートしたアリスには生返事しかできなかった。しかしサンズからの贈り物ということもあり、その心情は喜びにあふれていた
「ふっ!ほっ!...反動が少なく、それでいて音も限りなく小さくて使いやすいです!」
トンットンッ
「...上達速度ヤバ。」
流石は王女ですね。
その後、カメラを提げたサンズがアリスの射撃練習の様子を見ていたが、アリスの成長速度に自身を追い抜かされることを予感し一人恐怖するのだった
「あっ連続ヘッドショットです!スコア更新ですね!」
「...俺も練習しようかな。」
その程度では王女の成長速度に追いつくことは不可能と判断。無駄な足掻きかと。
「うるさいよ!」
※アリスは武器を「光の剣」から「二丁拳銃」に変更した
「光の剣」は検査(緊急停止機能の追加)に回された
・Fun(n)=62
『...ま、また終電だ...』
今日も仕事が長引いてしまって終電近くまで居残ってしまった...
現在私がいるのはサンズの所属しているミレニアムサイエンススクールの自治区。ここでは公共交通機関がいくらか発達しているので終電までの時間は長くなっているが、それでもギリギリまで居残ってしまった。これも全部サンズの美味しい紅茶とゲーム開発部のみんなが可愛すぎるのが悪いんだ...!
今日はいつもシャーレの部室でやっている書類仕事を、サンズに無理を言ってなんとかミレニアムでさせてもらったのだ。私は目の前にかわいい生徒たちがいたから作業スピードが心なしか上がったような気がするが、サンズは逆にみんなにちょっかいをかけられていたから作業が滞ってしまったかもしれない...あとでお詫びしておいた方がよさそうだ
ちなみにアリスが両手に拳銃を持って決めポーズをしていたのは私の脳内アルバムに保存しておいた。かわいかったなぁ...
と、そんな考えに浸っていると人々が通りゆく、道の端に頭を抱えている人がいるのが見えた。一瞬このまま通り過ぎるという考えが頭をよぎるが、生徒の模範たろうとするのならばここで見捨てるはずはない。私は終電の時間を頭の隅に追いやり、
『あの、どうかしましたか?気分が優れないようでしたら連絡...を...』
そこで私は違和感に気付いた
灰色と黒の服を身にまとっていたと思っていた人は、服だけでなく肌もその色に染まっていてまるで生気を感じられないこと
その人は頭に手を当て困っていたのではなく、手に持っていた何かを見つめてうれしそうにしていたこと
そして、その人が手に持っていたのは、丸い人の顔のようなものが付いたボールだった。...いや、
なんの判断材料もなく、平時の私ならば『何を』を一蹴するような考えが不思議としっくりと馴染んだ。タマシイなどオカルトの領域だ、こんなに明確に表れるはずが...
私が目の前の人の異質さに気が付いた瞬間、その人間でなくボール?が口を開いた
❋アルフィーは 王室せんぞくの
けんきゅうしゃ。ぜんにんしゃの
”割り当てなし”は どうなった?
その人の声の一部が、まるでテレビの砂嵐のようにかき消された
『...ッ!』
そして声を出そうとして気が付く
今、私の体は動かない。
いや、それどころか
口を動かそうにも、なにか強いモノに無理やり抑え込まれているようで動かせず、周りを見てみても何一つ動くものや人はない。いや、先ほどまで聞こえていた何かの機械音、人の歩く音、電車が走るような音までもが聞こえない
しかし、そんななかで目の前にいる人だけは動いている。喋ることができている
(一体何が起こっているの?)
そう口に出すこともままならない危機的状況。目の前の人の目的が私の命だった場合、私はなすすべなく殺されてしまうだろう
そんな私の緊張をよそに、目の前の人は独り言のように話し続ける
❋あるひ
あとかたもなく きえさった。
『...』
誰かが消えた?失踪してしまった誰かの話だろうか
彼の言葉は続く
❋じくうの かなたに
けしとんだ
『...』
誰かに殺された、や自ら逃げたではなく
頭の中で”何が?”がぐるぐると回っていた私だったが、ふと一つ明確に疑問に思うことがあった
❋なぜ
そんなことを しってるか?
『!?』
心を読まれた?いや、私の表情から察したというのだろうか
目の前の人間の視線は変わらずボール?に集められていて、横目ですら私を見ようともしていない。だとすれば判断したのはこのボールのようなものに違いない
瞬間、漠然と形容のしようもない恐怖に包まれた
怖い 怖い 何もわからないのが、怖い 何もできないのが、怖い
だから、何かできないだろうか?
私がようやくその底知れぬ恐怖を感じ取り、何かできることはないかと動かせる範囲で眼球を動かして周囲を確認し、考えを巡らせているとその一瞬で目の前の人間は私との距離を縮め、そのボール...いや、
❋これが
かれの ざんがいだ
そして、何事もなかったかのように世界は息を吹き返した
目の前にいたはずの人物は痕跡も残さずに消え、先ほどまで聞こえていなかったはずの街の音が聞こえ、人々が固まっている私を不思議そうに見ながら通り過ぎてゆく
『ハッ、ハッ、ハッ...』
今まで知らず知らずのうちに止めていた呼吸を再開することで、肺に負荷がかかり痛みを発した。息が乱れ、背中には嫌な汗が流れている
黒服の時とはまた違った怖さだ、などと他人事のように考える思考を一瞬で切り上げ周囲を再確認する。誰も彼もが何事もなかったかのようにして道を歩いている。異常がなかったかのようにして平然としている
やがて呼吸の乱れも収まり、正常な思考が取り戻されていった
(何だったの、アレは...)
答えの出ることのない問いが頭を巡り、そのまま何もすることができない。まるで何かに体を縛り付けられているような気分だった
<あの、大丈夫ですか?先生。>
そんな私を見かねてか、シッテムの箱の中のアロナが声を掛けてくれた。どうやらその様子からして先ほどのことは感知していないらしかった
『...ううん、大丈夫。ちょっと疲れてただけだと思う。それよりも早くしないと電車に乗り遅れそうだ。アロナ、最短ルートの案内をお願いできる?』
<もちろんです!ではすぐにお伝えしますね!>
私はなんとか笑顔を作って誤魔化し、そして終電に遅れないようにすることだけを意識を切り替えた。そうでもしないと、この場所から離れられそうになかった
そうして私はアロナの案内に従って道を歩いていく
『...疲れてただけなら、良かったのにね。』
生徒との交流を見ているだけで疲労も特になかった私だったが、その日はすぐに床に就くことができた
︎♒︎♋︎⧫︎ ♓︎⬧︎ ⧫︎♒︎♋︎⧫︎✍︎ ✋︎ ︎❍︎ ⬧︎♍︎♋︎❒︎♏︎♎︎✏︎<□あ〇、怖◆!>
すぎもと 様、
ラムネ514 様、☆10評価ありがとうございます!감사합니다!
カーピーバーラ 様、
さとっち 様、☆9評価ありがとうございます!
筆者のモチベーション向上につながりますので、評価、感想、誤字報告のほどよろしくお願いいたします。
あ、そういえば感想を非ログイン状態でも可にしました。逆になぜ今までしていなかったのか筆者自身疑問ですが、とにかく感想ドシドシ待ってます!