この透き通る世界を俺は機械と骨でハッピーエンドにしてみせる   作:多趣味なオタク

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OFFを遊ぼう(直訳)(販売促進)
switch版もあるぞ!

前話での大誤字を修正してくださった方々に大いなる感謝...!
あ、今回アンチ・ヘイト要素強めです。よろしくお願いします。

それでは皆様よいお年を!


PLAY OFF

 

 ❋てを とる

 ♡てを とらない

 

ナギサ   LV 1   HP          36/52

 

 

「...私は行けません」

 

「...へぇ?」

 

 私はその誘いを断りました。差し伸べられた手を握ることなく無視したのです

 

「私はあなたの善意に応えることはできないのです」

 

「...」

 

「...すみません」

 

 ああ、なんて滑稽。桐藤ナギサ(魔女)は救いの手を拒絶して罰される。これが正しい物語なのだと私は受け入れます。このような被害者面をしている自分に嫌気がさしますが...それでも、一度動き出してしまったこの計画はもう止められません。今が...第三試験が実質的な終わり、計画の終着点です。ここまで来てしまったからには、後は結果を待ち罰されるだけなのです

 

 きっと歴代のティーパーティーの中でも屈指の愚か者として衆目に晒されてしまうでしょうが、仕方のないことです。私はそれだけのことをして、そうされなければならないのだから

 

「ですから、どうか私のことなど捨て置いてください。件の裏切り者さえわかれば...きっと、大丈夫なので」

 

 だから私は救いを受け入れません。救われてしまってはいけません

 

 ああ、私はうまく笑えているでしょうか。じくじくと痛む心を無視して微笑む私の顔が、貴方にはどう映っているのでしょうか。狂っている?自暴自棄になっている?悲劇のヒロイン(お姫様)のようには......ありえませんね

 

 ...実を言ってしまえば、私が目覚めた時、あなたに背中をさすってもらえた。救ってくれようと意志を示してくれた。これだけで救われる価値もないはずの私はその瞬間、不十分なほどに救われたと、そう思ってしまったのです

 

 ですから、さあ、どうか

 

早く私を見捨てて
それでも私を助けて
                    

 

「...あぁ、そうか。アンタはそう決断(ケツイ)したんだな」

 

「はい。なので、あなたも早く先生と合流した方が...いえ、策を巡らせた側が言うことではありませんでしたね。すみません」

 

「全くだ、何度試験を受けるために苦戦させられたことか...」

 

「すみません。それでも私には...」

 

「まあ......それならしょうがないか。出荷だ

 

「ええ、出荷で......出荷?」

 

 聞き間違いでしょうか?今、彼の口から出荷という言葉が...ええ、きっと聞き間違いです。そうに違いありません。たとえ彼が私の腹から抱えて担ぎ上げようとしていても、きっと別の意図が──

 

「よいしょ...重っ...出荷の時間よー」

 

「はい!?ちょっと、どうして担いで──キャー!?

 

 どこから取り出したのか、私の頭に黒い袋を被せて体をぎこちなくも素早い動作で担ぎ上げると...いえ今小さく「重っ」って言いましたね!?私はこれでも日々体重に気を付けて生活しているし平均程度なのですが!!??あまりにも女性に対して失礼なのでは!!!???

 

 驚愕、怒り、不安...それらをひとまとめに込めた私の悲鳴をものともせずに俵担ぎで私を担いだままにどこかへと移動していくサンズさん。私からは彼の表情を伺うことはできませんが、どことなく雰囲気が楽しんでいるように感じました

 

 そうして私はまともに身動きの取れない状態のまま、上下左右に揺れ動かされてどこかへと運ばれて行きました。最初こそあまりにも突然の事だったので大きく抵抗していましたが、途中からは諦めて...いえ、それができる立場にないことを思い出して、止めました

 

 ...そういえば、私が考えるのを止めて無心で運ばれていく道中に多くの銃声や爆発音、そして悲鳴が鳴り響いていましたが、仮に正義実現委員会との戦闘が行われていたとしてもここまでの規模にまで発展するでしょうか?それほどの戦闘継続力が彼女たちにはあるようには思えなかったのですが...

 

 ドカーン!ダダダダ!!トラップダー!

 

 ...私は一体、どこに連れ去られてしまうのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あはは...(特大ダメージ)されたナギ様を誘拐もとい様子を見に来たら予想以上にナギ様がこう...すごくすごい感じになってる!(語彙力)件について

 これって鬱状態では?ボブは訝しんだ

 

 鬱の状態で連れ去るのは流石に良心が痛む。が、これまで何度も試験を妨害されたのでプラマイゼロ...というか実際に妨害されると予想以上に絶望感が半端なかったのでマイナス寄り。判決、私情込みで連行!

 

 移動中、俺の頭の後ろで何やら抗議をしていたのか、はたまたただ単に叫んでいただけかもしれないが、とにかく全ての声は麻袋の優秀なフィルター機能おかげで判別がつかない。つまりは何を言っているのか分からなかった。途中からは大人しくなってたが...それが逆に怖かった

 

 ちなみに移動法はいつものテレポートだ。前々からわかっていたことだが、テレポートする際に持っている物は俺の移動先に一緒にテレポートするらしい。まあそうじゃなきゃ俺全裸で移動しちゃうからね。コンプラがやばいよコンプラが

 

 それで俺は今まで本とかしか運んでなかったから、今回人を運べるのかという実験の意味もある試みだったが...無事に成功できてよかった。まあ人を運べる分より多くの体力を消費するんだが...

 

 そんなこんなで地味に体力を減らしつつ、ナギサを探しに回っているアリウス兵の目をどうにかこうにか誤魔化しつつ、テレポートを多用して進んでいく

 

 関係ないけど、俺がテレポートするときって飛んだ先の地面からちょっと浮いた場所に飛ぶから足首にすごい負担がかかるんだよな...しかも人一人分追加で!多分羽が重いんだと思うんだけど、キヴォトス人スペックになりきれてない俺にとってはいろいろな意味でキツかったということをここに記しておく

 

 そんなこんなで自分の色々な要素を削りながら十数分ほどかけてやってきたのは...()()()()()()()()()

 

 中からは先生の指示する声と、それに呼応して増えていくアリウス兵の悲鳴。これ聞いてると、やっぱ先生って味方につけてないととんでもなく厄介だと思う。いるだけで味方にとんでもない量のバフかけてる人権キャラだろアレ

 ナーフは...してもらいたくないな!うん!これからも五体満足健康重視で指揮を執ってもらいたいものである。先生の定義が問われる今日...

 

フガフガモゴモゴ...(今どこにいるのですか...)

 

「もうちょい、もうちょいで着くからなー。あと少しの辛抱だぞー」

 

モゴ...(はい...)

 

 どこか不安げな声出すナギ様を慰め、体育館の屋根からその中の二階にある部屋へと飛ぶ。ハナコに教えてもらった決戦の地...は、ちょっと大げさすぎるか。最終的に戦う場所がここの一階のはずだから、そこから一番近くてできる限り安全な場所がここだ。事前に体育館の設計図を見せてもらっていたうえ、ハナコお墨付きだから間違いはない

 

 一応敵がこの部屋の中にいないか探り、敵に見つかることも考えて明かりは最小限にスマホのライトのみ。動かせるタイプのホワイトボードで入口の扉から中が見えないようにしてから、壁に立てかけておいたナギサの麻袋を取った

 

「...ここは?」

 

「長旅ご苦労さん、ここは体育館だな」

 

「若干酔いが...体育館?なぜこんなところに...」

 

 もっともらしい疑問が出される。それに俺はいつもの芝居がかった言葉で答えようとして...少し、言葉に詰まった

 ...ここに来てちょっと罪悪感を感じてきてしまった。今行っているこの行為は俺の完全な自己満足で、間違いなく人を傷つけるものだとは分かっていたつもりだったが...まだ覚悟が決まり切っていなかったらしい。いざその瞬間という直前に怖気づくとか、あまりにも情けない。こんなことなら変装でもしてくるんだったと一人反省した

 

「あの...?」

 

「...ああ、すまん。ちょっとボーっとしてた。ここでアンタにとっての残酷な真実...いや、目を逸らし続けた疑念を晴らして、きちんと向き合って欲しくてな。そのためにここまで苦労して運んで来たんだぜ?」

 

「はあ、疑念、真実...ああ、裏切り者の真実ですか。それならば......いえ、そうですね。それは、きっと私が見届けなければならないものなのでしょう。わかりました」

 

 この落ち着きようからして、彼女は裏切り者が補習授業部内の人物だと確定して考えているようだ

 

 ...本当はもっと違うものなんだがな

 

「...悪いが、この件はアンタの思い描いているようにはならないと思うぜ?」

 

「なぜですか?私が言うのもなんですが、あそこには最も怪しい人たちを入部させたつもりです。様々な証拠からして、確実にこの中にいると言えるまでにこれ以上ないほど怪しい人たちを...それが間違いと?」

 

 そう言ったナギサの目は揺らいでいない。どうやら本気であの中にいると思っているようで、これを否定するにはかなりの労力が必要になるだろうことは想像に難くない

 俺は今から、冷酷にもその確信を打ち砕く

 

 自分の中に芽生えた罪悪感を見ないようより演技がかった口調で一つずつ、一つずつ丁寧に残酷な答えを導き出せるように誘導していく

 

「そうだなぁ...ヒントを言うならば、だ」

 

「百合園セイアが死亡したという知らせが届いた後、頻繁に行方をくらませた奴がいなかったか?」

 

「...え?」

 

「いつもの無邪気な振る舞いの陰に、何か思いつめたような表情をしてた奴は?」

 

「...待ってください、なぜそれを」

 

「アンタが無意識のうちに裏切り者ではないと仮定からすらも切り捨てていた奴は?」

 

「やめて!」

 

 暗い部屋の中、すぐそこで行われていた外の騒ぎも聞こえなくなるほどの声量で悲痛な叫び声が響く

 

「それ以上言うなら、私はあなたを軽蔑します!()()がそんなことをするわけがないじゃないですか!裏切る必要性を微塵も感じません!だって...だって、()()は、本当に...ねえ、違いますよね?きっと、私の思う人とは違うはずですよね?」

 

「...」

 

 過呼吸になりかけ、息が荒くなっているナギサの姿はあまりにも痛々しい。俺を見上げ、すがるようにして俺の答えを求めていた

 

「何か言ってください!!その様子はまるで!...本当に...いえ、違う!違います!そんなわけがない!」

 

 乱暴に頭を振り、髪を振乱すその姿はまさしく狂気の沙汰であると言えるだろう。目は見開いて、額からは汗が流れ続けている

 

 俺にはこんな風に狂った状態の奴を落ち着ける適切な方法の知識はない。だから...

 

ドガッ!

 

「う...ぐっ...」

 

 正気ではないナギサを壁に向かって押さえつけ、揺れ続けている目の焦点を衝撃によって無理やりにでも合わせた。話を聞かせるなら...俺の意図を伝えるなら今しかないだろう

 

落ち着け!...視点を合わせろ、俺の声が聞こえるか?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ......」

 

 肩で息をしつつも先ほどまでのように暴れだすことはなかった。これならまだ押さえつけることができる。俺の話をちゃんと聞くことができる今この瞬間に最大限詰め込むしかない

 

「答えなくていい。だが考えろ、なんでソイツがそんなことをした?ソイツは本当にそれをするような人間か?逆に、ソイツはどういう状態で()()をするんだ?」

 

「え...」

 

「アンタが長年友人をやってた奴は、アンタに理解できないほどイカレた精神構造をしてやがるのか?」

 

「......」

 

()がこれからするのはアンタを糾弾して追い詰めることじゃない。アンタにはただ、取り繕わない姿で、本心から()()と対話してほしい」

 

「糾弾ではなく、対話...」

 

 まだ若干様子は怪しいが話が通じているようだ。その証拠にナギサから俺の言葉に対する返答がちゃんと帰ってきた。ここでまだ発狂されてたらやばかった...

 俺は心の中で胸を撫で下ろし、ずっと力を込めていた腕から少しづつゆっくりと力を抜いていく。やがてナギサはずりずりと背中を壁にこすらせながら、そのまま壁を背にしてポスっと床に座り込んだ

 

「ふぅ、アンタから見た()()は...まあ間接的でも直接的でもどちらでもいいが、人を殺しておいて呑気に散歩なんてしてられるような奴なのか?」

 

「...違う、そんなことはしません」

 

「だろうな。じゃあ、なんでそんなことをしてたんだ?」

 

「...敵討ちを?いえ、あなたの話では...そんな、まさか...ありえるのですか?そんなことが...」

 

「驚いたな、もしかしてこんな情報だけで理解ができたのか?」

 

 やがて下を向き、考え込むような動作をしたかと思えば、ナギサの口から小さく「自暴自棄に...?」という声が聞こえてきた。まさかこの程度の情報で推理しきったのか...!?

 

「おそらくは、ですが...ええ、確かに彼女は()()()()()をしそうな節はあります。信じられない...いえ、あまり信じたくはありませんが」

 

 眉を下げ、あからさまに自信がなさそうな言い方だが、その声色からほとんど確信していることが分かる。もはや呆れているような感情が含まれているあたり、割と余裕が出てきたか...?

 

「ティーパーティーの名は伊達じゃ...いや、今までの経験か。すまん」

 

「いえ、大丈夫です。はぁ...」

 

「......よし、行くか」

 

「はい?行く...?」

 

「おう、こっからはクライマックスだ。アンタと彼女で思いっきり気のすむまで本心を晒し合って話を...「でしたら」...え?」

 

「ふふ...少し無茶をしていただきたいことがあるのですが、よろしいですよね?まさかここまで連れまわして断るなんてこと...ありませんよね?」

 

「あ、え...ウッス!」

 

 明らかに怒気を含み、策略を張り巡らせてそうな笑顔で詰め寄られては男なんてもんはどうしようもない。それどころか彼女をここまで運んできて働きかけたのは俺...断るなどという選択肢があるわけもなく、俺はただ首を縦に振るマシーンと化した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育館での戦闘を終えた後、私たちはハナコの計画の通り正義実現委員会がやってくるまで時間稼ぎをしていたんだけど...想定よりも早くにアリウスの増援部隊が、それも大隊単位という文字通りに単位が違う量の数が私たちの周囲を囲んでいて、そしてその集団の中から、ひときわ目立つピンク色の髪が特徴的な少女がやってきた

 

「黒幕登場☆ってところかな?私が本当の、「トリニティの裏切り者」」

 

「なっ...」

 

『ミカ...?』

 

「ミカ様...?」

 

 現れたのはティーパーティーのミカその人だった。私を含んだ補習授業部のみんなが驚きのあまり動きが止まる

 

「あー、そりゃびっくりだよね。まさかティーパーティーがアリウスを手引きしてるなんて予想できるわけもないし!というわけでさ、さっさとナギちゃんを渡してくれる?こっちもあんまり時間がなくってさ...あ、あとサンズ君もね。こっちは私の趣味じゃないんだけど、ついでにね!」

 

『それは...』

 

 想定していなかった状況に言葉が詰まる。サンズはついで...という言葉に少し違和感を抱くが、今はそれどころじゃない。みんなには気づかれないようアロナにこの包囲を抜け出せるか聞いてみたけど...どこも層が厚くてとてもじゃないけど損害を少なくしての突破は不可という結果が返ってきた

 

「あ、あと正義実現委員会は動かないから。ティーパーティーの権限って便利だよね~☆」

 

『なっ...』

 

 微かな希望だった正義実現委員会という唯一の頼みの綱もあっさりと途切れてしまった。このことを脳内の計算に組み込み、どうやって無事に切り抜けられるかをこの後の試験を受験することも入れて思考して...手はこのまま正面突破で突き破るしかないことがわかった

 

『ハナコ』

「はい...私もそれしかないと思います。」

 

 やはりハナコはすごい。私が言いたいことを全てアイコンタクトだけで理解してくれた。あのコミュニケーション方法(規制音)だけなければな...と頭の片隅で思いつつ、それは今考えることじゃないとすぐに切り捨てる

 

 私の考えが今の状況で適していることを確認できたから後はそれを仕掛けるタイミングだけ。みんなには既に通信で連絡済みだけど...やっぱりミカの登場によって集中が乱されてるようで、特にコハルに至っては動揺が酷い

 

 この動揺を落ち着けるため、そしてミカの目的を聞くためにも、私はどうにか彼女との会話を繋げ続けた

 

 そこで分かったのは三つ

 

・エデン条約は正真正銘、本当に平和条約である

 

・ミカの目的はゲヘナという学園地区を消すこと。つまりはゲヘナとの全面戦争

 

・今回の事件はミカの手引きにより、共に打倒ゲヘナを掲げるアリウスが引き込まれた

 

 ...信じられない、という思いは確かにある。でも、私はそれをいかにも楽し気に語るミカに苛立ち、思わず生徒相手に睨んでしまった

 

 ゲヘナには確かに私でも擁護できないほどのことをしてしまう子がいる。生徒が迷惑をかけて私が市民の人たちに謝罪しに行った数は両手じゃ数えきれないし、いくら説得しようともどうにもできないほどに癖の強い子が多いのは事実だ

 だが、決してそのような子だけじゃない。その子たちが目立っている陰には様々な子がいて、色々なことを考えて生活をしている。その子たちをまともに見ようとせず、対話をもせずにただ「嫌いだから」という理由で排除しようとするその姿勢を、何よりナギサの純粋な優しさを「バカみたい」と一蹴して罵ったことに対して私はあり得ないと感じた

 

 だって、君はずっと隣でナギサを見てきたはずじゃないか。彼女の優しさに触れてきて、その思いも多少は理解できているはずなのに、少しの理解も示さずに無断で行動して、危険にさらして、疑心暗鬼にさせて、その挙句連れ去る?

 

 そんなこと、許されるはずがない

 

 対話は終わった。これ以上の時間稼ぎも意味はない。私はみんなに戦闘開始の指示をしようとして──

 

「私はここにいますよ、ミカさん」

 

「...え?」

 

『...は』

 

 この場では決して聞こえるはずのない、聞こえてはいけない声を聞いた

 

「...あは、まさかナギちゃん自らやって来てくれるなんてね。こっちから探す無駄が省けてよかったよ~☆」

 

 声の方を見て見れば、周囲に護衛もつけず二階のギャラリーの方に悠然とした様子で座っているナギサがいた

 

 っマズイ、呆けてる場合じゃない。今はとにかく、何よりもナギサが連れ去られないように動かないと!すぐにナギサの周りにいるアリウス生徒をどうにか...

 

 ...ナギサの周りだけ、兵が少ない?

 

<先生!それが...>

 

 手元のシッテムの箱から、アロナの焦ったような声が聞こえる。その声のままに画面をのぞき込んでみると、そこには...()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「...ええ、私も嬉しいですよ。ですが...ここでは「ミカさん」なんて取り繕った呼び方は止めましょう」

 

「え?」

 

「「ミカ」、私はあなたと話がしたい」

 

 その表情はいつものような笑顔で。声もさほど変わらないのに...

 

「ナギちゃん?」

 

「はい?」

 

 彼女から発する空気がどうにも爆発寸前の火山のような、嵐の前の静けさ、というような危うさを孕んでいて...とても、恐ろしかった

 

「...えっと、もしかして怒ってる?」

 

 いつになくハリのないミカの声が体育館に木霊する。全員の視線は、おのずとそれに返答するナギサのもとへ集まっていた

 

「...フフ、怒ってるですか。私が」

 

「う、うん...」

 

「プッ、アッハハハハハ!!

 

「え...」

 

「怒る?私が?そんなの......怒っているに決まっているでしょう!?

 

「」

 

『な、ナギサ...?』

 

「...ああ、これは...」

 

 ナギサのあまりの変わりように、私だけでなくコハルたち含めた全員が目を丸くした。唯一ハナコだけが何か納得したかのような微妙な顔をしていたが、不気味なほどに笑顔なナギサは構わずマシンガンのように言葉を発し続ける

 

「あなたのやったことが分かっているのですか?」

 

「そ、それは...」

 

「それはも何もありません。わからないのならその空っぽの頭に叩き込んであげましょう。私は今からあなたをボコボコにします。ええ、この手で完膚なきまでに張っ倒しますよついでにそのバカみたいに開いた口にロールケーキをぶちこみます今のうちに覚悟しておきなさい」

 

「!?」

 

 いつものナギサからは考えられないようなオブラートに包んでいない暴力的な発言のオンパレードに、驚きのあまり全員が固まった

 

「...ああ、もしかして私程度じゃあなたを張り倒す、なんてことできないと思ってますか?」

 

「そ、そうだよ!ナギちゃんはクソザコじゃん!そんなんじゃなにも...」

 

 やっと反論の糸口を見つけたのか、ミカは体勢を立て直そうとナギサの言葉にのせられていく。それでも、乗せられた先にあるのはオブラートなんてクソくらえな罵倒だけなのだが

 

「ふぅー...あまり舐めないでくださいね、ミカ。私がなんの対策もなしに無策で突っ込んできたと思ったんですか?だから空っぽなんですよココが...分かります?」

 

「...はあ?黙って聞いてたらさー、それはないんじゃない?キレて気が大きくなってるのか知らないけど、対策があったところでこの人数差じゃどうしようもないじゃんね!」

 

 あまりいうほど黙ってなかったような気もするが、確かにミカの通りだ。いくらナギサが大きく出たところで人数の有利がミカにあることは変わらない。むしろ挑発してしまったせいでより攻撃が過激になり、こちらの身が危険に晒されてしまう

 

 でも、ナギサはそれでも落ち着いていて...呆れるように一つ、ため息を吐いた

 

「はぁ、しょうがないですね。今、分かりやすくしてあげましょう...そこ、F()()8()

 

「ぐあっ!?」

 

「...はっ?」

 

『...ん?』

 

 ナギサが何かの番号を指示したかと思ったら、突然ミカの右後ろにいたアリウス兵の一人が崩れ落ちた。一瞬過ぎて何が何だかわからなかったけど、何か異様に見覚えのある棒状の白っぽいのが見えたような...まさか、いや、あの子が出てきちゃってるとか...ないよね?

 

 ミカはかなり動揺してるようだけど、対するナギサは二階の方から変わらず見下ろし続けている。その様子はまるでボードゲームで大人げなく初心者を叩き潰す熟練者のようで、思わず私も背筋に冷汗が流れるほどの圧があった

 

「ミカ、確かあなたはチェスが苦手でしたよね?」

 

「そうだけど...待って、今の番号ってまさか!?」

 

「ふふ...そのまさかですよ。さあ存分にやりましょう、ミカ。どちらが先にキングを取るか...勝負です」

 

 銃弾飛び交う戦場は、1人の策士によって一枚のチェス盤に置き換えられた

 

 





ミカ:チェスはあんまり得意ではない。ナギちゃんがキレた...!?(絶望)

ナギサ:チェスが得意。いつでもチェックメイトできるチート駒を持っているが、それですぐに終わらせるのはつまらないし、《彼》にとっても不都合な様なのでしない。楽しみましょうね...?(暗黒微笑)

サンズ君:気絶したまま事態が終わって、真犯人の友人ときちんと面と向かって話せるのが檻越しというのはあまりにもやるせないだろうという思いから今回の単独行動に至った。そしたらなんか設計図片手に飛ばされてきた指示通りに動いて馬鹿みたいに働かされてる。しょうがないけど...感覚的には忍び足でフルマラソンしてるようなもん。死ぬが???

カメラ:完全に空気。一応サンズがずっとカメラを持っているのでサンズ視点でのことはおおよそ知っている。何でコイツわざわざ面倒事に突っ込んで馬鹿みたいに働いてるんです?

ハナコ:普段怒らない人がバチギレしてるのを見てある程度この後を察してしまったし、裏で誰が動いてるのかも彼に渡した設計図とかで想像がついている。うーんこれはまごうことなき才女。

先生:あれ、なんかサンズの気配が...気のせいだよね?ね?色々と気が気でない人。


OOO2010 様、☆10評価ありがとうございます!

虚無音 様、夜神レイ 様、☆9評価ありがとうございます!

☆10評価バーが青に...!?皆様ありがとうございます!これからもエタらず自分のペースで続けていくつもりです!

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