夏休みに夜食を買ってウキウキで帰宅したら、クーデレとかツンデレお母さんとかオタク系子犬ヒロイン達が織りなす面倒くさいハーレムラブコメが始まった。   作:山城京@カクヨム

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第19話「アンインストール」

 はてさて、僕の思いとは裏腹にこの3日間は目立ったイベントが起こらなかった。

 

 あえて言うなら、毎日最低一回はイドとの戦いに駆り出されていた程度だろうか。

 

 一度だけ身体検査のようなことをされたが、当初言われていた検査らしい検査もない。真衣華にも聞いてみたが、特に何かされている様子はなかった。

 

 とどのつまり、

 

「暇だ」

 

 そう暇だった。イドとの戦いというワクワクと外出できないというマイナス要素。天秤に乗せた時傾いたのはマイナスの方だった。

 

 月野さんに構ってもらおうにも2日前から忙しそうにテレワークをしているから邪魔するわけにもいかないし。真衣華も真衣華で部屋で何やらやっているようで忙しそうだった。

 

 元々引きこもり気質のあった天音は今回の状況をこれ幸いにと部屋にこもってゲームばかりやっているようだし。

 

 ようするに、僕だけ手持ち無沙汰なのだ。

 

「暇だし奇声でも上げるか」

 

 大きく息を吸って、

 

「おおおええああええおおおおおおええ!!」

 

「何!? 何事!?」

 僕の奇声に慌てた様子の月野さんが部屋に入ってきた。

 

「やあ月野さん、暇だから奇声上げてたんだよ」

「はぁ? 貴方一人でも騒がしいの?」

 

「司には稀によくあることですよ。気にしたら負けってやつです」

「おや天音も来たのか、いらっしゃい」

 

 驚きだ。僕の奇声には人を呼び寄せる効果があるようだ。まるで誘蛾灯だな。

 

「あたしは別に奇声が聞こえたから来たわけじゃないよ」

 

 僕の心を読んだようにそう言った天音に、「では何をしに?」と返す。

 

「一緒にクラブラやらないかなって」

「よしきた。ちょうど暇を持て余していたんだ」

 

「それ私も参加していいかしら? ゲームというものに興味があるの」

 今度は真衣華だった。余程僕の奇声には人を集める効果があるらしい。

 

「もちろんだ。クラブラは人数が多いほど楽しめるからね。天音、コントローラーある?」

「もち。ちゃんと人数分用意してるよ」

 

「え、待って。私がおかしいの? いきなり奇声上げたのになんで誰も驚いてないの?」

「司ですから」

 

「ああ、確かに」

「そこで納得されるのすごい心外だな」

 

 なんでもないとわかったら月野さんはスタスタと自分の部屋に戻っていってしまった。

 

「クールだねえ、そこに痺れる憧れる。さて、クラブラ会場はどこにする? いつも通り僕の部屋か?」

 

「んにゃ、あたしの部屋でやろ。テレビもおっきいし、ゲーム機移動するのダルい」

「オッケー。真衣華は初心者だから僕とチームを組もう」

 

 ということで、天音の部屋に入った。のだが、そこがまあ一週間足らずでよくここまで汚せるなというくらいに足の踏み場がなかった。

 

 床に放り投げられた衣類やゲームのパッケージ、配線などなど、床よりも物の面積の方が多い。まったく、色気のない部屋だぜ。

 

 天音は決して片付けが出来ないわけではないはずなのだが、ものぐさが勝っているようだった。

 

 しかしそこは腐っても女の子部屋。ミルクっぽい良い匂いがした。女の子の部屋に合法的に入室できるっていうのは最高だね。

 

「真衣華、操作方法を説明するね」

「ええ、お願い」

 

 クラブラはライトユーザーからヘビーユーザーまで老若男女楽しめる対戦アクションゲームだ。使用可能キャラはまさにオールスターといった感じで、様々なゲームからキャラクターが出張してきている。パーティーゲームの代名詞的存在だ。

 

「司は何使うの?」

 

 真衣華への説明を終えたタイミングで天音はそう聞いてきた。その目はガチだった。

 

「そういう天音は?」

 

 僕と天音の実力は拮抗している。故に、こうなってくるとキャラ相性というのが重要になってくるのだ。だからこその情報戦。

 

 紳士協定として、一度キャラを選んだ後に相手のキャラを見て変えるというのはなしになっている。そうしなければいつまで経ってもバトルが始まらないからだ。

 

「ヒミツ」

「なら僕も秘密だ」

 

 キャラクター選択画面。僕は紳士なので迷うことなく一番おっぱいが大きいキャラを選択する。真衣華は黄色ネズミを選択したようだった。

 

「そうきたか。ならあたしはこいつにしよ」

 天音の選択キャラはトゲトゲ甲羅の付いたデカい亀だった。

 

 ――バトルスタート。

 

「あの、これどうなればいいの?」

 

「相手を画面外にふっ飛ばせば勝ちだ。ストック制だから、下の小さいキャラがなくなったら負けだね」

 

「わかったわ」

 

 戦いは熾烈を極めた。僕も天音も100%状態から何度も吹っ飛びかけては画面内に戻ってを繰り返している。

 

 真衣華は端っこから電撃を連射していた。地味に%を稼いでくれるのでありがたい。

 

「うー、さっさとやられろ司!」

「お断りだ!」

 

 そんな千日手ともいえる戦局を一変させたのはアイテムの存在だった。

 

 僕が操作するキャラの真上に無敵になれるスターが降ってきたのだ。

 

「おー光ってる光ってる」

「あー! ひきょうだぞ!」

「ふ、僕は運すら味方にする男だぜ? 卑怯なはずがない」

 

 しかし無敵だったのは一瞬。無敵が切れた次の瞬間、天音の側にアシストキャラが出てきたのだ。再び戦局は一変する。

 

「ああっ! 煮込まれているっ!」

 

 僕のキャラがコックの大きな鍋に吸い込まれてコトコトと煮込まれていた。

 

「流石にその%だったら吹っ飛ぶでしょ!」

 

 その間も真衣華は絶えず電撃を放出していた。

 

 僕の負けか……そう思った矢先、天からボムが降ってきた。

 

 ボムに真衣華の電撃が当たる。結果起こる大爆発。

 

 僕と天音が吹っ飛ぶのは同時だった。結果、ストックを残していた真衣華だけが画面に残る。僕と真衣華はチームなので、僕達の勝利だった。

 

「これこそチームプレイってやつだね。真衣華、グータッチしよう」

「なんだかわからないけど私達の勝ちみたいね」

 

「くっそー。勝ったと思ったのに、まさかの伏兵だよ」

「どうだい真衣華、初めてのゲームは」

 

「面白いわね。それに、キャラが可愛いから見てて飽きないわ」

「それはよかった。よし早速次の試合だ」

 

 そう思ったのだが、月野さんが部屋に入ってきた。

 

「あら、皆でゲームやってたのね」

「月野さんもやる? 楽しいよ」

 

「残念だけど、仕事の時間よ」

「仕事?」

 

「そ。私も詳細は聞かされてないけど、九条君と黒鉄真衣華に来てほしいみたい」

「それは本当に残念だ。天音、悪いけどそういうことだから行ってくるよ」

「ん、仕方ないね」

 

「私も行くからその間の護衛は別の人が来るけど、基本的に居間からは出ないはずよ」

「わかりました。いってらっしゃい」

 

 天音に見送られた僕達は家を後にした。

 

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