この透き通る世界を俺は機械と骨でハッピーエンドにしてみせる 作:多趣味なオタク
「...」
銃声と悲鳴が鳴り響く体育館の周りで、俺はコソコソと建物の陰に隠れながら倒せそうなアリウス兵を後ろから骨で小突いて無力化させていた。とりあえず俺はそこそこのアリウス兵数人倒して下山するぜ...
そんなことをしているとスマホからピピッという音と共に座標のようなものが送られてくる。のだが...
「どこだよ...ここか?」
...ハァ、そこから5m南でしょう。見取り図程度も読めないのですか?
「マジ?助かる」
普通に生きてて体育館の見取り図を見ることなんてあんまりないし、なんならチェスの盤面がよくわかっていないからこういった助けは本当に助かる
人の生活模様とかを見て学んでほしいなーなんて軽い気持ちでケイについてきてもらったが、有能すぎてそこらの検索エンジンよりよっぽど頼りになるなと感心した
あなたの無知に呆れただけで助力をしたわけではありませんが???
「口調の割に面倒見が良すぎる...ママ?」
誰がママですか誰が!!
と、ケイと漫才のようなやり取りをしつつ、指定された位置に骨を生やす。今まで視界で見える範囲内でしか出したことがなかったからちゃんとできてるか不安だったが、クレームをもらっていない辺りちゃんとできていそうだ。自分この仕事やれます!
そんなことを続けていると、あちら側も異変に気が付き始めたのか段々と単独行動をするアリウス兵の数が少なくなってきた。気絶させた奴は隠してたはずだが、まあズブの素人の俺が隠したところで見つかるのは時間の問題だったのだろう。そろそろ生存優先で動いた方がよさそうか?向こうの様子がわからないから判断が難しい...先生の戦闘指揮が恋しくなる
いやまて冷静に考えたらなんで先生なのに戦闘指揮してるんだろうか、それなら先生じゃなくて教官じゃね?そこんとこ連保生徒会長サマはどうお考えなのだろうか。シッテムの箱にもしもーし!
「...!?こちらB班、ターゲットの男をはk「ッとぉ!?」ガッ...」
「ッぶな!マジで今油断してた...」
油断して敵に発見されるとは...お得意のテレポートは寝ているんですか?
「ぐう...」
ぐうの音を出せるぐらいには元気がありそうで結構ですね
普通に正論で何も言えない...というか、最近ケイの感情ってどうなっているのだろうか。普通に感情持ってそうなんですけどそこんとこどうなの?なんて直接聞ける度胸も時間もないんだなこれが。すみません、やっぱ自分この仕事厳しめです
とりあえず潜伏場所がバレたっぽいから、先ほど気絶させて地面に寝転がってるアリウス兵を草むらの陰に隠した後にまたテレポートして隠密を継続する。こういうスニーキングミッションみたいなときには物音立てずに移動できるテレポートが強すぎると実感する今日この頃。だが壁が爆破によっていとも簡単に崩れ去るこのキヴォトスでは格が下がるなあと目の前の開放的な壁を見て思うのである
「てかヤバッ流れ弾で簡単に死ねるぞこrドガァン!!うおわぁ!?」
這い這いで爆破した壁から離脱し、ひとまずの安全を確保。ケイは先ほど流れ弾がカメラを掠ったためか何も発言はしていない。あんなん普通はトラウマもんだろ、
しかしまぁ、こんなしっちゃかめっちゃかな状況でも指示は飛んでくるもので...
俺はいともたやすく破壊される壁や床を尻目に、次々と飛んでくる指示を捌きながらオワタ式スニーキングミッションを継続するのだった
「Dってどの列だよマジで!チェスなーんも知らんが!?」
どう考えても西から12mの縦列でしょう
「あざっす!先輩!!」
先輩...??
この後めちゃくちゃスニーキングした
「Aの7、Gの6、Cの...いえ、Dの3。ふう...ミカ、あまりちょこまかと動き回らないでください。うまく当たらないでしょう?いつまで避け続けるつもりなのですか?」
「無茶言わないでくれるかな!?っていうかその言い方、ナギちゃん完全に悪役みt「そこGの6、チェックです」まだ喋ってる最中なんだけど!?」
「これでも耐えますか...チェックメイトには程遠いですね」
「動く人間相手に、しかも戦場でチェックメイトなんか普通に考えてできるわけなくない!?」
「うるさいですね、細かいことを気にしていたら脳みそまでもが筋肉になりますよ?ああ、だからあなたは裏で美少女系筋肉ゴリラって言われているんですね?」
「美少女系筋肉ゴリラ!!??」
「気にしないでください、ちょっとした冗談ですよ。...前半部分は」
「じゃあ結局筋肉ゴリラってことじゃん!!」
「おや、気付けるだけの知能があったとは。てっきり筋肉しかないので勘違いをしてくれると思っていたのですが...」
「はあ~~!!??年中座って紅茶ばっか飲んでるナギちゃんに筋肉筋肉って言われたくないんだけど???そういうナギちゃんこそ、のこのこ私の前に出てきてさァ!自分が撃たれるとか考えてないわけ?頭にカフェイン入りすぎてるんじゃなーい☆」
「それに関しては心配せずとも問題ありませんよ。優秀な協力者...いえ、
「共犯者?それって...」
「それと紅茶はいくら飲んでもノンカロリーですよ?」
「ナギちゃんの紅茶バーカ!!!」
『...一体なにがどうなってるんだろう、これ』
前門の虎後門の狼のこの状況、どちらに味方するかと言われたら当然ナギサの方なのだけれども、目の前の仲がよさそうなやり取りを見ているとここが本当に戦場なのかわからなくなってきた。キヴォトスではこういうのが日常茶飯事...なんだろう。脳裏にいつもの
とにかく、今は守るべきナギサがなんの防御もしないままに大立ち回りしていることが問題だ。キヴォトス人だから私のように銃弾一発でやられてしまうことはないだろうが、それでもこの人数にハチの巣にされては無事ではいられないだろう。体育館内のガスマスクを着けた生徒たちはナギサの策と私たちで倒し続けてはいるが、外からは増援がやってきておりこのままではジリ貧だ。だからといって今の状況でナギサを連絡をとるのも難しい。どうするべきだろうか...
私が戦闘の指揮と並列で考えていると、シッテムの箱から指揮を補助してくれているアロナの声が聞こえてくる
<先生!新しいモモトークが届いてますよ!戦っている最中ですが確認しますか?>
『アロナ?...わかった、音声読み上げでお願い』
<わかりました!それでは読み上げますね...>
それから数拍あけ、音声が読み上げられる
<トリニティのティーパーティーホスト、ナギサです。いきなりのご連絡申し訳ありません。ですがどうか、話を聞いていただけませんか?>
『な、ナギサ!?どうやって私の...』
<静かに。ミカに気付かれては面倒ですから声は抑えていただけると...モモトークの連絡先については...まあ、伝手がありまして>
『...サンズ?』
<...私の方からは、なんとも>
『えぇー...』
この反応、十中八九彼だろう。しかしどうやって部屋から出たのだろうか。ハナコの話ではセーフハウスのような場所に保護?というか、隠れているはずなんだけど...この前のミレニアムの件然り、彼は何やら脱走癖というか、じっとしていられない性質のようだ
うん、これは後でお説教だ。彼は突発的な行動が過ぎるし、ここらへんでもう少し報連相の大事さを教えないと...というか私の同じくらい体が脆い自覚はあるのだろうか。少し...結構...かなり危機意識が欠如している気がする。お話した後にそれとなくきいてみようかな?
心の中でそう考えつつも、ヒフミにペロロのデコイを出すよう指示をしながらモモトークに返信する
『それで、どうしてナギサは私に連絡してくれたの?』
<端的に言えば、救助要請でしょうか>
『もしかして、今の状況ってかなり危うい?』
<ええ、その通りです。今はこの場の勢いであちらが劣勢のように見えていますが、彼女の破壊力は尋常ではありません。この状況を正しく見た時、形成は一気に逆転することでしょう。だからこそ言葉でまくし立てていますが、これがいつまで続けられるか...>
未だに言い争っているミカとナギサの様子を見てみても状況さえ無視すれば可愛らしい言い争いをしているようにしか思えない。しかしこれも策略ありきの会話だと思うと末恐ろしい。トリニティのティーパーティーは、ここまでの服芸も可能なのかと未だ子供であることが信じられないくらいだ
『これも全部、演技なんだね』
<いえ9割9分9厘本音ですね。今はアドレナリンのおかげで口が滑らかですが、戦闘が終わったら舌を噛み切るかもしれません。介錯はお願いします>
『冷静に暴走してる!?』
心の中で盛大にズッコケてしまった。表情には出していないはずだがハナコが心配そうにチラチラと此方を見ている。本当に大丈夫だからとりあえずナギサとその手に持った埴輪を見比べないでね?いやにっこりじゃなくて本当に。先っちょだけとかじゃなくて
<後先考えていたらこんなことしていません!...話が逸れました、とにかく助力を...いえ>
一拍あけて、一文がモモトークに映し出される。それに、彼女の思いが乗せられている気がした
<どうか、この愚かな疑心暗鬼の女を助けてはくれませんか?>
『もちろん、じゃあ何をすればいいのかな?』
<...そんな簡単に了承してもいいのですか?私は先生たちを...補習授業部を貶めようしたんですよ?>
二階にいるナギサの顔を見る。つい先ほどまで繰り広げていた言い争いは鳴りを潜め、彼女は私に顔を向けていた。その顔を見て、私は先ほどの答えが間違いでないことを再度確信した
『当然だよ。私はナギサを信じてる。それに私は大人で、先生だ。それと...』
『間違いを自覚できた子どもに協力しない大人なんていないからね』
無表情で隠した罪悪感で今にも潰れてしまいそうな表情をする子供に負担を掛けようとする大人なんているわけがない。その子がこちらに助けを求めているのならなおさらだ。大人として、というよりも人として、社会に生きる責任ある一個人として、私は彼女に手を差し伸べたいと思った。もちろん、今にも崩れてしまいそうな笑顔を浮かべるあの女の子に対してもそう思う
<...ありがとうございます。では、簡単に作戦を伝えさせていただきます>
届いたモモトークが表示されているシッテムの箱から顔を上げると、ナギサはもうこちらに顔を向けてはおらず、既にミカと言い争いを始めていた。その切り替えの早さに内心下を巻きつつ、私は戦闘を続けるヒフミたちに呼びかけた
『みんな、ちょっといい?』
戦闘は未だに続いている。その中でミカがなぜ今回の事件を引き起こしたのか、亡くなってしまったセイアのことやゲヘナへの恨みに歴史の陰に埋もれたアリウスのこと...まだ整理はできてないけど、それでも見えてくるものはあった
「はぁあ、なるほどね~。だからみんな「シャーレ」のことを話してたんだ。戦闘の指揮ができて、ナギちゃんも懐柔してるみたいだし、大人って厄介なんだね~」
どこか諦めたかのような口調だが、その目に宿っていたのは狂気的なまでの
「さて、ミカ。もう抵抗は十分ですか?」
「...何が?ああ、ナギちゃんってずっと座ってばっかで体力ないからねー、この程度で息が上がっちゃったかな☆私はまだまだやれるけど?」
「確かにミカより体力がないのは事実ですが、少なくともミカよりは話す仕事が多かった記憶がありますよ。...ミカ、迷っているのですか?」
「──あは、何を迷ってるっていうのかなー?こーんなにめちゃくちゃやってるんだよ?体育館はボロボロだし、そこら中に倒れてる子はいるし...これ以上にないほど好き勝手してるんだけど?」
どこかかみ合っていない会話の中でナギサの問いによって一瞬揺れた瞳。私が気が付けたのだから、私より近くで見続けていた幼馴染のナギサが気づけないはずがない。サンズが何を言ったのか分からないけど、今のナギサは補習授業部を打ち立てた時のナギサとは違い、恐れを抱きつつも目を背けることはしないはずだ
「...ミカさん」
「何?さっきまでの呼び捨ても終わって、もう命乞い?まあナギちゃんにしては良く持った方だと思うけど、結局ナギちゃんはナギちゃんだよね!私に手も足も出ないっていうか、私が強すぎちゃったかなー☆」
「...笑えていませんよ、ミカさん」
「笑えてないってどういうこと?私こーんなにニコニコしてるんだよ?あっそっか!ナギちゃん書類の見過ぎでもう老眼になっちゃった?おばあちゃんは無理しない方がいいんじゃなーい?」
「...先生」
『...いいの?』
「はい、私の言葉では些か刺激が強すぎるようです。このままではミカさんを必要以上に傷つけてしまう。どうか、お願いします」
『...うん、わかった。後は任せて』
「ええ、向こう見ずで行き当たりばったりの彼女ですが、実は繊細で自分を責めてしまうようです。終わったらその分お説教ですかね」
『...ほどほどにね?』
ナギサの苦笑が聞こえた途端、私とミカを囲むようにして白い棒のようなものが飛び出してくる。後方にいるナギサを振り返れば、きれいな一礼をして後ろに下がっていくのが見えた。本当にどこまでが彼女の仕込みなのだろうか...
とにかく、この場は私とミカの二人きり。ヒフミたちには悪いけど、少しの間耐えてもらうとしよう
「へぇ、白い檻?いきなりでてきてびっくりしたけど、軽く小突いただけで崩れちゃいそうだね☆」
『ミカ』
こんな状況でも歪な笑顔を変えないミカは私が一人でいることに気が付いたらしい。構えていた銃を下ろし、私の向こうにいるナギサのもとへ私を通り過ぎて行こうとしている。話せる猶予は、彼女がこの檻を抜け出すまでだ
「なあに?先生。悪いけど、私すぐにここから出てナギちゃんを捕まえなきゃいけないんだ。だから話してる暇なんて──」
『させないよ』
「...させないって言ったって、先生じゃ私を止められないでしょ?何を考えてるのかわかんないけど、今から銃を抜いて撃つつもりなら無駄だよ?その前に私がここを壊していくからさ」
『私を撃つとは言わないんだね』
一瞬だけ、歩いていたその足が止まった
「...だって、先生を撃ったところで弾の無駄じゃん?戦う力がない人に撃っても時間がもったいないよね~」
『私は戦闘の指揮をしてたから撃つ価値はあると思うよ。物資についても有用だしね?』
「なにそれ、じゃあさ──」
ガチャリと、銃口が私のこめかみに押し付けられた音がした
「──撃たれちゃっても、文句ないよね?」
ミカが引き金に指を掛ける。シッテムの箱は確かに起動していた。心臓の鼓動が嫌になるほど大きい。握りこんだ手のひらからは確かに汗の感覚がする。それでも、目は絶対に逸らさない
「...」
1秒
『...』
2秒
「...やーめた」
3秒。銃口が下を向いた
「ねえ、なんで逃げなかったの?」
『ミカを信じてたから』
「信じてたって...聞いてなかった?私、セイアちゃんを襲うよう指示したんだよ?」
『でも、殺そうとしたわけじゃなかった』
「殺したよ。私が、そういうふうに指示したの」
──殺そうとしたわけじゃない
さっき言っていたことと矛盾している。そこに、今回の事件を起こしたミカの核がある
『遠ざけようとしたんだよね?』
「...」
『セイアは病弱で、でもはっきりと意見を言う子だった。そんな子が狙われたら間違いなく酷いことになってしまう。だから脅しをかけたって、そう言ってたよね?』
「閉じ込めるって言っただけ。そんな大層なことを考えてたんじゃないよ。ただ邪魔だったから、そうしただけ」
『本当に?』
「...なに?さっきから探偵ごっこ?私、もう付き合ってられないや」
そう言ってミカは私の前を通り過ぎて行く。もう数秒もすれば彼女はこの檻を破ってナギサを追うのだろう。このままミカがナギサを捕まえてしまえば、彼女たちが昼下がりに紅茶を飲みながら談笑するような青春を送ることはもうない。私は、どうしてもその結末を受け入れられない
ミカはきっと勘違いしているはずだ。自分こそが穢れた存在だと考えていてもおかしくないほどに精神状態は悪く、自罰的な思考をしている
だから、本物を──
意識的に口角を上げ、口調はいかにも怪しい風に。イメージは
『セイアは本当にヘイローが壊れたのかな?』
「ッ!」
瞬間、とてつもない圧を感じる。私の目の前を通り過ぎかけていたミカの目が、私を射殺さんとしていた。それでも笑顔を崩さない。この程度の圧に屈するほど、大人は純粋ではない
「...壊れたよ。絶対」
『それは誰から聞いたの?』
「それは...アズサから」
『アズサは裏切り者って言ってたよね。それじゃあ、その報告が間違っている可能性はない?確証は得られていないね?』
「...何?何が言いたいわけ?」
食いついた今が好機だ。処理できないほどの情報を突き出し、相手を混乱させる。私はうっそりと微笑み、ゆっくりと、相手の頭に刷り込むように言葉を続けた
『セイアのヘイローが壊れたって?』
『でも報告をしたのは今、ミカに敵対している裏切り者だ』
『それがミカを混乱させるための策だったとしたら?』
『もしセイアが生きていたとしたら、襲撃を受けて警戒するのは当然だ。そして同時に襲撃された事実は追撃を逃れるいい隠れ蓑になって、死を偽装するのは賢い選択と言えるだろうね』
『何よりミカ、君はヘイローの壊れたセイアを実際に見たのかな?普通、そういった報告は言葉だけじゃなく証拠の写真を付けておくものだ。それがないと結果の信憑性が落ちてしまうからね。でも、今回それはなかった。』
『つまりだよ、ミカ.君は、セイアを殺してなんかいな──ぐっ!?』
私の数歩先にいたはずのミカがいつの間にか目の前まで接近していた。突き出されてた右手は開いた状態で、一瞬で私を突き飛ばしたのだと理解できた。突き飛ばされた当の私は、肺から空気が一気に抜けて呼吸もままならない。酸素が急激に失われ、視界が白みかけている
「いい加減なこと言わないでよ!!セイアちゃんは死んだの!私が殺したの!そんな夢みたいな都合のいいことがあるわけないの!」
『ッ...』
逆上した勢いでミカが私の首を掴み、白い檻に押し付ける。檻の強度が脆いおかげで壁に押しつぶされることはなかったけど、その膂力だけで私は檻を突き破って床に転がされた
「先生!?」
『ゴホッ...大丈夫、体を打っただけで血は出てないよ。ありがとう、ハナコは戦闘に集中して』
「ですが...」
しゃがみこんで私を立たせてくれたのは、コハルたちを後方から支援していたハナコだった。ハナコらしからぬ大声で駆け寄ってきてくれたのに申し訳ないけど、ここばっかりは退くわけにはいかない。ここで退いてしまったら、私は絶対に後悔すると直感が訴えかけていた
「もう、どうしようもないの!セイアちゃんが死んで、私はやるしかないの!邪魔しないでよ!先生にはなんにも関係ないでしょ!?」
もう歪な笑顔で取り繕うこともなく、感情を剝きだした悲痛な表情のままにミカはこちらへ歩みを進める
なんとか息を整え、先ほどの口調で言葉を続ける。胡乱な笑顔は保てているだろうか、目線は?纏う雰囲気は?ジェスチャーは?
背中に走る痛みは反面教師のようにズキズキと響き続ける。それでも、言葉を止めることだけはしない
『でも、まだわかってないよ。公にはなってないけど、少し前から救護騎士団の部長が行方をくらませてる。話を聞いている限り、その時期はセイアのヘイローが壊れた時期とほぼ同じだ。つまり、その部長がセイアを匿っている可能性がある』
正直穴が多すぎる理論だ。別で部長が襲撃されていたらどうしようもないし、たまたま表に出てきていないだけかもしれない。数秒考えればすぐにわかるような欠陥品だ。でも、その数秒があれば違う言葉を掛けることができる
「そんなの...」
『それに、私はミカの先生だ。関係ないだなんて言わせないよ』
「先生...」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!下手に希望を見せないでよ!もう止まれないのに!もう全部遅いのに!」
涙を流しながら狂ったように髪を振り回し、ミカは我を忘れた様子で私たちへと銃口を向ける。そしてなんのためらいもなく引き金を引き、
「先生ッ!くっ...!?」
『ハナコ!?』
スローモーションのように感じられた一瞬の間に、咄嗟にハナコがその身を盾にして私を庇ってくれた。しかし彼女も本来は前線で戦うような柄じゃない。実力者であるミカの銃弾をその身で受けてしまったハナコは痛みでその顔は歪ませ、額には脂汗がにじんでいる。それでも、無理やりにでも笑顔を作り出していた
「大丈夫です、先生。それよりも...ミカさん」
ハナコの呼びかけにミカは答えない。もうこれ以上の会話は無駄だと思っているのか、歩みを止めることはなかった。そのまま銃口をハナコに向け続け、また引き金を引こうと指を掛けた
「
「...はっ?」
『...え?』
ハナコの口から、思いもよらぬ言葉が飛び出した
「...もういいよ、どうせ噓でしょ?そんなの。私の気を引くためのでっちあげじゃん」
先ほどまでの荒々しい暴走が嘘のように小さな言葉だった。一拍置いてから呆れたような、しかしその声は希望を求めて微かに震えていた
「ずっと、偽装していたんです。襲撃犯が見つからないので秘匿していたのですが...この状況なら言うべきだと思いました」
「護衛には救護騎士団の部長であるミネさんがついています。今は安全のためトリニティの郊外にいて、まだケガのせいで目を覚ましていないそうですが...それでも、生きています」
「ミカさんは人殺しではありません」
いつもはのらりくらりと簡単には本音を映さないハナコの目が、その時は強く光っているように見えた
その言葉を受けたミカは、断言するハナコの様子と信じがたい情報の勢いによって完全に勢いが削がれていた。やがて、ポツリポツリと言葉を続けていく
「...嘘だよ、そんなの、噓に決まってる」
「本当の事です。あの襲撃の時、瓦礫の中からセイアちゃんを助けてくれた人がいたんです」
「嘘、ウソ...うそだよ、信じない。信じられるわけないよ、そんなの...いまさら...」
『ミカ』
ミカが持っていた銃が手から滑り落ち、ガチャンと音を立てて沈黙する。私は咄嗟に、顔に影がさしこんで今にも泣き崩れてしまいそうなミカを抱きしめた
「せんせい...?」
『ミカ、良く聞いて。ハナコも言っていたけど、君は人殺しじゃない。もうこれ以上誰かを殺してでも、ましてやミカの心を殺してまでするべきことなんてないんだ』
「あ...」
『確かに取り返しのつかないことはしてしまったかもしれない。でも、やり直せる。やり直す余地があるんだよ』
「...本当に?」
その姿は先ほどまでの希望を拒絶する鬼気迫ったものではなく、救いを求めていながら自分の罪を恐れて求めることができなかった、ただの少女のものだった。だから私は、自責の念によって深くまで沈み込んでしまった彼女を
『もちろん。そのために私が、私たちがいるんだ』
『ミカ、君は一人じゃないんだよ』
「...そっか、そうなんだ」
「...よかったぁ」
私の腕の中、ミカは安心したように微笑みながら瞼を落とした。それと同時に、今まで張り詰めていた空気が緩む。ハナコは負傷した腹部をさすりながらも、気絶したミカを見つめている。ケガを負っているかどうかを確認して、ミカを心配しているようだ。攻撃されたのに思いやることができるなんてやっぱりこの子は優しい子だ...その優しさが、嫌な人をイメージしながらろくでもない演技をしたせいで荒れた私の心にスーッと染み入る。まるで二日酔いの朝に飲むアサリの味噌汁のような...
ダメだダメだ、生徒の純粋な優しさを二日酔いの癒しに例えるとかあまりにもダメな大人が過ぎる。
「先生、ミカさんは...」
『大丈夫、緊張が解けて寝ちゃったみたい』
「そうですか、よかったです。先生もかなり無理をなさっていたように思うのですが...」
『大丈夫だよ、ちょっとハナコもありがとう。まさかセイアのことを知っていたとは思わなかったけど...』
「元々セイアちゃんとは少々交流があったので知ることができたんです。それと、これからのことなのですが...」
『うん、周りのアリウスの生徒たちだね』
さて、問題は解決したようでその実まだまだ程遠い。試験のこともあるし、とりあえずこの体育館から出たいところだけど...
「どうやら、その問題はすぐに片付くようですよ」
『ナギサ?』
いつの間にか私たちのいる一階まで下りてきていたナギサが、私の腕の中で眠っているミカを見て微笑みながら言葉を続ける
「大聖堂の方から多数の生徒がやって来ているようです。ああ、他にもとある教室の方からも...」
『それって...』
「はい、ミカさんが見逃していたティーパーティーが命令できない独立した集団。そして、ホストである私が命令を取り消すことによって動くことができるようになった他の方々ですね」
ドガァン!
「ごほっ...今日も平和と安寧が、ごほっ、みなさんと共にありますように...」
「お、お邪魔します...」
「これまでの慣習に背くことになりますが...ティーパーティーの内紛に介入させていただきます」
爆発音とともに修道服に身を包んだ生徒が大勢なだれ込み、瞬く間にアリウス兵を無力化させていく。見覚えのある生徒も見える、あの組織は...
「シスターフッド、サクラコさんも来たようですね」
「ティーパーティーの聖園ミカさん、あなたを──あら?」
「え、えっと...寝ているようです?」
「...な、なぜ?...いえ、大丈夫です。なら、周辺の武装した敵を──」
ドガァン!!
「な、何事ですか!?」
「...ああ、どうやら到着したようですね。安心してください先生、こちら
『みんな来るまでに、この体育館が崩壊しないかが怖くなってきたよ』
ナギサの落ち着いた声と同時に、他の場所からも戦闘の音が聞こえてくる
「ひひ、ぎゃははははは──!!」
「正義実現委員会です。ティーパーティーホストからの要請で現着しました。ツルギ、くれぐれもやりすぎないように。まあ、心配いらないとは思いますが...」
「委員長!体育館周辺に気絶し、捕縛された敵兵を発見しました!」
「ケヒ──ああ、捕縛した状態を確認して牢屋に入れておけ。監視は待機人員にさせるように」
「わかりました!」
そこかしこから様々な声が聞こえてくる。どうやらこの体育館内だけでも私たち補習授業部に加えてシスターフッド、正義実現委員会が来ているようだ。場は相当混乱しているように見えて、着実にアリウス兵を追い詰めていた
そうして私が情報を整理しようとアロナからの情報を含めて少し考えていると、私たちから少し離れた場所から元気のよさそうな声が聞こえてきた
「うぇ!?なんでシスターフッドの人たちも来てるの!?っていうかハスミ先輩!?ツルギ委員長も!?」
「あ、あうぅ...も、もう何が何だかわからないです...」グルグル
「気を強く持つんだヒフミ、彼女らは援軍だ」
「援軍なら...じゃあ、私たち戦わなくてもいいんじゃない!?試験を受けに行かないと!」
「あっ...そ、そういえば私たちは試験を受けに来ていたんでした。いろいろありすぎて記憶が...」
「...ヒフミ、回復のためにあとでペロロをモフる「モフります!!」...か?」
「っていうか先生もハナコもどこ行ったのよ!なんか変な白い棒が出てからどこ行ったか分からないんだけど!?」
どうやら、そろそろ合流しないといけなさそうだ。コハルの言う通り私たちは試験を受けに来たんだし...そろそろ向かわないと時間に遅れてしまうかもしれない。そう思いハナコに目線をやった
「そろそろ私たちも向かった方がいいですね。コハルちゃんたちが私たちを探しているようです」
『そうだね。ナギサ、私たちそろそろ...』
「...試験でしたね。正直、行う意義はもう失われていますし、今回のあまりに厳しい条件で落第してしまったとしても退学になんてするつもりはないのですが...」
ナギサは今までやったことを思い出したのか、眉間にしわを寄せて苦し気な顔をしている。そろそろ舌を噛み切らないように抑えた方がいいのだろうか...と思うくらいには苦し気だった
「いえ、そのままで試験をしましょう♡」
その時、ハナコがダイナミックエントリーをかましてきた
「ハナコさん!?ですが、あの範囲量にあのボーダーは...」
「ふふ、まさか私たちが合格するのは無理無謀だと?」
「え、ええと...」
「ふふ、そうですね。確かにそう思うのも無理はないと思います」
「そのぅ...はい...」
『...ん?』
なんか、ハナコからすごい企みの気配を感じるような...嫌な予感がする!
「ええ、ええ、ですからナギサさん。一つ、賭けをしましょう」
「か、賭け...ですか?」
神妙にうなずき、相手の様子を見て話す言葉を巧みに変えるハナコに
「はい。実は今回、シスターフッドの方々がやってきてくださったのは、私が
「そっ、それは本当に...すみませんでした」
すごい、どんどんナギサの姿が小さくなって、ハナコが大きくなっていっているような気がする。なんかオーラが黒くない??先生ちょっと不安になってきたんだけど...
その後も私が口を挟む隙すらなく、会話は続いていく
「いえいえ、必要経費だと割り切っているので問題ありませんよ?それで、賭けの内容ですが...」
「もし、
『あー...』
「な、何でもですか!?それは、流石に...!」
「あら、今回の試験はかなり条件が厳しく、しかも受けるのは大規模な戦闘をして疲労しきった今から。かなりそちらに有利な条件だと思うのですが...」
「それは...確かに...で、ですが...」
「ああ、もちろん誰か一人でも試験を突破できなかった場合は、今回の一件をチャラ、というのでどうでしょう?」
「ちゃ、チャラ...水に流していただけるのですか?」
「その通りです♡...ああ、こんなことをなかったことにはできない...なんて、後ろめたい思いはしなくても大丈夫ですよ?もしどうしても気になるというのであれば構いませんが...」
「...わ、分かりました。その賭けに...乗ります」
「交渉成立、ですね♡」
『がんばってね、ナギサ』
限界まで顔をしかめて絞り出すように紡がれた言葉に、ハナコは妖しく微笑み、私は合掌した
「えっ?先生?ちょ、ちょっと待t「先生、早く会場に行かないと試験の時間に間に合わないのでは?」ま、まさか...」
『...えっと、まあ、そういうわけだから...』
そう言いながら私の手はハナコにとられ、ナギサとの距離はどんどん開いていく
「せ、先生?まさか、そんな、見捨てるなんてこと...」
『...ごめんねっ!』
私たちは走り出した。ミカに膝枕をして動けないナギサを尻目に、体育館を出て全力疾走で会場へと向かう
「先生──ッ!」
背後から聞こえてくる悲痛な叫びは、体育館から響く爆発のせいで聞こえないことにした。ごめんね、ナギサでもこれは致し方無い犠牲だったんだよ...心の中のサンズがコラテラルダメージを連呼していた
ハスミからエールをもらえて元気なコハルに、ひたすらにペロロをモフりまくるヒフミとアズサと合流して、私たちは目的地の教室へと走り続ける
「ハァ、ハァ...先生!あと何分!?」
『あ、あと7分...』
「えぇ!?ど、どうしましょう、このままだと間に合いません!」
「...それなら、私にいい考えがある。スカルマンがウェーブキャットを運搬するときのように先生を運ぼう」
『えっと...つまり?』
「「脇に抱えてダッシュです!(だ!)」」
『...ハナコぉ!』
「うふふ、新体験...新しいトビラを開く時のようですね♡...先生、残念ですがその方法でないと遅れてしまうのは事実です...どうしますか?先生♡」
『ぐぅ...背に腹は代えられない、か...』
「これで完全に合意...ですね♡まずは先っちょからでしょうか♡」
『先っちょって足だよ!?足先の事だからね!?』
「は!?エッチ!?それエッチよね!?死刑ぇ!!」
『ちっちが、そんな...!グフッ!?』
「目線は常に前に向けておいた方がいい。地面を見ては酔うからな...よしっ、準備はいいな?行くぞ」
「わ、私、走る、ので、精一杯、で...」
「がんばってヒフミ、会場はもう目と鼻の先だ」
「は、はいぃ...」
『...』
あの戦闘の後にここまで元気なのは若さゆえなのだろうか。こんなことを考える自分もまだ若い方のはずなのに...そんなことを考えながら、私は必死に視線を前に向けて不規則な揺れに耐えていた
「つ、着いたぁ!」
「長かったです...」
「激しかったですね...♡」
「走るのがってことよね!?」
『いやぁ、元気だ...』
色々と紆余曲折はあったが、私たちは無事に試験を受ける教室へとたどり着くことができた。入口の前には正義実現委員会の子がいたけど、その子はボロボロな私たちの様子を見てギョッとしていた。でもナギサから事前に情報は共有されていたのか、手際よくタオルやら水やらを差しだし、「頑張ってください。応援していますね!」とまで言ってくれた
...一人くらい持ち帰ってもバレないかな?バレないよね?
「先生?」
『よし、みんなさっそく試験を受けようか!!!』
「うるさっ...でもそうね、これの結果で、私たちが退学になるかが決まるのよね...」
「あらコハルちゃん。もしかして緊張しているのですか?」
「緊張してない...わけじゃないけど...でも、ちょっと...」
いつになく言葉に詰まっている様子だ。コハルもやはり、この試験に重みを感じているのだろう。すると、うつむいているコハルに対してハナコがゆっくりと近づいていった。その手が心なしかワキワキとしているような気がする
「それでは、緊張をほぐすマッサージでもしてみましょうか?ねっとり、ぐじゅぐじゅと、カラダもココロもほぐしてしまうような...♡」
「ま、マッサージィ!?ねっとり!!??え、エッチなのは駄目!!死刑!!」
「あら、残念♡」
そういうは言うものの、ハナコはいつもの笑顔を浮かべている。コハルもすっかりいつもの様子に戻って、緊張はほぐれてしまったらしい。いいことだ。やり方は少し問題だったけど...まあ、今ばかりは目をつぶっておこう
「...アズサちゃん」
「どうした?ヒフミ」
「これで決まるんですよね。私たちの未来が」
「うん、どんな結果であれ、これで私たちの未来が決まる」
「ッ...はい、そうですよね。私は部長、私は部長...よし、みなさん!」
ヒフミの声で、全員の視線が彼女に向かう。その顔は、たとえ何があったとしても、全てを乗り越えていくことができそうな決意に満ちた表情だった
「頑張りましょう!私たちの望む未来...最高のハッピーエンドのために!」
相槌、返答、微笑...全員がソレに答えたその瞬間、試験1分前のアラームが鳴る。各々の席へと向かっていくみんなの表情には先ほどまでの恐れはなく、ただ目の前の試験に全力で取り組むという強い意志が宿っていた
『では、第3次特別学力試験───開始!』
──始めの模試試験では合格できたのはヒフミだけだった。今思えばあの頃のたどたどしさも懐かしく感じる。合宿が決まった時の落胆っぷりは各々あったが、結果的に合宿があるからこそ今があるのだと強く感じた
──2回目、第2次の模試でも合格結果は同じだった。でも、みんなが少しずつ同じ方向を向き始めていた。コハルの点数も伸び始め、皆が希望を抱いていた
──3回目、第3次の模試ではめでたく全員が合格できた。みんなが心から喜んでいたと思う。でも、その次が問題だった
──第2次特別学力試験。これはなかなかの難敵だった。いや、正直に告白すると...あの時、かなりの絶望を感じた。まさかトリニティの学力試験でゲヘナに赴くことになるとは思わなかったけど、それ以上に様々な試練が降りかかってきた。試験用紙が吹き飛ばされてしまった時には生徒たちの前だから冷静になれたものの、もしこれが自分の立場で起こった時、私は数分間放心状態になってしまっていたと思う。それでも、彼女たちはそこから立ち上がって、今この試験を受けている
...本当に強い子たちだと思う。私も、この子たち顔向けできるくらいにならなくては。私にできること、全てをかけて
試験が終わった。私はみんなの答案用紙に赤ペンを走らせる。間違いがないか、答えと合っているのかを神経を研ぎ澄まして判断する
みんな頑張ってきたから、これまでその姿を見てきたから...それでバツをマルに変えることは彼女たちと築き上げてきた時間に対する裏切りだ。公平な目で、私情を入れることなくペンを動かし続ける
赤で丸をつけることが大半だった。三角や×をつけることはまれで、それが彼女たちの努力をありありと感じられたようでうれしかった
採点が終わった瞬間、私は椅子から飛び出すようにしてみんなのもとに向かう。教室から教室へ、廊下を挟んだ少しの距離しかないにもかかわらず息を上げてしまっているのは、知らず知らずのうちに伝えたい思いが急いでしまったからなのだろう。そんなことが頭の片隅に思い浮びながら、私は驚愕の表情を浮かべているみんなにたどたどしくも結果を伝えた。もしかしたら、その声は震えていたかもしれない
『みんな!結果は──』
その場にいる全員が、身を一つにするように抱き合った
「おめでとう、これで晴れてハッピーエンドだね」
「コハルは正義実現委員会に戻れた。貴重な経験を積むこともできたね」
「ハナコは得難き友を得て、学び舎は監獄ではなくなった。素晴らしいことだ、劇的な変化だね」
「アズサはこれからも友と共に学び続けられるだろう。どんな青洲を送るのだろうね」
「ヒフミはいつもの普通の日常を送ることができるだろう。ペロロ...だったかな?それを求めて非日常に赴くかもしれない」
「ミカは捕まった。いつ出てくることかできるのだろうね。紅茶を楽しむ余裕があればいいのだが」
「ナギサは...予定通りエデン条約に調印するだろう。その笑顔の裏にいったいどんな感情を抱いているのやら...私の預かり知らぬところだ」
「補習授業部は様々な苦難を乗り越え、そして未来を手に入れることができた。めでたしめでたし」
「...陳腐だね。そう思わないかい?」
「努力して、最高の結末に至ることができる。素晴らしい、これ以上ないことだ」
「...本当に?」
「人生というものは、かくも容易く幸せに至ることのできるものだったかな?」
「楽園の証明...こんなものがどうしてこうも長く議論され続けているのか。それは、今いるこの場所が楽園ではないからだ。という説があるらしい」
「私はそれに同意しよう。ここは、この世界は楽園などとは程遠い」
「長編の物語は悲劇へと転換することがままある。それは、話の展開が行き詰りやすい。作品に変わり映えがないかららしい」
「現実は非情だ。どれだけ努力していようと、どれだけ平穏に生きていたとしても、それが突如として崩される。それは自らの行為によるものかもしれないし、全くの第三者かもしれない」
「君が地下から這い上がって太陽を拝むことができたとしても、すぐに他者の手が君の視界を塞ぐだろう。そしてこう言うんだ」
「”お前が何をしようと無駄だ。全ては無意味だ”、とね」
「破滅は近い。もうすぐそこにまでそれはやってきている」
「今笑顔で話している君の隣人は、それが来れば物言わぬ躯へと変わるだろう」
「さて、先生。これを知った今、君はどうする?」
「...?」
「すまない先生、少々混乱してしまった」
「ええと、君が言う、その生徒は誰のことだい?愛称だったりするのかな?」
「私は知らない。
「
体育館で大集合してる中にサンズがいないの、主人公としての風格がなくて笑う
奴さんなら(体育館から早々に抜け出して)最初のセーフルームで寝てるぜ!もちろんナギサは置いて行ってな!お労しやナギ上...正義実現委員会とシスターフッドに挟まれ、ハナコとの怪しい賭けに負けてしまうとは...
次回!ナギサ(社会的に)死す!デュエルスタンバイ!