この透き通る世界を俺は機械と骨でハッピーエンドにしてみせる   作:多趣味なオタク

38 / 49
油断していたら夏風邪を引いた筆者です。しかもコロナ。

三十九度七分まで熱が上がって死ぬかと思いました。みんなも風邪には気を付けよう!



テストが近づいてくる

 

「うわ...腕の方向どうなってんだこれ...」

 

 縄で縛られているうえ、布などの緩衝材もなしに地面に転がされている犯罪者たちのうちの一人のあまりに酷い姿を見て、俺は思わずそう言葉をこぼした

 痛そうを通り越してもはやグロい。人の痛そうな姿を見て喜ぶ性格でもないからとりあえず近づかないでおいた。ボクは普通(ノーマル)...♦

 

「これはかなりの痛手ですね~☆ちょっとの間ですが、活動することは難しそうです☆」

 

「...あ?これでちょっと?痛覚ないのか?」

 

「この程度で諦めるほど柔ではないので☆」

 

「うわこわ」

 

 ヤベェやつ(鰐渕アカリ)と会話を続けていたらこっちの気が触れそうになる。腕がとんでもない方向に曲がってるのに全く痛がる様子を見せずにむしろ笑顔とか、反省以前の問題では?と、少し恐怖を覚えつつ、骨折がちょっとの間で治ることに流石のキヴォトス人パワーを感じた。俺もヘイローついてんのにこの差は一体...

 

 そうしてわざわざしゃがみこみ目線を近づけてまで話をしていた俺は立ち上がり、目的の人物がまだ来ていないことを確認してから暇つぶしとして次の転がっている犯罪者へと声を掛けた

 

「うっぷ...きもちわるい...」

 

「よう、調子は...良いわけないな。かなり顔が青ざめてるが、正義実現委員会の輸送が荒かったか?まあアンタたちには妥当なもんだろうが」

 

「うぅ...こんなのってないわ...」

 

「いや、アンタより酷い目に遭ってる人がいるだろ。横見ろ横」

 

 そう言って俺は目線を少し横にずらした

 

「...本当、なんでアンタがここに居るんだよ」

 

「私が聞きたい...」

 

 青い顔で横たわる赤い髪の少女(赤司ジュンコ)の横には、なんと他と同様に縄で縛られた状態で死んだ目をしているゲヘナ給食部部長の姿が!可哀そうが過ぎる。人の心とかないんか?

 

 縄については俺も一応外してみようとはしたんだが、まず俺程度の力じゃ解けなかった。先生は言わずもがなだし、この場にいる動ける人間はその二名のみ、先生もどっか離れてったし現状打つ手なし。ついでに言えばトリニティからゲヘナ側へ引き渡すことの仲介として、つまりはシャーレとしてここにいるため下手にいじくっては政治的な問題につながってかなりマズいらしい。でもめちゃくちゃ暇なので、暇つぶし程度に事情を聞きまわってるわけだ

 

 そんなことを話している間に橋の向こう側から車のエンジン音が聞こえた。離席していたはずが、いつの間にか戻ってきていた先生は電話をしていた向こう側にいる相手に一言述べて、俺の横に並び目的の人物を待つ

 現在、俺たちはエデン条約前だというのに()()()()()でやらかしやがった()()()の美食研究会を風紀委員会に引き渡そうとしていた

 

 

 

「お待たせしました。それで、死体はどこに?」

 

 ジープみたいな車から降りて来たのは見るからに服装が医療従事者の少女。だが、その発言にあまりにも予想だにしていなかった単語が含まれていたため、俺と先生の反応が一拍遅れてしまった

 

「...?どうかなさいましたか?」

 

『...え?ん?私の聞き間違い?』

 

「奇遇だな、オイラも聞き間違いをしたみたいだ...だよな?」

 

「あぁいや、それよりもこっちが優先か。死体じゃないが、けが人の引き渡しだ。アンタで合ってる...よな?」

 

 少しだけ不安になった俺はおそらく医者?な彼女にそう問いかけつつ、同じように驚いた様子の先生の体を軽くつついて意識を戻させる。どうにか先生が落ち着いたところで、何やら後ろが騒々しい

 

「死体じゃ...ない...うっ

 

「ぴちぴちで新鮮ですよ~☆」

 

「食材をいただく我々が新鮮ではないなど言語道断ですからね」

 

「本当元気ねあんたたち...いや一人そうじゃないけども」

 

「かなり活きがいい...失礼。元気なようですね。確か納品リストには負傷者三名に人質一人とのことでしたが...あなたたちは?」

 

 人の受け渡しで使われるとは思っていなかった「納品」という言葉に戦慄を覚えつつ、その内容に肯首する。すると、医者の少女の後方から彼女とは違うもう一人の見知った人物が車から降りてきたことを確認し、そちらの方に軽く手を振った。相手もそれを認識したのか、背中にあるその背丈に見合わない大きな羽をゆさゆさと揺らしながらトテトテとこちらにやってきた

 

「その方たちは「シャーレ」の先生とサンズよ。久しぶりね、サンズ。それに先生」

 

「おう、久しぶり...です」

 

『久しぶり、ヒナ。元気にしてた?』

 

 車から降りてくるその姿でさえ様になっているのはゲヘナの風紀委員長こと空埼ヒナ。あまりの仕事の多さによくヒナヒナのシナになるということを知識で知っていたため、よく見ていた二次創作よろしく介入して書類作業に人員を充てたりなどしていた

 

 その後も本人や行政官でありヒナの右腕ともいえるアコからの情報によると安定して常務を行えているらしいので、外部()からの干渉で組織が悪化していないか、アビドス編が終わった後その事態に気付いて余計なことをしたかもな...と毎日布団の中で反省会をしていたくらいにはずっと不安だった俺としてはかなり嬉しく、同時に安心したのはここだけの話

 

 あの時は「シャーレ」が対外的にどう見えているのかというのをそこまで重視していなかったから、かなり軽率な行動だったと反省している。どうせまだ万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)から嫌がらせが続いているのだろうが、肩書が「シャーレ」のみの先生ならばともかく「ミレニアムサイエンススクールの生徒」という肩書も持っている俺が介入してしまえばそれはそれは政治的な意味でマズイことになってしまうことは自明の理である。よってこれからは原作通り先生に世話を焼いてもらう予定。そのための手回しだが、先述の万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)からのちょっかいが激しくなかなか難しいのが現状。まあでも先生ならなんとかなるでしょ(楽観)

 

 ...などと脳内であれこれと考えていたところ、いつの間にか足元を転がっていた美食研究会(一人除く)が車の後方部に移動していた

 

「あの!私誘拐されてた被害者で別に大きなケガもないんだけど、なんでまだ座席があったのにここに放り込まれてるの!?」

 

「それはめんどくさ...効率的だからですね。安心してください、ケガはすぐに治します」

 

「ケガを作らないで!?」

 

「まあまあ、いいじゃないですかフウカさん。この機会に美食についての見識をともに深めましょう?」

 

「複数人で密室の中互いに知識を高め合う...これはズバリ、合宿というやつですね☆」

 

「絶対に違う!!」

 

「うぷ...し、死ぬ...」

 

 一名が顔を真っ青にして本当に死にかけているのを他人事に大変そうだと傍から見つつ、十字を切って気持ち程度に健康を願う。悪魔モチーフの彼女にこれをしても逆効果かもしれないなと切った後に思ったが、問題を起こしたのはあちらなので気にしない気にしない

 ...あっ

 

『...なんだかあちらは大変そうだけど、彼女は?』

 

「あぁ、セナのことね。彼女は優秀よ。感情が顔に出にくかったり、その...少しだけ表現がおかしいこともあるけれど、信頼できるわ」

 

「へー」

 

 キャー!という叫び声をシャットダウンし、口から虹を吐き出す様子をできるだけ視界に収めないようにするため、背後から聞こえる絶叫を無視して先生と話しているヒナに意識を向けあわよくば会話に混ざりこむことにする。あれは地獄だ...

 

『ヒナは体調のほうは...』

 

「大丈夫よ。あの書類作業は今のところ分担できているからかなり楽。万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)からは相変わらずだけど...それよりサンズ、なんで敬語なの?」

 

『確かに、今までそんなことなかったよね?』

 

 会話に混ざった瞬間ヘイトがこちらに向いてきた。俺なんかに意識を向けないで...

 

「えっ、あー...いや、今までちょっと対外的なアレを気にせずにタメ語を使ってたから、その反省...っすかね?」

 

「そう...そんなこと気にしなくとも、私としてはこういう場では敬語は外して欲しいのだけれど」

 

「い、いや、それ以外にもシャーレの当番で助けられてるし、失礼というか...」

 

「...それなら余計に敬語はいらないわ。私だってあなたに助けられて風紀委員会での仕事が楽になった」

 

「それは...」

 

 結果論で、と言う前にヒナが被せるようにして畳みかけてくる

 

「私は、あなたが敬語じゃない方が嬉しい。もしあなたがどうしてもって言うなら、その時はあなたの意思を尊重するけれど...」

 

「う...」

 

 顔を俯かせてそんなにしょぼんとされると罪悪感がががが...ここは腹をくくるしかないか

 

「...わかった。敬語じゃなきゃいいんだろ。ったく、物好きだな...なに笑ってるんだよ先生」

 

『いや?別に?』

 

「...グッ」

 

 恥ずか死しそうになりつつも強靭な精神力()で耐えきった後、先生がヒナに真面目な雰囲気でエデン条約やエデン条約機構(ETO)について赤裸々に話していた。横から聞いていたがそこ話しちゃっていいの?ってとこまで話してたが...それを『ヒナを信用してるから』とかシラフで言えるのヤバい。流石は学名セイトタブラカシだと褒めてやりたいところだ(伝説のスーパーサイヤ人)

 

 で、ヒナからは「エデン条約はれっきとした平和条約」「マコトはそれに賛同も何もそもそも何も考えてない」「エデン条約を推進したのはヒナ。そろそろ引退しようかと考えてる」ってことを聞き出すことができた

 へーエデン条約成立したらヒナ風紀委員会引退すんのか...

 

「『い、引退!?』」

 

 ヒナの突然のカミングアウトに俺と先生は思わず声をハモらせ、大声を上げてしまうが、そんなことも気にならないほどに頭の中が疑問符で埋め尽くされる。ゲヘナの風紀委員長といえばヒナ、というイメージがあまりにも定着しすぎていたため、今から別の人物がその立場になることに違和感しかない。というか...あれ?最後の方でもヒナは風紀委員長のままだったはず...???

 

「え、えぇ。書類作業を分担したおかげで後輩たちも仕事に慣れてきているから引継ぎには問題なさそうだし、武力に関してはETOのおかげでどうにかなりそうだし。それに...」

 

「初めて、自分の時間でやりたいことを見つけられそうなの」

 

 未だに混乱状態が解けない俺の顔を一瞥してから、ヒナは先生に向けて笑顔でそう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...それじゃあ、時間も遅いしここら辺で。お疲れ様...」

 

『うん、お疲れ様。気をつけてね!』

 

「じゃあな...早く寝ろよ?」

 

「ふふっ、ええ、またね」

 

 ヒナの衝撃発言の後も色々と話をしたところで、時間も夜ということで解散の運びとなり、横方向に揺れながら離れていく車の背中を眺めながら俺たちは見送りをした

 

 会話をする中で表面的には繕えてるだろうが、さっきから俺の内心では動揺しまくっている。引退って...ああ!で納得できることではない。いや心情的にはブラック会社をやっと辞められてよかったねな感じなんだけど、明らかに俺の記憶との齟齬がある。俺がただ単に知らないだけならいいんだが、もし原作にこの流れがなく、俺の行動による変化だった場合...

 

 そこまで考えて、やめた。俺の過去の行動を嘆くのは風呂の中に入ってる時と寝る前の布団にくるまっている時でいい。今はとりあえずこの夜道で先生を安全に送り届けることだけを考えよう。ここから合宿の建物までのルートを頭に浮かべつつ、横にいる先生に何気なく話しかける

 

「...久々にヒナに会えてよかったな」

 

『...そうだね。風紀委員長を辞めちゃうっていうのには驚いたけど、それを引き留めるのは...』

 

「まぁ、なぁ...」

 

 俺と先生は顔を見合わせて、同時に口を開いた

 

「『あんなに眩しいぐらいの笑顔だったしねぇ』しなぁ」

 

 またもや先生と俺の声がハモる。夜の橋の上で、二人の笑い声が響いた

 

 

 

「あら、ヒナさん。今日はかなりご機嫌ですわね?」

 

「...何の事かしら」

 

「ふふ、誤魔化しても無駄ですわ。そのにじみ出る幸せオーラ...今ならば口にしたすべてを極上に感じることができるはずです。ならば!今こそ最高の美食を味わうべきですわ!」

 

「...そうね。全部終わったらそれもいいかもしれない」

 

「!?」

 

「...何?」

 

「い、いえ。まさか本当に私のお誘いにのっていただけるとは思わず...本当に何があったのですか?」

 

「ふふ...さあね」

 

「...本当に何があったのかしら」

 

「もう何でもいいから早く着いて...」

 

「」

 

 

 

 

 そして時間は流れ...()()()()()()()()()()()()

 

 最後の模擬試験の採点を終え、俺と先生が別室からもとの教室へと戻ってくる。先生は教壇の上に立ち、俺はその間にみんなの答案用紙を点数が見えないように裏返しながら配っていく

 

 全員分の答案用紙を配り終えたところで、緊張した雰囲気中、先生が口を開いた・

 

『...うん、みんな合格!本当によく頑張ったね!』

 

「...ほ、本当に?夢じゃなく、本当に!?」

 

「本当ですよコハルちゃん!流石は正義実現委員会のエリートです!」

 

「え、えへ...そうよ!私はエリートなんだから!...やった!

 

 ヒフミの前では誇るように胸を張るコハルだが、ヒフミがその場を離れてからは背を向けて小さくガッツポーズをしている。よく横で教えていた俺からすれば感慨深いものだ。見なよ…オレのコハルを…

 

「アズサちゃんも60点どころか70点を超えて...本当にすごいです!」

 

「...うん!」

 

 珍しく表情を綻ばせるアズサ。だが俺には見えている。いつだかの景品であるモモフレンズのグッズを求めて教室の入り口付近をちらちらと見ているのを...

 

「それから、ハナコちゃんも...」

 

 続いてヒフミが向かったのはハナコ。いつものように笑顔を浮かべているが、その笑顔はどこかほっとしつつも罪悪感を覚えているような気がする。今までのふざけた点数について思うところがあるのだろうか。最後が良ければ何でもいいというのに、意外と気にしいなんだな

 

「...運が良かったですね。それに...うふふ♡いい感じの点数です♡」

 

「ハナコちゃん...以前に何があったのかは分かりませんが、でも、よかったです。以前の実力を取り戻せるよう、私もお手伝いしますね。本当に...よかったです」

 

「...ご心配おかけして、すみませんでした」

 

 この期に及んで運がいいと誤魔化すハナコ。どうやら何としてでも、もとの実力を晒す気はないようだ。まあトリニティだったらそこらへんの妬みとか持ち上げとかヤバそうだし隠すのが無難か。せめて補習授業部のメンバーには明かせるようになればいいんだが...

 

 そんな柄にもないことを考えていると、先生の代わりに笑顔のヒフミが教壇に立ち、教室に響くような大声で話し始めた

 

 

「...ということで、約束のモモフレンズのグッズの授与式を始めます!」

 

『「「「「......!!」」」」』

 

 ドン!という効果音が鳴りそうな置き方で設置された数々のぬいぐるみたち。それを見た俺たちは何か言おうとしてやめたり、ただ苦笑したりするだけ。ほぼ全員が消極的な態度をとる中、しかしただ一人だけが目を輝かせていた

 

「この中から選んでいいのか...!?お気に入りを...!?」

 

「どうぞどうぞ!これは勉強を頑張った皆さんのためのものなんですから!アズサちゃんだけじゃなくて、みなさんもどうぞ!」

 

「えぇと...」

 

『うーん...』

 

「えぇ...」

 

「いらんな」

 

「えぇ!?」

 

 いやえぇ!?じゃなくて

 驚いてるヒフミには悪いが本当に欲しくない。まずペロロは論外として、それ以外のキャラクターなら全然大丈夫なんだが...スカルマンとかウェーブキャットとか。でもそれを家に持ち帰るという選択肢はないな。ないない

 

 ということで、結局景品を受け取ったのはアズサのみで、他は辞退という運びになった。まあ妥当である

 ちなみにアズサは勉強しすぎておかしくなったとかいう裏設定がある博士ペロロにしたらしい。正気か?しかしペロロを鳥ではなくカバと言っていため、彼女の適正はペロロ以外にあるのだろう。正気寄りでよかった。ヒフミ?ファウストが正気なわけないだろ、いい加減にしろ

 

 そんなこんなで、明日はついに第二次学力試験。どんな地獄が待っているのだろうかと胃を痛めつつ、俺は布団に潜り込んだ

 





サンズ君の持つ風紀委員会介入についての考えの部分はいらないかな...と思いつつここで書かなきゃいつ書くんだよ!?という大我の意思を宿して書きました
蛇足なのかよ......(青峰)

あとヒナ書くの難しい。ヒナはこんなに自己主張しない!という思いと仕事漬けじゃなくなったヒナをなめるんじゃねぇ!という思いがせめぎ合ってます。オラにエミュ力を分けてくれーッ!

最弱のデブ神 様、カズマ 様、黎00 様、タバラガニ 様、☆9評価ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。