夏休みに夜食を買ってウキウキで帰宅したら、クーデレとかツンデレお母さんとかオタク系子犬ヒロイン達が織りなす面倒くさいハーレムラブコメが始まった。   作:山城京@カクヨム

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第18話「首絞めハム太郎」

「おいひいねえ」

 

 はふはふと口から湯気を吐き出しながらそう言う天音。全くもって同意だった。

 

 今まではタコパと称しながらも天音と二人きりでやっていたのでどうしてもらんちき騒ぎにはならなかった。しかし今回は人数が倍だ。楽しさも倍増するというものだ。

 

「そういえば作り置きのポテトサラダがあったんだった。食べる?」

 

「月野さんの手作りだって? ぜひ食べたいね。どんなに美味しくなくても完食する自信があるよ」

 

「なんで美味しくないこと前提なのよ。そんなこと言う人にはあげません」

「ごめんなさい食べさせてください」

 

 ガチ謝罪だった。土下座も辞さない迫真の謝罪に、月野さんは「そ」とだけ言って冷蔵庫からポテトサラダを持ってきてくれた。だけじゃなく、ボウルからお皿に取り分けてくれた。

 

「なんて神々しいんだ……僕は未だかつてこんなに光り輝いているポテトサラダを見たことがないよ。いただきます」

 

「どう? 美味しくないことはないと思うんだけど……」

「美味い!」

 

 僕は滂沱(ぼうだ)の涙を流しながらそう叫んだ。

 

 しっかりと潰された芋のマッシュ感、きゅうりと玉ねぎのシャキシャキとしたアクセントが口を楽しませてくれる。味の方もしっかりとマヨネーズが効いていて最高だった。

 

「泣くほど美味しいの?」

「とても美味しい。これを月野さんが作ったって考えると更に美味しく感じる」

 

「こんなものでいいならいくらでも作ってあげるわよ。今朝作った味噌汁もあるけど……」

「いただかせてください!」

 

 そうして出てきた「月野さん手作り」(ここ重要)の味噌汁の具は、芋と玉ねぎという僕が愛してやまないセットだった。

 

 味の方は……美味過ぎる。しっかりと出汁が取られている上に、味噌の塩味もバッチリの塩梅だ。芋はしっかりと柔らかくなっているが、玉ねぎは僕好みにシャキシャキ感が残っているという嬉しいサプライズ。

 

「毎朝僕のために味噌汁をつくってほしい」

「お断りします」

 

 一世一代のプロポーズだったのだが、にべもなく断られてしまった。

 

「もしかして僕の好み知ってる?」

「なんの話よ?」

 

「僕味噌汁は芋と玉ねぎって決めてるんだ」

「たまたまよ。ちょうどお芋が余ってたから」

「月野さん料理上手いんだね」

 

 今の一言でわかった。本当に料理が出来る人というのは、その日その日に冷蔵庫に入っているもので美味しい料理が作れるのだ。

 

 これ、という料理を作りたくて何回もお買い物に行ってしまう人は「料理人」として料理が上手い可能性はあれど、「お母さん」にはなり得ない。

 

「そんなに美味しいの?」

 

「美味い。残念だがこの味噌汁は僕のものだ。天音にあげることはできない」

 

「わ、司がそんなこと言うなんて珍し。よっぽど口に合ったんだね。そこまで言うならあたしも飲んでみたくなってきた」

 

「ごめんなさい、今朝の残りだったから九条君に渡したので最後だったのよ」

「えー。残念。また明日作ってくれません?」

 

「いいわよ。そういえば、味噌汁で思い出したんだけど家事の分担とかどうする?」

 

「どうしようね。ちなみに天音は料理が壊滅的に下手だから料理当番は任せられない」

 

「そんなこと! ……ない、もん?」

 

「僕は以前手作り料理という名のバイオ兵器を食べさせられた経験がある」

 

「あれは……ちょっと失敗しただけだし!」

 

「ちょっと? どうしたらあんなに焦げ焦げなチャーハンがゲロ甘になるっていうんだい」

 

「それは塩と砂糖を間違えて……」

 

「聞いてわかる通り料理音痴にありがちのベタベタな失敗をするから天音は論外だ。真衣華は料理できるの?」

 

「あまり自信はないけど、教えてもらえたらたぶんできるわ」

「よしきた。それなら真衣華は慣れるまで僕が補佐をする」

 

「となると、料理当番は私と九条君、黒鉄真衣華ってことね」

「後は掃除と洗濯かしらね」

 

「あ、それならあたしでもできるよ。当番制にする?」

 

「待ってほしい。君らは同性だからいいかもしれないが、僕一人だけ男だぜ? 洗濯はマズイんじゃないか? コインランドリーとかないのかい?」

 

「ああ、それならこの階にあるわよ」

「オッケーだ。洗濯問題はこれで解決だね」

 

「掃除はそれこそ当番制かしらね。順番に回していけばいいと思うんだけど、どう?」

「僕からは文句なし。もちろん各部屋の掃除は部屋の主がやるってことで」

 

「当然よ。入ってきたら殴るからね?」

「それ、我々の業界ではご褒美って言うんだぜ?」

 

 月野さんは僕の言葉を無視してこう言った。

 

「後は……下着とか見られたくないし、この際だから脱衣所の使い方とかもルール化するべきかもしれないわね」

 

「私は特に気にしないから任せるわ」

「具体的にはどんなルールにするの?」

「洗濯の時までは使用済みの衣類は部屋に保管するとか?」

 

 ガッデム。深夜に月野さんのパンツで変態仮面ができなくなるじゃないか。

 

「司、今変なこと考えてるでしょ?」

「ナニモ?」

 

「ぜったいうそ。あたし達の下着でよからぬことしよーとしてたんでしょ」

「僕に限ってそんなことするわけないじゃないか。HAHAHAHA!」

 

「……衣類は各自の部屋で保管することにしましょう。特に下着」

 

 天音のバカ。余計なこと言うから月野さんに警戒されちゃったじゃないか。

 

 どうにかしておぱんちゅをゲットできないかと考えていると、

 

「下着がほしいなら言ってね? 渡すから」

 と、真衣華が耳打ちしてきた。

 

 嬉しい。嬉しいんだが、ちょっと違うんだ。手に入らないものを僕は手に入れたいのであって、容易に手に入ってしまえば価値が下落してしまうのだ。それはそうと一枚くらいは貰いにいくけど。参考資料としてね。

 

 そんなこんなで会話に花を咲かせながらたこ焼きに舌鼓を打った僕達だったが、気がつけば時刻は23時になっていた。

 

 名残惜しかったが、明日以降も起きればすぐに会えるので解散の流れとなった。

 

 片付けを終えて、部屋のベッドに横になる。

 

 あまりに濃密な一日だった。MIBの襲撃に始まり、アプローチ陣営への所属、二度目のイドとの戦闘。今日だけで一週間分のイベントを消化した気分だ。

 

 疲れがないとは言わない。だけどそれ以上に、望んでいたワクワクを得られている喜びの方が大きかった。

 

 今日はとっても楽しかったね。明日はも~っと楽しくなるよね。へけっ。

 

 

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