この透き通る世界を俺は機械と骨でハッピーエンドにしてみせる   作:多趣味なオタク

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シチュエーションを思いついてしまったのであれば、此方も書かねば...無作法というもの...
ということで書きます。番外編。

こちらは本編に比べてかなり進行が遅くなります。そして三秒で考えたものなので設定の粗もすさまじいと思いますが、それでも大丈夫という方だけお読みいただけると嬉しいです。

そして今話は少しだけですが残酷な描写タグくんがちゃんと機能すると思いますので、苦手な方は読まないことをお勧めします。


番外編 アリウス
目覚め


 

 ︎♒︎♋︎⧫︎ ♒︎♋︎◻︎◻︎♏︎■︎♏︎♎︎✏︎✍︎

 

ピヨピヨピヨピヨ...

 

 

「...んあ?」

 

 

 朝...だろうか。いやに耳障りな鳥のさえずりと共に、俺は目を覚ました

 

 

「どこだ、ここ...」

 

 

 周囲を見渡せば、そこに広がっていたのは大量の砂と朽ち果てた住宅街。...何か見覚えがあるような気がするが、何だっただろうか

 

 

 そうして周囲を観察していれば、今までなぜ気が付かなかったのだろう。銀色の髪の毛と、その上に自然に生えている獣耳...適切な表現ならば、獣人であろう少女が俺の隣で眠っていた

 

 

 獣人か...まるでフィクションの世界だな(ここじゃ普通だな)

 

 

 ...んん?

 

 

「んん...」

 

 

 自分の認識に違和感を抱きつつ彼女をじろじろと観察するように見ていたのが悪かったのか、その女の子が眠そうに身をよじり、やがてその目を開けた

 

 

「ッ!」

 

 

「...危な。」

 

 

 オッドアイの少女...いちいち特徴をあげて言うのもめんどくさいな...なんか犬っぽいしポチでいいか。が、俺を視認した途端に目を吊り上げ、とてつもないスピードでその右手を振り下ろして来た

 

 

 完全に意識外の攻撃、まさしく不意打ちだったが、まるでそれがわかっていたかのように俺の体は勝手にその攻撃を上体を傾けることで避けた

 

 

「グッ!」

 

 

 そして攻撃することで前に出てきたポチの体に向け、流れるようにして俺の拳はその腹へと突き刺さる

 

 

 俺の拳をモロに受けてしまったポチは、耐えきれないようにしてえづき、そのまま地面に倒れ伏した

 

 

 ...俺、別に攻撃するつもりはなかったんだが

 

 

 無意識のうちに迎撃した俺の体に不信感を抱きつつも、俺はポチに回復体位をとらせてからひとまず周囲の探索を開始した

 

 

 

 

 

 

「終わってる町、か。」

 

 

 周囲を探索して分かったことがある

 

 まず一つ目が、ここ一帯には廃墟と化した住宅街しかない。砂に覆われた家や、そのまま押しつぶされてしまった家を見るに、砂漠化現象による砂の影響でどうしようもなくなってしまったのだろう。殆どの家には家具の一つもなかった

 

 二つ目。ここはどうやらアビドス自治区という場所らしい。町中の掲示板に書いてあった。まあそれが書いてあった紙も黄ばんでたし、あんまり信用できそうにないが

 ...やっぱりなんか聞き覚えがあるような

 

 

 そして三つ目。ここは廃墟の町ということもあり人が誰一人としていない。そのため今の俺は遭難していると言っていいだろう

 

 

 とりあえずの状況を把握し、一旦先ほどいたところまで戻ってきた

 

 

「...ん、戻ってきた。」

 

 

 するとポチが何でもないような顔をして起きていた。お前喋れたんか

 

 

「ああ...起きてたのか。さっきは体が勝手に...ってのは理由にならないな。すまなかった。」

 

 

 さすがに女の子に腹パンはやりすぎたなと思い、謝罪をした。するとポチは首をかしげ、涼しい顔をした次の瞬間、とんでもない爆弾発言をしやがった

 

 

「ん、気にすることはないよボス。私は強者に従うのみ。」

 

 

 ん?

 

 

「...今、なんて?」

 

 

「...?私は強者に従うのみ。」

 

 

「その前その前。」

 

 

「...気にすることはない、ボス。」

 

 

「...ボス!?」

 

 

 何言ってるのこの子!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後何とか事情を聞いてみたところ、「弱いものが強いものに従うのは自然の摂理」だの「ボスは私を倒したからボス」だのまともに話が通じなかった

 とりあえずその呼び方はやめてくれと言ったが、「それじゃあなんて呼べばいいの?」と言われてしまっては何も言えなかった...

 

 

 絶対に出会って二回目でやることではないことをしつつも、俺はとても重要なことに気が付いた

 

 

「俺の名前は後で決めるとして...アンタ、名前は?」

 

 

「わかったボス。私の名前は砂狼(すなおおかみ)シロコ。どうぞよしなに。」

 

 

 なぜか誇らしげに胸を張って自己紹介をしているが、あいにく俺の記憶にそんな名前は...

 

 

 ん、□の名▲は砂狼(すな×おかみ)シ★コ。よ◆しく、●●●。

 

 

 

「...?」

 

 

「ん、それより、ボスも名前を名乗るべき。」

 

 

 そうだった、俺も自己紹介をされたのならば紹介し返さないと失礼に当たる

 

 

「確かにそうだ。じゃあ...ンンッ!...俺の名前は....なまえ、は...?」

 

 

「?」

 

 

 ...おかしい。俺の名前が出てこない。それまでは流れるようにスラスラと言えていたのに、肝心の名前になると出てこない...まさかこれは

 

 

「...記憶喪失?」

 

 

 それから自分の過去についていろいろと思い出そうとしてみたが、出てくるのは一般常識のようなものだけ...それもなぜか二つの世界?の分があるようだ。ところどころ食い違う箇所があるように思う。前の俺はいったい何をしていたんだよ...

 

 

「まあ、とりあえずは一緒に行動しないか?こんな砂漠のど真ん中なんだ。協力したほうがいいと思うんだが...」

 

 

「ん、私はボスに従うのみ。喜んでついていく。」

 

 

 フンスフンスと意気込んでいるようだが、なにもそんなに大胆に行動するわけじゃない。残念だが彼女の期待には応えられなさそうだ

 

 

 そこからは同じことの繰り返しだった。まだ中に物が残っていそうな住宅に(無断で)お邪魔して食料や道具を頂く。そして余裕があれば周囲の探索を続け、他に人がいないか、この砂漠から救助してもらえる手段がないかを探し続けた

 

 

「ボス!献上品!」

 

 

「ボスて...コイツはナイフか?」

 

 

「うん、まさしく献上品。」

 

 

 ナイフを献上品とかギャングでもしねえだろ...

 

 

 そう内心ツッコむが、ほめてオーラを全身に溢れさせているシロコに、俺は感謝を言って受け取るしかなかった

 

 

ドロッ...

 

 

 そしてそのナイフを俺が受け取った瞬間、何かがあふれるようにしてその刃が赤く染まった

 

 

「...は?」

 

 

「...え?」

 

 

 こわっ

 

 

 もしかしてこのナイフは呪われているのか?俺は結構オカルトとか信じるタイプなのでそれはそれは驚いた。シロコもそれを見て何が起こったのかよくわからないといった表情をしている

 これを持ってきたシロコが驚いているということはつまり、ドッキリなどではなく本当にこのナイフは正真正銘呪われている可能性が高いということだ

 

 とりあえずそのナイフは砂の中に埋葬して、その日に寝るときはいつもよりくっついて寝た

 

 

 そしてもっときつかったのが、砂漠の夜はよく冷えた。昼間が熱い分夜は寒さが厳しく、その上に雪がよく降った

 それを耐えるために俺たちは住宅に残された小さい毛布に体をくるみ、身を寄せ合って寒さをしのいだ

 

 

「...」ブルッ

 

 

「...もうちょいこっちの毛布使え。足出てるぞ。」

 

 

「...あたたかい...」

 

 

 

 

 それがかれこれ一週間くらい続いたころだろうか。俺たちは大絶賛ピンチ中だった

 

 

「お腹...へった...」

 

 

「...わかる。」

 

 

 住宅を探策し続けていたが、食料どころか水すらも見つからない。それが二日続いた俺たちは危機的な状況のまま、体に力が入らずどうすることもできなかった

 

 

 

「ええっと~...君たち、何者?」

 

 

 もはや物乞いと変わらない様相の俺たちに、酔狂にも声を掛けてくるピンク髪の奴がいた

 

 

「...俺らは...」

 

 

「ッ!」

 

 

 俺が事情を説明しようとしたところ、何を思ったかシロコがソイツに突撃していく...

 

 

 しかしその突撃をソイツはものともせずに回避し、続けざまにボコッと音が鳴るほどの威力でシロコの頭を叩いた。とんだバカ力だ

 

 

 その重い一撃を食らったシロコだったが、何とか意識を保っているのかフラフラとしつつも俺のところまでやってきて、そして俺を庇うように前に立った

 

 

「逃げて...ボス...」

 

 

「...いや、お前を一人にしては行かねえよ。」

 

 

 そう言って俺も何とか立ち上がり、ピンク髪のヤツの目を見る

 

 

 コイツもオッドアイか...なんて思いつつその昏い目を見た。コイツの目は、どこか最初の独りぼっちだったシロコに似ている気がする

 

 

「俺は...名前がわからんが、コイツはシロコってんだ。...そんで、いきなりで厚かましいことこの上ないんだが...」

 

 

 膝をつき、手をついて頭を地面にこすりつける

 

 

「どうか...俺たちを助けてください。」

 

 

 土下座をして、慈悲を乞う。俺たちが生き残るにはそうする以外に道はない

 

 

「...え、ええ!?そ、そんな土下座なんて...と、とりあえず中に入ろう?ここじゃ寒いし、君もシロコちゃん?も、風邪ひいちゃうよ~」

 

 

「ほら、ノノミちゃんも手伝って!」

 

 

「え!?わ、私もですか!?」

 

 

 そうして、俺たちは無事に彼女たちの保護下に入ることができた。シロコなんかは青いマフラーも巻いてもらったようで、一向に外そうとしていない。あの様子では気に入っているようだ

 

 

 俺たちが座り込んでいた廃墟...アビドス本校校舎の中へと入り、これまでの俺たちの遍歴を話したり、ここがどのような場所であるかを説明してもらった

 

 

「うへ~じゃ、君...ボス君とシロコちゃんは記憶喪失なんだ!おじさん、最近の流行には疎くてちょっとついていけないかも~」

 

 

(((おじさん?)))

 

 

 おそらくこの場にいる全員が疑問を抱いただろう一人称に、彼女自身も似合わないと思っているのかすぐさま話題の転換を図った

 

 

「あ~えっと、それじゃあ君たちはどうするのかな?」

 

 

「俺は、シロコはここに入学させてほしいと思う。」

 

 

「じゃあ、ボス君は?」

 

 

「ボスってのをやめてほしいんだが...まあ、少し考えさせてほしい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな話し合いがあったのもおよそ一か月前。俺は今、ゲヘナでちょっと危険な金稼ぎをしていた

 

 

「さて、では今日も美食の探求に...きゃっ!?こ、このナイフはまさか...」

 

 

「ジュンコさん!”彼”が来ました!」

 

 

「ちょ!?私ひとりじゃ無理だって!」

 

 

「ムー!ムー!」

 

 

「...またかお前ら。まあ、俺としちゃ助かるんだが。」

 

 

 先ほど投げたナイフとは別のナイフを取り出し、その切っ先を美食研究会(お小遣いども)向ける。このやり取りも短い期間で何度も行ってきたことだ

 

 

 あの話し合いの後、シロコとピンク髪のやつ...ホシノが少し()()()()()()()()をして、彼女もシロコに認められたらしい。本来の立場が逆転してる気がするが...まあ、アイツは強いしどうにかなるだろう

 そして、俺はシロコと共に学校に通う...ことはなく、とりあえず指名手配を捕まえる金稼ぎをすることにした。これもシロコの授業料を払うためってのもあるが、シロコの自立を促すのも目的だ。アイツ俺が居ると俺に引っ付いて離れようとしないからな...距離置いて社交性を高めさせようってわけだ

 

 

 え?俺の社交性はって?

 

 ...仮面で顔隠してるから大丈夫だろ

 

 

 なぜ仮面をつけてるかっていうと、俺は指名手配を捕まえるという少々危険な仕事をしているため、多少なりとも報復されるリスクがある。万が一素顔を見られたら後が怖いために仮面をつけているわけだ

 

 

 そしてこの仮面、視認性はいいんだがいかんせん顔全体を覆う形をしているせいで呼吸がちょっとしづらいし、なんならちょっと蒸れる。だがその分壊れにくく、ここゲヘナ地区でずっとつけていてもヒビ一つ入らないという割とすごい性能を誇っている

 

 ちなみにブラックマーケットでこれを見つけたんだが、その横にある目がイッてるニワトリ?のお面を熱心にみてるヤバい奴がいたな。もし人気ならシロコに買ってこうかと思ったんだが...その値札を見て即座に止めた。あれに五桁以上も金をかけるのは狂人しかいないと思う

 

 

 んで、一番重要なことだが...俺の名前について。これまでホシノと、まだ中学生だというノノミからたくさんのアイデアをもらったものの、イマイチしっくりくるものがなく一旦保留にしている。その間はとりあえずボスって呼ばれているんだが...おそらく俺より年上のホシノからボスって呼ばれるのは恥ずかしいものがある。しかもからかうようにして言ってくるもんだからタチが悪い

 そうして俺が居心地が悪そうにしていると、どこからともなくシロコが飛んできてそのままホシノに勝負を挑む。という流れが最近よく起こる。ただじゃれ合っているだけならいいんだが、ホシノはともかくシロコは目がマジでちょっと怖かった

 

 

 なんとなく過去を振り返ってボーッとしていると、目の前にいた美食どもがいつまにか調達していた車に乗り逃走しようとしていたため、そのハンドルを握っている金髪のやつに()()()()()()()()()()()()()を投げつけ、その動きを止める

 

 

「くっ...さすが何度も私たちを捕まえるだけはありますね...ですが!」

 

 

 ハンドルに投げつけられたナイフを車を動かすことで避け、そして自身もそのナイフを避けることでそのダメージをゼロにした

 その判断は正しかったようで、投げつけられたナイフはそのまま車の床をまるでバターのように切り裂く

 

 

「ふう...では、失礼します!」

 

 

「じゃーねー!」

 

 

 スピードに乗った車はそのまま止まることなく、俺から逃れていった。...先ほどまでしばりつけていたフウカを置いて

 

 

 先ほど投げたナイフはハッキリ言えばダミーに過ぎない。あいつらがその一本に集中している間にもう一本投げて彼女が最低限逃げられるようにして、後は彼女が自分の力でそこから逃げるだけだ

 

 アイツらは行動理念がアホなくせに妙に頭が切れるのが厄介なところだが、今回は今まであいつらに俺のナイフの恐ろしさを味あわせていたためにこんなことができた。次回からはこれも通じなくなると思うが、その時は正面から全員倒して引き渡せばいいだけだ

 

 

「ムー!...っはあ、ハア...いつもありがとう。ごめんね、何度も何度も...」

 

 

 縛られていた縄と猿ぐつわを取り外し、彼女を自由にしたところで彼女はそう呟く

 

 

「いや、いつも攫うあいつらが悪いんだからそんなことを考えなくてもいい。...それより、ちょっとお願いがあるんだが。」

 

 

「...ああ、()()()()ね。わかった、今から作るね。」

 

 

 もはやアイツらから助けた恒例行事になっている頼み事(おいしいごはん)をして、その間に周辺の整理をしていると俺のスマホに通知が入った

 今日はカルボナーラだと嬉しいな、なんて考えつつ何だろうかと思いスマホを開いてみれば、そのトップ画面にはネットニュースの記事が。気にすることでもないとそのまま画面を閉じようとしたところで、その見出しの文字が目に入った

 

 

””今回はゲヘナ特集!突如現れ、ゲヘナでその名を轟かせる「ナイフの悪魔」について!””

 

 

 なぜか悪寒が走るが、とりあえずは確認しないと何も始まらない。いやな予感をひしひしと感じつつ、その見出しをタップして記事を開いた

 

 

 ...結論から言えば俺のことだった。赤いナイフを使うところとか、仮面をかぶってるところとか俺以外にいないじゃんね

 

 

 内容としては、その「ナイフの悪魔」に関わりのある人物に直接取材をしてその真実を追う。というものだったが、そのインタビュー相手がそこらへんのチンピラからさっきの美食ども、果てには風紀委員長にまで幅広く聞いているもんだからすごかった

 

 その中で俺の情報が色々言われていたりしたが、的を得ているものから全く的外れなものまで多々あった。しかしその中でもみんなが声をそろえて言うのは「あのナイフに当たったら無傷では済まない」ということだ。記事の中でも考察がなされていた

 

「あれは悪魔と契約して手に入れたものだ」「ブラックマーケットで出回っているとされていた呪われたものだ」「人の血を吸って赤くなった」「あれは未来の金属が使われていて、ナイフの悪魔は未来人である」

 

 

 色々と言われていたが、正直俺にもわからない。わかることは、

 

①俺がナイフを握れば赤くなり、使い勝手がとてもよくなる

➁ナイフを振ればビームみたいな衝撃波?が飛ぶ

③頑張ればナイフの赤い部分だけを増やして投げつけられる

④赤くなったナイフは耐久、切れ味が格段によくなる

 

 

 ということだけ。原理は全くの不明で、その手がかりも見つけられないから俺はもう気にしないことにした。普段使いする分には問題ないしな

 

 ...悩みとしては料理をしようとして包丁を握れば、その切れ味の良さでまな板ごと食材を切ってしまうことだが...俺は高頻度で料理しないし、大丈夫だろう

 

 

 そう考えていると、一人分の足音がこちらに向かっていることがわかった。料理ができるには早いなと思いつつ顔を上げると、そこには今まで見たことない化け物が立っていた

 

 その皮膚は非現実的な赤色で、それにより際立つ白のドレスを身に纏っている。頭部にはたくさんの目が付いた白い何かがくっついていてその大量にある目は全て俺を向いており、それに見つめられているとどうしようもない不快感に襲われる

 

 

「...あッ...」

 

 

 何か言おうにも口からでたのは弱弱しい言葉だけで、震えている足を叱咤して逃げ出すことも叶わなかった。そんな俺の様子を観察するように見ていた化け物はどこか納得がいったような表情をして、そしてその手を俺に伸ばす

 

 

「失礼。」

 

 

 そう短い一言と共に、俺の意識は闇に沈んでいった

 

 

 

 

 

 

「できたよー...ってあれ?どこに行ったんだろう...」

 

 

「フウカ先輩!はやくしないともうこっちが限界です!みなさんがまだかまだかと...!」

 

 

「うーん...分かった、今行く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...しもしもし、聞こえていますか?」

 

 

「ッ!?」

 

 

 何かに声を掛けられ目を覚ます。すると目の前に広がるのは、まるでこれ以外存在しないかのような無機質な灰色の部屋と、自分の目の前にいる赤い女性だけだ

 ...なぜだろう、この人を見ていると何か底知れない恐怖を感じる

 

 

「意識がはっきりしたようで何よりです...さて、あなたは自分のことについて何か覚えていますか?」

 

 

「...?俺は...あ?」

 

 

 記憶がない。先ほどまで何をしていたかということだけでなく、いままで自分が何をしていたのかすら思い出せない

 

 

「その様子では何も覚えていないようですね。では、まずは自己紹介を。私はベアトリーチェ、ここではマダムと呼んでください。」

 

 

 何が何かよくわからないが、とりあえず言われたことを頭の中で咀嚼する。そのまま話を聞いていれば、どうやらここはアリウス分校という学校の自治区にあたる場所だとか

 なんでも昔、ここはとある事情で排斥された人たちが集まってできた場所で、その中でも内乱が起きるなどで治安が悪く混乱に陥っていたらしい

 

 

 そんなアリウス分校の内乱を治め、指導者となったのがこの目の前にいるベアトリーチェことマダムであるとか

 

 そして俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようだ。俺には保護された時の記憶がないからそれが本当かどうかわからないが、どうにもマダムの様子を見ていると、俺はここで何かしなくてはいけなさそうだ

 危機的状況を助けられた上に保護をしてもらうのだからそれに文句はないが...どうにもマダムが何を考えているのかわからない。その話をするだけなのならわざわざこんな無機質な部屋で話すことはないと思うが

 

 

「...さて、あなたが今の段階で知るべき情報はこんなところでしょうか。では、今からあなたに私が直々に”指導”をします。聞き分けよく、そして私を失望させないように。」

 

 

 今から何をするんだ、と俺が言う前に俺が座っていた椅子から機械音が鳴り、黒いベルトのようなものが俺の体を拘束した

 

 

「では、まずは()()()()()ましょうか。」

 

 

 それに対して何も思わないような冷淡な声色でマダムは俺にそう告げて、俺のいる部屋から出ていってしまった

 部屋の扉が締め切られた瞬間、目の前にガスマスクをつけその身にシスター服のようなものを纏っている人型のナニカたちが現れる。まるで死人のように青い肌など明らかにおかしい点が多々あるが、その中でも異彩を放っているのはそいつらが手に持っている様々な道具たちだった。それらはとがっていたり、まるで何かを叩くような形状をしていたり...

 

 

「な、なんだアンタらッ!?」

 

 

ズプ グサ

 

 

 声を上げ切る前にその中で特に尖っている道具が俺の足に突き刺さる。当然そこからは激しい痛みと共に血液が流れだすが、そいつらはそれをものともせずに次々と俺に道具を突き刺して...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【.........】

 

 

 あれからどれくらい時間がたっただろうか。あの後も道具を突き刺すだけでなく銃で手のひらを撃ち抜かれたり、頭から液体を被せられてそこから燃えるような痛みが走ったり...死なない程度に最大限の痛みを与え続けられ、本当の限界に近づくとよくわからない機械を着けられた

 

 その機械は何物にも染まらないような漆黒な色をしており、そこから点滴のようなものを刺すと半日ほどで傷が完全に癒え、その後はすぐに()()()()()()()()に戻されるというループが何回も続いた

 

 

 それほど続いていると、マダムが言っていた()()()()()()()()の成果も出始め、俺は「痛み」を感じることがなくなっていった

 

 

 

 

 

 

 ...()()()()()()()()の後も様々な訓練を受けた。自分たちがなぜこんな場所にいるのかという()()()()()()()()や、どうすれば敵を効率的に倒すことができるかという()()()()など...それらを経験し、時には全ては虚しいという思想を受け入れそうになる時や、全てを投げ捨てて死んでしまおうかと思うこともあった

 しかし、訓練の後のサオリや姫たちとの...人との交流がそんな俺の心を救ってくれた

 

 

 俺が一通りの訓練を終え、マダムに失望されない程度になった時。マダムから直々に殺害依頼を出された

 

 

 その時はすぐに了承してそのまま依頼にあった標的を殺害...しようとしたが、半殺しにした時点で手が動かなくなり目から突然涙があふれだしたので急遽取りやめた

 その後はソイツを逃がすためにブラックマーケットで色々したりしたが...あれはなかなかに面倒くさかったな

 

 

 ちなみにその後の依頼の奴らも半殺しにして証拠をとってから逃がしている。流石にタダで逃がすと疑われるしな

 

 

 

 そして毎日の訓練、たまに殺害依頼が届く中で突然マダムから呼び出された

 

 

「お久しぶりですね、()()()。あなたは十分訓練も終えたようですし、そのことについて少し話をと思いまして。」

 

 

【...はい。何でしょうか。】

 

 

キラー

 

 いつもの殺害依頼が届く前、訓練の途中で俺の上官から突然俺の名前が発表された。苗字も何もなく、ただの文字の羅列である三文字。そうでしかないが、その意味は「殺し屋」「殺人者」というもの。これだけでマダムが俺に何を望んでいるのかが分かった

 

 

 しかし生憎だが、俺はその意図に沿って動く気はなかった。これまでの訓練で俺は精神が病んだし、表情を頑張っても動かせなくなってしまったということを自覚している

 それでも、誰かを殺すことだけはしてはいけないと俺のタマシイの中から誰かが叫んでいるような気がするのだ

 

 

 ほかにも理由はあるが...一番はあいつら、サオリたちに合わせる顔がないというのがある。誰かの血で染まった俺の手で、彼女たちの手を握りたくはない。俺なんかのせいで彼女たちが穢れてしまうのはいやだなどと、そう思ってしまった

 

 

「近頃、あなた方に条約を結ぶ場で襲撃をしていただきたいと思いまして。」

 

 

【...襲撃、ですか。】

 

 

「はい、そこではあなたたちにとって最も憎いゲヘナとトリニティが集まっているので丁度良いかと。」

 

 

 絶対それだけじゃないなとは思うものの、その思いを顔に出さず(そもそも出せない)に話に耳を傾ける

 

 

「そして、これがあなたにしてもらいたいことであり、今回呼び出した要件ですが...単刀直入に。先生を殺害しなさい。」

 

 

(先生...?)

 

 

 その言葉を聞いた途端、頭がひび割れるような痛みに襲われた。しかしマダムの前で失態を犯せば”再教育”が行われてしまうために、気合でどうにかマダムに気取らせないよう体を揺らさないよう立ち続ける

 

 

 そのまま必死に痛みをこらえていると、いつのまにか話が終わっておりマダムからの退出の許可も頂いたので、一礼してから部屋を出て急いで自室へと向かう

 

 

 俺はどうやらマダムから一目置かれているようで、特別に個室をあてがわれている。たとえ個室があるとは言えども特に家具も何もなく、寝具の品質も良くはないのであまり実感はないが...

 

 

【ハア、ハア...ぐうっ...】

 

 

 何とか自室にたどり着いて扉をしめたところで、もはや隠しきれないほどに頭の痛みがひどくなった。その痛みにより久々に頬が動き、その感覚に違和感を抱くがそんなことを考えている余裕もない

 

 

【ガッ...あぁ......んん?」

 

 

 徐々に徐々に、頭が割れるような頭痛が引いていくとともに記憶が流れてくる。...これは今までの記憶か?

 

 

 そのままとんでもない勢いで流れてくる自分の記憶?を受け止め続けていると徐々にその勢いが弱まっていき、やがてその痛みは完全になくなった

 

 

「...俺、だよなぁ。...なんでだ?」

 

 

 全て完全に--前世からミレニアムにいた時、そして今回のアビドスからあの赤ババアに襲われて記憶喪失になった時まで--思い出した。俺の名前はサンズで、ミレニアムサイエンススクールの二年生。最高にクールなビックガンを使えるEspeでもあったはずだが...最後の記憶はあの宇宙船に乗ったところで途切れているな。もう不穏な雰囲気しかしない

 

 そして今の俺について。なんかよくわからんけどゲヘナで賞金稼ぎをしていた頃の仮面をずっとつけている。ていうかいきなり過去のアビドスに飛ばされるって何!?最初からクライマックスさん!?

 また、絶対に無視できないことがある...それは、今の俺のスペックだ

 

 

 手元にあるのは、アビドスにいた時とは違い()()()()()()()()()()()()()()。そして前とは変わらないテレポートに骨。極めつけには(これはあの教育を受けた後からだが)危険な状況での戦闘中に目が黒くなり、そこから黒い涙が出ること...

 

 

 はい、完全にSomething Newのキラーサンズ君です。完全に詰みですね今までありがとうございました(遺言)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやいやいやいや、ヤバすぎないか?キラーサンズって完全にヴィラン陣営だし、たしか精神が病んで二重人格になってなかったか?俺が二重人格とか需要なさ過ぎて禿げそう

 

 

 というか、あの赤ババア(ベアトリーチェ)が言ってた今のタイミングの条約ってまさか...

 

 

「エデン条約編じゃねえかぁ!!!???」

 

 

 

 

 

 





導入なのでちょっと大雑把でしたね...かといってこの後に補完するのかと言われればできるかもわからないので、少しだけ補足的な人物紹介をば


・サンズ君
この話中に二回記憶喪失したやつ。主力武器がナイフで銃は持っていない。本編よりクソボケが強くなっている。誓って殺しはやってません(マジ)。ちなみにマダム直々の”教育”により表情筋が死亡、精神崩壊済み、痛覚がほぼ死亡している。しかし記憶が戻ったことでそれらが若干マシに?
表面上は問題ないように見えるが中身は自分のことを何とも思わずに自己犠牲で他人を助けまくるような精神構造になった。


・シロコ
サンズ君をボスと慕っている。そのため行方不明になった時には最後の目撃地のゲヘナを襲おうとしたが、ホシノに止められ断念。しかしその後はまたボスに出会うことを夢見て鍛え続ける。狼は、一度狙った獲物を二度と逃さない。


・ホシノ
短期間のうちに親しい人とそこそこに関わりのある人を亡くした(と思っている)おいたわしい少女。失ったと思った人を再び目の前にして、彼女は何を思い、どう行動するのか。


・アリウススクワッド
原作ではかなり厳しい状況だったために常に気を張っていた部分があったが、今回はサンズが加入したことで少し余裕が生まれ、Vanitas vanitatum et omnia vanitas...が、ばにたすばにたす...している。でもサンズが過去どんな訓練を受けたのか知らないし、彼が自分たちのためにどんなことをしているのかも知らない。クソボケの被害者たち。


・ベアトリーチェ
黒服経由でサンズのことを知った。その戦闘能力と無所属ということから目を付け、サンズの記憶を失わせてからアリウスに編入させた。その後は”教育”でサンズを自分の傀儡にした...と思っているが、サンズは内心コイツを認めてないしなんなら殺害任務は全て半殺しで済ませてから逃がしてる。節穴ですね、やっぱりゲマトリアってクソでは?

・ある男
マジでなにがどうした?絶賛混乱中。ここじゃ出番ないかも...

ちなみに、サンズ君が殺害依頼を完璧にこなしていた(殺害した)場合はMurder!Sansルートになってバットエンドへ直行します。

筆者のモチベーション向上につながりますので、感想、評価、誤字報告のほどよろしくお願いいたします。
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