夏休みに夜食を買ってウキウキで帰宅したら、クーデレとかツンデレお母さんとかオタク系子犬ヒロイン達が織りなす面倒くさいハーレムラブコメが始まった。   作:山城京@カクヨム

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第28話「童貞を殺すセーター」

「厄介なことになったなあ……」

「ほんとにね。九条君はまだわかるけど、なんで私まで……」

 

 確かに月野さんには同情を禁じ得ない。彼女に関しては完全にとばっちりみたいなものだ。何が悲しくて友人のデートの出歯亀をしなければならないのか。

 

「ごめんね、僕が不甲斐ないばかりに」

「九条君が悪いわけじゃないわ。だいたい、黒鉄真衣華と仲良くしろだなんてのがおかしな話なのよ。あんな鉄面皮みたいに感情の薄い女と仲良くなるなんて無理よ」

 

「そこまで感情が薄いとは思わないけどね」

 

 月野さんほどじゃないけど真衣華も真衣華で意外と激情家な面があったりするものだ。機会に乏しいから冷たく映るだけで、決して感情が薄いわけじゃない。

 

「そうかしら?」

「そうさ。じゃなきゃ僕らの調整結果を見て再検査を要求しないでしょ」

 

「ああ、言われてみれば確かにそうかも」

「負けたのが悔しかったんだろうさ。他ならぬ月野さんにね」

 

「それにしても、なんで私、九条君とは点数が高かったのかしら? 自慢じゃないけど私もエゴだから、定期的にコントラクター候補の人達と検査はしてたのよ」

「ほうほう」

 

「でも検査結果はいつもとんでもない点数だったのよ? よくて30点とか」

「それマジ? 僕とやった時は150点とかだったよね?」

 

「ほんとよ。きっと九条君が黒鉄真衣華と契約してなかったら私のコントラクターには九条君が選ばれていたんでしょうね」

 

「今からでも僕と契約しませんか」

「残念。複数契約はできないようになってるのよ」

 

 僕は人知れず涙を流していた。真衣華と出会わなければ今この場に僕はいなかったが、何かの間違いが起こって最初からアプローチで働いていれば月野さんと契約できたのだから。

 

「黒鉄真衣華と契約して後悔してるの?」

「まったく」

「それなのに泣くほど悔しいの」

 

「それとこれとは話が別さ。僕は月野さんが大好きなんだ」

「そ。残念だったわね」

「しかしこのチケット、いつ渡そうか」

 

「チケット自体に期限はないみたいだけど、八田さんは今月中に成果を見せろって言ってたものね。後2週間くらいしかないし、早めに誘った方がいいわよ」

「うーむ。こういうのは後になればなるほど切り出しづらくなると相場が決まってるし、帰ったら誘うか」

 

「それがいいと思うわ」

「誘うにあたってお願いがあるんだけど、天音をなんとか引き付けておいてくれないか? あいつがいたら、あたしも一緒に行くとか言ってデートにならないのが予想される」

 

「早速私を使う気? 仕方ないわね。買い物に誘うからその間に誘っちゃいなさい」

「助かるよ」

 

 なんて話しをしていたら、家についていた。そこで僕がこれからとんでもない目に遭うだなんていうのは、天地がひっくり返っても今の僕にはわかるはずもない。

 

「ただいま~」

「おかえりなさい、司さん」

「ぶっ! なんて格好してるんだい、真衣華」

 

 そこにはいわゆる「童貞を殺すセーター」を着て胸を強調する悩殺ポーズをした真衣華が立っていた。

 

「司さん、こういうの好きかなと思って……」

「いや~どうだろう?」

 

 せっかく着てくれた真衣華の手前言葉を濁したが、僕はこういうあけすけなエロは好まない。どちらかというと隠されたものに対する期待で興奮するタイプなのだ。

 

 例えば月野さんが普段着ている袴の奥に隠されたムチプリな太ももを想像するとかね。

 

「違ったみたいね。着替えてくるわ」

 真衣華はそれだけ言うと自室に引っ込んでいった。

 

「なんの冗談だ……勘弁してほしいな」

「やっぱり今のは違ったかー」

 

 そう言って現れたのは天音だ。彼女も彼女でキョンシーのコスプレをしていた。

 

「天音、お前の仕業か!」

「ひっどーい。あたしのせいじゃないもんね」

「じゃあなんで真衣華があんな格好をしてるんだ!」

 

「あたしがコスプレしてたら真衣華ちゃんもやってみたいって言うから教えてあげただけだもんねー」

 

 それで合点がいった。ここ最近やたらと二人とも家を空けることが多いなと思っていたら、二人してコスプレ用の衣装を買いに行っていたんだ。

 

「しかしなんでアプローチにはあんな服が売ってるんだ。ここは秋葉じゃないんだぞ」

「職員の慰安用かしらね?」

「月野さん、なんでもかんでもその言葉で片付けられると思ってない?」

 

「あら、私はそうだと思うわよ。職員の中には天音さんみたいにコスプレしたい人だっているはずだもの」

「本当にアプローチはどこに向かっているんだ……?」

 

 なんて話しをしている内に再び着替え終えたらしい真衣華が戻ってきた。今度は胸元がガッツリと開いているコテコテのゴスロリ服だった。

 

 もはや双丘の上半分がまったく隠れていなかった。胸に限っていえば服としての機能が完全に放棄されている。

 

「こういうのはどうかしら?」

「いやなんでそんなに露出が多いんだい」

「好きかなと思って」

 

「この際だからはっきり言うけど、僕は隠れている方が好きだ。というか真衣華おっぱい大きくなった?」

 

 僕が把握しているサイズよりも2カップくらい大きく見える。

 

「ああ、これ? コルセットというもので寄せて上げてるのよ。少しは月野のサイズに近づいたでしょう?」

「なるほど」

 

 女性の身体の神秘である。どれだけちっぱいでも寄せて上げればおっぱいになる可能性があるということを知れたのは僥倖だった。

 

「おい。誰の胸見て考え事してるの?」

「ああ、これは失礼。ちっぱいでもおっぱいになるのかと考えていたんだけど、天音のおっぱいだったか」

 

「ぶん殴るよ?」

「殴った後に言うのはやめてくれ……」

 

 僕が天音に食らったボディブローの痛みにもだえていると、

 

「お気に召さないようだから着替えてくるわね」

 と、真衣華は再び自室に戻っていってしまった。

 

「天音さんのそれ、キョンシー? すごいわね、どうやってメイクしてるの?」

「これですか? 普通のファンデで下地を作って、上から青色のを少しだけ伸ばしてるんですよ。目はマスカラをわざと水に溶いて塗ってますね」

 

「なるほどねえ。コスプレのイベントとかにも出てるの?」

「たまにですけどね」

 

「こう見えて天音はツイッターのフォロワーが10万人もいるんだよ。コスプレ界隈ではちょっと有名な人だったりするんだ」

 

「すごいわね。今度私にもメイク教えてもらえない?」

「いいですよ。月野さんは元がいいから、あんまりイジらない方向がいいかもですね」

 

 メイクの話になってしまうと僕はちんぷんかんぷんなので会話に入っていけない。

 仕方がないのでルイボスティーのパックを鍋に入れて煮出すことにした。

 

 お湯にお茶の色が十分につくと、パックを鍋から取り出して冷ましておく。埃が入らないように鍋に蓋をしようとしたところで、

 

「着替えてきたわ」

 

 今度は黒のセーラー服だった。

 

「どうかしら?」

 

 とてもよく似合っていた。まず色がいい。黒を基調としているため、真衣華の濡羽色のロングヘアとも合っているし、彼女の白磁のように白い肌をより強調させている。

 

 アクセントとして入っている赤のスカーフもいいし、何よりロングスカートとハイソックスによって彼女の細い足がしっかりと隠されているのがいい。思わずしゃがんでパンツを覗き込みたくなる。

 

「くっ! とてもよく似合っているよ!」

「よかった。今日はこれを着て過ごそうかしら?」

「ま、まあいいんじゃないかな?」

 

 本音を言うと着替えてほしかったが、さっきまでの服として機能していない服よりは遥かにマシだ。

 

 ただでさえ毎日毎日、月野さんの誘惑に抗って疲れているのに、真衣華にまで誘惑されてしまっては、僕はいよいよ犬のおまわりさんのお世話になることになってしまう。

 

 セーラー服なら足さえ見なければ露出はないに等しい。言ってしまえば普通の服と一緒だ。後は僕が足を舐めたいという欲求を我慢すればいいだけだ。

 

 しかし僕の受難はこの程度では終わらなかった。否、始まりに過ぎなかったのだ。

 

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